表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

残虐!死と火を扱う兄弟 ~第漆話~

今回は描いててめっちゃ楽しかったです!

描きたい事をいっぱいかけて、めっちゃ娯楽でした!

無事にブルースの兄、

『レズ・アナロ』の住処へと到着した、

猫、パンプ、ブルースの三人だったが、

その小さな家には似合わない、

いかつい”鉄の塊”を見て、

二人は戸惑いながらも、箒を走らせるのだった。


死聖区堂(しせいくどう)大聖堂(だいせいどう)


大聖堂の中の、薄暗く広い食堂には、

本来のテーブルより、

はるかに長く大きなテーブルがあり。

真っ白なテーブルクロスがかけられていた。

サイドにはこれまた高級そうな椅子が、

十数並んでいた。

机の上には、貧困化している地王には似合わない

豪華な食事が並び、

これから食事をするのが伺える。

だが、座っている()()司蒼教(しせいきょう)は深刻そうな顔で、

テーブルの料理に一切口をつけず、

誰かを待っているようだった。

満を持して、一人が口を開けた。

「教祖様が来てないが、皆、聞いてもいいか…」

男がそう言うと、他に座っている四人は頷いた。

「なんだ『フェニ』さっさと言え」

厳格そうな男がフェニの発言をせかすと、

最初に口を開けた男の表情が少し曇った。

「今から喋ろうとしてんだ、

入ってくるな『ラージ』」

一瞬で二人の空気が悪くなったが、

フェニは話を続けた。

「……お前ら、”帝国”についてどう思う…」

その質問に誰もすぐに答えることが、

できなかったが、考えてることは皆同じだった。

そして、一人が声を上げた。

「だだだまっていいても、しししかない、わわわたしはやややつらと分断してしまうと考える」

星型の器具に体を縛り付けられ、

唇が()()()()()()()()男が声を上げた。

異様な喋り方だが、

いつも通りなのか誰も気にしていない。

「『アルカン王朝』の『ハージジャンプ』が言うんなら、きっとそうなるだろうな。

正直言うと、俺も同じ考えだ…それでさ、もし仮に分断したら皆はどっちにつく?」

その問いにも、

場にいる者はすぐに答えられなかった。

「そんな簡単に答えの出せる問いじゃなかったな、すまない…今のは忘れろ」

長い沈黙が流れ、一人の男が立ち上がった。

そいつは両方の首筋から腕が生えて、体中に毛細血管のようなものがまとわりついていた。

「教祖様、少し遅いな…ちょっと見てくる…」

そう言うと、そいつは食事場から出て行った。

「教祖様と言えど、もうかなり年食ってる…

いくら密会と言っても、

手伝いの信徒くらい連れくればよかった…」

異様な雰囲気が漂う食卓には、

賑やかさが生まれる事はなく、

ただ一方的に時間だけが過ぎていくのだった。


~オルフォルニア区・ゲルスト郊外~

猫とブルースは家の前まで付くと、

真っ先に裏庭へ歩いて向かった。

上空で見た、”鉄てつの塊かたまり”が何なのか

確かめるためだ。

「そこで何している!」

すると猫たちの背後から野太い男の声が響いた。

振り向くとそこには、

顔に鉄の被り物をして顔を隠し、

体中の皮などが剥がれ、内臓や血管がむき出しになっている”化け物”がいた。

「うわぁ!?」

猫は情けない声を出して尻餅をついてしまった。

だが、そんな様子の猫と違ってブルースはなぜだか嬉しそうにしていた。

「会いたかったよ、兄貴(あにき)!」

猫は一瞬理解できなった、

なぜならブルースが兄貴と呼ぶそれは、

ブルースと似ても似つかず、

どう見ても兄弟には見えなかったからだ。

だが、ブルースに兄貴と呼ばれるそいつは、

”会いたかった”と言う言葉に答えるかの様に、

両手を上げた。

「おぉ!ブルース!来てくれたか!」

戸惑っている猫を差し置いて、

二人は嬉しそうに抱きしめあっている。

「え、本当に兄弟なの?」

猫は感動の再会な空気を読まず、

普通に失礼な事を目の前で言い放った。

すると、兄の方が猫の方に近寄ってきた。

「お前……その姿…教団関係者か?

