22.強化合宿 2日目 バーベキュー
野外炊飯場に行くと、チラホラと人が集まっていた。野外炊飯場とあって、炊事場には屋根がついているが、テーブルと椅子があるところには屋根がない。炊事場内にもテーブルと椅子があり、此処でも食事をしようと思えばできるようになっていた。テーブルが6卓、木製の椅子が各テーブルに6脚ずつ置いてあった。左右3か所ずつ水道が設置されている。更に煮炊きできる窯も左右に何ヶ所も設置されていた。レンガ造りの窯の上には頑丈そうな金網が置かれており、取り外しできる仕組みになっていた。薪がくべられる場所には、今は薪はない。煤もきっちり掃いてあり綺麗に掃除がされていた。少し離れた所に倉庫があり、そこに調理器具が仕舞ってある。その横の雨避けのある納屋のような場所にうず高く薪が積んであった。直径30cmくらいの薪の束が沢山積まれている。後で俺たち男子が運んでくることになるだろう。結構広い炊事場である。
さっきまで晴れ渡っていた空には雲がかかっており、適度に日影ができている。俺はせっかくなので炊飯場の椅子ではなく、雲の下の日陰がある丸太の椅子に座ることにする。ぼんやりと景色を眺めていると、颯がやって来た。
「いのっち、早いね。もうこっちに来てたんだ」
そう言って、俺の隣の椅子に腰かける。この椅子は背もたれがない。丸太を切って鑢をかけて座れるようにしただけのような椅子である。それでも座り心地は案外悪くない。
「いやぁー、瞬が部長に叱られてたから巻き込まれないように逃げてきた」
俺がそう言って苦笑いしていると、
「あー、それは僕も逃げるな。うん」
と颯も少し渋い顔をして言った。
「そう言や、颯の班はオリエンテーリングはどうだったんだ? 俺ら暗号は全部見つけられなかったわ」
「僕たちは5マスの空欄を先に埋めたね。答えは『たすけあい』でしょ? まあ、おかげであっちこっち行って疲れたよ。けど、全部は見つけられなかった」
「そっか。結構すげぇな、颯の班も」
「まあね」
ぐぅぅ~。俺のお腹が鳴る。どうやらオリエンテーリングを張り切り過ぎた様だ。
「いのっち、お腹鳴ってるよ」
颯がクスクス笑いながら言ってきた。
「うっせ。颯のお腹もそのうち鳴るぞ」
俺が反論していると、ぐぅぅ~。とまた俺のお腹が鳴った。颯がクスクス笑いを抑えられなくなり、爆笑し始めた。俺はムスッと不機嫌な顔になり、そっぽを向く。颯は暫く笑っていた。
部長やその他の部員が全員野外炊飯場に集まった。顧問もやってきてバーベキューが始まる。なぜか施設の職員も一緒に来ていた。
「バーベキューを始める前に、職員の方から指導がある。話をよく聞いて道具を正しく使うようにな」
「はい!」
顧問の指示に部員全員が返事をする。その後、職員から説明があった。
「皆さん、こんにちは!」
「こんにちは」
「はい。良い返事ですね。私は施設の職員の村中です。よろしくお願いします。今日はバーベキューをされると言うことで、使う道具や片付けの仕方を説明します。お米も炊かれるそうなので、今回は鍋も使いますね。まず、調理器具の説明をします。包丁、まな板、鍋、ザル、金網、トング、しゃもじ、ピーラー、箸、お茶碗、お皿等の調理器具や食器類は倉庫の中にあります。後で班ごとに取りに来てください。使った道具はきれいに洗って、そして拭いてから返してください。台拭きと皿拭きの布は倉庫内に干してあるので、間違えないように使ってくださいね。箸、お皿、お茶碗は数を間違えないように、きちんと数えてから持って行ってください。返す時も数が足りないということがないようにお願いします。無くしたり壊したりした場合は弁償してもらいます。紛失や破壊をしないようにお願いします。薪は倉庫の横にある納屋に取りに来てください。一班一束でお願いします。薪用のトングも此方に置いてあるので、一班に1つずつ持って行ってください。次に、野菜と肉、お米などの材料ですが、食堂に取りに行ってください。班ごとに材料が用意されています。バーベキュー用の串も用意されているのでお使いください。こちらの串は、洗って拭いて食堂に返却をお願いします。最後に、後片付けの説明をします。使わなかった薪は納屋にまとめて返却してください。燃え残った薪はこちらのごみ置き場に捨ててください。灰も一緒に捨ててもらって結構です。野菜くずや生ごみは、朝の掃除のごみ置き場まで持って行ってくださいね。こちらのごみ置き場はカラスなどがごみを荒らすので。窯の中も箒で掃除してください。来た時よりも美しく。よろしくお願いします」
村中さんはぺこりとお辞儀をした後、話を続けた。
「掃除の仕方が分からなければ、柱に括り付けてある掃除の仕方を参考にしてくださいね。箒などの掃除器具は納屋の方にありますので、そちらに取りに行ってください。説明は以上ですが、何か質問はありますか?」
村中さんが周りを見渡している。特に手が上がらなかった。顧問が頷くと、今度は顧問が話し始めた。
「村中さんの説明は終わった。えー今回の班だが、さっきと同じ班な。もうこれから班活動がある時は、全部同じ班だ。いちいちくじを引くのは面倒だからな。文句があるやつはいるか?」
顧問の言葉に部員は首を横に振る。俺も特に問題はない。というか千夏と一緒なので文句などない。
「よし、班ごとにさっきの指示に従え。男子は薪と調理器具、食器類を取りに行くこと。女子は食堂に食材を取りに行くこと。調理係と火の番をする係りとかは班ごとに決めろ。得手不得手があるだろうからな。後は、ちゃんと手を洗ってから調理しろよ。以上だ」
「おっと、言い忘れていたが、俺の分もあるからな。1,2班は7人で3,4班が6人だったな。俺は3班に混ざるのでそのつもりで。3班の食材は7人分になっているからな」
3班は瞬の班だ。顧問が一緒にご飯とか、御愁傷さまだ。まあ、俺には関係ないので気にしない。
「それじゃあ、各自必要なものを取りに行ってくれ」
顧問の言葉を合図に、部員が動き始めた。倉庫に調理器具と食器を取りに行く男子、薪とトングを取りに行く男子、食材を取りに食堂へ行く女子だ。必要なものが揃った後、役割分担を決めた。俺たち1班は男子が火の番担当で、女子が調理係りとなった。火の番は二人くらいでいいので、暇な男子は調理の下処理を手伝うことになった。俺は火の番を担当する。調理は千夏が指揮を執っていた。
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