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第五章: 目に見えぬ糸

 隼人と葵は、秘密の通路をさらに進んでいく。通路はどこまでも続くように思え、二人の足音だけが響く。周囲に何の変化もないかのように見えるが、隼人はどこか気配を感じていた。何かが彼らの周りにいるような、そんな不安な感覚がぬぐえなかった。

「なんだか、どんどん気味が悪くなってきたね。」隼人がつぶやくと、葵は静かに頷いた。

「うん、私も感じている。この通路、ただの通路じゃない。」葵の声には、普段の冷静さに隠れた不安が見え隠れしていた。

 やがて、通路の終わりに差し掛かり、目の前に一枚の扉が現れた。その扉は古びていて、何年も手を加えられていないようだった。しかし、その上に浮かぶ不自然な模様が目を引いた。模様はすべて細かく、精緻に彫られており、何か意味が込められているような錯覚を与える。

「この模様、どこかで見たことがあるような……。」隼人がその模様を指差すと、葵も興味深そうに覗き込んだ。

「私も見覚えがある。まるで……暗号みたい。」葵はそう言い、指先でその模様をなぞった。

 その瞬間、二人の背後で何かが動く音がした。振り向くと、そこには何もない。ただ静寂が広がるだけだった。だが、隼人の胸には強烈な不安が湧き上がった。彼は今、自分が何かに見られているような気がしてならなかった。

「気のせいか?」隼人は思わずつぶやいた。

「いや、気のせいじゃない。」葵は静かに言った。「この先には、私たちがまだ理解していない何かがある。」

 葵は再び模様に視線を戻す。その模様はまるで生命を持っているかのように、次第に動いているような錯覚を与える。じっと見つめているうちに、隼人はそれが単なる彫刻ではなく、何か別の意味を持ったものだと感じ始めていた。

「これが……扉を開ける鍵?」隼人が尋ねると、葵はゆっくりと頷いた。

「もしかしたら、ただの扉じゃない。この模様を解かなければ、先には進めない。」

 葵は慎重にその模様の一部を押してみた。すると、予想外のことが起こった。模様がわずかに動き、扉が微かに揺れた。しかし、何も起こらない。まだ何かが足りないようだった。

 隼人はその模様をさらに注意深く見つめる。突然、彼の頭の中で一つの思いが浮かんだ。それは、翔太が言っていた言葉だった。「君が気づくべきなのは、目に見えないものだ。」

「目に見えないもの?」隼人はその言葉を反芻し、模様の中に潜んでいる意味を感じ取ろうとした。

 その時、葵が目を輝かせて言った。「分かった。ここに隠されているのは、視覚だけでなく、もっと深い感覚で感じ取るべきものだ。」

 隼人は一歩引き、葵が示す方向を見つめた。彼女はさらに模様の間に微細なズレを見つけ、そのズレを指でなぞった。すると、何かが反応したのか、扉が少しだけ開いた。

 だが、それはまだ完全に開いたわけではなかった。その先には、更なる障壁が待ち受けているように感じられた。

「まだ何かが隠れている。」隼人はその直感に従い、もう一度模様をじっくり観察した。

 その時、再び静かな空気が流れ、通路の奥から、何かかすかな音が聞こえた。それは誰かが歩いているような、あるいは遠くから何かを引きずっているような音だった。

「誰かいる……?」隼人は疑念を抱きながら、音の方向を見つめた。しかし、どこを見ても、誰もいなかった。

「私たちだけじゃない。」葵の声は冷徹だったが、その奥には恐怖が隠れているのを隼人は感じ取った。

 扉の前に立つ二人。そこには、次々に起こる奇妙な現象と、解かれるべき謎が待っている。だが、この扉を開けるためには、ただの力ではなく、何か見えない力を感じ取る必要がある。

 隼人と葵は、さらに進むべきか、立ち止まるべきかを迷った。しかし、音が再び響く中、隼人の胸には強い予感が渦巻いていた。彼らは、この先に何か重要なものが待ち構えていると、確信していた。


こんにちはBleuvalブルーヴァル(15)です。

『地下からの景色』第五章お届けしました。久しぶりの投稿になりました。これからは、「地下からの景色」を最終章まで毎日投稿していこうと思います。

これからいろいろな小説を気ままに投稿していきたいと思っています。よろしくおねがいします。


この小説は、僕の最初の小説で、身近なミステリー(身近ではないものもあります)を題材に書きました。たくさん読んでいただけると嬉しいです。また、たくさんの感想をお待ちしております。

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