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「ご飯行こう」と誘われる

 登校する。

 下駄箱に靴を入れ、少し歩くと廊下の壁に寄り掛かる宮本の姿があった。

 俺と目が合うと宮本は白い歯を見せて手を振ってくる。

 そのまま笑顔で手を振り返すのは何だか気恥しいなと思ってしまった俺は軽く会釈をした。


 「ちょっ、爽ちゃん? 今絶対にスルーしようとしたでしょ」


 宮本の前を横切ったのと同時に肩を思いっきり掴まれて、俺の足は止まった。

 ニコッと笑う宮本。だが、言葉の一節一節に重みがあり、軽い気持ちではいられない。


 「いや……スルーはしてないってか、会釈したし」

 「今のは挨拶するとこだから」

 「おはよう」

 「今更でしょ」


 肩から手を離すと、腕を組む。

 眉間に皺を寄せ、少々威圧感を覚える視線。

 そして直ぐに宮本は歩き始め、着いてくるようにとジェスチャーをしてくる。

 無視する訳にもいかないので、俺は宮本の歩幅に合わせ、廊下を歩くことにした。

 しばらく歩く。

 教室とは真逆の方向。職員室の方面だ。

 こっち側は人の通りが少ない。

 全くないとは言えないが、教室のある廊下に比べれば格段に少ない。


 「今日の放課後、夏葵達とご飯食べに行くことになったけど着いてくる?」

 「……?」


 どういうことだ?

 ちょっと困惑してしまう。


 「なんで首傾げてんの。ご飯行こうって言ってんの」

 「マジか。俺行っても良いの?」

 「アタシが誘ってるんだから良いに決まってるでしょ」


 確かにそれはそう。

 宮本に誘われている時点で宮本は良いと言うだろう。

 そんなことは俺にだってわかる。

 だが、夏葵がどうなのか。俺はどうしてもそこが気になって気になって仕方ない。

 ストレートに俺の事を拒否してくる夏葵の顔が脳裏に浮かんでくる。

 最早トラウマになっているのかもしれない。

 変な冷や汗が出てきてしまう。


 「夏葵のことなら心配しないで。アタシ達が上手いことするつもりだから。それに二人の確執にアタシ達のこと巻き込もうともしないでしょ」

 「まあ、それもそうか」

 「夏葵はちょー優しいからね」


 その言葉を聞いて少しホッとする。

 とりあえず顔出すだけ出すのは悪くないのかな……と思えた。


 「分かった。今日俺も連れてってくれ」

 「うん、拒否しても無理矢理連れていくつもりだったから頷いてくれて良かった」


 宮本はニカッと白い歯を見せて笑った。

 所々強行手段が絶え間見える辺り、陽キャなんたなぁと思う。

 俺たちは少し遠回りをしながら、教室へと向かったのだった。



 特に何か生まれる訳でもない雑談を二人でしながら歩き教室に到着する。

 扉を開けて、教室に入りいつものように自分の席へと向かい、座った。

 すぐにやってくる結芽。


 「おっはよー!」

 「おう、おはよう」

 「今日も爽くんの家行くね」


 結芽は当然のように俺の家へ来る宣言を行う。


 「あー……」

 「ん?」


 結芽は首を傾げた。


 「いや、その……な。今日俺用事あるから家無理だわ」

 「え、爽くんが用事?」


 不思議そうな表情を浮かべた結芽だが、すぐに納得したような顔をして、四帆へ視線を向ける。

 漫画を読んでいた四帆は視線に気付いたのか、顔を上げこちらを向く。

 そしてこちらへやってくる。


 「四帆今日用事ある?」


 四帆がこっちにやってくるなり質問した。


 「ない」


 四帆は首を横に振る。


 「え、本当?」

 「本当」


 四帆は目を逸らすことなく結芽のことを見つめる。


 「爽くん……? どういうこと?」


 答えに辿り着けない結芽はSHRが始まるまでずっと質問を投げてきた。

 別に言っても良いのだろうが、変な心配をかけさせることになりそうなので、隠すことにした。

 適当にはぐらかして時間をやり過ごしたのだった。

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