ブルース、なんのつもりだ?」

ブルースの兄は暖かい雰囲気から一変して、

冷たい声で猫を凝視している。

するとブルースが猫の前に立ち、兄に弁解した。

「違う違うって!コイツは俺の仲間だよ!」

少し焦り気味にブルースは兄にそう言うと、

猫の耳へ囁いた。

(兄貴の前では元教団って事言わない方がいい)

「お、おう…」

猫はいつも違うブルースの様子に戸惑ったが、

凝視してくる兄の方が気になった。

「ふーんそうか、仲間かぁー。

ブルースから俺の事は聞いてるか?」

猫は「は、はい」と珍しく敬語で答えた。

「俺は『レズ・アナロ』、一応杖職人をやってる

猫ちゃん、お前は何者だ?」

レズはまだ猫の事を疑っている様だ。

もしかすると、キャンプ・タワーの看守か何かだと

思われているのかもしれない。

「お、俺は見ての通りの『猫』だよ。

()()反教団に入ってる」

「今はって、昔は何してたんだ」

猫は「あっ」と口を滑らせた事に気づき。

ブルースは“あちゃー“と額に手を当てている。

「え、えっと」

猫がどう答えようか迷っていると、

その瞬間、ブルースの箒が“ガタンッ“と

地面に倒れた。

その音でその場の全員が倒れた箒に注目した。

「痛てて…あ、お前ら!

俺の事忘れてんじゃねぇよ!」

それは、キャリーに隠れていたパンプが、

無理やり這い出てきた音だった。

そして、そんなパンプの姿を見た瞬間、

ブルースの顔が真っ青になった。

「あ、兄貴、これは違っ…」

「なんで()()()()()がここにいるんだ!

ブルース貴様!俺を売ったのか!」

レズは激昂して、パンプの元へと向かっていく。

「お、おい止めないと」

そう言う猫だったが、猫自身、

レズの圧に近づく事が出来なかった。

「兄貴!そいつは違うんだ!」

ブルースも必死に訴えるが、

レズの耳には入っていないようだ。

そして、レズがパンプに近づくにつれ、

周りの温度が徐々に上がっていくのが分かった。

それは気のせいではなく、まるで焚き火の前に立っているかのような()()が、

猫達を襲った。

「熱っなんだこれ、一体何が起きてる!」

猫は顔を覆って熱風を避けるが、

レズに近づくにつれ、それは耐えられないほどの

高温が猫の皮膚を襲う!

「猫!ダメだ近づくな!

兄貴は『()』の魔法使いなんだよ!」

ブルースがそう言った瞬間、レズの頭から、

メラメラと燃え盛る(ほのう)が巻き上がった。

「帝国が俺に、何の用かって聞いてんだよ!」

猫達は近づけないが、レズはどんどんとパンプへと

近づいてゆく。

「いや、俺は、違っ!」

パンプも後ろへ逃げてはいるが、

もうすでに熱風はパンプの元へ降っている!

「やばい!どうにかしないと!

パンプが殺されちまう!

おいブルース!お前の兄貴だろ!

なんとかならないか!」

猫は自分ではどうにもならないと判断し、

情けない事を自認しながらも、ブルースに頼った。

ブルースもどうすればいいか考えているようだ。

「こうなった兄貴を止めるには、

アイツの体温を一瞬で冷やす必要がある」

だが今のレズに近づいて、水をかけるなどの行為は

不可能だ。熱でみんな溶かされてしまう。

その瞬間!猫はあるものを見つけた。

「これは!ブルース、これ使え!」

それは家の敷地内に、奇跡的にも置いてあった

『杖』だった。

使えるかどうかは分からないが、

今この状況を切り抜く鍵だと、猫は感じ取った。

「どうしろって言うんだよ!」

ブルースは考えの読めない猫に言い返すが、

猫は自分の頭を指差す。

「それで俺の『殺意(考え)』をレズにぶつけろ!」

迷ってられなかった。

もうレズはパンプに掴み掛かっている。

「あ、熱い…」

燃え盛るレズにパンプは抵抗出来ず、

苦しそうにもがいている。

「愚かな帝国の子供よ、焼き殺してやる」  

ブルースに選択の余地はなかった。

「…ん?……そうゆう事か!」

だが、猫の殺意を読み取った瞬間。

猫のやりたい事が殺意を通してわかり、

ブルースは杖をレズに向けた!

「兄貴!『溺れろ』」

そうブルースが言い放った瞬間!

レズの体から“シュー“と湯気が立ってゆく。

「何しッ!ゲホッ」

なんと、レズの体の穴という穴から水が溢れ出し、

身体中の炎を鎮火してゆく!

