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爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常  作者: 九十九一


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日常96 調査。一旦休憩

 早速とばかりに、昼食を摂るべく、儂らはO3の食堂へ。


 中は小洒落たカフェテリアといった内装であり、中央がガラス張りになっており、そこには緑豊かなちょっとした庭園のようなものがあった。


 随分とまぁお洒落じゃな。


 儂と神は共に注文カウンターへ赴き、各々好きな料理を注文し、適当なテーブルに座り、早速食べる。


「おぉ、美味いのう、ここの料理」


 そして、一口パクリと口に放り込み、その美味しさに思わず笑みが零れる。


「そうだろう? ここの食事がなかなか美味しくてね、全然家に帰らなくてね」

「それは問題じゃろ」

「というより、ここの研究員の大半がそうだよ?」

「もっと問題じゃろ」


 さらっととんでもないことを言ったんじゃが、目の前のマッドサイエンティスト。


 じゃが、そうなってしまうのもわからんでもない。


 確かに、ここの飯は美味い。


 今儂が食べておるのは日替わり定食で、メインは唐揚げ。


 儂自身もよく唐揚げを作ってはおったが、これは負けとるのう……まぁ、十中八九ここに常駐するコックがプロなんじゃろうが。


 しかし美味いな……。


 たれの味を感じられる香ばしくもザクザクとした衣に、対照的に柔らかく、噛めば肉汁が溢れる肉はのなんともいえぬ美味よ。


 うぅむ、これが日替わり定食とはのう……。


 周囲を見れば、かなりの数の職員らしき者や研究員、儂と同じ発症者ららしき者たちが美味しそうに食事をしている光景が広がっている。


「のう、ここはたしか、発症者はいつでも入れるんじゃよな?」

「そうだね。二十四時間いつでも」

「……それはつまり、この食堂は二十四時間営業なのか?」

「そうだね。もちろん、シフト制で組んでるよ。何せ、私たち研究者と言うのは、誰もかれもが食欲なんか二の次! そんなことよりも研究打研究ぅぅぅ! みたいな、そんな感じの人が多いから」

「それ、体壊さんか?」

「そこは心配ないよ」

「そうなのか? では、しっかり寝ておるのじゃな」


 であれば安心じゃなぁ、などと小さく笑う儂じゃったが、


「いや? 薬士創一という、例の薬を開発した発症者の人が、睡眠欲をぶっ飛ばし、一時的に疲労や眠気を消し飛ばす薬が支給されてるんだよ」

「おぬしら人生を研究に蝕まれ過ぎではないか!?」

「ははっ」


 いや、『ははっ』じゃないじゃろ普通!


 なんとも頭が痛くなるが……なんじゃろうなぁ、この、ダメ人間感は。


 まぁ、いいわい。


「それで? 話の続きはせんのか?」

「おっと、そうだったね。ただ、さっきはああ言ったけど、実はさっきの話である程度は出し切ったんだよね」

「そうなのか」

「まあね。だけど、君の『成長退行』の話もしなきゃいけないが……それは検証時に話すから今はいいとして……んー、何が訊きたい? 別に能力ではなくとも構わないよ。私のプライベートの話とかでも」

「む、突然そう言われてものう……」


 どうやら、現段階でわかってることはある程度話しきったらしく、埋め合わせ、と言うわけではないじゃろうが、自身のプライベートのことを訊いても良いと告げて来る。


 ふぅむ、プライベートのう……。


 まぁ言われてみれば確かに、神とはこう、研究者と発症者、という関係性であるため、神のことは知らぬ。


 知っていることと言えば、儂と神が親戚同士であり、神は儂の家の分家に当たる、とのことくらいじゃが……というか、名前的にどう見ても儂の方が分家感あるのがなんとも言えぬが。


「あー……じゃあ、おぬしってこう、恋人とかおらんのか?」

「私かい? ははっ、まぁ興味がないと言えば嘘になるけど……生憎と、私は根っからの研究者でね。多分恋人は作らないんじゃないかな?」

「それは寂しくないのか?」

「んー、そうだねぇ……私自身、両親はもうこの世にいなかったりするんだけど」

「ちょい待ち? え? 重くない? いきなり重くない?」

「そうかい? まあほら、両親なんていつかはいなくなるものだし、私の場合はそれが速かった、それだけだよ」

「……なんと言うか、ドライじゃなぁ、おぬし」

「そうでもないさ。当然両親が亡くなった時はそれはもう大号泣だったし、しばらくは大好きな研究も、普段の一割程度しかできなかったし……まぁ、良くはなかったよね、精神的に」

