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爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常  作者: 九十九一


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日常82 100メートル走。まひろはバッファー

※ またしても非常に遅れてすみませんでした!

 放送後、儂らは五組へ移動し、着替えを行った。


 その際、やたらと視線を感じたが、まあ、今の儂は美少女じゃからな。


 その上、今までロリだったわけじゃから、そう言う意味では当然とも言える。


 ……胸もでかいしの。


 と、やたらと視線を感じつつ、開会式に。


 と言っても、さほど特筆すべき点はなかったので、割愛じゃ。


 そうして始まった体育祭。


 儂は四種目で、美穂、瑞姫、アリアの三人は三種目。


 儂、なんか多くね? と思った。


 幸いと言えるのは、部活動・委員会対抗リレーに出場しないことじゃろう。


 さすがに五種目は無理なので。


 ちなみに、ましろんは短距離走と、騎馬戦に出場するそうじゃ。


 騎馬戦は、ちと厄介になりそうじゃな。


「しかし、あれじゃな。最初は特にすることがないな」

「そうね。私たちの場合、出場種目は少し先だし。なんだったら、純粋な徒競走系と綱引き以外はほぼ午後だしね」

「じゃな。ならば、儂はそこら辺の芝生で寝ているとしよう」

「まひろ君、それはどうかと思うよ?」

「別に構わんじゃろ? どのみち、やることはないんじゃから。では、儂は向こうに……」

「……それは困る」

「んにゃぁっ!? って、な、なんじゃ……ましろんか……びっくりしたわい……」


 いきなり声をかけられて、思わず変な声が出てしまった。


 ……なんじゃろうか。


 この一ヶ月と少しの期間に体験したことが原因で儂、自然に出た悲鳴やら、仕草やらがどんどん男から女になりつつあるような……。


 最初の頃は確か『のわぁっ!?』みたいな感じだったと思うのじゃが、気が付けば『んにゃぁっ!?』という妙にイタイ……じゃなかった、可愛らしい悲鳴になってしまっておるからのう……。


 ふぅむ……まぁ、慣れが早い、ということなのかのう……。


 ……いや。原因はそういうことよりも、おそらく……こやつらにされた、夜のあれこれ、じゃろうなぁ……。


 やはり、そういうことをすると、こうなるのか?


 ただ、その理論で行くと、これから先、儂はどんどん手遅れになるレベルで女子化が進むという事に…………うぅっ、寒気がしたぞ……この先を考えるのはやめよう。


「して、ましろんはどうしたのじゃ? 儂、これから近くの芝生で寝るつもりなんじゃけど」

「……私、出番もうすぐ」

「うむ、そうじゃな。たしか、100メートル走じゃったか? 頑張れよー」

「……ほほう? まひろん、いい度胸」

「む、なんじゃ? 突然」

「……旦那の応援をしないと申すか?」

「そうは言うが、おぬしの運動神経クソ高いじゃろ。マラソン大会では一位を取り、球技高いでは個人種目を総なめ。強いて言えば、バレーボールやバスケットボールなんかがネックではあるが、おぬしの身体能力が高すぎて、割と関係ないじゃろ。儂が応援してもしなくとも、確実に一着間違いなしじゃろうに」


 そう儂が言うと、ましろんはジトーっとした目で儂を見つめてきた。


 な、なんじゃろうか、無表情かつ無言のましろんの裏に、何やら黒い何かが見えるのじゃが……。


「……ほほう。つまり、旦那は放置して自分は寝る、と」

「む?」


 あれ、なんかましろんが怖い。


「……応援してくれると思ったのに、まひろんは睡眠を取るんだね。愛する旦那よりも」

「え? いや、あの、ましろん?」

「……つまり、私のことはどうでもいいと、そういうこと?」

「ちょっ、なんか話が飛躍しとるんじゃが!? なんでそうなる!?」


 別にどうでもよくないんじゃけど!?