ブルースはレズをその場で溺れさせたのだ。

猫は頭の中で、レズが溺れて死ぬ“妄想“をした。

さらに、猫はレズを本気で殺そうなどとは考えて

いないので、本質的な殺意はなかった。

ブルースはその妄想と“少量の殺意“が合わせ、

殺さずとも猫の妄想を実現化する事に、

成功したのだ。

レズは大量の水を吐き出すと、

体中の熱は空気中に消えてゆき、

その場で倒れ込んだ。

「おい、大丈夫か!」

パンプは軽い火傷をしていたが、

命に別状はなさそうだった。

「あ、危なかったぁ、」

パンプは腰が抜けて動けない様だ。

「兄貴!」

ブルースはすぐにレズに駆け寄った。

死なない様にしたとは言え、危険な魔法を

実の兄に使ってしまったのだ。

心配になるのも無理はない。

ブルースの魔法でレズは窒息したようだが、猫が最小限に殺意を抑えたおかげで死ぬ事はなかったようだ。

「猫、助かったよ、ありがとう」

「いいよ別に、それよりこれからどうするよ、

目が覚めたら、また燃えだすんじゃないか?」

二人は“確かにそうだ“と、頭を抱えた。

「…これは俺の説明不足の問題もある。

起きたら二人でちょっと話し合うよ。

とにかく皆んな、中に入ろう」

ブルースはレズを抱えて、

猫達と共に小屋へ入っていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜レズの家〜

外観はただの小屋だったが、中に入ると、

そこは小屋とは思えないほどに広く、

一軒家と同じ大きさを誇っていた。

猫とパンプは目の前の適当な椅子に座ると、

レズを運ぶブルースを見送った。

「災難だったなパンプ」

「…仕方ないさ、俺は帝国出なんだもん」

レズに殺されかけたパンプだったが、

自分が悪いとばかりに俯いている。

そんな様子を見て、猫は哀れにも連れてこない方が良かったかなと、自身の行動に後悔した。

猫は世の中を全く分かっていなかった。

何年も引きこって、まともに情報を持ってないくせして、教団時代の記憶から物事を進めて、

種族同士の対立や差別も考えず、

パンプを連れてきて、現に問題を起こした。

これは猫に責任があったとも言える。

(護衛と言って連れてきたが、 

実際は俺のエゴだったのかもな…

アレは()()()に似すぎてんだよ)

「……なんだよ」

「アッなんでもない」

猫は気づかぬ内にパンプを凝視していた。

「やっぱり…俺は着いてくるべきじゃなかったな、

普通に考えて、魔法使いに帝国の人間を

受け入れろなんてのが、非常識だった」

パンプも猫と同じ事を考えていたようだ。

「深く考えすぎるな、

今ここで悩んで解決する問題じゃない」

猫は自分自身に言い聞かせる様に、

パンプを慰める。

二人の後悔の念が小屋の中に漂っていた。


〜白零姦連合基地〜

「ここは…」

シナモン達は盗まれた頭蓋線を追っていた。

頭蓋線の位置情報をモニターに映し出すと

そこには、猫達の向かったはずの、

『オルフォルニア区』の郊外が映し出された!

「まさか、魔法使いに盗まれたのか!?」

魔法使いが多く住む教区なので、

その可能性は高かった。

だが、遠く離れたB地区にまで、

わざわざ盗みにくるのも、またおかしな話である。

「困ったな…猫へ伝える手立てもないし…

ん?待てよ、パンプなら頭蓋線の事知ってるよな。

アレだけのデカさだ、

もし見かけたら取り返してくれるんじゃないか?」

(そんな上手くいくわけないだろう)と

シナモンは心の中で感じていたが、

少しだけその可能性に希望を感じていた。

なぜならそれ以外に手はないからだ。

「アイツに賭けるしかないか…」

二人はモニターを眺め、無謀な可能性に

心を寄せた。

「でも、一体どうやって俺達に気づかれずに

頭蓋線を盗めたんだろうか…」

そうシナモンが呟くと、ジャックは“そういえば“

と何かを思い出したのか、シナモンに目を合わせた。

「盗まれた時、何故かわかんないけど、

ガレージの監視カメラとか、

全部()()()になっててさ。

俺達いつもこのモニターにその映像写してるけど、

濡らしてる様子なんてなかったよな」

ジャックは作戦室の巨大モニターを指差しながら、

頭を傾げた。

「一瞬で俺達に気づかれずに、

全ての監視カメラ壊したって事か?」

“多分…“と自信なさげにジャックは肯定する。

「……」

二人は何も出来ない悔しさと、謎の窃盗犯の怒りを

着々と募らせるのだった。


〜オルフォルニア区・郊外〜

気絶したレズの起床を二人は待っていると、

奥の部屋から、鼻を押さえているレズが猫達の

前に現れた。

(被り物の上から鼻抑えても意味無いだろ)と

猫は怪訝な顔をするが、

パンプはレズを見た瞬間に身体を緊張させた。

おそらくさっきの体験が、

余程恐ろしかったのだろう。

「…」

レズは猫達を見るなり、気難しい表情をした。

「兄貴!」

そんな様子を見かねたのか、

ブルースはレズの背中を叩いた。

「いつまで意地張るんだ!

さっきさんざん説明して、お前も納得したろ!」

「お、おい、ブルース…」

怒鳴り散らすブルースを、

猫は制止しようとしたが、勢いに圧倒されて

小さな声しか上げることができなかった。

すると、遂にレズが声を上げた。

「……さっきは見苦しいものを

見せてすまなかった、それは謝罪する。

だが、パ…ンプとやら、貴様は此処がどこか

分かってきているのか?

