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23.強化合宿 2日目 BBQ

「おし! こんな感じでいいな」


 俺が言いながら薪を組み立てていると、後輩も手伝ってくれた。マッチを擦って落ち葉と細い枝に火をつける。種火が上手くいき、少しずつ燃え広がっていった。少し太い枝にも火が付き、薪にも燃え移る。良い感じに火が回ってきたので、調理係りに声をかけに行った。


「ちぃ、こっちの準備はできたぜ。ご飯は炊けそうか?」


「あ、うん。ご飯はいけるよ。串の方は待って。野菜と肉を交互にさすのに手間取ってるの」


 千夏たちが野菜を切ったり肉を切ったりした跡がある。用意された野菜は、玉ねぎ、人参、ネギ、ピーマン、トウモロコシ、カボチャ、キャベツだ。肉は、鶏肉、豚肉、牛肉、ソーセージが用意されていた。肉はできるだけ厚みが均等になるように切られていたが、多少大きさの違いが出ていた。今は、串刺しの作業に移っているようだった。鶏肉は焼き鳥用の竹串に刺していた。これは使い捨てだろう。バーベキュー用の串には豚肉と野菜、牛肉と野菜を刺しているようだった。キャベツとソーセージは串に刺さずにそのまま焼くようだ。俺は一通り確認したから千夏に声をかけた。


「了解。んじゃあ、鍋持ってくね」


「あ、手伝います」


 火の番係りの後輩が手伝いを申し入れてくれたので、遠慮なく手伝ってもらう。一緒に鍋を運んで火にかけた。米を炊くのは最初は強火だが、薪の火力が高すぎると鍋の底が焦げてしまう。火力に気を付けながら後輩と火の番を続けた。暫くすると鍋がグツグツいってきた。吹きこぼれる前に薪を減らし、火力を下げる。何とか上手くいき吹きこぼれることはなかった。そうこうしている内に金網とトングと肉と野菜の串を持って千夏たちがやって来た。


「バーベキュー用の串、できたわよ」


「お、ありがとな。こっち側に網を置いて焼いてくれ」


 俺は鍋が置いていない結構広いスペースを指した。千夏は頷いて金網を置き、串をどんどん並べていった。豚肉の串を最初に焼いている。串に段々と火が通て来て、肉と野菜の焼ける良い匂いが漂ってくる。肉汁が薪の中に垂れてジュっと音がする。油も一緒に垂れて一気に火が強まった。


「おっと。焦げるな。ちぃ、トング貸して」


 千夏からお肉用のトングを借りると、焦げる前に串をひっくり返した。表面しか焼けていないが仕方がない。何度かひっくり返しながらじっくり焼いていくしかないだろう。俺はバーベキューの串の世話を始めた。



