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爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常  作者: 九十九一


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日常92 打ち上げ。まだ平和な状態

※ 長くなったので、今日は分割でもう一話投稿します!

 というわけで、一度家に帰宅後、私服に着替えて我がバイト先『喫茶 友愛』に到着。


 最後に来たのは……あー、ゴールデンウイークの時じゃったか?


 一ヶ月近くは来とらんのか。


「私たち以外は集まってるみたいよ」

「なんと。まぁ、今の我が家は広いからのう……」


 正門から屋敷まで、地味に距離あるし。


 というかあれ、日常的に住むのであれば普通にめんどくね? やはり、普通の家で良い気がするのじゃが……。


「これ以上遅れるといけないですし、行きましょうか」

「そうじゃな」


 尚、今儂はアリアに抱っこされておる。


 交代、だそうじゃ。


 決め方は……ジャンケン。


「えへへ~」


 当の本人はデレデレじゃが。


 そんなこんなで、雑談はほどほどに、見せの中へ入る。


「いらっしゃいませ! ……って、桜花先輩じゃないっすか! え、しかも先輩の嫁――」


 中へ入ると、元気いっぱいないかにも接客らしい声と共に、同僚の高畑が出迎えた。


「「「「「旦那です♪(笑顔の圧)」」」」」


 その直後に、嫁とか言って無言の圧をくらったが。


「だ、旦那さんも一緒なんすね! で、でも今日って、水無月学園のとあるクラスが貸切ってて……」


 申し訳なさそうに、やんわり断ろうとする高畑。


 あぁ、そう言えば別の学校じゃし、何より他校の人間の所属するクラスなど、知っとるわけないか。


「いや儂ら、そこのクラスの者じゃよ。打ち上げじゃ、打ち上げ」

「あぁ! なーんだ、桜花先輩たちもそうなんすね! じゃ、こちらへどうぞ!」

「うむ」


 高畑に案内され、打ち上げコーナーへ。


「おーっす、来たぞー」

「やぁやぁまひろちゃん! それに、音田さんたちも待ってたよ!」

「お、来たか、まひろ」

「お疲れ様です、まひろさん」


 適当に声をかけると、安助、健吾、優弥が真っ先に声をかけてきた。


 どうやら、健吾と優弥の方はダメージが抜けたらしい。


『あ、まひろちゃん一家だ!』

『きょうは時乃さんの抱っこかー』

『羨ましいっちゃ羨ましいけどよ、あれだと……』

『わかる。ただの姉妹』

「妻婦だよー」

「いやアリアよ、この状態でそれは無理があるぞ?」

「えへへー」


 いや、えへへて。相変わらず可愛いのう。


「ってか、生徒会長に、桜小路先生も来たのな」

「うふふ~、生徒に交じるのは少しだけ恥ずかしいけどね~」

「ま、家族なのでな。OKであるならば、参加するというものよ。……というか」


 そう言いながら、儂はちらりとましろんの方を見る。


「……ご飯、楽しみ」


 今にも繋げたテーブルに乗る料理を見て、とびかかりそうなくらい、目を血走らせながらガン見するましろんがそこにはおった。


『ひっ、あ、悪魔だ……暴食の悪魔がいるぞぉ!?』

『なんだと!? おい、厨房の人数を増やせ! 全部食いつくされるぞー!』

『誰か! 店長呼んできて店長おおおおぉぉぉぉぉっっっ!』

『死にたくねぇ! 俺死にたくねぇ!』


 同時に、ましろんの姿を見た店員たちがパニックを起こしておった。


 おぬしら……。


「まひろ、なんか生徒会長、怖がられてね?」

「何かあったんですか?」

「あー、いや、これに関してはまぁ……見りゃわかる」

「「???」」


 さすがに堂々と言うのはちょっとな……下手に言えば、同僚共のトラウマがさらに掘り起こされそう故、ここは黙っておくが吉じゃろう。


「まいいや。ってか、時乃、いい加減まひろを下ろしたらどうだ? さすがに打ち上げだぜ? まひろも自由に移動したいだろうしよ」


 ましろんのことを訊くのを辞めたと思えば、健吾が儂を気遣うセリフをアリアに言ってくれた。


 おぉ、持つべきものは幼馴染……!