いくら亡命者といえど、

敵地に乗り込んでるようなものだぞ」

言葉には魔法使いとしての怒りが含まれていたが、

レズの目は帝国への憎しみの感情より、

パンプへの心配の感情が優っている気が、

猫にはした。

「ごめんなさい…」

ここで初めて、パンプは子供らしい姿を見せた。

先程の騒動で自分の行動の軽率さに

気づいたんだろう。

「まぁそう言うなって、パンプには俺達の護衛として着いてきてもらってるんだ」

猫はパンプから着いていきたいと言った事をあえて伏せ、あくまで護衛という情報を強調した。

するとレズは何も返さず、

やはり気難しい顔をしている。

「そうかい…猫、お前もだからな。

帝国派じゃないとは言え、

元教団なんて肩書き、

名誉でもなんでもないからな」

厳しい口調でレズは猫にそう告げると、

猫は言い返す事もできず、何もいえなかった。

すると、レズは猫達に原初の目的を尋ねた。

「…とりあえず、お前らは俺にブルースの杖を

作って欲しいって事で此処に来たのか?」

猫が“スンッ“と頷くと、レズは首を振った。

「悪いんだが、今は難しい」

「は?どうゆう事だよ兄貴、」

予想外のこたえだったのか、

ブルースが少しキレ気味に聞き返すと、

レズは“ハァー“とため息をついた。

「ストックしてた杖の素材を、

最近教団に徴収された。

顧客の一人がチクったせいで、

作るための道具も全部な」

杖というものは、

魔法使いに攻撃の手段を与える物、

つまり、反逆を可能にしてしまう物なのだ。

政府や教団にとって、

それは家畜が家畜でなくなる()()でもある為、

現在は教区別で杖の使用と所有が禁止されている。

「でも、杖の一本もない事もないだろ?」

ブルースがそう言うと、

レズはブルースを睨んだ。

「確かにない事はない。

だが、魔力を込めて使える杖はお前らが壊した」

レズが暴走した時、猫がたまたま見つけた杖が

最後の一つだったらしい。

「ほら、これ見ろ」

レズは猫達の目線に合わせて、

杖を手に持った。

その杖は所々がひび割れて、

青い煙がひびから、漏れるかの様に溢れている。

「杖っていうのは繊細な物なんだ。

使うには魔力に慣れさせる必要がある。

通常は少量ずつ込めて、慣らしていくが

お前はいきなり大量に詰めた」

「だってそれは兄貴がッ…」

ブルースが反発すると、

レズが“黙れ“とブルースの口を塞いだ。

「分かってる、俺を止めなきゃコイツは

焼け死んでただろう。

仕方ない事だが、杖を作れない事も事実だ」

そう言うと、ブルースは静かになった。

「ん?でも、ブルースお前、

ゴミ屑から杖を作ったとか言ってなかったか?

