生まれも育ちも家畜小屋 ~第陸話~
~不自然な物音から猫、シナモン、ブルースは小人たちのいる部屋へと向かった。
するとそこには、無残に死んだ小人の死体と”壊れたブルースの杖”が残っていた~
小人たちの死体を見ると、何か硫酸のようなものをかけられたのか、
体中が焼け爛れ、引っ張ったらきれいに全部剥けそうなほど皮膚がはがれていた。
「これは一体…あ、ジャック!無事か!?」
シナモンが真っ先にジャック達に駆け寄ると、
かすかに息はしているようで外傷もない
様子だった。
「これってお前に『杖』だよな?」
青黒い煙を上げるその杖の残骸を猫は指差すと
ブルースは頷く。
「あぁ、そうだな、確かに俺の杖だ…」
そう言うと、猫は眉をひそめる。
現場からしてら、ブルースが殺ったとしか思えないからだ。
だが、そんな猫を置いて、
ブルースは小人たちの死体を漁り始めた。
「…やっぱりあった」
ブルースは小人たちの懐から”小さな小瓶”を
取り出した。
中には透明な液体が入っているようで、
ブルースはおもむろに瓶のふたを開けると、
その中身の”液体”を小人の死体に少し垂らした。
すると、死体に液体が触れた瞬間”ジュッ”と肉の焼ける音と白い煙が宙を舞った。
「やっぱりだ、こいつら俺たちに硫酸をかけて殺すつもりだったらしい…しかも手足が切断されてる、
多分俺たちを身動きがとれない状態にしてから殺るつもりだったな」
ブルースは一人で推理して、一人で納得しているが猫にはさっぱりだった。
「なんでそう思うんだ?俺には全く理解できない」
普通こんな死体を見つけたら、死体だった奴らが自分たちを殺そうとしていたという発想には至らない。
すると、ブルースは自身の壊れた杖を指さした。
「俺の杖に”たまってる魔力”がこいつらの『殺意』に反応し、操る俺がいなかったから暴走しこうなった、俺の魔法は『殺意を操る』魔法だからな」
~杖~
魔法使いから出る魔力を込め、
それを操ることができる。
魔力はエネルギーの粒子のようなもので、
ただ空気中に放出しても分散し扱うことが、
困難だが、杖に込めることで魔力を凝縮し、
杖の先端から凝縮した魔力を、
放出することができる。それを『魔法』という。
魔法使いによって出せる、魔力の種類は異なるが
一度魔力が込められた杖は仮に魔法使いでなくとも、自由に使うことができる。
「確かに、そうだな…でもいいのか?
杖はお前の必需品だろ?」
ブルースは自分の杖が壊れたことに、
あまり関心がないようだった。
「あの杖はまともな素材で作ってないから、
使いにくくてさ…
ちょうど『兄貴』に作り直してもらおうと思ってたんだ、俺の兄貴は『杖職人』だからな」
まともな素材だの、杖職人だの、
猫には分からなかったが、
とにかくブルースの杖はどうにかなるらしい。
すると、猫たちの会話にシナモンも参入してきた。
「それなら、早いところ作ってもらいに行ってくれ、こっちは俺が処理しておく、
猫、ついでにお前もついていけ、
ブルースが襲われたら戦えないからな」
猫は頷き、ブルースと供に部屋から出て行こうとすると、シナモンに呼び止められた。
「言っておくが!自らが戦闘の引き金にならないようにな!」
シナモンは猫に念を押し、それに猫は頷く。
「分かってるよ!じゃあ行ってくる」
シナモンを背に二人は部屋の外へと歩いて行った。
―――――――――――――――――――――
二人は基地内の廊下を、歩きながら話していた。
「そういえば、パンプを見てないな…
トイレにでも行ってるのか?」
“さぁ?“と猫は両手を上げ、お手上げのジェスチャーをした。
するとタイミング良く、
廊下の角から丸いカボチャ頭が現れた。
「あ、噂をすれば」
パンプも猫達に気づいたのか、
少し駆け足で駆け寄ってきた。
「どうしたんだ?これからどこかに行くのか?」
猫は小人達が死んだ事と、
ブルースの杖が壊れたから作り直しに行くことを
伝えた。
「いつの間にそんな事が…」
パンプは驚いている様だ。
自分が少し席を外している間にそんな事があっては
驚くのも無理は無い。
「お前こそ、どこ行ってたんだよ」
ブルースがそう聞くと、パンプはブルースを睨んだ。
「お前に爆散された頭を取り替えに行ってたんだよ!」
「あ…アハハ、悪かったって」
ブルースは自分より年下の子に怒鳴られ、
しかも自分が悪い事なので、愛想笑いをした。
「ということで、俺らは今から行ってくるけど、
お前も来るか?」
「行く」
パンプは食い気味に答えた。
なんなら来るなと言っても、無理やり付いてきそう程、パンプは行く気満々だった。
「教会監獄で、
俺は猫の足手まといにしかなれなかった。
だから少しでも、俺はお前の役に立ちたい!」
パンプは猫の眼帯を見ながらそう言った。
キャンプ・タワーでパンプは、ほとんど猫に守られ、そのせいで猫に多大に傷までおわせてしまった。
出撃前にあれだけいきがっていた分、
パンプも責任を感じているのだろう。
「そういう事なら…ブルース、いいか?」