「あ、それもそうだね! じゃあ、はい、まひろ君」

「うむ、ありがとな……うぅむ、やはりまだ疲労感があるのう……」

「まぁ、まひろさんは体も小さいですし、疲労の溜まり方も他と違いますから」

「ははっ、そうじゃな」


 小さい故の疲れ方、じゃな。


 ふくらはぎとかぱんぱんじゃよ、マジで。


「さてと! メインのまひろちゃんたちが来たことだし……まひろちゃん、乾杯の音頭をお願いしてもいいかい?」

「儂か!? いやここは、おぬしか美穂辺りがいいじゃろ。美穂なんてほれ、クラス委員じゃし……」

「私はまひろがいいと思うわよ? だってほら、今日のMVPだし」

「ぐぬっ」

「まひろちゃん以外いませんよね?」

「いやっ」

「頑張って!」

「軽くない!?」

「……私は学年ごと違うけど、まひろんは一番頑張った。だから、まひろんがいいと思う」

「なんかまとも!?」

「ひろ君なら大丈夫~!」

「何が!?」


 くそぅ、気が付けば他のクラスメートも期待の眼差しで見ておるっ……!


 しかも、よくよく見れば同僚共もニヤニヤしとるし!


 おぬしらトラウマで頭やられとったんじゃないのか!?


 くっ、人の不幸を見て完全に回復しておるぞあれ!


 ……はぁ。


 儂は一度肩を落とすと、にんまり顔の安助から飲み物を受け取る。


「あー、こほんっ! ……まぁ、なんじゃ。今年の体育祭は儂らの優勝と言うことで、その……あー、気が利いたこととか言えぬぅっ! 乾杯じゃぁぁぁ!」

『『『かんぱーい!』』』

「あんた、それでいいの?」

「し、仕方ないじゃろ!? 突然で何を言えばいいのかさっぱりなんじゃよ!」

「まぁ、仕方ないわよ~」

「あぅぅ、いきなり撫でるでなふにゃああぁぁ~~~……」

「まひろちゃん、すっかり刷り込まれましたね」

「ちくしょーめ!」


 な、なぜじゃっ、なぜ結衣姉のなでなでからは逃れられないのじゃ!


 おのれぇ、結衣姉の母性!


「はい、ひろ君。あーん」

「あーん……ってぇ! 何故抗えんっ! おぬしやっぱおかしくね!?」

「うふふ~♥」


 笑いだけって怖いんじゃけど!


 くそぅ、周囲も微笑ましいものを見るような目を向けおって……!