素材さえあれば、作れるんじゃないか?」

猫は小人達の死体を見ていた時の

ブルースを思い出した。

彼は自分の杖が壊れた際に、

〈ゴミクズから作った〉と言っていた。

全員の視線がブルースへと集まる。

「あれは…」

「確かに自力で杖は作れる」

ブルースが何か言いかけた所を、レズが横切った。

「だがそれは、沢山の()()を必要とする」

「ぎせい?」

するとレズは杖の設計図らしき紙が貼ってある、

壁紙を指さした。

「杖にも多くの種類がある。

使い切りの物だったり、

一つの魔法を強化するものだったりな。

でもそれらはそれぞれで作り方と素材が違う。

正しい方法で正しい物を使わなきゃ、

魔力が暴走して命に関わる。本題に入ろう。

お前が今言っている作り方は、

()()とされる作り方だ」

レズはブルースを見ると、ブルースは顔を背けた。

「捕まっていたとは言え、あれだけは手を出すなと、いつも言っていたのにな」

レズは少し落胆したような表情で、

ブルースに言い放った。

「一体、何が禁忌だって言うんだ?」

分かっていない二人はレズの話に、

ちんぷんかんぷんになっている

「……それは人体から作り出す方法だ」

「人体から…?」

人体、つまり人の体から作り出すという事

だが、少なくともブルースは五体満足だ。

どうゆう事だろうと猫は首を傾げた。

「元々、杖の元となる素材は、完全に生命の

エネルギーを失った物に限られる。

魔力は他のエネルギーと融合すると、

そのエネルギーを食い尽くして、

更に膨張する。

この膨張した魔力を『不純魔力(ふじゅんまりょく)』という。

これは名前の通り、不純物が入り込んだ魔力という事で、魔法としての役割は無くなり、

完全にエネルギーの類として変わってしまう。

それを防ぐ為には、何の生命力のない、

木の枝などを使って作らないといけないんだが、

それを生物の肉体で作る作り方だ」

レズの言ったこと全てを頭に入れたわけではないが、大体は分かったようで二人とも

“うんうん”と頷いている。

「つまり、ブルースの使ってた杖は、

誰かの死体って事か?」

「そうだ…これがなぜ禁忌なのかと言うと、

人の肉体には、生命エネルギーの他に(たましい)が入っている。

魂は血管のように体中を巡っていて、

仮に腕を切り取ったとしても、その腕には

ソイツの魂が抜けることなく宿り続ける。

さっきも言った通り、

魔力と他のエネルギーがぶつかると、

魔力の性質上、それを食い尽くしてしまう。

それで魔力が魂を喰らうと、

魔力と融合して魂が自我を持つんだ。

つまり、杖が自我を持つって事だ。

なんで、自力で作れるかっていうと、

木などで作る場合には、母体となる木の他に、

魔力を魔法に還元する特別な器具である、

血駆(ちく)』というものが必要だ。

だが、肉体の場合はさっき言ったが魂がある。

その魂が血駆の役割をしてくれるから、

特別な道具が要らないんだ」

パンプは首を傾げた。

「じゃあ、それのどこが禁忌なんだ?」

説明口調だったレズは急に真剣な顔になった。

「杖という物は本当に危険な物で、

所有者には、徹底した管理が求められる。

だが自我を持った杖が魔力を持つと、

所有者の許しなく勝手に魔法を発動し、

無差別に人を傷つける事になる」

猫は基地での騒動を思い出した。

ブルースは杖が暴走して、小人を殺したのだと言っていたが、つまりそれは、

自我を持った杖が()()()()()で、

小人達を殺したという事だったのだ。

「なるほどな、基地でのあれはそうゆう事か」

そう猫が呟くと、ブルースは不貞腐れたかのように押し黙っている。

「つまり、やっぱり杖は作れないって事か?」

レズは少し考えた後、首を振った。

「確証は出来ないが、

素材さえあれば作れない事も無いぞ」

それを聞いて二人は安堵した。

このまま杖が出来なければ、ブルースが

何も出来ない木偶(でく)(ぼう)になってしまうと、危惧していたからだ。

「本当か!じゃあ素材さえあればいいんだな、

何処にあるか教えてくれ、買ってくるよ!」

猫がそう言うと、レズは怪訝な顔をした。

「何バカな事言ってんだ、

買うとかのレベルじゃねぇんだよ」

急に罵られて猫はビックリしたが、

どうゆう事かという疑問が、思考を上回った。

「どうゆう事だ?」

「……まずもって杖の素材は、

普通には手に入らない、自分で作るか、

教区長(きょうくちょう)に許しをもらって、

貰うか。

だが、そのどちらも今すぐには無理だ。

さっき言った様にエネルギーを抜くには、

何年と時間がかかる。

俺がストックしたのもお前らが壊したし、

すぐには無理だ。

そして、教区長に頼むと言っても、

俺や反教団のお前らが行っても貰えるわけがない」

「じゃあどうしろって言うんだ?」

少しキレ気味に猫が聞くと、

レズは猫の方を向いた。

「猫、お前元教団とか言ったよな。

その印があれば、教団として受け入れて

貰えるかもしれない、確証は出来ないが」

レズがそうゆうと、

ブルースはレズの前に立った。

「ちょっと待てよ兄貴、

もっと()()()()があるだろ」

猫達はその方法とやらは分からなかったが、

レズにはわかったようで、食い気味に答えた。

「今更無理に決まってるだろ…

何年前の話だと思ってるんだ」

「だが、確証無し仲間を危険に晒すより、

こっちの方がまだいいだろ!」

レズが怒るとブルースもヒートアップし、

二人はお互いに怒鳴りあっている。

「目を覚ませって、もう俺たちはそんな事が

できる()()じゃないんだよ」

そうレズが言うと、ブルースは一瞬怯んだ。

だが、何かに縋るようにレズへ意地をはる。

「…分かってる、

だが、やってみないと分からないだろ」

レズは無慈悲にも首を振る。

「一度頭を冷やせ、杖は今は無理なんだって、

タイミングが悪かったんだよ。

素材なんて言い出した俺も悪かった、

だから変な気を起こすんじゃない」

猫達第三者からして、ブルースが何をそんなに縋っているのか、それは分からなかった。

だがその必死さから、

横から口を挟むことなんて、不可能だった。

「この際、俺一人で行ってくる!