猫はブルースの顔を見ると、少し複雑そうな顔を
していた。
魔法使いにとって帝国は恨むべき
存在だ。
一緒に行動するのを否定的に捉えてしまうのも
無理は無い。
だが、パンプはその帝国からの亡命者であるから、自分達の味方側である事は間違いない。
だが……やはり簡単に承諾できる程、
魔法使いの恨みは浅くなかった。
「ん…」
ブルースは考え込んでる様だ。
その様子から猫はシナモンとブルースが、
話していたこと思い出した。
<帝国の人間はイマイチ信用できなくて…>
猫は簡単にパンプを誘ってしまったことを後悔した。
考え込むブルースに、
猫はパンプに聞こえないよう耳打ちした。
「俺とお前今武器がない、
戦えるのはパンプだけだ。
護衛と思って、一緒に行ってくれないか?」
猫がそう言うと、ブルースは少しだけ押し黙り、
何かを決意したのか、口を開いた。
「…いいだろう、ただしふざけたマネしたら、
その頭、もう一度粉砕してやるかな」
パンプは突然脅されて驚いたが、
一応承諾はされたので、「わ、わかった」と
少し情けない返事をした。
二人の距離はいかんせん、縮まることなく、
仲間とは思えない緊張状態にあった。
すると場の空気を表す様な、冷たい風が猫の
肌にぶつかり、猫は“ブルっ“と体を震わせた。
「寒っ」
ともかくパンプの同行が許され、
三人はブルースの兄の元へと向かうのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ブルースとパンプが一悶着あって忘れていたが、猫は大事な情報を聞いていない事に気づく。
「そういえば、
お前の兄貴はどこに住んでるんだ?」
猫がそう聞くと、ブルースも「あっ」と
言い忘れていた事に気づく。
「言ってなかったな、
今は『オルフォルニア区』の魔法街『ゲルスト』って所に住んでる、
まぁ、住んでるって言っても、戸籍がないから郊外の隠れ家でひっそり暮らしてる」
今の地王では、都市や町に住むにも教団の許しがいる。
貧困、または教団の禁止事項に逆らったものは、教区に入ることも禁じられ、
それで反教団に入るというケースが増えている。
ブルースの兄は、一族同士の結束の強い魔法使いでありながら戸籍がないという珍しいパターンだ。
「まぁ、そういう人もいるよな…
でも、帝国の管轄内に出向くのは少々危なくないかもな」
魔法使いの国のほとんどは帝国の植民地なので、カリティスに姿を見られた猫は、
帝国内で顔が割れている可能性があり、
さらにいえば猫は教団銃をキャンプ・タワーで落としてしまい、ブルースも杖がないので、
二人はほとんど丸腰で、自分で言っていたが、パンプに任せきりで敵地に乗り込むことになると猫は心配した。
だが、ブルースは余裕そうに笑う。
「オルフォルニア区は『トルコマン派』の管轄内だから大丈夫だ、
あの派閥は、唯一帝国と友好的な関係の魔法使い達だから、そんなに心配すんな」
~トルコマン派~
魔法貴族『ラージ・トルコマン』を司蒼教とする、魔法使いだけで構成された宗派。
宗派として別れてはいるが、魔法使いしかいないというだけで、教団の教えなどは同じなので、例外として許されている
「まだ、残ってたんだ.…てっきりなくなったと思ってた」
トルコマン派は猫が現役の時からある宗派なので、帝国の力が強くなった今、
猫はもうすでにトルコマン派は帝国の下についていると思っていた。
「ふーん…」
話を聞いていたパンプは少し複雑そうだ。
帝国を恨む気持ちは同じだが、
事実上パンプは帝国出身なのだから。
「とにかく行こうか、
俺は杖がなきゃ、ただの能なしだ」
〜白零姦基地・外駐車場〜
三人は外に出ると、宣教車の方を見た。
「ゲルストにはどれくらいで行ける?」
「車なら….…七~八時間くらい」
猫は困った顔をした。
なぜなら宣教車のガソリンが残り少なかったからだ。
ガソリン自体も青踏各区ではあまり出回ってない。
つまり、宣教車を使うことは出来ない。
そう困っている猫をみて、
ブルースは鼻で笑った。
「心配すんなって、
最初から車で行こうとなんて考えてないさ」
「は?じゃあ何で行くんだよ、徒歩か?」
半ギレの猫をよそ眼にブルースは空中に向かって、”パチンッ”と指を鳴らした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
だが、何も起きない。
「何したんだ?」
「いいから待っとけ」
不審そうに猫とパンプが空を見ているが、
ブルースは全く気にしずに空を見上げた。
「もうすぐだ…」
すると、ブルースの見上げている方向から、
何か”黒い塊”が見えた。
それは、秒が経つほどに大きくなり、
こちらに向かってきているのが分かる。
「あれはなんだ?」
異質な物体にパンプはブルースに尋ねた。
「まぁ見てなって、もうすぐ来るから…
お、ほらっ」
ようやく視認できる距離にまでくると、
黒い物体の全容が確認できた。
「あれは…バイク…か?」
なんと、空から飛んできていたのは、
黒いボディの“オートバイク“だった!