「一割でも研究をするそのメンタルよ」


 あと、笑顔でする話じゃない、と言うこともセットで言いたい。


「割と早い段階で一人なってしまったけど、君の祖父――源十郎さんや、君の両親に色々と助けられてね。それで今の私がいるわけさ」

「ほう、爺ちゃんたちが……」


 大好きな爺ちゃんが、まさか親戚を助けておったとは。


 儂は色々爺ちゃんの影響を強く受けておるが……そう言う話を聞くと、やはり爺ちゃんは素晴らしい人物じゃったんじゃなぁ。


 鼻が高いぞ。


「だからかな? 私は心のどこかで強いつながりを得たくないんだろうね。失うのが怖いから」


 今度はいつもの笑みではなく、どことなく寂し気な笑みを浮かべる神。


 まぁ、両親を亡くせばそう思うのも不思議ではないか。


「しかし、随分とまぁ、自分を客観視できるのう。普通、そういうことはあまり気付かないのではないか?」

「ははっ、研究者たるもの、先入観で物事を考えるのはナンセンスさ。それに、客観視はどんな場面において重要だよ?」

「それはそうじゃな。客観視ができる者は、なんだかんだ強いからのう」

「そういうこと」


 なるほどのう、こやつにも色々あるわけか。


「……しかし、おぬしは美人じゃし、スタイルもいいじゃろ? ならば、男なども選び放題ではないのか?」

「ふふ、間違ってはいないね。私も私で、同僚の研究員からは食事に誘われたり、休日に遊びに誘われたりはするよ。まあ、どれも魅力的ではないし、何よりそんなことよりも研究がしたい、という気持ちが強かったからお断りしたけどね」

「なんと言うか……こう、なかなか辛辣じゃのう」

「そうかい? でも、言い寄られる、というのはなかなかに面倒なものさ。以前、セクハラを受けたこともあったし」

「そうか……って、ちょい待ち!? え、何? おぬしセクハラとかされとんの!? マジで!?」


 再び飛び出すとんでもない情報に、儂は再び驚きの声を上げる。


 笑顔でさらっと言う事じゃないじゃろそれ!


「うん、マジで」

「い、いやでもおぬしって、一応ここの責任者、じゃよな? なのに、セクハラ……?」

「まあね。O3も、なんだかんだ大きな組織だから、上層部にもそう言う人はいる、ということさ」

「だ、大丈夫なのか? その、トラウマとか……」

「心配してくれるのかい?」

「当り前じゃろう。おぬしにはなんだかんだ世話になったし、親戚じゃから。それに、おぬしとて女性じゃろ? トラウマになっても不思議ではあるまい」

「君は、本当に人が好いね。……なるほど、五人もお嫁さんができるわけだ」


 興味深そうに、しかしどこか嬉しさを感じさせる物言いに、儂は首を傾げる。


 なんか、妙に熱っぽい気がするが?


「……とはいえ、安心したまえ。問題のセクハラ親父は、消されたから」

「はっ?」

「これでも私は、O3内でも一、二を争うほどの研究成果を出していてね。だから、権力もあるわけさ。そんな私が、『セクハラされたから退職しようかと思うっているんだが、どう思う?』と言えば、一発さ」

「おぬし、強かじゃのう……」

「そうでなければ、この職場で研究はできないよ」

「……それもそうか」


 未だに100%の謎が解明されとらん病気であり、わからないことだらけで八方塞がりになることなんざざらじゃろう。そんな病気を研究するわけじゃから、当然ストレスも溜まろう。不思議ではないか。


「では、恋人はおらんとして……好みのタイプとかはあるのか?」

「好み? ふぅむ、考えたことはなかったが…………あー、まぁ、私の仕事に肝要であること、かな」

「おぬし、仕事人間じゃからな」

「そうだね。ちなみに、私は性別を気にすることはないよ?」

「へぇ、そうなのか」

「おや、反応が薄いね」


 儂の反応が思った以上に薄かったようで、少し目を丸くしながらもそんな感想を零す。


「まぁ、儂の旦那共がいい例じゃからのう……」


 実際、瑞姫が一番いい例じゃな。


 あやつはもともとロリコンじゃったからのう、故に今更感はあるし、それに儂自身は大して気にせんし、何より今更感あるし。


「そう言えば君はそうだった。どうだい? 女性同士での多重婚だけど、幸せかい?」


 いたずらっぽく笑いながら、今が幸せかどうか尋ねる神。


「そうじゃのう……ま、なんだかんだ好きじゃからな。色々とアレな目には遭うが、それでも楽しいぞ?」

「……そうか。いやなに、君のようにすぐに多重婚! というのは非常に珍しいケースでね。君とは逆の立場、女性から男性に変わった女性が、複数人の女性とのハーレムを築く、なんてことはあったけど、君が最速だね」

