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爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常  作者: 九十九一


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日常88 応援。チアコスを着せられるまひろ

「も、戻ったぞー……」


 二人三脚が終わり、儂はましろんや先に戻っていた瑞姫とアリアの元へ、美穂におんぶされながら戻る。


 正直、疲労感が半端ないが、まぁ、まだマシな方じゃろうな、これは。


 二人三脚は合計四百五十メートルであるからして。


 ……いや、普通にきついな、うむ、キツイ。


 じゃが、スウェーデンリレーのような長距離ではないからマシと言えばマシ、か。


「……お疲れ様。まひろん、大丈夫?」

「いやー、見ての通り、疲労が、な。しかしまぁ、充足感のある疲労と言ったところか」

「まひろ君がそう言うなんて珍しいね?」

「まぁ、楽しかったのは事実じゃからな」


 儂が微笑みを浮かべながらそう言うと、


「あ、まひろちゃん、二人三脚も終わりましたし、そろそろいつもの姿に戻って下さい」

「おぬし、空気を読んでくれんか?」


 ほんとにこう、こやつは空気を読まんと言うか……ってか、どんだけロリがいいんじゃい。


「いいじゃないですかー! だって、まひろちゃんと言えばあのお姿! むしろ、今のお姿もいいとは思ってはいますが、やはりあちらこそがまひろちゃん本来の魅力を100%以上に引き上げるお姿なわけで。むしろ、あの姿こそ自然であり、当然だと思うのです! 今のお姿も十分魅力的ではありますが、やはりあのお姿が最! 高! なわけですので! というわけですので、早く戻ってください。早く早く! さあさあ!」

「おぬしの熱意が怖いわっ!」


 末期じゃろ、こいつのロリコンは。


 正直、目を血走らせながら言う姿とか、マジで怖いんじゃけど。


 ホラーなんじゃけど。


「……はぁ。まあ、そろそろ戻るつもりではあったし、別にいいんじゃがな」


 溜息一つ、呆れ一つ、儂はそう零しながら元の姿へ戻る。


「……っと、戻ったな……って、あ」


 その瞬間、儂は自分のミスに気付く。


 そう、服である。


 今現在身に付けていた体操着と言うのは、成長した体に合わせた物だったわけじゃ。


 特に、胸は大きくなっておるし、身長も二十センチほどは高くもなっておる。


 これがどういうことか……そう、服のサイズが合わず、ずり落ちることになるわけで……


「やっべ、服が脱げてしもうた」


 つまるところ、ズボンとパンツがずり落ちてしまったわけじゃな。


「ちょっ、あんた何呑気にそんなこと言ってんの!?」

「あわわわわっ! い、急いでまひろちゃんを隠しましょう! アリスティアさん、真白さんも!」

「う、うん!」

「……了解」


 美穂が儂にツッコミを入れ、瑞姫が慌てて儂を隠すように指示を出し、指示を出されたアリアとましろんの両名が儂の姿を周囲から見えないよう隠す。


「いやー、忘れておったわい。まぁ、仕方ないじゃろうな、これは。はっはっは、ミスミス」

「あんた、借り物・借り人競争ではすんごい恥ずかしがってたくせに、なんで今の状況は問題ないのよ」

「いや、正直獣美少女状態に、首輪を着け、更にはドSな家族と母親と一緒にゴールすることに比べれば、裸の方がマシじゃろ」

「まひろ君、変なところで羞恥心が薄いよね」

「まぁ、儂じゃし」


 この辺りはおそらく、この容姿も関係しているとは思う。


 この姿になってから二ヵ月と少し経っておるが、色々とこの体に精神が引っ張られておる気がするのじゃ。


 一例を挙げるとするならば、先ほどの二人三脚にて、儂がアリアと走っている中転倒してしまった際、きゃぁっ! とか言ってしまったのがいい例じゃな。


 事実、中身は男ではあるものの、どこか女らしさ、と言う部分も出てきてしまっておる。


 では、恥ずかしさを覚えるのでは? と思うかも知れぬが……そもそも儂の容姿、明らかに小学生ぞ? 中学生や高校生、大人とは違い、ハッキリ言って羞恥心が薄いようなもん。