どうゆう事かと凝視していると、
そのバイクは凄い勢いで猫たちの元へ
墜落してきた。
「おいっ…落ちてくるぞ、お前何したんだ!」
猫が片手で頭を押さえ、もう片手でパンプを
庇うってその場から離れた。
だが、おかしな事にブルースは全く避けようとしない。
そして、ブルースの頭に追突する!と思われた刹那、バイクは空中で”ピタッ”と止まり、
ブルースを避けて、
地面にゆっくりと着地した。
「…一体何なんだ、それ」
猫に守られたパンプは、猫の手を退けて、
その落下物へ指さし、ブルースへ説明を求めた。
今のところ情景だけしか、
ブルースは教えてくれていない。
分かるのは、バイクということと、
空を飛ぶ特注品という事だ。
パンプとすっかり警戒心をといた猫を
置き去りにして、ブルースはいつの間にか
バイクにまたがっており、
エンジンをふかしている。
「俺の『箒』だ」
(バイクだろ)
どう見ても箒に見えないが、
猫は深く突っ込むことはやめた。
これ以上頭を使いたくなかったからだ。
~箒~
魔法使いの使う一般的な乗り物、原理は『杖』と似ていて、
自身の魔力を箒に流し、魔力を魔法としてではなくエネルギーとして噴出し、
空を飛ぶことができる。
形はどうあれ、箒と同じ役割をする乗り物は全て箒に分類される(車でもバイクでも)
猫とパンプはブルースに手招きされ、
後ろにまたがると、箒はまるで吊り上げられているかのように、ゆっくりと宙を舞った。
そして、ブルースがギアを上げると、
前輪が大きく浮き上がり、排気管から青い煙が大量に排出された。
箒に乗ることに少し抵抗があった猫だったが、乗ってみると、初めての感覚に胸が少し高鳴った。
「うおぉ!すごいな!」
「だろ?これだけが唯一魔法使いに生まれてよかったと思える理由だよ、本当に…」
箒はけたたましい騒音をまき散らしながら、雲を切り裂き、”赤”空をかけていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜青踏各区・B地区上空〜
風煽られ、猫は長くたなびく耳を抑えて、
地上を覗いた。
「おぉ…教会があんなに小さく見える…」
教団でもできなかった経験に猫は感動している。
反対にパンプは、
猫にしがみついて飛ばられない様に必死だ。
「おお落ちるって!まだ着かないのか!?」
「まだ、飛んで十分も経ってないだろ」
パンプは少しでも早く、バイクから降りる事を望んでいる様だ。
「でも確かに車より早いな、
箒ならどれくらいで着くんだ?」
ブルースは少し悩んだ後に答えた
「まぁ、三~四時間くらいかな…」
パンプは絶望していたが、車で七時を
三、四時間で行けるのは画期的だ。
「さすがに空を飛ぶと早いんだな、
こんなデカいバイ…箒、
どっから持ってきたんだ?」
猫にそう聞かれて、
ブルースは箒のボディを指さした。
そこには綺麗なボディには似合わない、
不細工な”傷”が刻まれている。
「見えるか?
