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7.風紀委員会

 チュンチュン。雀が鳴いている。篤志はまだベットで寝ていた。


 ガラガラ。窓が開く音がする。


「アッツー、起きてる? どうせまだだと思うけど……」


 千夏は自分の部屋の窓を開けて隣の家の窓の方に向かって話していた。千夏の家は篤志の家の左隣で、千夏の部屋と篤志の部屋がお向かいなのだ。千夏はすうっと息を吸い込むと篤志の部屋に向かって叫んだ。


「アッツー、今日から早起きの練習するんでしょ! ほら、起きて!」


 篤志はベットの中で身じろぎをする。ようやく目が覚めたようだ。


 ガラガラ。ゆっくりと窓が開く。


「ふぁーあ、おはよう、ちぃ。すー、すー……」


 篤志は大あくびをしながら窓を開けて千夏に話しかけながら寝ていた。どうやらまだ寝ぼけているらしい。そんな篤志を呆れながら千夏は見ていた。


「ほら、アッツー。目を覚まして! 風紀委員の仕事頑張るんでしょ!」


 千夏の言葉に篤志が反応した。篤志は目をこすりながら返事をした。


「そうだった。おはよう、ちぃ。また後で」


 千夏はほっとした顔で続けた。


「玄関前で待ってるからね」


 そして窓とカーテンを閉めて、学校の準備を始めるのだった。一方篤志はまだうつらうつらしているようだった……。



 俺は千夏に起こされて、時計を見た。どうやら目覚まし時計もスマホのアラームも無意識に切って二度寝したようだ。俺は窓を閉めて学校の準備を始めた。準備を終えて一階のリビングに向かう。

 朝食は和食。ご飯、みそ汁、納豆、目玉焼きだ。それらをさっさと平らげて、玄関へと向かった。


「母さん、行ってきます」


「行ってらっしゃい。気をつけてね」


 ガラガラガラ。玄関を開けて家を出る。いつもの様に千夏が待っていた。


「今日はあの後二度寝しなかったのね」


「ん? ああ、まあな。ちぃ、いつもありがとな」


 俺は時々起こしてもらった後、再び寝ることがある。千夏はそのことを言っているのだ。俺的には三度寝になるが……。まあ、どちらでもよいことだ。


「それじゃあ、行くわよ」


 千夏が歩き出す。俺も一緒に歩きだした。それに涼がついてくる。


「あれ、涼も一緒なのか? 今日はいつもより早いのに」


 俺が驚いていると、


「ああ、僕は篤志と違って早起きだから、家を早く出ても構わないんだよ」


 と涼が返した。


「そっか。じゃあいつも通り、一緒だな」


 俺はそう言ってニカッと笑った。涼はクスリと笑みをこぼした。



「ちぃは春の大会終わったら部活引退するのか?」


「んー、どうしようか考え中。アッツーは?」


「そっか。俺は、引退するかな。んで、ちょと色んな学校のオープンスクールとか行ってみようかなって」


「ふーん、でもアッツーは北学一本じゃなかったの?」


「まあ、そうなんだけど、他の学校もどんなところかちょっと気になるじゃん?」


「なら、涼や友也、愛美や裕子も誘って、みんなが行きたい高校を一緒に見て回るのはどう?」


「面白そうじゃん! 涼はどう?」


 俺から話題を振られて、涼は本から視線を外す。


「いいんじゃないの」


 そう答えて、直ぐにまた本を読み始めた。いつも思うが、歩きながら本を読むなんてほんとに器用だ。


「じゃあ後は、友也だな。聞いてみるか」


「オッケー、私は愛美と裕子を誘ってみるね」


 学校に着くと友也を探す。まだ来ていないようだ。後でさっきの件を聞いてみよう。俺は席についてボーとする。いつもギリギリに学校に来るからなんだか新鮮だ。やることがないので暇である。愛美と裕子もまだ来ていないようで、千夏も暇そうにしていた。俺は千夏を自分の席に呼んで風紀委員会について聞くことにした。