「料理の追加でーす」


 と、ここで高畑が現れ、追加の料理を持って来た。


『って、あれ? もう料理が来たんだけど? まだあるはずじゃない?』

『それがさー、気が付いたらすんげぇ減ってんの。見ろよあれ。あんだけあった大皿のサラダが欠片一つ、ドレッシング一滴たりとも残ってねーの』

『すごっ! 誰が食べたらああなるんだろう』

「……おい、ましろんや」


 クラスメートの話が耳に入るなり、儂はジト目をましろんに向けながら話しかけると、そこにはもっきゅもっきゅと何かを食うましろんの姿があった。


「……むぐむぐ……なに?」

「おぬし、もうちょい自重した方がええじゃろ」

「……ん、それもそう。これは失礼。美味しくてつい」

「いやまぁ、わかるけども」


 だとしても、もう少しこう、他の者を考えてほしいと言うか……。


「……大丈夫。一応、大量に食べても問題ない物ばかり選んでるから」

「そうなのか?」

「……ん。人気が出ることが予想される大皿は、少ししか取ってないから」

「そ、そうか。ならばよいが……」


 ……しかしましろん。その山盛りになった取り皿が数枚あるのは一体……。


 ま、まあ、気にしたら負けと言うことで。


「桜花。楽しくやってるか?」


 まひろんに対して苦笑いを浮かべておると、葛井先輩が話しかけてきた。


 相変わらずでかいのう。


 着流しとか似合いそうじゃな。


「おぉ、葛井先輩ではないか。うむ、見ての通りじゃ」

「そうか。それならよかった。しかし、相変わらず食うな、お前の旦那の一人は」

「いやー……はは、申し訳ないのう、うちの旦那が……」

「いや、気にしなくていい」


 ふっと珍しく笑みを浮かべる葛井先輩。


 うぅむ、こやつが笑うとレアな物を見たと少し嬉しくなるのう。


「っと、そう言えば儂らがいなくても大丈夫か? 特に高畑とか」

「はは、問題はない。俺も手が空いている時はホールも兼任しているからな。おかげで、大忙しだが、店長の計らいで時給をアップしてもらってな」

「ほぅ! そいつはよかったのう! しかし、なんとも申し訳ない話じゃのう……家庭の事情で休ませてもらっとる身としては」

「いや、そもそもお前たちは働き過ぎだ。今は高校生なんだ。もう少し学園の方や私生活を優先した方がいい。お前はぐーたらな割には、そう言うところがある」

「お、おう、そうか。すまんのう、先輩よ」

「いいさ」

『葛井せんぱーい! そろそろ厨房を手伝ってくれませんかねー!?』

「おっと、呼ばれてしまったらしい。また手が空いた時にでも話そう」

「うむ。待っとるよ」


 そんなやり取りを最後に、葛井先輩が厨房に引っ込んでいった。


 うぅむ、さすが、気遣いのできる男よ。


『ねぇねぇまひろちゃーん』

「ん、なんじゃ?」


 儂と葛井先輩の会話が終わったことを見計らったかのようなタイミングで、クラスメートの女子数人が儂の所へやってきた。


『ねぇねぇ、さっきの男の人誰!? すっごくカッコよかったんだけど!』

「む? あぁ、葛井先輩か?」

『葛井さんって言うんだ』

『ねぇねぇ、どんな人なの!? 彼女とかいるのかな!?』


 あー、なるほど。


 どうやら、葛井先輩が気になるらしい。


 男の儂から見ても、葛井先輩は男前じゃからのう、気持ちはわからんでもない。


「いや、彼女はおらんよ」

『ほんと!? じゃあじゃあ、アタックしても大丈夫かな!?』

「問題ないと言えば問題ないが……正直、葛井先輩は競争率が高いぞ?」

『え、そうなの?』

「うむ。葛井先輩は同僚からもモテておってのう、水面下では葛井先輩を狙った熾烈な女の争いがあると聞く。それに、葛井先輩目当てでこの店を訪れる者もおる。故に、かなりの競争率じゃぞ。あと、葛井先輩は大学生じゃ」

『そっかー……競争率高いのかー』

『でも、私はアタックしてみる! だって、あんなにカッコいい人なんだもん!』

『わかる。あたし、通ってみよっかなー』


 一人は少しだけ残念そうにしておったが、残る二人は逆にやる気を見せていた。


 ふぅむ、恋は戦争と言うことかのう。


「ま、儂は止めはせんよ。とりあえず、頑張れ、とだけ」


 とはいえ、人の気持ちを儂が止めていい道理などないし、応援はするがな。


 同時に、葛井先輩にも同情するが……。


『うん! ……それにしても、まひろちゃんってもしかしてここでバイトしてるの?』

「む? あぁ、そうじゃよ? というか、儂だけでなく、アリアもここの店員じゃぞ」

『え、そうなの!?』

『あー、だからさっきから時乃さんとまひろちゃんって、ここの人と良く話すんだー』

「まあの」

『……今って、バイト募集してるのかな?』

「バイトか? まぁ、しとるとは思うが……ま、訊いてみた方が早いか。んーと……お、いたいた。おーい、店長やー」


 儂が店内を見回し、目的の人物を発見し少しだけ声を大きく出して呼ぶと、店長が儂の声に気付きこちらへ向かってくる。


「お、まひろ君も来てたのか! それで、どうしたんだ? 何か用か?」

「うむ。なんでも、この者がバイトを募集しているのか、と訊いてきてのう。今ってどうなんじゃ?」

「ほう! バイト! いやぁ、うちとしちゃぁ全然助かるってもんよ! お前ら二人が一時的に抜けてはいるが、それでも人手が足りなくてなー。つーか、お前たちの抜けた穴がでかすぎる。今は猫の手も借りたいくらいだ」