ここに『レズ・アナロ』って刻まれてるだろ」
確かに傷を良く見ると、文字になっており、しっかりと『レズ・アナロ』と刻まれている。
「『アナロ』ってことはお前の兄貴か?」
ブルースは頷いた。
「キャンプ・タワーに収監されたとき、
兄貴が引き取ってくれてな…
まぁ、あそこに行ったら”死刑同然”だから、兄貴はこんな傷をつけたんだろうな」
反対のボディには『ブルース・アナロ』と刻まれていた。
恐らくブルースが死んだら、バイクと供に“心中”しようとしていたみたいだ。
「兄貴、いきなり箒が飛んでったんだから
びっくりするだろうな」
ブルースはイタズラに笑った。
すると、突風に慣れてきたパンプが、
顔をぴょこんと出して、
ボディの文字を見た。
猫達の話を聞いて気になったのだろう。
「いい兄貴だな…そういえば、
なんでブルースはキャンプ・タワーに
収監されたんだ?」
そう聞かれ、
ブルースは恥ずかしそうに頭をかいた。
「…“スピード違反”だ。
こんな殺人が当たり前の世に、
スピード違反で収監とは、情けないよ…」
国の中心が殺人をしまくっているのに、
庶民のブルースがスピード違反とは、
教団の理不尽さが目に見えてわかる実例だ。
「まぁでも、他にも理由はあっただろうな…」
「他の理由って?」
ブルースは悔しそうな表情を見せた。
「魔法使いの『魔臓』は”血二駆”の素材として使われるから、何かと理由をつけて帝国は
俺たち魔法使いを殺しまくってるんだ…
俺が収監されたのもそういう面があったん
だろうな…」
〜魔臓〜
魔法使いにだけ存在する、
魔力を供給する臓器。
いわば魔力を作り出す機関だ、
魔力は様々な用途で役に立つことから、
弱い魔法使いは殺されて魔臓を奪われるのは珍しい事ではない。
特に最近では、カボチャ帝国が、
魔法使いを殺す活動を活発にしている。
ブルースがそう話すと、パンプは何も返す事はできなかった。
自身の国が非道な事は理解していたが、
その非道の被害者を見るのは、
初めての経験だったからだ。
猫も帝国を批判する返しをしようと思ったが、そんなパンプの様子にどう返せばいいか、分からなくなってしまった。
そこで猫はシナモンのある言葉を思い出した。
「お前みたいな奴らを救うために、
俺たちがいるんだろ」
「……そうだな…暗い話して悪かった」
声量は低めだが、ブルースは微弱にも、
口角が上げたのが猫には分かった。
すると黙っていたパンプが、別の話題に
変えようとしたのか、
ブルースに問いかけた。
「そ、そう言えば、お兄さんは俺たちが来ることを知っているのか?」
「ん?兄貴か?知ってるぞ」
「通信端末かなんかで連絡したのか?」
文通にしても届くまでに時間がかかる、
考えうる選択肢には、通信端末以外を考えられなかった。
「国一つを跨げる通信装置なんてあるわけないだろ」
ブルースに一蹴されてしまったがその通りで猫は少しだけ恥ずかしくなった。
「そうかい、じゃあどうやって伝えたんだよ」
羞恥心からの逆ギレから、
猫は強めの口調で聞き返した。
「…俺と兄貴の『目』は”繋がっているんだ”」
急にブルースが訳の分かんないことを、
ほざいたので、猫は一言「は?」と返した。
「まぁ色々とややこしいんだけど、
簡単言うと、
俺の見ている景色が兄貴にも見えていて、
兄貴の見ている景色が俺にも見えているってことだ」
ブルースは一枚の紙を後ろポケットから取り出し、紙を広げると自身の顔の前に広げた。
「こんな風に俺が見れば、兄貴にも見えているから、簡単に情報を伝えあうことができる」
実際どうなっているのかは検討もつかないが、今まで見たことのない超常的な行動に
また猫は胸の高鳴りを覚えた。
「へぇーやっぱり魔法使いはすげぇな…
その紙、何が書いてあるんだ?」
猫が紙を見ると、そこには大層立派な
”ペニス”の絵が描かれていた。
それは、真っ直ぐ反り立ち、
亀の頭が猫にウインクしたのか、
そんな衝撃がこの一瞬で猫に与えられた。
そして、猫はすぐさま口から言葉を吐いた。
「お前、何見せあってんだよ」
するとブルースは“違う!“と
恥ずかしそうに“ペニス“の描かれた紙を
しまった。どうやら間違えたらしい。
「…間違えた」
ブルースは前ポケットからまたくしゃくしゃの絵を取り出し、目の前に広げた。
「こんな感じに文通じゃないけど、
文字を読み合う事で意思疎通を俺達は計ってるんだ」
さっきのひと茶番をなかったかの様に、
淡々とブルースは説明を続けている。
だが、猫は別のことに興味があった。
「で、一体何を見てるんだ?」
猫が食い気味に覗くと今度は紙に、
”ウ”ァギナ”の絵が書いてあった。
ビラビラが生々しく、
見ていて気分のいいものではなかった。
ペニスの絵から猫はある程度予想していたが、
やはりこれにはツッコミざるおえなかった。
「またかよ!なんでお前のポケットに男性器と女性器が二つ存在してんだよ!?」
またまたブルースは恥ずかしそうに
”ウ”ァギナ”の絵が描かれた絵をしまった。
「なんでまたしまうんだよ!
