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睡眠欲

 あと五分で日を跨ぐ。

 ゴールデンウィークなのでオールしても良い。

 次の日も休みという安心感はとてつもない。


 「眠む……」


 安心感のせいか、思わず声が漏れてしまった。

 我慢していた欠伸もつられて出てしまう。


 「寝れば」


 漫画を読む四帆は俺の膝を不規則にタッチしながら声をかけてくれる。


 「どこで寝ようかな。ってか、もう四帆帰って良いぞ」

 「酷い。せっかく来たのに」

 「っても、親心配するだろ」

 「ん、しない」


 なぜか四帆は自信満々にそう口にした。

 定期的にやってくる湧きどころが謎な自信。


 「ふーん、そう」


 眠たい俺は追求するのも面倒で適当に流してしまった。


 リビングにあるデカいテレビでゲームをする結芽。

 区切りの良いところで、ゲームのコントローラーを置き、ググッと背を伸ばす。

 小さく「ふぅ」と小さく息を吐いた結芽は流れるようにスマホを取りだし、画面を確認する。


 「あ、着信あった。ごめんね、ちょっと一旦電話してくる」


 結芽は一言断りを入れてリビングから出て行った。

 ゲーム音がしないこの部屋。本当に四帆の漫画を捲る音しか聞こえてこない。

 静かな空間だと、ただでさえ眠いのに、耐えられなくなってしまう。


 「寝れば。私と結芽じゃ不安?」


 漫画を置いた四帆は首を傾げる。


 「いや、別にそういうわけじゃないんだけどさ」


 寝たくない理由は、ただなんとなくカッコ悪いよなっていう凄く抽象的で、しょうもない理由だ。


 「じゃ、寝て。おやすみ」


 四帆は無理矢理俺の体をソファーから押して、そのままリビングの外まで背中を押し続ける。

 流石にここまでされて拒否する訳にもいかないので、一旦脳みそを休ませに行こうと思う。

 一日の四分の一くらいを漫画に使ってしまったので、脳みその疲労は普段よりもかなり溜まっているはずだ。

 自室のベッドに入り込んでから直ぐに俺の意識は無くなった。



 窓から差し込む日差し。天井を見つめていても明るいのが分かる。

 妙に暖かい布団。

 隣から聞こえてくる寝息。

 恐る恐る視線を向けると俺の隣で寝る結芽の姿。


 「……!?」


 ビックリして寝返りを打とうとすると、柔らかい感覚が俺の背中に走る。

 布じゃ味わえない温もりと柔らかさ。

 上手いことポジションを変えて、改めて柔らかい感覚が走った法に視線を向けた。

 そこに居るのは漫画を抱えてぐっすり眠る四帆の姿。


 「なんだこれ……」


 寝起きの俺にはあまりにも衝撃の大きな出来事で頭の中で整理が出来ない。

 純粋に何が何だか分からないのだ。


 「うぅ……、おはよ」


 結芽は目を覚ます。驚きもせず、ただ目を擦るだけ。


 「なんでこうなったんだ?」

 「四帆が爽くんの所で寝ようっていうから二人で潜り込んだんだ。暖かかったし直ぐに眠くなっちゃった、えへへ」


 結芽は少し恥ずかしそうに結っていない髪の毛を撫でる。

 なるほど、つまり犯人はこいつってわけだ。

 朝からヒヤヒヤさせるのはやめて欲しい。

 俺はその思いから、四帆に掛けられている毛布を剥いだ。


 「寒い」


 目を覚まし、開口早々に文句を垂れる四帆。


 「良かったな俺で。じゃなかったら襲われてたぞ」

 「爽にそんな度胸ないの知ってるから」

 「尚更酷いな」


 大体シングルベッドに三人入ろうっていう考えが頭逝かれている。

 四帆に声をかけたのは間違えだった気がしてならない。

 もしも夏葵だったら……と思ってしまうが失ったものを考えたって意味が無いからやめる。

 俺は切り替えて部屋から出たのだった。

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