「ちぃ、風紀委員会で集まるのっていつだっけ?」


「あ、今日の放課後よ。アッツー、忘れないでね。授業が終わったらすぐ部活に行くんだから」


「あー、了解。忘れそうだから、委員会行く前に声かけてくんない?」


「はぁ、仕方ないわね」


 千夏は諦めた様に言った。実際に篤志は興味がないことに対して、結構忘れっぽい。


「ありがと」


 俺がお礼を言っていると、友也が教室に入ってきた。


「おはよー篤志。何話してるん?」


「委員会の話。今日の放課後委員会があるんだけど、俺、忘れそうでさ。ちぃにちょっとお願いを……」


「ははは。どうせ、一緒に行ってくれとか声かけてくれとか、そんな感じだろ」


 友也が笑っている。言葉を濁したのにバレている。


「まあ、そうだな。そんなことより、友也。俺らとオープンスクール行く気ない?」


 俺はちょっと強引に話を変えた。友也とも長い付き合いだから、お互いのことはよく分かっている。それでもなんか少し恥ずかしかったのだ。


「ん―いつ? まあ、たぶん空いてるからいいよ」


「おし。そーゆ―ことなんで、ちぃ。後はよろしく」


「オッケー。分かったわ」


 千夏は返事をして自分の席に帰って行った。


「おい。どういう事だよ」


 友也がよく分からないって顔をしてる。そりゃあそうだ。何も説明していないから。俺は千夏が愛美と裕子を誘うつもりであることを話した。後、涼も一緒に行くことも。


「成程な。まあいいぜ。今度日程決まったら教えてくれ」


「わかった。またな」


 キンコンカンコン、キンコンカンコン。

 予鈴が鳴る。学校での一日が始まるのだった。



 授業が終わって放課後。俺がいつもの様に部活に行こうとしていたら、千夏に呼び止められた。


「アッツー、やっぱり忘れてるでしょ」


 千夏がじろりとこちらを見る。俺は何のことだろうかと暫し考えて思い出した。


「あ、委員会!」


「はぁ、思い出したのね。じゃあ行くわよ」


 俺は慌てて千夏について行った。



 空き教室に風紀委員が集まっている。一年も二年も既に揃っていた。どうやら俺たちが最後だったらしい。空いている席につくと体育の後藤(ごとう)先生がやってきた。


「お、みんな集まっているな。早速委員会を始めるか。まず、委員長を決めて、次に来週からの朝の挨拶運動について話し合うぞ。例年通りなら三年が委員長を務めるのだが、えっと……」


 後藤先生が何やら手に持っていた書類をぱらぱらとめくり始めた。どうやら俺たちの名前を憶えていないらしい。


「あ、俺が猪野篤志で、こっちが南千夏です」


 俺が自分たちの名前を付けると、後藤先生は書類から目を離してこちらを見た。


「ああ、すまん。では、猪野と南。どちらが委員長をするか話し合って決めてくれ。一、二年もそれでいいな」


 後輩たちは頷いている。千夏との話し合いの結果、千夏が俺に譲る形で俺が風紀委員長になった。そして千夏は副委員長になった。それから、来週から始まる朝の挨拶運動だが、来週一週間が挨拶運動期間で委員会のメンバー全員で挨拶をすることになった。時間は8時~8時20分の予鈴が鳴るまでだ。場所は校門を入ってすぐの所だ。後、委員会のメンバーは腕に腕章をつけるのだが、職員室まで取りに行かないといけないらしい。ちょっと面倒だが仕方がない。


「話し合いは以上だ。何か質問はあるか? 無い様だな。では解散! 気をつけて帰れよ」


「お疲れ様でした」


 話し合いが終わり、解散となったので俺たちはそのまま部活に行った。5月の春体までにもう少しタイムを伸ばしたいところだ。最後の大会で悔いが残らないように練習しようと心に誓ってグラウンドに向かうのだった。






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