「……だ、そうじゃ……って、どうしたんじゃ?」


 バイトを募集しているか尋ねてきた者に大丈夫だと告げると、そこには顔を青ざめさせる女子が三名おった。


 一体どうしたのかと思うと、一人が口を開く。


『ね、ねぇ、まひろちゃん? こ、この人って、その……や、ヤクザさん、じゃない、よね?』


 ……あー、なるほどのう……。


 ようはあれか、店長の顔が怖いと。


 まぁ、わからんでもないどころか、普通にそこは同意する。


 その店長の方は……


「……オレ、やっぱ怖いのか……」


 ダメージを受けていたが。


「いや、たしかに店長は超が付くほどの強面で、ヤクザみたいで、子供が泣いて逃げ出しそうな顔をしてはおるが、趣味は可愛い物じゃぞ? ほれ、あやつの身に付けるエプロンなんかは自作じゃし」

『え、そうなの!?』

『そ、その顔で可愛い物を……!?』

『可愛い!』

「そ、そうか? なんか、素直に褒められてんのか、怖がられてんのかわからんが……まぁ、嬉しくないわけはないな! あと、まひろ君の時給は減らす」

「いや儂、今は働いとらんぞ」

「くっ、それもそうだった! ……まいいや、で、バイトがしたいのか?」

『え、えと、バイトとかしたことないですけど……大丈夫ですかね?』

「いやいや、それくらい問題ないって! ってか、それを言ったらうちの時乃なんか、日本に来たばかりで働き始めたからな!」


 がっはっは! と豪快に笑うと、話声が聞こえていたのか、アリアがこちらに気付くなり近づいてくる。


「んー? あれ? 店長がいるー! 店長、あたしの話してました?」

「おう! 今、そこの女子高生がバイトをしたいと言ってな! で、未経験らしいんだが、お前の話をしてたんだよ」

「あー、なるほどねー。大丈夫だよー。ここの人たちはみんな優しい人たちだし、何より店長はいい人だよ!」


 店長の話を受け、事情を理解したアリアは、楽しそうに笑いながらここのことを話す。


『そ、そうなの?』

「うん! あたしはまひろ君に日本語とかお仕事とか、色々教えてもらったし!」

『へぇ、まひろちゃんが……』

『ふむふむ、これは恋バナの予感?』

『是非とも詳しく!』

「ちょっ、なんか恋バナの臭いを嗅ぎつけた途端、獰猛な目に!?」


 怖い、怖いぞ女子!