「お、おう、そうなのか……」


 そんな者もおるんじゃなぁ……。


 なんというか、親近感を覚えるのう。


「ちなみに、男同士で結婚した者はおるのか?」

「もちろんいるとも。とは言っても、その場合のほとんどがハーレムではなく、普通に一対一だけどね」

「……地味に心を抉られるんじゃが」

「ははっ、大丈夫さ。そもそも、複数人の伴侶がいるというのは、現代ではさほど問題はないし、何より少子化対策にはなるからね」

「なるほどのう……」


 しかし、儂ら発症者にしか多重婚が許されないのはなんとも言えんのう……いやまぁ、大方の理由は聞いとるがな。


 発症者自体は世界に千人しかおらず、希少な存在であることから、決して路頭に迷って死ぬことのないようにすることが目的らしいがな。


 しかし、実際はそれは建前で、国としては、


『君、すっごいモテるでしょ? だからハーレム築いて子供たくさん作って、国に貢献してよ』


 ということをこちらに期待してるらしい。


 それ、別に一般人でも良い気がするんじゃが……なぜなんじゃろうな?


「しかし、おぬしは恋人を作る気はあるのか?」

「あるかないかで言えば、あるね。研究が大好きで、研究のための人生と常日頃から思っている私でも、やはり寂しくなる時はあるものさ」

「そりゃそうじゃろうな。世の中、ずっと孤独でいられる者などいないじゃろうからな」


 もちろん、孤独が好き、という者もおるやもしれんが……本当の意味で独りでいるというのは無理じゃろうな。


「そうだね。だからまぁ、いつかは私も……などと思うんだけど、相手がいないからね」

「なんとも悲しいのう……」

「いやいや、これでも今の生活には不満はないよ? ただ、いればいいなぁ、程度で」

「そうか。まぁ、おぬしの人生じゃからな」

「あぁ。……とはいえ、一つ困ったことがあってね」


 話が変わり、神は悩まし気にそう切り出す。


「ふむ? どうしたのじゃ?」


 こやつでも悩むことはあるのか、などとある意味失礼なことを思いながら、何に困っているのかについて聞き返す。


「実は上や部下たちから『有休をいい加減取れ!』と言われていてね……」

「では、普通に有休を取ればよいのではないか? その様子からして、いつでも取れるのではないか?」

「まぁ、うん、取れるんだけど……休日って、何をすればいいのかな、と」

「うわぁ……」

「今までずっと研究研究研究! という生活だったものだからね、正直、何をすればいいんかわからない」

「えぇぇ……」


 神の困惑しながらの発言に、儂は呆れた声を漏らす。


 なんという社畜根性。


 現代において、ある程度働き方改革などによって、残業は減り、休みもある程度増えたらしいが、この職場ではあまり関係がないらしい。


 というより、神自身が休まずに研究しまくってるのが原因じゃろうなぁ、これ。


「実際、何をすればいいのかわかるかい?」

「そりゃぁ、布団でごろごろしたり、美味しい物を食べたり、遊びに出かけたり……じゃないか?」

「まひろ君はどう動いているんだい?」

「儂か? 儂は、そうじゃなぁ……主に、旦那共と茶をしばいたり、簡単な菓子を作って振舞ったり、ごろごろと布団の上でマンガやらラノベ、時代小説なんかを読んだり……まぁ、その程度かのう?」