「……まひろんが、私を応援せずに、寝ると言い出したから」

「ぬぐっ」

「真白さんの言い分はわかりますね。真白さんにとっては、今年最後の体育祭ですし、何より大好きなまひろちゃんが自分の応援をせず、ぐーたらする方を取ったと言うのなら、そのような反応にもなります」

「当然ね。私だって同じことをされたら思わずそんなセリフが飛び出すわ」

「うっ……」

「……いいよ、みーちゃん、みほりん」

「あ、あの、ま、ましろんや……? その圧のある笑みは一体……」


 二人を制止するましろんじゃったが、どことなく圧のある笑みを浮かべる。


「……応援しなければしないほど、私はまひろんをあの部屋に連れ込み、私を全力で応援するようにちょうきょ――こほん。洗脳するから」

「ましろんそれは言いなおしになっておらんからな!? というか、どのみち悪い方向にしか進んどらんっ! 怖いわ!」


 しかも、調教とか言いかけたのがマジで不穏なんじゃが!


 いや、その後に洗脳と言い直した方も余計に怖さが増してるが!


「たまに思うのじゃが、おぬしはこう……何故儂に対してのみ、やたらサイコパス的発想及び行動になるのじゃ……?」

「……世界一大好きな人だから?」

「おうふっ! ま、まさかドストレートに好きと言われるとは思わんかった……ドキッとしたぞ……」


 まぁ、その前のセリフに、調教とか洗脳する、とか言っておったわけじゃが……それさえなければ完璧なコンボだったんじゃがなぁっ……!


「……とりあえず、まひろんを洗脳するのはかくて――」

「あぁ無性にましろんを応援したくなってきたなぁっ! というわけで、美穂に瑞姫よ、ましろんを応援する上で最も適した場所へ行くぞ!」

「「「……ヘタレ」」」

「へ、へへ、ヘタレちゃうわいっ! というか、何サラっとましろんも混ざっとんのじゃ!?」

「……なんとなく」

「そ、そうか……」


 ましろんは、たまにノリがいいわけじゃが……そのノリの良さが、なんかこう、儂の心を抉ってくるんじゃなよなぁ……。


「……ともあれ、応援してくれるの?」

「まあ、うむ。考えてみれば……というより、瑞姫が言っておったが、おぬしの体育祭自体、今年で最後じゃからな。それにまぁ……うむ、なんじゃ……旦那の応援はせねば、嫁としてはあれじゃし…………」