上手くいくかは分かんねぇけど、

元々は俺の問題だ。俺のことは俺が何とかする」

そう言ってブルースは外へ飛び出すと、

箒、一直線に走り出した。

「おい!待て!」

レズの制止虚しく、

ブルースは迷いなく箒に跨った。

「悪いな、兄貴」

そのままエンジンをかけると、

ブルースは振り返ることなく、

魔法街ゲルストへと行ってしまった。

一足遅れて、猫達も小屋の外に飛び出したが、

ブルースはすでに空の彼方へ、

飛んでいってしまっていた。

レズは、飛んでゆくブルースを見ながら、

立ちすくしている。

「いきなりなんなんだ?」

猫がボソリと呟くと、レズは今まで見せた事のない、情けない表情で猫達を睨んだ。

「……」

レズは二人を無視して、

小屋の中へ入って行ってしまった。

「おい!レズ!どうゆう事か説明しろよ!」

猫達も追うように小屋へ入って行くと、

レズはうなだれた様子で座り込んでいる。

「お、おい……!」

猫が聞くと、レズは黙ってため息をつき俯いた

「……分かった……言うよ…

ブルースは…いや、俺達は元々、

トルコマン一家と同じ

魔法貴族(まほうきぞく)』だったんだ」


〜魔法貴族〜

魔法使いの中でも、優れた魔法を扱い、

数々の伝説を残した魔法使いを、

人々は『賢者(けんじゃ)』といった。

その賢者の血筋が入った子孫達を、

『魔法貴族』と呼ぶ。

魔法貴族のほとんどは、

始祖である賢者の魔法を引き継ぎ、

それを次の世代へと繋いでいく。

今、教団や帝国に支配されている、

魔法使いだが、魔法貴族だけは支配されず、

教団と同等の関係を結んでいる。



「そう……だったのか?」

ブルースは確かに強い魔法を使うが、

すぐに“そうなんだ“と受け入れられるはずもなく。意外な事実に猫は驚きと不審の感情を纏わせた。

「信じられないのも無理はない。

お前ら一般人の常識じゃ、賢者の子孫は

()()()()()だけだろうからな」

確かに猫達が知っている魔法貴族は、

司蒼教の一人でもある『ラージ・トルコマン』

率いる、トルコマン一家だけだ。

それ以外の魔法貴族は猫も聞いた事が

なかった。

「でも、魔法貴族だから、なんだって言うんだよ」

「……」

するとレズは言いたくないのか、言えないのか、

迷いを体現したかのような顔で押し黙った。

「悪いが詳しくは話せない…

だが、ブルースはおそらくゲルストの教区長、

『アカロフ・トルコマン』に

会いに行くつもりだ。

このままアイツを行かせても絶対に犬死する。

だから…ブルースを一緒に連れ戻してくれないか?俺一人じゃアイツを止められない」

レズは弱々しく猫達に頭を下げた。

あれだけ敵視していた猫達に頭を下げるとは、

相当ブルースを心配しているのだろう。

猫はそんな様子のレズを見て、

断れるわけもなかった。

「まぁ、別にいいけど…連れ戻すったって、

俺はゲルストに行ったこともないし、

第一に行く足がないじゃないか」

猫がそう言うと、レズは“安心しろ”と言わんばかりに部屋へ戻ると、両手で何かをもって

猫達の前に現れた。

(ほうき)なら俺も持ってる、これを使おう」

レズが持ってきたのは、

柄の長い、文字通りの箒だった。

ブルースがバイクを箒と言い張るので、

猫達も麻痺していたが、実際に目の前に箒が

出てきて、形状を思い出した。

「……わかった、

俺達もブルースがいなきゃ困るしな」

パンプも猫に合わせて頷いた。

「ありがとう、じゃあ行くか!」

三人は決意を固めると、ブルースの向かった、

魔法街ゲルストへと、進むのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜魔法街ゲルスト・バーンハーデン城〜