 バイト先の常連に、学童の仕事をしておった者がおったんじゃが、割と平気でスカートの状態で激しく動き回るもんじゃから、パンツが見えてしまう時がある、とか言っておった。


 しかし、注意しようにも色々とセクハラとかにならないか? ということで言えなかったようじゃが……つまり、そう言う事じゃろう。


 この姿が子供であるが故の薄さ、ということじゃろうな。


 実際、あの姿でのあの競技は普通に恥ずかしかったからのう……いや、そもそも首輪を公衆の面前で着けるとか、それなんてプレイ? とか言わざるを得ない状況じゃろ、マジで。


 それに、儂自身は羞恥心が薄い方じゃったからのう。


 故に、余計に薄くなったのかもしれぬのう……。


「ひろ君~!」


 と、ここで後方から結衣姉の声とたたたっ! という足音が聞こえてくる。


「ひろ君、これ着替えよ~」

「すまんな。しかし、早かったのう。まだ連絡してから五分ほどしか経ってはおらんが」

「ひろ君の可愛らしい姿を見られるわけにはいかないもの~!」

「お、おう、そうか」


 要約すると、『ひろ君の裸を見られたら周りに何するかわからない』と言ったところじゃろうなぁ。


 顔がそうじゃし。


 ともあれ、儂は結衣姉からこの体用の体操着を受け取り、いそいそと着こむ。


「ふぅ、これで良し、と」

「あー、焦ったー……あんた、もう少しは羞恥心を持った方がいいわよ、ほんとに」

「あちらでは恥ずかしがりますのに……」

「あれは色々おかしいからな!?」


 というか、外でそっちの話を出すでないわい!


 まったく、好きあらば口を滑らせおるのう……。


「……まひろん、疲れはどう?」

「む? あぁ、そう言えばなんともないのう……なぜじゃろうか?」


 ましろんの指摘で気づかされたが、そう言えば疲れがきれいさっぱり消えておった。


 先ほどまで、もうむりぃ、みたいな状態であったと言うのに、どういうことじゃろうか?


 ふぅむ、やはり次の検査の時に色々と知りたいものじゃな。


「なんというか、便利な体……いえ、この場合能力なのかしら?」

「おそらくな」


 ま、この辺りは検査に期待じゃな。


「して、次の種目はなんじゃ?」

「安心しなさい、次とその次はスウェーデンリレーよ」

「ほう! ならば休んでおっても問題ないわけじゃな!」

「……そ、そうね」

「そうですね!」

「だ、だねー」

「……ん、多分」

「大丈夫よ~」

「な、なんじゃ? その瑞姫と結衣姉以外の微妙な反応は……」


 美穂はなぜか目を逸らしながら曖昧な笑みを浮かべ、瑞姫はものっそい嬉しそうな表情を浮かべ、アリアも美穂と同じような表情を、ましろんはいつもの抑揚の少ない言葉からさらに抑揚が無くなり、結衣姉はなぜかいつものほんわかとした笑顔を浮かべておった。


 何かこう、そこはかとなく嫌な予感がするのじゃが……。


 そう思っておった時じゃった。


「やぁやぁ、まひろちゃん! ここにいたんだね!」


 不意に、儂に声をかける者が現れた。


 儂のクラスメートであり、同時に服飾部に所属する、安助京という女生徒だった。


 ちなみに、『きょう』ではなく『けい』なので、間違えぬよう。


「……安助よ、一体何の用じゃ? 儂、今は見ての通り、旦那共と休んでおるんじゃが……」

「おー! これは失敬失敬! でもでも、君にはやってもらいたいことがあるからね! どうせ、暇だろう?」

「いや儂、二人三脚で三回連続走らされたばかりで、疲れと――」

「いやいや、君はさっき、なんともないと言っていた! つまり! 君の体力は減っていないと言う事さ!」

「おぬし聞いておったな!?」

「いやいやまさか。ささ、こっちへ付いてきてくれたまえ!」

「あ、ちょっ、ひ、引っ張るでない! お、おい、美穂たち、助けてくれ! なんか連れていかれそうなんじゃけど!?」


 安助に引っ張られる儂は、旦那共に助けを求めたのじゃが……


「「「「「がんばれ」」」」」


 なぜか、助けてくれなかった。


「は、薄情者―――――――!」


 若干恨みが籠った叫びを発しながら、儂は安助に引きずられるようにして連れていかれるのじゃった……。



「……で。これはどういうことじゃ!?」


 十分後。


 儂は二年三組の応援席にて、一人叫んでおった。


 そんな儂とは対照的に、周囲は何と言うかこう……生暖かい視線を向けて来るんじゃが!?


