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ペットが擬人化する世界の危険な愛情  作者: 釧路太郎
佐倉光紀の物語

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俺の実家に陽菜を連れて行く

 俺は千代子の実家に先に行きたいと思っていたのだが、どうしても俺の実家に先に行きたいという千代子の頼みを断り切れずに俺は自分の実家へと車を走らせていた。

 千代子のお腹に陽菜がいるという報告をして以来の実家なのだが、不思議なことに実家が近付くにつれて変な緊張感が生まれてきた。無事に生まれた陽菜に会わせるために向かっているだけなのだが、なんだかわからない緊張感が俺の中で少しずつ大きくなっていっていた。

「何でかわからないけどさ、いつもよりも緊張してきたかも。結婚の報告に行った時よりも今の方が緊張してるんだよな。何にも変なことは無いし怒られるような事でもないんだけどさ、よくわからないけど緊張してしまってるんだよね」

「そうなんだ。光紀がなんで緊張しているのかわからないけどさ、私は陽菜ちゃんとジュエルちゃんがいるから何も緊張なんてしてないわよ。お兄さんにも今日行くことは伝えてあるしね」

「それはそうなんだけどさ、家族が増える報告をするたびにこうして緊張してしまうのかと思うとこれから先も心配になっちゃうな」

「家族が増えるたびって、ちょっと気が早すぎるんじゃないかな。ジュエルちゃんがいるから陽菜ちゃんに手はかからないかもしれないけど、さすがにそれは急ぎ過ぎだと思うよ」

「物の例えってやつだよ。それにしても、いつも以上に緊張しちゃうな。ちょっとコンビニによって飲み物買ってくるけど、何か欲しいものある?」

「私は大丈夫だよ。陽菜ちゃんもミルクあるから大丈夫だと思うけど、ジュエルちゃんにお水でも買ってあげたらいいんじゃないかな。ずっと後ろを向いていて疲れてるかもしれないからさ」

 俺はコンビニで買ってきたお茶を千代子に渡すと、自分の分のコーヒーは運転席のドリンクホルダーにセットしてから助手席の足元に置いてあるジュエル用の水飲み皿を外に持っていってそれの半分くらい水を入れてあげた。

 いつもなら車から飛び降りて水を飲むのだが、ベビーシートの陽菜が気になって仕方が無いようだ。俺がジュエルを車から抱えるようにしておろすとようやく水を飲み始めたのだが、量は少なめとはいえあっという間に飲み干して助手席に戻ろうと車のドアの前で俺をじっと見つめていたのだ。

 俺がドアを開けると運転席と助手席の間から顔を出して陽菜の顔を確認していたのだが、嬉しそうに陽菜が手を伸ばしたのを見ると先ほどのようにヘッドレストの隙間から陽菜の事をじっと見守っているのであった。

 俺はコーヒーを二口ほど飲むと再び車を走らせたのだが、ここまでくるとコーヒーが冷めることが無いくらいの距離に俺の実家があることになる。先程までの謎の緊張が何だったのだろうと思うくらい落ち着いてきたのだが、ふと横を見るとジュエルが俺の事をじっと見つめていた。ミラー越しに後ろを確認すると、千代子も寝ていたのだが、なんだかんだ言って疲れがあったのだろう。陽菜はミラー越しではあるが俺の事をじっと見ていた。その様子は陽菜とジュエルが緊張している俺を見守ってくれているように感じていたのだった。


「お疲れ様。陽菜ちゃんを乗せて運転するのはいつもより緊張しただろ?」

「ああ、走り慣れた道だけどさ、何か緊張してたんだよね。兄貴の言う通り、陽菜を乗せてた事でいつもより緊張してたのかもな」

「なんにせよ無事についてくれて良かったよ。千代子ちゃんもお疲れ様。病院に顔を出せなくてごめんね」

「良いんですよ。お兄さんも色々と大変だったと思いますし、うちにはジュエルちゃんがいたから問題も無かったですし」

「そうだな。ジュエルは光紀よりも賢いからな。その点は問題無かったな」

「それで、母さんは元気なのか?」

「まあ、元気と言えば元気なんだけどな。今の母さんの姿を見ても変な風に思わないでくれよ」

「何言ってんだよ。もしかして、そんなに体調悪いのか?」

「そう言うわけでもないんだけどな。でも、今日は光紀たちがくるってのを伝えてあるからさ。今は庭が見えるいつもの場所で待ってるんじゃないかな」

「じゃあ、さっそく母さんにも陽菜を見せてくるか。それとも、兄貴が抱っこして母さんに陽菜を見せて驚かせてみるか?」

「母さんがそれで驚くかわからないけど、俺が抱っこしてもいいんならそうしようかな」

「ダメなわけないだろ。ほら、優しく包み込むように抱いてくれよ」

「お、おう。なんか持った瞬間は不安な気持ちになったけど、こうして抱いてみると優しい気持ちになれるな。それにしても、俺が抱いても泣いたりしないもんなんだな」

「お兄さんと光紀が似てるからかもしれないですね。陽菜ちゃんは病院で泣いてばかりいたんですけど、光紀君を見付けたらピタッと泣き止んだんですよ。それと同じことがジュエルちゃんと初めて会った時にもあったんですけど、お兄さんも一緒なのかもしれないですね。ウチのパパとママを見て泣きださなきゃいいけど」

 何となく千代子らしくない冗談を言っていたのだが、俺は久しぶりに帰ってきた実家の中に入ると、いつも母さんが座っていた場所に真っすぐに向かっていった。何も無い時はいつも決まって座っている椅子に向かって話しかけようとしたのだが、そこに座っているべきはずの母さんの姿は見えなかった。

「あれ、母さんはトイレにでも行ってるのかな。兄貴、母さんは一人でトイレに行けるのか?」

 俺の後に続いて家の中に入ってきた兄貴に話しかけてみたのだが、兄貴は陽菜を抱いたまま無言で俺を見つめていた。

「母さんに陽菜を見てもらおうと思ったのにこのタイミングでトイレに行ってるなんて間が悪いな。兄貴が抱っこしているのを見て驚かせようと思ったのにな。あれ、いつの間にジュエルが母さん椅子の近くに座ってるんだ?」

 実家にいた時はジュエルがいつも母さんのそばに座っていたので椅子の側にいることはおかしくないのだが、ジュエルについているリードはまだ外していないはずなのだ。車から降りる時からずっと俺はジュエルのリードを持ったままなのに、目の前にいるジュエルの体にハーネスもついていなければリードも繋がっていないのだ。俺が持っているリードの先にはちゃんとハーネスを付けたジュエルがいるのだ。

「あれ、ジュエルが二人いる?」

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