広々とした豪華な内装に似合わない、

薄汚れた一人の魔法使いが、一人の男に跪いた。

「『アカロフ』様、報告です。

白零姦から頭蓋線を盗む事に成功しました」

そう男が告げると、

()()()()と呼ばれた男は、ニヤリと笑った。

「よくやってくれたわ、『アラビアンヨーグルト』

これで恵比寿(えびす)様もお喜びになるはず…

で、どこに隠してあるのかしら?」

アラビアンヨーグルトと呼ばれる魔法使いは、

これまた自信ありげに、胸を張って教区長へ

呟いた。

「郊外の()()()()です。

あそこは奇天烈な噂が飛び交う所だ。

誰も近寄らんでしょう」

満足した答えを得たのか、

男はまた笑みをこぼした。

「フフッ良かったわ…ん?あれ何かしら」

アカロフは、自分の背格好超える程の窓の外に、

黒いメタリックなボディを持つ『箒』が

飛んでいることに気づいた。

普段、箒で飛んでいる魔法使いなど、

夏に群がるハエぐらいの感覚で見ていたが、

それは一際目立った存在だった。

「不思議ですね、この街にあんな派手な箒などあったでしょうか?」

そうアラビアンヨーグルトは箒の方に釘付けになっているが、アカロフは乗っている男の方が、

気になっているようだった。

「まさか“ブルース“…かしら、

でも、そんな筈はない…

彼は今キャンプ・タワーにいるはずもの」

だが、オカマの目にはしっかりと、

ブルースの姿が見えていた。

「彼とは一体…どんな関係で?」

アラビアンヨーグルトが聞くと、

アカロフは食い気味に答えた。

「元恋人よ」

アラビアンヨーグルトは一瞬だけ、目を見張ると

“へ、へぇ“とだけ、相槌をうつ。

「どう……なさいますか?」

「決まってるわ」

アカロサは今までにない大きな笑みを浮かべ、

城の外へと向かっていくのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜死聖区堂・大聖堂・食堂〜

教祖に呼びだされ、

集められた五人の司蒼教だったが、

約束の時間になっても一向に教祖は現れない。

司蒼教の一人が心配になって様子を見に行ったが、

そいつさえも戻って来る事はない。

徐々に不穏な空気が漂って行く中、

豪華な料理は時間とともに、冷めていった。


「ちょっと、おかしくないか?

いくら教祖様が遅刻なさるとしても、

それを呼びに行った、アイツまで来ないなんて…

もしかすると…」

そうフェニが言うと、残り三人も同じ事を思って

いたのか、“うーん“と唸るような声を出して、

この現状の不可解さを嘆いている。

その瞬間だった。

食堂の扉が“コンッコンッ“と叩かれたのだ。

その場全員が扉へ注目する。

返答を待たず、扉は“ギギィ“と木の軋む音を、

奏でながらゆっくりと隙間を見せ、

一面先の人物を少しずつ露わにしてゆくのだった。


〜オルフォルニア区・ゲルスト郊外〜


猫達はレズに連れられ、

箒に乗ってゲルストへ向かっていた。


「いやーブルースの箒で麻痺ってたけど、

実際、箒ってこうだよな」

跨って宙を浮く箒に猫は呟いた。

「落ちそうなのは変わらないけどな!」

パンプが猫に必死そうに掴まりながら、

愚痴るように吐き捨てている。

そう猫達の話を聞くと、

レズは少しだけ声に笑の色をつけ、話始めた

「ハハハ、ブルースのがおかしいだけだ。

アイツ、あの箒買うためだけにわざわざ、

血栓唐納(けっせんとうのう)王都跡地(おうとあとち)まで行ってたしな。

俺はそうゆうバイクとかよくわかんないけど、

よく行くよあんな所」


〜王都跡地〜

教団と政府の戦争に巻き込まれて崩壊した、

元王都『ハボフィールド・ヒートパンツ』の跡地。

地王が教団に侵食される前、

かつて大陸は二つの勢力によって統治されていた。

『国王アイロ・パンツ』による王政勢力と

『地王政府』の政府軍だ。

元は王の下についていた政府軍だったが、

“一人の男“の反乱がきっかけで二つの勢力として

別れてしまった。

その後、政府軍はみるみる力を増して、

王政勢力を圧倒し、逆に政府軍の手の元で

支配した。

その後教団が攻めてきて、

王都は壊滅、政府軍も力を失った。

だが、その王都の跡地には、王の財産なのか、

沢山の貴重な品が売りに出され、

今では大陸一番の商売国となっている。

だが、辺りが戦争をやっている激戦区なので、

地王の民にとって、最も危ない国としても有名だ。



「へぇ〜そんなとこまで行ったのか、

でもまぁ確かに、あれだけ立派な物は、

王都跡地ぐらいにか置いてないか…」

ブルースは自分の嗜好品の為だけに、

危険な王都跡地まで足を運んだ。

それだけ、あの(バイク)には()()か、はたまた()()()()があるのだろう。

だが、そんな事より、猫にはレズに聞きたい事が

あったのだった。

「というか、なんであんなにブルースは必死なんだ?魔法貴族ってのはわかったけど、具体的に

アイツは教区長となんの関係があるんだ?」

するとレズはまた、眉をひそめた。

「あんまり言いたくないんだが……

手伝ってもらってる身だしな、教えてやる。

だが、この事は誰にも言うんじゃないぞ」

「分かったって、で、

一体どんな秘密があるんだ?」

急かすように、猫が言うとレズはため息をついた。

「……ブルースは、()()()()じゃない」

思いもよらない事実に猫は口をポカンと開け、

頭の中で今の言葉を再ロードした。

だが、何度やっても言葉の意味は、

理解出来なかった。

するとレズは片方の手で目を覆うと、

ため息をついた。

「本当に誰にも言うなよ…

……ブルースは、ブルースの()だ」

今度は二人共に動きが止まった。

だが、箒はちゃくちゃくと、

ゲルストへと向かうのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜死聖区堂・大聖堂・食堂〜

扉の空いた先には、ずっと待ち望んでいた()()が腰を屈めて、佇んでいた。

「すまない、手伝いの信徒も呼べなくてな、

少し来るのに時間がかかってしまった」

そう教祖は辛そうに語ると、

司蒼教達は一斉に教祖へと駆け寄った。

「教祖様!その様なお身体で……

気の効かず、申し訳ございません!」

(((申し訳ございません!)))