捨てろよそんなもん!」
「うっせぇな!いいだろ別に!思ったよりうまく描けたから持っときたいんだよ!」
「……?」
パンプだけが二人の会話に置いてきぼりだったが、箒は順調にゲルストへと進んでいくのだった。
一方その頃
~死聖区堂・大聖堂~
かび臭く、蜘蛛の巣があちらこちらに見える
『告解室』で一人の老人が黒いカーテン越しに、誰かと話している。
「今日の日暮に、
青踏各区の『キャンプ・タワー』が、
何者かに倒壊させられました」
老人がそう通告すると、
カーテンの奥から別の男が話し始めた。
「そうか…また反教団か?」
男は疲れたような、がっかりしたような声で聞き返した。
「反教団は関係していますが、
直接塔を崩したのは別のものです」
「じゃあ、一体誰が壊した?」
男は老人の次の言葉に注目した。
そして老人が息を吸うとゆっくり吐き、
言葉を放った。
「倒壊後、唯一動いた監視カメラにこれが…」
老人はカーテンの奥に、カメラの映像が見えるように押し込んだ。
そして男はカメラを受け取ると、
その映像を眺めた。
「…鉄肉か?なぜ、青踏各区に帝国に兵器が…」
カメラの映像には、大量の鉄肉と一体の鉄獄が、崩れた塔から出てくる様子が映っていた。
男は最初戸惑ったが、
すぐにその事実を悟ったようだ。
「どうなさいますか?」
男は老人にカメラを返し、老人の問いに答えた。
「今大聖堂にいる帝国派を集めろ、
そして『カボチャ帝国』を罪国とし、
裁判をかける。
そう帝国派以外の司蒼教に通告してくれ」
カーテン越しに老人は礼をした。
「申承りました。『教祖様』はどちらに?」
『教祖』と呼ばれた男はは立ち上がり、一言
「俺にはまだまだ、
やらないといけないことがある」
と言って、告解室から出て行った。
「お気を付けて、教祖様…」
教祖がいなくなって尚、
老人は頭を下げていた。
―――――――――――――――――――
~オルフォルニア区・旧ジョニー平野上空~
ブルースの操縦する箒に猫達はニケツし、
トルコマン派が管轄する、オルフォルニア区まで飛んできた。
教区境に入ると、
ブルースは箒を地面へと低下させていった。
「今から、”関門”へ行って身分証を提示してくるから、お前らはキャリーに隠れていてくれ」
教区の境こと『教区境』は教区ごとにそれぞれの身分証が必要で、それ無ければ無断入国となり、問答無用でキャンプ・タワーに送られてしまう。
だが、ブルースの提案を猫は断った。
「そんなことしなくても大丈夫だ、
俺も身分証くらい持ってる」
そう言って猫が見せたのは薄汚い『青い布』だった。
大きさはハンカチくらいで、
猫の履いている”白スカート”のポケットに、雑に詰められたからか、
くしゃくしゃでぱっと見ただのゴミだった。
「そんな布切れが何になるっていうんだよ」
ブルースの猫が自分をバカにしているように感じ、少しムカついたようだ。
「良いから見とけって」
猫は自信満々に布をもって、早く行けとばかりに合図している。
「俺は言われた通り隠れとくよ、子供身分証なんて作れないしな」
パンプはそう嫌味ったらしく言うと、
ブルースの言う通りにキャリーへ身を隠した。
「じゃあ、後で迎えに来る。
ブルース、さっさと行こう」
「お、おう」
(冗談でも、ここまで言うわけないよな…本当にあの布切れ、身分証になるっていうのか?)
身分証は教区ではない、『小教区』という、
都市よりも規模の小さい教区の教会に、
住んでいる住所と目的をいい、
それが受託されたら、
自身の”血液”と少量のミリ瓶(約一万二千円)を差し出すことで、受けとることができる、身分証自体、教団で精密に作られ、
身分証があれば意味なく殺されることもない。
だが猫は、あんなどこにでも落ちてそうな布切れで関門を突破しようとしているので、
ブルースが疑ってしまうのも仕方がなかった。
「分かった…だが、さすがに俺とは他人ってことで通ってくれよ」
猫が仮にでも捕まれば、ブルースもまたキャンプ・タワーに戻ってしまうので、
ブルースは猫を完全に信じる事にリスクを感じた。
だが、猫はあまり気にする様子はなく、
手っ取り早く終わらせたいと言った感じだ。
「別にいいぜ、じゃあ俺は先に行くわ」
猫は箒から飛び降り、
関門である”小さな教会”に入っていった。
〜数分後〜
猫が終わるまで待つつもりだったが、
ブルースはやっぱり気になり、
箒を地面に下ろすと、
入り口の扉の隙間から、猫の様子を覗いた。
~関門教会内~
猫は受付の信者に布を渡しているのが見えた。
ブルースの見る限りでは、受付は困ったような顔をしている。
(やっぱりだめじゃねぇか!
猫はどうゆうつもりなんだ!?)
ブルースは助けに入ろうと一瞬考えたが、
教会内には警備の信者に含め、
関門を通りたい一般人もいて、
武器のない二人が万が一逃げれても大聖堂に指名手配される可能性があり、
どうすることもできなかった。
そうブルースが思い詰めていると、
中から「失礼しました!」と受付が
大きな声で謝っているのが見えた。
(ん?なんだ?)