「へぇ、なかなかに充実しているんだね」

「菓子を作る以外は、割と普通じゃと思うぞ?」

「……つまり、私は普通じゃないと言う事か」

「まぁ、そうじゃな」


 少なくとも、休日? 何それ美味しいの? 状態じゃからな、話を聞く限り。


 しかし、こうして見る限り、自分はどうでもよくとも、有休を消化しないことは割としょっちゅう言われてるっぽいのう。


 であれば、どうにかせねばならんわけじゃが……。


「ふむ……」


 などと考えておると、神が真剣に考えこむ素振りを見せ、なんとなく時間がかかりそうだと思った儂は、食べ終えた食器とトレーを持って返却口に持っていく。


 ついでに、楽しみにしておった和菓子を注文。


 今回注文した物は、おススメ! とでかでかと可愛らしいポップ体で書かれた饅頭。


 気になったので、十個ほど注文する。


 もちろん、儂だけで食べるのではなく、神にも渡すつもりじゃ。


 どういうわけかこの施設、研究員は別として、発症者相手にはタダみたいじゃからな、食事が。


 ありがたい限りじゃ。


「~~♪ ~~~~♪」


 美味しそうな饅頭を得てうっきうきになった儂は、鼻歌交じりにスキップをしながら席へ戻ると、そこには未だに考え込む姿を晒す神の姿が。


 まだ考えとったんかい。


 まあよい、とりあえず饅頭じゃ饅頭!


「どれどれ……はむっ! むぐむぐ……ん、んん~~~~~っ! ごくんっ。お、おおっ! こ、これは美味じゃのう!」


 早速饅頭を一つ手に取りパクリと齧ると、なんとも優しくも濃い甘さというなの幸せが儂の口内に一気に広がっていく。


 皮ももちもちしとるし最高じゃなぁ!


 よく、こしあん、粒あんで戦争が起こるが、儂は正直どちらでもよいし、何より和菓子は何でも美味いので、不毛じゃと思う。


 しかし、そんなことを言えば暴徒と化した、こしあん派と粒あん派が泣きそうになる勢いで詰め寄って来るので、決して口にはしないが。


 さて、次の饅頭を……


「……よし、決めた! まひろ君!」


 口に入れようとした瞬間、突然大きな声を上げて儂を読んだ神の声にびっくりして、饅頭が喉につっかえた。


「んぐぅっ!? んんっ!? ~~~~~~っ!」


 こ、呼吸が出来んっ!?


 の、飲み込もうにも喉の真ん中辺りで詰まっておるため、全く息が吐きだせないし、吸うこともできぬぅっ!


 しかも、圧迫感が凄まじく、涙もじわりと滲みだしてきた。


 ちょっ、く、苦しい! 苦しいいいっ!


「あぁ、すまない! ほら、お茶だよ」

 儂がじたばたともがいておると、神が慌てた様子でテーブルの上に置いてあった緑茶入りのコップを手渡し、儂はひったくるように緑茶入りコップを手にすると、喉に詰まった饅頭を押し流すべく、勢いよく緑茶を流し込む。

「ごくっ、ごくっ……ぷはぁっ!」


 幸い、緑茶によって饅頭が柔らかくなったため、何とか飲み込むことが出来、危うく饅頭で窒息、などというしょうもない死に方をせずに済んだ。


 餅だったら危なかった……。


「はぁっ、はぁっ……あ、あぁ、危なかったのじゃぁ……た、助かったぞ、神よ」

「いや、今の私が悪いから気にしないでくれたまえ」


 申し訳なさそうにする神。


 いやもう、ほんといきなり大きな声を出されたからほんとにびっくりしたわい……。


「ふぅ……して、突然儂の名を呼んでどうしたのじゃ?」

「なに、一つ君にお願いしたいことがあってね」

「ふむ?」

「今度の休日、私と一緒に出掛けてくれないかい?」


 にこっと、思わず恋に落ちてしまいそうな笑顔と共に、出かけてほしいと告げられた。


 これがもしも、儂に誰とも結婚しておらず、元の男の姿の際にこの笑顔を向けられておったら、儂も普通に好きになった可能性があるし、了承する旨の言葉を即答したじゃろう。


 しかし儂は、


「…………え、無理」


 普通に断った。


「どうしてだい!?」


 バンッ! と机を叩いて、ずい! と顔を近づける。


 おおう!? 正直、うちの旦那共とは系統が異なるタイプの美人故、すっごいドキドキするのでマジで止めてほしい!