他の司蒼教も深々と教祖へ頭を下げた。

それは恐怖心からでも、言わされているわけでもなく、純粋なる()()の心からの謝罪だった。

「頭を上げなさい、貴方達も忙しい中、

この様に時間を無駄に盗ってしまった。

私の方から謝らせてほしい。

申し訳なかった」

教祖は威圧的な態度を取るでもなく、

逆に遅れてしまった事を彼らへ謝罪した。

司蒼教達は“とんでもないです“と教祖を椅子へと、

誘導すると、これまた丁寧に椅子へ座らせた。

「ありがとう、それでは改めて話を…」

教祖は椅子に座って話を始めようとした。

だが、目の前の光景を見て、

何か足りない事に気づいた。

「『月城区(げつじょうく)

司蒼教『ガーリックハート』は欠席か?」

名前を聞いて、他の司蒼教達は思い出した。

“ガーリックハート“とはさっき教祖を呼びに行った

司蒼教の事だ。

「あ、ガーリックハートは今さっき教祖様を

呼びに行って…」

そう言いかけた、その瞬間!

食堂の扉が“ドカンッ!“と

大きな音を立てて、崩れ去った!

またもや教祖を含む全員が、扉へ注目すると、

砂煙の中に 、真っ黒なコートを着て、

大きな()()()()

被り、手に何か大きな何かを()()()()()

何者かがテーブルに座る全員を見ていた。

「会いたかったぞ、教祖よ」

そうカボチャ頭は食堂へと入ってきた。

すると、扉から一番近い席に座っていた、

ハージジャンプが痙攣するかの様な声を上げる。

「おおままえ!それれはは!わわがどうし!」

そう叫ぶと、カボチャ頭はその司蒼教の目の前に

手に持っていた()()を投げ捨てた。

「さっきバッタリ会ってね、

軽く()()しただけだよ」

冷めた料理を蹴散らしながら、

投げ捨てられたそれは、

身体中に痛々しい暴力の()が残り、

指が全て切り落とされた“ガーリックハート“だった。

「何故こんな…大丈夫か!?ガーリックハート」

大丈夫なわけがなかったが、

微かにガーリックハートは、息をしているようだ。

だが、両手両足、そして首から生えて手も全て、

指がなくなっている。

「何のつもりだ、『恵比寿(えびす)

何故ガーリックハートにこんな事をした」

教祖が恵比寿を睨む、

だが恵比寿はそんな教祖を嘲笑った。

「ちょっと話を聞かせてもらっただけだよ、

何か隠してるみたいだったからなぁ…

だが、驚いたよ、我が帝国を“罪国(ざいこく)“にしようとするなんて…」

馬鹿にしているのか、真面目なのか、

どちらとも取れないそのカボチャ面はその場の、

司蒼教の皆の勘に障った。

「じゃあ聞かせてもらうが、

何故キャンプ・タワーに攻撃した?

教団の建物を傷つけるならまだしも、

大量の鉄肉兵器を送り込んで、信徒を全滅させ、

挙句の果てにミサイルを飛ばして崩壊させた。

これが罪に問われないとでも思ったのか?」

教祖は、被り物で見えないが、

怒りを感じさせる声で恵比寿へ問うと、

恵比寿は急に真面目な態度に変わった。

「分からないか、()()()()だよ、

我々『カボチャ帝国』は、

教団から退()()させてもらう」

ハージジャンプが予想した通り、恵比寿は、

教団の退団を教祖の目の前で宣言した。

だが、教祖も薄々分かっていた様で、

あまり驚いてはいなかった。

「いつか…こんな時が来ると思っていたよ恵比寿

お前とは一生、分かり合えない運命なんだな」

恵比寿は弱々しくも立ち上がる教祖に、

堂々と足音を“コツコツ“と奏でながら、

教祖へと近づく。

「『七十号』と『六十五号』も、もちろん退団だ…

『ブルースカート』…これは信徒としてでなく、

()()としての言葉だ、よく聞け。

お前のやり方はいずれ、()()()()()()()()………」

恵比寿の言葉に、教祖は何も言わない。

もしかしたら、何も言えないのかもしれない。

「…………次会う時は、戦場だ。

勝った方のやり方で、この大陸を変える。

それまで、せいぜい長生きしろよ」

恵比寿は最後にそう言うと、

他の司蒼教に見向きもせず、自分が壊した扉から、

堂々と退席した。

その様子にその場の誰もが、

一言も発することは、出来なかった。

そのまま淡々と時は流れ、誰も動くことはしない。


誰も口をつけていないその料理は、

すでに、冷えきっていた。



































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