プロローグ2
「異世界転生」それについて考え始めたのはいつからだろうか。
寄りかかったドアの車窓から高速で流れる景色。
ぼんやりと眺めながら人生を振り返る。
勉強とか運動とか見た目とか。死にたくなるほどじゃない。
勉強はそこそこできる、中学受験にも受かった。今は授業についていけなくなったが。
運動もいうほど悪くない、この間はスタメンにも入った。たまたまレギュラーの奴が風邪をひいただけだけど。
顔は…最近ニキビができてきた。身長もこれから伸びるかもしれない。
家も貧乏じゃないし、親も勉強しろとうるさいくらいで暴力をふるってくるようなくそ野郎なんてことはない。
「普通」
この言葉が嫌いだ。才能がない奴の言葉だ。でも、今の自分を客観的に見たら「普通」がお似合いだ。
才能がある人も努力しないと意味がないらしいが、じゃあ才能がない奴はどうすればいいのか。
努力して「普通」になるのが普通なんだろう。そんなことを目標に努力できるかっつーの?
そこで「異世界転生」だ。大体は不遇な主人公がチート能力を貰って自分よりも馬鹿な人達がいるところに転生する。
そりゃ中世?、っていつごろだか知らないが、そんな時代に行けば誰でも天才だろうよ。今より文明が進んだ世界に行かないのはそういうことだろう。
でも、今日も帰ったらそういうのを読むんだろうな。
数少ない友達にも言いづらい趣味だ。絶対馬鹿にされる。
超強くなって、女の子にもモテて、周りからちやほやされる。それでいてそれに調子に乗らない自分。
ずるい
しかも転生する方法が死ぬことときたもんだ。死ぬことなんて誰でもできるだろ。才能がないやつの最終手段ってか?
そして、それに救いを見出してる自分も情けない。努力できるのも才能という、なら俺にはその才能すらない。
チート能力があれば、守る人なんてものがいれば、むしろ逆境に置かれれば、努力もできるかもしれない。
とにかく、なにか「普通」じゃないものが欲しかった。
死ぬことで手に入るのだろうか。そう考えはじめたのは最近のことだ。
電車の速度が下がり始める。学校の最寄りは次の次だが、ここで降りた方がいいな。ここで降りる人は少ないし。
さっきはうんこいけなかったからな。こっちなら人も少ないし空いてるに違いない。
そして彼は電車から一歩踏み出した、待ち受ける運命も知らずに