受付が猫に何度も頭も下げ、
猫は謙遜する様に、
手を前に出して制止している。
そして布を手渡され、
裏の方へと向かっていった。
関門で一度受理されると、通過したという
記録を残すために必要書類にサインが必要で
猫はそれを書きに行ったのだろう。
「一体何が…ってうわッ!」
ブルースは中をもっと見ようとすると、
誤って教会内に転げ入ってしまった!
衝撃から大きな音が出たので、
教会内の全ての人がブルースに注目した。
「い、一体何だね!」「やだ…魔法使いよ」
「野生の魔法使いか!?」
中の人々はブルースを見るなり、
ブルースに向かって差別の目と暴力の言葉が放たれた。
「いや、俺は違っ」
ブルースが弁解しようとするも、
見ていた警備信者達が一斉に
ブルースへと向かう。
「脱走した家畜です…直ちに確保を」
すると警備信者がブルースにの手と足を縛り上げ、逆さに釣り上げる。
杖のないブルースはされるがままに捕まってしまった。
「これくらいなら、
帝国からかなりの”髪”がもらえるぜ」
警備信者達が、まるで狩りでとらえた獲物を見るような目でブルースにを扱う。
「俺はただ…身分証を…」
ブルースがかすれた声で抵抗するが、
警備信者達にも、
中の一般人にすら届かなかった。
「お前らみたいな家畜に身分証もクソもあるかよ!」
そう言った警備信者はブルースのやせ細った体を蹴りあげ、地面にたたきつける。
「う“ぅッ」
蹴られた衝撃でブルースは、胃の中の物を
床に吐き出した。
「おのれ家畜!神聖な教会を穢す気か!
この場で殺してくれる!」
警備が倒れ込むブルースに、教団銃を構えたその瞬間!裏方向から誰かが走って来るような音が響いた。
「おい!」
それは、なんの騒ぎかと猫が戻ってきた音だった。
猫は銃口を突きつけられるブルースを見て、
警備信者達に大きな声を上げた。
「ブルースに何やってる!
そいつは俺の友人だ!」
猫がそう警備信者達に叫ぶと、警備信者達や一般人たちの顔が徐々に青ざめていった。
「ブルースが何かしたのか!」
猫の問いに警備信者の一人が
「教会内に侵入を…」と呟いた。
「じゃあ、そいつの目的は聞いたのか!」
猫の怒りの質問攻めは止まらない、
「み、身分証を…」「馬鹿ッ言うな」
今の警備信者達の会話で猫の怒りはマックスに近くなった。
「身分証なら客だろうが!
それとお前、今その事口止めしようとしたな」
お前と指さされた警備信者が冷汗が体中から噴き出した。
「名前と階級を言え」
「…き、キース・サハラです。
し、高布の参です。」
名指しされた信徒はブルブルと体を震わせながら、猫の問いに答えた。
「キース、お前は鉄肉行きだ」
なんと、猫自身が忌み嫌う刑罰を、
見ず知らずの信徒に猫は言い放った。
「お、お許しを…『青布』様」
信徒は泣きそうな顔をしながら、
猫に土下座した。
「それが嫌なら今すぐブルースを開放しろ!」
猫の怒号に信者達は凄い勢いで、
ブルースの縄をほどいた。
余程鉄肉行きと言う言葉が響いたのか、
名指しされていない信徒も体を震わせている。
警備に開放されたブルースは、
せき込んでいる、
腹への蹴りがきつかったのであろう。
猫はブルースに肩を貸し、背中をさすった。
「お前、なんで侵入なんか…」
そう猫が言うと、ブルースは首を振った。
「ゲホッい、いいや…ゲホッゲホッ…入口から…」
ブルースの答えに猫はため息をついた
「侵入もウソとは…お前ら、」
猫が信者達に何か言おうとすると、
一人の一般人が立ち上がった。
「やめて下さい!そんな家畜ごときに…
何故そんなに気を遣うんですか!」
「おい、よせって」
すると、連鎖するように一般人たちが立ち上がり、猫へ意義を申し上げる。
「そんな奴、死んでもいいんですよ!」
「動物となんら変わらない!」
「青布様!お気を確かに!」
まるで猫がおかしいのかのように、
ブルースへの怒号がふりまかれる。
猫は怒りを通り越して、
逆に恐怖を感じていた。
「ゲホッゲホッ行こう…こいつらには…
何言っても無駄だ…」
ブルースがそう言うと、
猫はブルースを連れ、
黙って関門の出口へと向かった。
それを引き留めようとする者はいなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~白零姦連合基地~
シナモンは気絶している二人を寝かせて、
小人たちの死体を調査していた。
「…ブルースの魔法にかかったってのは
本当らしいな…硫酸が体の内側から漏れてやがる」
ブルースの話では、この小人たちは自分たちの身動きを取れなくしてから、殺そうとしていたらしい、話を聞くと恐ろしいが、体からいろいろな液体を垂れ流す肉塊を見ると、
どこかシナモンは安心していた。
「これは当分匂いがとれないな…」
シナモンがモップを使って、血や汚物をふき取っていると、外からどたどたと走って来る音が聞こえた。
「ジャックか?丁度いい、アイツにも手伝ってもらおう」
だが、シナモンの思惑虚しく、足音はどんどん遠ざかっていった。
「なんだ一体…」
不審に思ったシナモンは部屋の外に出ると、また遠くからドタドタと迫りくる音が聞こえた。
「ジャックかー?何走り回ってんだ?」
廊下の先から迫ってきていたのはジャックだった。
「やっぱりジャックか、これ手伝ってくれよ
猫達は行っちまって俺だけで掃除してるんだぞ。俺団長なのに」
シナモンは不思議そうな顔をして、深刻そうなジャックの顔を伺った。
「そんな事はどうでもいい!大変な事が起きた」
“そんな事“と一蹴され、シナモンは少し苛立ったが、“大変な事“の方が気になり、
ジャックに耳を貸した。
「『頭蓋線』が何者かに盗まれた!」
~頭蓋線~
政府軍の所有する戦闘機で、
主に戦争で使用される。
またもシナモンの前頭葉にハテナマークが浮かび上がった。
「え?なんで?」
頭蓋線は本格的に戦う時のための、
奥の手でもあった。
だから基地の奥底に隠しておいたのだが、
それを最も簡単に盗まれるなど、
シナモンは想像していなかったからだ。
「分かるかよ!そんな事!