 くそう、何故、何故……


「何故儂はチアガールコスをしとるんじゃぁ!?」


 再び儂の叫びが響く。


 安助に連れていかれた場所と言うのが更衣室で、さらにはそこでチアガール衣装を渡された挙句、断ってその場から逃走を図ろうとしたところ、周囲に潜んでおった安助の同志が現れ、強制的に儂にチアガール衣装を着せられる羽目になった。


 なんでなんじゃ!?


「いやほら、どうせ絶世の美幼女とも言うべきまひろちゃんがいるのなら、チアガール衣装を着てもらうのは当然の帰結かなって」

「どの辺に当然という要素があるんじゃ!?」

「いやほら、創作物じゃ定番だろう?」

「そりゃ創作物じゃからな! よいか、これは現実であって創作じゃないぞ!? 故に、儂がチアガール衣装を着るのはおかしいっ!」

「はっはっは! 創作物のような病気を発症しておきながらそれは冗談だろう!」

「ぐぬっ……!」


 否定しきれんのが腹立つぅっ……!


 現在の儂、マジで恥ずかしいからな!?


 ついさっき、裸は恥ずかしくないとか言ったが、これはさすがに恥ずかしいぞ!


 なぜかはわからぬが、恥ずかしい……!


 腹は丸出しじゃし、スカート丈もクッソ短いし……一応、見せパン? とかいう物を穿いてはおるが、それはそれとしてもパンツを見られる気分で恥ずかしいんじゃが!?


 裸よりも恥ずかしい気がするっ……!


『なぁ、おい、あそこのロリっ娘チア、めっちゃ可愛くね?』

『わかる。ああいう娘に応援されたら、メッチャ頑張るわ、俺』

『でも、あんな娘いたっけ? ついさっきまで桃髪の美少女ならいたけどさ……』

『んなことどうでもいいだろ! あの可愛さは異次元!』

『だな!』

『ねぇねぇ、あの娘可愛くない!?』

『わっかるぅ! すっごい抱きしめたい! 超なでなでしたい!』

『なんかこう、庇護欲をそそられるよね……恥ずかしそうに顔を赤くしてるのもポイント高いわー』

『ロリっ娘チアか……最高』


 ……くそぅっ! すごい見られとるのがきっつい……!


 しかも、大体が微笑ましい子供を見るかのような、そんな生暖かい視線なのが余計に心に刺さるぅ!


 ぐぬぬ……今の儂、どう見ても高校生の兄上、もしくは姉上を応援する妹みたいじゃろ……。


 うぅ、恥ずかしいわい……。


「さあさあ! 応援したまえ! ほらほら!」

「おぬしのそのテンションの高さはなんじゃ!?」

「ははっ! 可愛い子が応援する姿が見たい、私の作った服で」

「なんじゃその無駄な倒置法! つーか、それなら儂以外でもええじゃろ!? この学園、無駄に容姿が整った者が多いじゃろ!」

「その場合、第一候補が音田さん、羽衣梓さん、時乃さんの三名になっていたけど?」

「頑張るのじゃー! おぬしらー!」

「君のその変わり身の早さはすごいねぇ」


 いや、旦那共にこんな姿を見せられるわけないじゃろ!


 もしもあやつらがそうなったらどうなるか?


 んなもん、どこの馬の骨ともわからぬ者共の注目を集め、ナンパされるに決まっとる!


