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秘密と暴露

 ゴールデンウィークが近付き、ソワソワし始める季節。

 教室の中はどこか落ち着きがない。

 周りがゴールデンウィークどこへ行くとかそういう話をしているからだろうか。

 全体的にどこか浮かれている、そんな雰囲気がある。

 ちなみに俺は浮かれていない。

 理由は単純明快。予定が一日も埋まっていないからだ。

 ゴールデンウィーク最初から最後まで暇人。

 嬉しくなるわけもない。むしろ、学校がないことで悲しい人間だと自覚させられるだけなので恨むまである。


 「おっはよー! 爽くん!」


 結芽は俺の元へとやってくる。

 なんだろうか、例の事件の前よりも明るくなったような気がする。良い意味でいつもより少しおかしい。

 俺がしおらしくなったとか言ってしまったからなのだろうか。

 結芽のことだ。気にしていてもおかしくない。


 「おう」


 何も考えなかったかのように軽く答える。


 「デートしたこと秘密だから! 誰にも言っちゃダメだよ」


 結芽は耳打ちするようにそう口にする。

 俺はコクリと頷く。


 「絶対だからね!」


 耳元から離れた結芽はもう一度俺に向かってそう口にした。

 パタパタと自分の席へと戻る。

 この様子をまじまじと見ていた四帆は結芽が居なくなったのを見計らってやってくる。


 「今の何?」


 涼真の机の上に座って、俺の肩に手を置く。

 突然座られた涼真は唖然としている。

 四帆って結構メンタル強いよな。


 「別になんでもないよ」

 「何でもないようには見えなかった」

 「本当に何も無かった」

 「本当に?」


 四帆はジーッと俺の事を見つめる。

 まるで、答えが分かっているかのように問い詰めてくる。

 俺って表情に出るタイプなのだろうか。


 「あーっと……。結芽に秘密だから誰にも言うなって言われたんだよ」


 圧に屈した俺は口にしてしまった。

 ここまでならまだセーフだろうと思っている節もある。

 何をしたかさえ言わなければ何もバレていないのと同義だろう。

 そう、自分に言い聞かせていると、結芽の方から消しゴムの欠片が飛んできた。

 睨んでくる結芽。

 どうやらセーフじゃなくアウトらしい。


 「何を?」


 まるで四帆だけ異空間にでも居るのかと思ってしまうほど、何も反応せずにそのまま追及し続ける。


 「言えると思うか?」

 「大丈夫。爽なら出来る」

 「できねぇーんだよ」


 なぜこの人はこうも動じないのだろうか。

 というか、何を見て出来ると思ったのか。

 少なくとも今のこの場でデートしたことを口にしたらしばかれる。

 色んな意味で俺の命は無くなってしまう。


 「そう。つまらない」


 不満げに机から飛び降りた四帆は自分の席へと戻っていく。

 なぜ四帆を楽しませるために俺が危険な目に合わなきゃならないのか。

 嫌な思いするぐらいならつまらない俺で良い。

 四帆は足を止めてふと俺の方を振り返る。


 「そういえば昨日、爽、結芽と出かけてた。あれ何してたの」


 なんだコイツ、知ってたのかよ。

 ニヤニヤする訳でもなく、ただ真顔で俺の方を見つめてくる。

 これあれだな、本気でさっきの秘密とは関係の無いことだと思ってるな。


「ん?」


 四帆は不思議そうに首を傾げる。

 良いよね、自由気ままで。羨ましいわ。

 俺なんて今内心汗だらだらだ。


 「四帆! ちょっと来て!」

 「ん、良いけど。結芽どうした」

 「どうしたじゃないから!」


 結芽は四帆の手を握り、そのまま引きずるようにして教室を出ていった。

 怒りの矛先が俺じゃなくて四帆へ向いたので良かった。

 本当に良かった。

 でも、夏葵の視線が怖い。やはり俺は勘違いされているんだなと実感する。

 あんな言葉を言って数週間もしないうちに幼馴染と出かける。

 これは黒だと思われるだろう。

 あれ、四帆って今とんでもない事をしたんじゃないか?


 「良いな。天使と出かけられて」


 涼真は俺の肩に手を置き、白い歯を見せる。

 何も知らないコイツは良いな。呑気で。


 「俺も涼真みたいにのうのうと生きてたいわ」


 本当に心からそう思う。

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