それより早く通信繋いでくれ」
ジャックも予想外のようで、
テンパっているのが良くわかる。
「分かった、わかったから落ち着けよ」
シナモンは上空飛行中の盗人が、
乗っているとされる、
頭蓋線を見つけ、通信を繋いだ。
(おい、聞こえるか…
お前、自分が誰にちょっかいかけてか、
わかってるのか!今すぐ返させば、
楽に殺してやる!分かったら止まれ!)
すると、盗人から通信が帰って来た。
〈ーこーーのー連れーーいく。
コーーマヌーケー〉
ノイズが酷くわかりにくいが、
シナモンの今、目標が決まった。
頭蓋線を盗んだ犯人を捕まえ、
殺すという事に。
シナモンはモップ片手に外に飛び出すと、
ジャックもシナモンにのせられ、
外へ飛び出した。
「どうするシナモン?」
教団の”警察隊”に頼みたいところだが、反教団は教団政府の保証が受けられず、万事休すだ。
~教団政府~
地王政府が崩壊したとき、新たに教団が作り出した新政府。
主に司蒼教管轄の教区に配置され、事務的な手続きや犯罪への対処が教区内の生物に適応される。
ある程度の”髪”を持っている者なら、誰でも政府職員になれるが教団には入ることができない。
地王内での反教団の立ち位置はかなり悲惨で、すべての機能が教団に集中している中、
反教団はその全ての機能を使うことが許されない、さらに反教団は貧困層の集まりなので、本当に強い軍事力を持たない反教団は、教団が何もしなくても、
勝手にやせ細って死んでいくのが、
オチだった。
それが分かっているからこそ、
シナモンは貴重な戦闘機を盗られ、
マヌケにモップかけていた自分に、
憤りを感じた。
「…とにかく、今はやれることをやろう…」
戦闘機が教団の許可なく教区領空を飛んでいたら、教団が対処する。
そうなれば戦闘機は教団が回収し、
シナモン達が回収不可能になる、
その前に何とか位置だけでも突き止められれば、何とかなるかもしれないとシナモンは考えた。
「シナモン!戦闘機の位置情報がモニターに!」
ジャックがパソコンの画面をシナモンに見せ
る。
「ここは…」
二人は頭蓋線を盗んだ犯人を追うのだった。
―――――――――――――――――――
~オルフォルニア区・旧ジョニー平野~
関門の出口の扉から出ると、
目の前にはブルースの箒が、
駐車してあったので、猫はブルースを抱えて箒にまたがらせた。
「悪いな猫、もう大丈夫だ」
ブルースはそう言っているがまだおなかを、
抑えている、まだ痛いのだろう。
「無理すんなよ…それよりあいつら、
何なんだ?」
猫が指さす方向には、教会の窓からさっきの一般人たちが猫たちを睨んでいた。
「……仕方ないさ」
ブルースのその言葉に猫は激昂した。
「仕方ないってなんだよ!