「ということなんだが、どうする? バイト」

『え、じゃあ……やってみたいです!』

「おう了解。じゃ、明日は時間大丈夫か? 明日じゃなくとも、別日にしてくれりゃそこで研修するから」

『明日でも大丈夫です!』

「了解だ。なら……そうだな、明日の朝9時にここに来てくれ。そこで色々と説明する」

『わかりました! よろしくお願いします!』


 そんなこんなで、クラスメートの女子がバイトをすることになった。


 しかし、こうもあっさりだとあれなので、一応は店長に聞いてみる。


「店長よ、この場のノリで決めても良いのか?」

「問題ないさ。ってか、まひろ君の時だって、その場のノリだったろ? そう言う事だ。うちはかたっ苦しい面接なんざないしな」


 ははは、と笑う店長を見て、確かにと思い直す。


 儂の時とか、飯を食い終わった後にバイトに誘われたしのう。


 それに、高畑とか葛井先輩、他にもここで働くスタッフたち相手に、店長は面接らしい面接をしなかったように思う。


 ……というか、儂も儂で、面接官に駆り出された時とかあったし。


 あれ、良いのかのう……。


「んじゃ、オレは裏に戻るわ。なんかあったら言ってくれ」

「うむ。そうさせてもらう。……とは言っても、暴食の悪魔とか呼ばれるうちの旦那がいるが……」

「……明日、開店できっかなぁ……」

「まぁ、大丈夫じゃろ。知らんけど」

「まひろ君、一応は止めてくれよ?」

「一応はな」


 止められるかはわからんが。



 店長と別れ、儂は別のテーブルへ。


「あー……羨ましい……」

「む、どうした、高畑よ」


 その途中、打ち上げ場所から少し離れた位置にあるカウンター席にて、高畑が机に突っ伏して死んでおった。


「あー、桜花先輩じゃないっすか。どうしたんすか?」


 マジで覇気がないのう。


「そりゃこっちのセリフじゃ。おぬし、仕事はどうした?」

「いやー……ハハハ、なんか、うちの学校と比べてこう、虚無ってるというか……」

「ふむ?」

「いやほら、うちって普通の公立高校じゃないっすか?」

「そうじゃな」

「で、桜花先輩たちは私立校っすよね?」

「まぁ、そうじゃな」

「……そこっすよそこ! やっぱ、公立校と私立校って違い過ぎません!? 具体的には生徒のノリとか、学校ノリとか、あと資金とか!」

「あー……まぁそう言う話はよく聞くのう」


 公立高校に進んだ友人曰く、楽しいのか楽しくないのかいまいちよくわからん、とか言っておったし。


 反対に、私立の学校に行った友人なんかは、結構イベントが派手で楽しいと連絡が来る。


 稀に公立でもそう言った部分に力を入れる学校もあるみたいじゃが……そう言った学校は少ないじゃろうな。


 しかし、それだけが学校ではないとは思うんじゃがなぁ。


「がむしゃらに学校を楽しめば良いではないか」

「いやそうなんすけどねー……」


 うぅむ、これは深刻じゃな。


 これは、あれか。


 目の前できらきらとした青春を楽しんどる者たちを見て、自分の青春が灰色であると思ってしまった結果、的なことじゃろうか。


 こればっかりは、どうしようもない気がするが……。


「ひろ君、どうかしたの~?」

「おぉ、結衣姉か。……お、丁度良い。結衣姉よ、このバカに助言をしてはくれまいか?」

「助言……それは、教師として~? それとも、ひろ君の旦那として~?」

「前者に決まっとるじゃろ。むしろ後者の意味はなんじゃ」


 旦那としてとか、今のこ奴にそんなことをすればオーバーキルで死ぬぞ!? 血反吐吐いて!


「それで、何を言えば~?」

「うむ。どうやらこやつ、私立校と違い、公立校が退屈、みたいなことを言っておるんじゃよ」

「正確に言えば、格差が酷いって話っすよ……なんかもっとこう、楽しいことがあってもいいじゃん! みたいな……」

「なるほど~……。そうね~、私は今年教師になったばかりだから、偉そうなことは言えないけれど~……まずは自分から行動することが大事だと思うな~」


 儂と高畑の話を聞いて、少しだけ間を空けてから結衣姉が話し始める。


「……えっと?」

「人生は自分の物であって、他の誰かの物じゃないわけよね~? だから、人生を豊かにするも、腐らせるも自分次第なわけでしょ~?」

「そ、そうっすね」

「そこに環境はあまり関係ないと思うの~。お金持ちだから幸せとは限らないし、貧乏だから不幸とは限らないわ~。一番大事なのはその時の気持ちだからね~。何事も、自分自身が自由であること、目標を持つこと、それが楽しい日常にするのに必要なことなんじゃないかな~って、私は思うな~」


