第七章: 闇の中の鍵
建物の中に足を踏み入れると、空気は一層冷たく、息をするのさえ不安になるような感覚だった。廃墟のような場所に響く足音は、二人の心拍数を早める。
隼人と葵は、じわじわと奥へ進んでいった。床は不安定で、何度も足を滑らせそうになりながらも、その先に見えるものが気になった。突き当たりには、ひとつの扉が立ちはだかっていた。
「ここに何かがある。」隼人がつぶやくと、葵が慎重にその扉を開けた。
扉の向こうに広がっていたのは、薄暗い部屋の中に古びた机が一つ、そしてその机の上に何かが置かれていた。それは、一枚の古びた写真だった。
隼人がその写真を手に取ると、目を疑うような人物が写っていた。そこには、若き日の翔太と、見覚えのある別の人物が映っていた。隼人はその人物の顔に見覚えがあった。
「これって…?」隼人が言葉を失う。
葵が静かに写真を見つめた後、言った。「この人、知ってる。翔太の…兄?」
隼人はその言葉を聞き、心の中で何かが弾けた。翔太には兄がいたという事実。それは今まで、誰も語らなかったことだった。
「翔太の兄が…この事件に関わっているのか?」隼人は写真を握りしめ、考え込んだ。
その瞬間、部屋の中で何かが動いた気配を感じ取った。隼人と葵は素早く振り返り、その目線が交差した。何かが近づいてきている…。
次の瞬間、目の前に立っていたのは、翔太の兄、その姿だった。だが、彼の目はどこか虚ろで、隼人に対する敵意を隠すことなく露わにしていた。
「君たちも知るべきだ。」翔太の兄は低く呟いた。「君たちが思っている以上に、この世界は歪んでいる。」
こんにちはBleuvalブルーヴァル(15)です。
『地下からの景色』第七章をお届けしました。
これからいろいろな小説を気ままに投稿していきたいと思っています。よろしくおねがいします。
この小説は、僕の最初の小説で、身近なミステリー(身近ではないものもあります)を題材に書きました。たくさん読んでいただけると嬉しいです。また、たくさんの感想をお待ちしております。