「いや、ほんとに無理じゃ……」


 しかし、儂はやはり無理と答える。


「理由は?」

「……儂の旦那共、なんか儂が他の異性――あー、いや、同性? と一緒に出掛けるとわかると、すぐに浮気を疑って来てのう……下手すりゃ、儂がその夜にとんでもないことをさせられた挙句、次の日死ぬ」

「その遠い目からお察しというものだね。君、普段から割ととんでもない目に遭っているね?」

「……まあ、な」


 思い出すだけでも恥ずかしくなるし、思わずその……まぁ、アレしてしまうが……くそぅ、あやつらによって、儂の体が改造されとるような気がして、なんとも言えん気持ちになるわい……。


「どうしてもダメかい?」

「うむぅ……一応、旦那からの許可がもらえれば問題は無いが――」

「よし、では早速連絡しよう」

「ちょぉ!?」


 善は急げと言わんばかりの行動力により、神は白衣のポケットからスマホを取り出すと、どこかに電話をかけ始めた。


「――もしもし、初めまして。私は神祥子と言って、現在まひろ君の検査を担当している者でね。一つ、許可を貰いたいことがあり、電話させてもらったよ。それで、突然なんだが、彼――いや、彼女か? 彼を一日貸してはもらえないかな? 少し、事情があってね。これこれこういうわけで……そうだね。それで……あぁ、うん、なるほど。ふむ……そう言う事なら別段問題はないし、私自身も嫌いではない。どちらかと言えば好ましくはあるかな。……ははっ! さすがに、今すぐ、と言うわけにはいかないのでね。とりあえずは時間を置きたいところだ。そうだね……中旬くらいを目安にしようか。私もそろそろ、寂しくなってきたし、ね」


 ……なんじゃろう、すっごい不穏な会話が繰り広げられ取る気がするんじゃが……なぜ、嫌いじゃない、とか、好ましい、とかそんなセリフが出てくんの? しかも、今すぐは無理って何!? 時間を置く!? マジでなんの会話しとんのこれ!?


「――あぁ、OKだ。ま、私もその方がやりやすいと言うのもあるし、彼女は面白い。とはいえ、一応はその日に確認はするさ。気持ちは大事なのでね」


 ……本当に、何の会話?


「……了解した。それで構わないよ。……あぁ、では一日借りるよ。え? 電話を代わってほしい? わかった。――まひろ君、代わってほしいってさ」

「……ちなみに、誰じゃ?」

「羽衣梓家のご令嬢」

「猛烈に嫌な予感がしてきたァッ!」


 電話の相手が瑞姫とか、明らかにヤバイ案件じゃろこれぇ!?


 え、まさかとは思うが、例の紙を用意する気ではあるまいな!? え、マジで!? 勘弁して!?


 儂は柔らかい笑みを浮かべてスマホを差し出す神からスマホを受け取り、恐る恐る耳に当てる。


「も、もしもし……

『手が速いですね! まひろちゃん!』

「何が!?」

『ふふ、本当に罪作りなおロリ様ですね! とりあえず、OKしましたので、少しでも休ませてあげてください』

「なんか誤解しとらんか!? ねぇ、何を話したんじゃ!? 頼むから教えてくれんか!?」

『とりあえず、土曜日は予定があるとのことですし、日曜日でいいですよね! それでは、この後の調査、頑張ってくださいね! それで、そろそろ次の授業の時間ですので、これで! それでは!』

「み、瑞姫!? 瑞姫ぃ!? ……き、切れた」


 ま、まずい、ものすごい嫌な予感がするっ……!


 今すぐにでも神の申し出を断らなければ、何か取り返しのつかない事態に陥る気がしてならぬぅっ!


 し、しかし、瑞姫に話が回ってしまった以上、儂の旦那共で会議的な物が開かれることは事実……つまり! 儂に逃げ道など存在せず、神の頼みを聞かねばならぬということ!


 ……死ねと!?


「というわけで、許可が出たから、頼んだよ?」


 こ、断れ、断わるんじゃ儂ぃっ……!


「……日曜日で、良いか?」

「あぁ、もちろんだとも」


 ……儂に断る、ということはできなかったっ。


 だって、神の顔がすっごいうっきうきなんじゃもん! 休みを夢想してか、すっごい楽しそうなんじゃもん! それを見て、儂が断るとか……無理無理無理いいぃぃぃぃ!


 くそぅ、何故こんなことになってしもうたのか……おのれ、瑞姫めぇぇぇ……。


 現在、学園で授業を受けているであろう瑞姫への恨み節が儂の心の中にしばらく居座り続けた。

 どうも、九十九一です。

 なんだろう、昔の書き方に戻った気がします。まぁ、この作品なんてこんなもんですよね!

 次回は、まあ、気長にお待ちください。多分早めに出せるかな? とは思うので。

 では。


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