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ペットが擬人化する世界の危険な愛情  作者: 釧路太郎
佐倉光紀の物語

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新しい命

 赤ちゃんが無事に生まれた事を報告したのだが、兄貴は自分の事のように喜んでくれていた。今すぐにでも会ってもらいたい気持ちはあるのだが、兄貴も母さんの事で大変だと言っているので今は無理をさせることは出来ない。写真を送ってみたのだが、兄貴はなぜか母さんがどんな反応をしていたのか教えてくれなかった。その事でちょっとだけ嫌な考えが頭をよぎったのだが、もし最悪の事態になっていたのだとしたら兄貴もさすがに黙っているはずがないと思う。

「お兄さんから返事はきたかな?」

「うん、凄く嬉しそうな感じで喜んでくれていたよ。電話越しでも兄貴が喜んでるのを感じたんだけどさ、なんだか変なんだよな」

「変なんだよって、どうかしたの?」

「いつもはなんだかんだ言って母さんの話をしてくれていたんだけどさ、今日は母さんの話題が一切出なかったんだよ。写真も送ったから見せてるとは思うんだけどさ、何にも反応が無いってのもおかしいと思うんだよな」

「もしかしたらだけどさ、お義母さんも凄く喜んでくれていてお兄さんのテンションが上がってるのかもしれないよ。ほら、陽菜ちゃんがあまりにも可愛くてそんなリアクションしか取れなくなったのかもしれないしね。そんなに心配しなくても大丈夫だって。そうだ、退院したら私の実家に行く前に光紀の実家に行ってお義母さんとお兄さんに陽菜ちゃんを抱っこしてもらおうよ。その時にジュエルちゃんも一緒に連れて行けば絶対にお義母さんも喜んでくれるって。そうしようよ」

「千代子の考えは嬉しいけどさ、俺の実家は千代子の実家に行ってからで良いと思うよ。出産する時もそうだったけど、結婚した時も助けてもらってるしさ、まだ千代子の体調も万全じゃないと思うから俺の実家に言って気を遣うよりもそうした方がいいと思うんだよな」

「ありがとう。光紀のそういう優しいところは大好きだよ。でもね、私はパパもママもお義母さんもお兄さんも同じくらい大切だと思ってるんだよ。それに、お兄さんには内緒にしておいてくれって言われたんだけど、金銭的な援助はパパよりもお兄さんの方が多くしてくれてるんだよ。今はそれに頼らなくても平気なくらい二人で頑張ってきたから貯金してあるんだけどさ」

「なんだよそれ。兄貴は千代子にも渡してたのか。俺も千代子には内緒にして何かあった時に使えって言われてもらった金があるんだよな。俺もそれは貯金してあるんだけど、なんで二人別々に渡してくれたんだろうな」

 兄貴は俺と千代子にそれぞれ五百万円ずつくれていたのだが、俺達はそのお金に全く手を付けていなかった。欲しいものは色々あるしやりたいことも色々あるのだが、兄貴から貰ったお金にはなぜか手を付けることが出来ずにいた。それは千代子も同じだったようであった。


 千代子と陽菜が無事に退院して家に帰ってくると、ジュエルが見慣れない赤ちゃんに戸惑っていたのだが、陽菜の匂いを嗅ぐと陽菜を守るように周りをクルクルと見回るように歩き回っていた。

 ジュエルは自分のお気に入りのボールやぬいぐるみを持ってきては陽菜の側に並べるようにして置いているのだが、陽菜はまだソレに反応することは出来ても触ったり動かしたりすることは出来ずにじっとジュエルを見ているのであった。

 初めて会った者同士であるのだが、陽菜もジュエルも全くなくそぶりも見せず大人しくお利口にしているのだ。もしかしたら、二人とも緊張してなくことが出来ないだけなのかもしれない。

 これはもう少し陽菜が大きくなってからの話であるが、陽菜が一人で寂しくて泣いている時もジュエルがそばに寄ってくると自然と泣き止んでいた。俺や千代子がどんなにあやしても泣き止まないことが何度もあったのだが、ジュエルが陽菜に鼻を近付けると不思議と泣き止んでいたのであった。陽菜が自分の意思で徘徊できるようになってくると、いつもジュエルの近くへ行って楽しそうにしていたのであった。


 後部座席にベビーシートを置いた関係でジュエルは助手席に座らせることになるのだが、車に乗っている時はいつも外の景色を気にするジュエルがヘッドレストの下に出来た隙間からずっと陽菜の方を見ているのが印象的だった。出会ってほんの一時間も経っていないはずなのだが、陽菜とジュエルの間には俺達にはわからないような絆が結ばれているのかもしれない。

「ジュエルちゃんにとっても陽菜ちゃんは大切な存在だって事なのかな。ずっと陽菜ちゃんから目を離そうとしないね」

「そうだな。俺がジュエルの小さい時に見守っていたのを真似してるのかもな。なんて言ってみたけど、ジュエルはそんな事覚えてないと思うけどな」

「あら、意外とそういうのって忘れないと思うよ。大切にしてもらった恩は忘れないだろうし、ジュエルちゃんみたいに頭の良い子だったらなおさら光紀に大切にしてもらっていた記憶が残ってるんじゃないかな」

「そうだといいんだけど、単純にジュエルが陽菜の事が好きなだけかもしれないしな。ほら、千代子の事も初めて会った時からジュエルは気に入ってたし、俺と千代子の子供である陽菜の事もきっとすぐに気に入ったんだと思うよ」

「そうかもしれないね。私も何だかわからないけど、ジュエルちゃんの事は一目会った時から気に入ってたんだよ」

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