明らかにおかしいだろ!」
猫はそう言っているが、ブルースは何かあきらめたような表情で箒のエンジンをかけた。
「……助かったからいいんだ、お前がいなかったら俺はバラバラになってただろうからな、
そう言えば、お前こそ何だったんだよ、『青布』様とか言われて」
ブルースはあまりこの話がしたくないのか、話題を変えた。
猫もその様子を読み取り、質問に答えた。
「……あの布は『青布』って言って司蒼教の一つ下の身分に渡されるもので、
まぁ身分証みたいなもんだ、
俺はとっくの昔に教団を追放されたが、この青布は全教区に入る身分証替わりとしては、ずっとつかえる」
猫はもう教団のものではないが、それを知らない人が青布を持っている猫を見たら、
現役の者と勘違いされる。
猫はそれを利用して、戦闘なしでブルースを助けたのだ。
「なるほどな…」
ブルースは納得したのか首をうんうんと動かしている。
「それこそどうでもいい事だ、ブルース教えてくれよ…アイツらは何だったんだ?」
猫はやはり、教会内でのブルースへの態度が気になっているようだった。
ブルースはため息をつくと、
嫌々猫に話し始める。
「はぁー分かったよ…
このオルフォルニア区には、トルコマン派が管轄しているって話をしたよな」
猫は頷いた。
「あぁ、聞いたが何か関係があるのか?」
「そうだ、あの派閥のせいで、この教区の魔法使いの扱いは“家畜“以下になった、」
ブルースはそう言っているが猫はよくわからなかった。
本来魔法使いという一族は民族意識が強く、
同士を陥れようとなどとは考えないはず、
だが、ブルースはその魔法使い派閥のせいで自分たちの立場が低くなったと言っているのだ。
「魔法使いの派閥が、魔法使いを陥れるのか?」
「正式に言えば、このオルフォルニア区・ゲルストのトルコマン派のせいだ。
トルコマン一族の最年少
『アカロフ・トルコマン』
コイツが帝国との取引で
『魔法使いの人身売買』を許可した。
それによって、
魔法使いへの認識が魔臓を与えてくれる動物にまでなり下がった」
〜アカロフ・トルコマン〜
オルフォルニア区の教区長であり、
司蒼教『ラージ・トルコマン』の子どもでもある。
本来、オルフォルニア区はラージ・トルコマンの
管轄であるが、息子可愛さからか、アカロフを教区長にして統治させている。
ブルースは、思い出したくない記憶がフラッシュバックした時のような苦い顔をした。
「それで、このオルフォルニア区には四十以上の魔法使い『牧場』が作られた……」
「牧場?」
猫は嫌な予感がしたが、
それは的中してしまうのだった。
「魔法使いを……家畜とした、牧場だ」
猫は聞いた事を後悔した。
今まで猫はたくさん悲惨な事を見てきたが、
ブルースの話は群を抜いて悲惨だった。
だが、猫は聞いてしまった以上全て聞くしかないのだった。
「……牧場には魔臓を取るためだけに生まれた
“子供“が何十人もいて、とにかく数を増やすことに集中しているんだ。
だから、無理やり若いうちに子作りさせられて、配列も適当だから近親相姦も時々起きる。
奇形児や、障害もちの魔法使いの子供同士でもさせられるから、最近ではもう魔臓すら取れなくなっているらしい…
正直、この話はあんまりしたくなかった…
俺も気分が悪いし、お前も聞いてて気持ち悪かっただろ?」
猫はブルースの話を聞いて、胃がキュウっとなり、吐き気を感じていた。
なぜならあまりにも同じ命ある者の行動とは思えなかったからだ。
「あの関門で俺があんな扱いをされたのは、
アイツらの認識の違いだ、
アイツらにとって魔法使いは家畜に過ぎない、家畜がいきなり教会に入ってきたら、
びっくりするだろ?
本当は扉を”ノック”しないと人間として見てもらえないんだが、俺がうっかり入ったせいであんな事になった…だから、俺にも悪いところはある」
とブルースはそう悟っているようだったが、
猫は首を振った。
「それは違う…いくらそんな環境でそんなルールがあったとしても。
そこに”平等性”がなかったら、そんなもの従わなくていい」
「猫…」
そうゆうものだとして認識していたブルースは、猫の言葉に何か気づかされたようだ。
「それに今は杖がないが、杖を持ったお前は、あんな奴ら一瞬でひき肉にできるだろ!
どうせ帰りも通るだろうし、手土産にアイツらの首持ってこうぜ」
猫はグットサインをしてブルースを励ました。
「ハハハそうだな、
顔の皮剥いで覆面作ってやる」
ブルースも猫のおかげで少しだけ、元気が出たようだ。
「おっもう着くぜ」
ブルースの兄貴はゲルストの郊外に住んでいるので、関門を通ってからすぐの距離に家があり、箒の上からだと見えにくいが、
小さな木の一軒家が森の真ん中に
立っていた。
「あれがそうか…ん?なんか、デカいのが庭に留まってるぞ」
猫に言われ、ブルースも庭を眺めるとそこには、灰色のデカい何かがそこにあった。
「あれって…『頭蓋線』か?」
二人は少しだけ不安を感じながら、ブルースの兄の家へと向かう。
キャリーに隠れたパンプを忘れている事に気づかずに…
今回は結構魔法使いや地王の仕組みにふれましたが、
やはり魔法使いの設定がかなり過酷で描いてて鬱小説を読んでる気分でした。
これ読んでいるという事はもう陸話を読み切ったものだと考えますが、閲覧注意です