 ならば、儂が恥ずかしい思いをするだけで問題ないと言うわけじゃな。


 ……ちくしょーめ。


「ほれほれ! もっと頑張るのじゃ! 追いつけるぞー!」


 まだ恥ずかしいが、それでも応援に集中すれば多少はマシになる。


 視線は相変わらず来る気がするが……。


『お、桜花が応援してくれてる、だとッ……!? しかも、チアコスだとぅぅ!? うおおおぉぉぉぉぉぉッッッ!』

『おおっと!? 二年三組の選手がかなりの追い上げを見せます! 速い速いーーーー!』


 ……男って、単純じゃなぁっ……!


 目の前で速度を上げる男子生徒を見て、そう思った。


「んー……まひろちゃん、もっとこう、可愛らしく応援できない?」

「この姿の時点で既に可愛らしく応援できてるじゃろ」

「え、君ナルシスト?」

「んな馬鹿なことあるわけがなかろう。そもそも、この姿を見て、可愛い! とか思わないような者がおるか?」

「所謂ブス専の人とか?」

「じゃろ? つまりそういうことじゃ」


 そもそも、理想の姿になる病気の時点で、ナルシストじゃなかろう。


 ……いや、ナルシストになる、のか? なんか嫌じゃな……。


「ナルシストはいいとして……可愛らしくというのは、こう、仕草とかさ」

「仕草?」

「うん。例えば……『がんばって、お兄ちゃん!』みたいな」

「……儂、それをやらなければならないのかとか以前に、おぬしの無駄に可愛いロリボイスに驚きなんじゃが」

「はは、特技さ」


 どんな特技じゃい。


「まあ、そういうこと、できるだろう?」

「……できるかどうかで言えば、まぁ……できんことはないが……」

「じゃあやってほしい」

「なぜじゃ?」

「優勝すれば、次の学園祭で資金面などが他クラスよりも有利になるからね」


 なるほどのう……こやつは、それを狙っておると言うわけか。


 ふむ……まぁ、儂としても、学園祭は好きじゃからのう……それに、今年は結衣姉とアリアは初参加じゃからな……仕方あるまい。


「はぁ、今回だけじゃぞ」

「あぁ! じゃあ早速頼むよ!」

「うむ。あーあー、んー……んんっ! お兄ちゃんたち、頑張ってー♥」


 普段出すような声ではなく、この姿に合わせた様な声を出し、その声を用いてクッソ恥ずかしい言葉を今トラックを走っておる同じクラスの男子生徒たちに向けて声援を送る。


 すると、


『『『うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!』』』


 なんか、バーサーカーになった。


 まるでオーラ的な物が幻視できるほどに気合を入れ、今まで以上の速力を見せて走る走る。


 しかも、その顔が何と言うか……すっごい血走っとる気がして、なんか怖い。


 現に、その前を走っておった別の生徒が、その顔を見て思わず悲鳴を上げるほどじゃからなぁ……。


 つーか、妹萌えなのか? あやつら……。


 意外と言うか、少し引くと言うか……現金な奴らじゃのう……。


 って、ん?


「……(安らかな笑み)」

「ちょぉ!? なんか瑞姫が死んどるんじゃけどぉ!?」


 ふと地面に倒れておる人物が視界に入り、そちらへ視線を向ければ、そこには鼻血を出しながら安らかな笑みで今にも昇天しそうになっておる、瑞姫の姿があった。


 その周囲では、美穂たちが瑞姫の蘇生? を行っておった。


「あぁ、どうやらまひろちゃんの魅力にやられてしまったみたいだね」

「……あぁ、なるほど。じゃあよいか」

「君、辛辣じゃない?」


 普通じゃよ、普通。


 考えてみれば、あのロリコンお嬢があれしきのことで死ぬわけがないしのう。


 そもそも、蘇生も儂にかかれば一瞬よ。


 ならば……放置で。


 それに、普段から色々やらかすような奴じゃからな、たまにはええじゃろ。


「頑張れー!」


 瑞姫は美穂たちにぶん投げて、儂はひたすら応援し続けた。

 どうも、九十九一です。

 なかなか体育祭が終わらないと思いつつ、頑張って書いております。

 いつになったら普通の日常の話になるんだろうか。

 次回ですが……いつものように未定です。今は書く物が多くて……なので、少々お待ちください。

 では。

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