 ……いやまぁ、すっごいいいことを言ってるとは思うんじゃが……なんというかこう、おぬしの家、普通に金持ちやん……。


 いいことを言っているはずが、結衣姉の家を知る身からすれば、嫌味にしか聞こえん気がするんじゃが。


「……なるほど。つまり、彼女を作りたければ全力で努力しろってことっすね!」

「おぬしの悩みの行きつく先は結局そこかい!」

「おっしゃー、なんか元気出てきた! あと、普通に美人な人に励まされるとクッソ嬉しい!」

「うふふ~、ありがとうね~」

「おぬし、儂の旦那に色目を使うでないぞ。殺すぞ」

「こわっ!? 試験勉強を手伝ってもらった時以上にこわ!? ってか、純粋な殺意は止めてくれません!?」


 いやまぁ、だって儂の旦那じゃし……。


 色目を使われたらクッソ腹立つじゃろ、なんとなく。


「まいいや。ありがとうございました! よーし、仕事頑張るかー!」

「まぁ、おぬしがそれよいならよいか。……っと、結衣姉よ、ありがとうな」

「いいのよ~。ひろ君のお友達だもんね~」

「んー、まぁ、そうなるか。同い年じゃし、同僚じゃし、仲良かったし」


 学外での友人と言えば、高畑と葛井先輩辺りかのう?


 他の同僚は……まぁ、知り合い以上友人未満、みたいなところかの?


 決して仲が悪いわけではないがな。



 高畑の悩みを解決? したところで、儂は元の場所に戻って来る。


「おーっすまひろー」

「楽しんでますか、まひろさん?」

「おう、健吾に優弥。うむ、楽しんどるよ」


 戻って来ると、健吾と優弥に話しかけられる。


 うぅむ、やはりこやつらといると、落ち着くのう……。


 なんというかこう、あやつらと一緒にいる時からは得られぬ癒し成分? とでも言うべきものを摂取できる気がする。


「まあよい。……っと、そう言えば近々遊びに行くと話して居ったが、今週次の土曜日はどうじゃ?」

「お、いいね! 俺は全然OKだぞ」

「僕も問題ありません」

「よし、では土曜日に行くとしよう」


 久々の男同士の遊びじゃ。


 うむうむ、楽しみじゃのう。


「しかし、どこへ行くかのう」

「あー、そうだなぁ……どうせなら遠出するか? 昔は秋葉とか行ってたしよ」

「お、それはいいのう。儂も久々に行きたいところじゃな。優弥はどうじゃ?」

「問題ありませんよ。望むところです」

「では、行こうぞ。……しかし、ふぅむ」

「どうしたんだ? まひろ」

「あ、いや、ちとな」

「何か気になる事でも?」

「いや、そう言うわけではない。そうさな……考え事じゃ」


 秋葉に行くと言うのならば、この姿は少々不都合ではないか、と思ってしまった。


 元の姿の男同士、と言う状況であれば問題はなかったとは思うんじゃが……行く場所が場所じゃからのう。


 さすがに、この幼女状態では入ろうと思った場所にも入れないのではないか、と思うわけで。


 ふぅむ……ならば、また大人に……いや、この場合もう少し成長させ、大学生ほどにしておくべきか。


 よし、そうしよう。今決めた。


「なんか、まひろがにやけてるんだが」

「何か良からぬことでも考えているんですかね?」

「さぁな。でもま、久々に遊べるんだし、全然構わねぇけど!」

「ですね。最後に遊んだのは春休みですし、実に二ヵ月ぶりといったところでしょう」

「うむ、そうじゃな。儂も実に楽しみじゃ」


 いやぁ、久々の遠出……何を買おうかのう。


 最近はまったく金を使わんかったから、余裕がかなりあるし、ゲームか何かでも買うのもありじゃな。


 あとはゲーセンで散財でもするかのう!


「んじゃ、朝十時くらいに駅集合でいいか?」

「問題なしじゃ」

「了解です」

「じゃ、朝十時に駅な」


 よしよし、当日の時間も決まったな。


 いやぁ、楽しみじゃのう、男同士の遠出。


 外見は女じゃけど。


『はぁ、はぁ……!』

『くっ、やっぱりまひろちゃんがああなってしまったことが悔やまれる……!』

『けど、笹西君は健在だし……』

『じゃあ、想像で行きましょう』

「「「………………うぼぁ」」」


 すぐ近くから聞こえてきた女子の会話の内容に、儂ら三人は揃って口から魂が飛び出すかのようなダメージを受けた。


 ……どこにでも湧くのう、あ奴ら。

 どうも、九十九一です。

 前書きにある通り、今回書いた部分が、かなり長くなってしまったので、今日は分割で投稿します。

 時間は17時ですので、お待ちくだせぇ。

 では。

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