 そんな様子を見ていた後輩が、鍋の米をしっかり見てくれている。彼はグツグツ言わなくなって暫く経った鍋を火から上げた。


「猪野先輩、お米たぶん炊けました。火から上げましたけど、いいですか?」


 火の番係りの後輩が俺に声をかけてきた。


「ああ、良いぜ。けどちょっと蒸らした方がいいから、まだ蓋は開けるなよ。5分くらいしたら開けて、中を混ぜてみてくれ」


 と俺が串をひっくり返しながら答える。


「分かりました」


 そう言って後輩は鍋を持って俺たちの班のテーブルへ持って行った。鍋の取手は熱を持って熱くなっているので、薪を使って二人かかりで運んでいた。賢い運び方だ。


「アッツー、そろそろ焼けた?」


 千夏が皿を持ってきて声をかけてきた。


「まだかな。けど、皿サンキューな。鍋が無くなって少しスペース出来たから、串に刺ささりきらなかった野菜と肉をそのまま焼くか」


「OK。じゃあ、こっち側に置くわね」


 そう言って千夏はキャベツ、ソーセージ、人参、トウモロコシ等、次々に載せていった。


「あれ? トウモロコシは串に刺さらなかったのか」


「そうなのよ。芯が固くて無理だったわ」


「そっか。じゃあしょうがないな。よし、これは焼けたぞ。ちぃ、皿ちょうだい」


 俺が焼けた豚串をトングで持ち上げていると、千夏がさっとお皿を差し出した。それに焼けた豚串を載せていく。次に生の牛串を空いたスペースに載せていった。焼き鳥の串はまだスペースに空きがなくて焼けていない。牛肉から肉汁があふれて滴る。薪が再びジュっと音を立ててから燃え上がった。素早く燃えている串をはずして、別の串と入れ替える。そうやって火を落ち着かせながらどんどん焼いていった。



 夢中で焼いていると、いつの間にか全ての串と、野菜と肉を焼き終わっていた。全てをお皿に盛ってから、1班のテーブルへと移動した。いくつかのお皿は先に持って行ってくれている。今回はバーベキューの準備ができた班から各班で食事を食べ始めて良いことになっている。俺たちは準備ができたので食べることにする。全員分のご飯がお茶碗に盛られていた。少しおこげができていたが、焦げずにちゃんと炊けた様だ。俺はホッと胸をなでおろした。


「んじゃあ、手を合わせて。いただきます!」


「いただきます」


 俺の号令にみんなが合わせる。そしてお皿に好きな串や野菜や肉を載せて食べ始めた。串には塩コショウがかけられていたが、串以外のものは何もかけていない。串に刺さらなかったそれらの野菜と肉に焼肉のたれをつけて食べた。


「うっま」


 ネギまになっている焼き鳥を口にしたが、絶妙な塩加減で丁度良い。ネギの甘さと鶏肉の旨味が合わさって、口の中に幸福感が広がる。焼き鳥をもぐもぐした後、ご飯をかきこんだ。お焦げがいい感じのアクセントになっていて旨い。焼き肉のたれ味のキャベツやカボチャも食べて満足する。しっかり火が通っていた。


「アッツー、まだ食べてなかったでしょ?」


 千夏が牛串と豚串を俺のお皿に置きながら言ってきた。


「お、ありがとな。いやぁー、焼き鳥が思いの外旨くってな……」


 俺が余韻に浸ってると、千夏がクスっと笑った。


「アッツー、そんなにのんびり食べてると無くなるわよ」


 千夏がそう言ってお皿の方を指さすと、次々に各自のお皿へと消えていく串たちが見えた。


「おっと。それは不味いな。全種類は制覇したいしな」


 俺はお皿にまだ盛れる余地があるので、ソーセージやトウモロコシも追加で盛った。牛串の牛肉と玉ねぎを一緒にかじる。横で千夏も牛串を齧っていた。二人してもぐもぐしながら会話を続ける。もちろん、口に物が入っていないタイミングでだ。


「アッツー、この組み合わせ美味しかったわよ」


 千夏がそう言って渡してきたのは、豚肉、カボチャ、豚肉、ピーマン、の順に刺さった豚串だ。俺はありがたく頂き、口に頬張る。肉の旨味と野菜の甘みがいい感じにマッチしている良い串だった。


「いやぁー、旨かったわ。ちぃ、こっちのも旨かったぞ」


 俺が千夏に別の豚串を渡した。豚肉、人参、豚肉、玉ねぎの串だ。千夏も満足そうに食べている。


「そう言えば、後輩たちとは交流できたか?」


「うん、まあね。料理中に色々話せたわ」


「そっか。良かったな」


「アッツーの方はどうなのよ」


「こっちは薪の組み方をばっちり指導したぜ」


 そう言ってニカッと笑えば、千夏はクスクス笑った。


「アッツーらしいわね。まあ、それでも後輩は懐くんでしょうけど」


「ん? そうなのか?」


「そうなのよ」


 千夏は穏やかに笑っている。後輩たちもそれぞれ食べながらわいわい騒いでいた。和やかな雰囲気の中、バーベキューは終わりとなった。







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