「ねぇ、まひろ。あんたがさっき、応援に行こうとしなかった理由って、実は恥ずかしかったから――」

「わーわー、なんでもなーい! なんでもないのじゃー! さ、さぁ、二人ともゆくぞ! あ、ましろんは頑張るのじゃぞ! 儂、精一杯応援するのでな! では!」


 儂の本心を言い当てられて、儂は大慌てで美穂のセリフを遮ると、ステテテー! と走り去っていった。



「あ、まひろ待って! あー、じゃあ、私たちもこれで。応援してるわね、真白さん」

「頑張ってくださいね!」

「……ん、頑張る。お嫁さんにあの応援のされ方をされれば、限界以上の力が出せるというもの。ぶっちぎってくる」


 まひろんが恥ずかしさのあまりか、顔を真っ赤にしながら走り去っていった後、私は二人に応援され、それに対しびしっ! とサムズアップでそう答えた。


 今の私ならば、ぶっちぎって一位を取るくらいは余裕なはず。


 ううん、確実。


 であれば、私は戦場へと向かおう。



 軽い放送が流れた後、すぐに100メートル走となった。


 私は去年も100メートル走に出場していたこともあり、所謂シード枠という状況。


 というのも、この学園の体育祭では短距離走のような個人種目に関しては、基本的にトーナメント形式となっているため。


 それ故に、私は今他の生徒の走りを見ていた。

 脅威になりそうな存在は……一人。


 今しがた行われたレースに一人だけ、私が脅威と思っている存在がいる。


 その人物は、そのレースを余裕の一位でゴールし、軽く息を整えた後にこちらへ歩いてきた。


「あらあら、小さな人形姫様はぼーっとして呑気なものですわねぇ?」


 近くに来るなり、随分と憎たらしい笑みと言葉で私にそう話しかけてきた。


「……別に。私はシードだから、じっと走りを観察してるだけ」

「ふ~ん? てっきり、一人寂しく話す相手がいないから、こうして一人でぼーっとしてるのかと思いましたわ」

「……一人寂しくは余計。あと、別に一人じゃない」

「あらぁ~? そうでしたの。ですがあなたは、生徒会や頼まれごと関係で誰かと話す姿を見かけないので、見栄を張っているだけではなくて?」


 ……はぁ。


 面倒な絡み方をしてくる相手に、私は心の中でため息を一つ零す。


 私にこんな嫌味ったらしく話しかけてくるのは、同学年で且つお嬢様で才色兼備、文武両道な女生徒、名前は雲切麗華。


 お嬢様とは言うが、みーちゃんほどではない。


 でも、世間一般で見ると、普通にお金持ちなので、お嬢様という分類にわけても問題ないだろう。


 ただ彼女は私がこの学園に入学してからというもの、やたらと今のようなウザ絡みをしてくる。


 というより、一方的に敵視をされているのだ。


 勘弁してほしい。


 ちなみに、どことは言わないが、ある体の一部もみーちゃんの足元にも及ばないし、なんだったらみほりんの方がある


「……見栄じゃない。私にだって、気の良い友人くらいいる」

「いえ、今は一人ではなくて?」

「……それはそれ」


 鋭いジャブを貰ってしまった。


 ……とはいえ、私が同学年の中では浮いてしまっているのは事実。


 もとより、私はまひろんに出会うまでは自分で言うのもなんだが、常に無表情だったと言える。


 ただそれは感情が表情に出にくいだけで、決して表情筋が無で固まってしまったというわけではない。


 ……ないったらない。


「まあ? そんな寂しいお姫様に? この私が負けるわけないんですけれど?」


 ……普通ならイラァっとする場面なんだろうけど、私はそうならない。


 なぜか? 単なる慣れ。


 こんなやり取り、一年生の頃からやってるし。


 無駄に煽るような言い方なのだって、割と最初の内から意図に気付いてるし。


 とはいえ、そのことを指摘しても否定すると思うが。


「……ふっ、今の私を甘く見ない方がいい。今の私は無敵」

「あら? いつになく自身に満ちてますわね。何かいいことでも?」

「……当然」

「あらそうなんですねぇ。では、決勝を楽しみにしてますわ! おーっほっほっほ!」


 私の反応がはったりでも見栄でもないと悟った雲切さんは、まさに典型的(少し古い)お嬢様的笑い声を上げながら去って行った。


 決勝と言っている辺り、私が決勝まで進むことを確信しているし、自分も決勝へ進むという絶対の自信がある辺り、なんだかんだで彼女は私を認めているのだろう。


 ううん、認めていなければ、あんな風に絡まない。


「……でも、今回も勝たせてもらう」


 何より、私には最強のお嫁さん(バッファー)がいるから。



 それから順調にトーナメントは進み、私の最初の出番……は終わった。


 正直、特筆すべきことがなかった。


 一応、私は準々決勝からの出番だった。


 当然、初戦から勝ち進んでくるわけだから、速い人が多い。


 故に、普通なら負ける可能性があるけど……私はぶっちぎりの一位だった。


 理由? ちょこちょこバフが飛んでくるから。


 それにより、私は準決勝も一着。


 そして決勝に。


 決勝に勝ち進むくらいだから、当然選手は全員が校内でも有名な人ばかりだ。


 そのほとんどが運動部であり、特に陸上部が多い。


 むしろ、陸上部が残らなければそれはそれで『え? 陸上部って何してるの?』と思われかねない事態なので、面目躍如と言ったところ。


 そんな、ほとんど陸上部で構成されている決勝戦において、一番浮いているのは私だろう。


 何せ私は生徒会長であって、陸上部の生徒ではないからだ。


「ふふふ、決勝戦ですわねぇ、氷鷹さん?」


 決勝が始まる少し前に、例によって雲切さんが話しかけてきた。


「……負ける気はない」

「あらあら、いつになく増して好戦的ですこと。まぁ? 今回は私が勝利をもぎ取っていくつもりですけれど?」

「……絶対負けない」

「こちらこそ」

「「ふふふふふ……!」」


 お互いの間に火花を散らして不敵に笑い合う。


 なんだかんだで、私は雲切さんのことをライバルだと思っている節がある。


 何分、一年生の頃からこうして勝負を吹っ掛けられているのだ、少しくらいはそんな思いだって出てくる。


『では、そろそろ決勝を始めますので、こちらへ集まってください』


 さて、私の決勝。


 お嫁さんにいいとこ見せなければ。


 心の中でぐっと拳を握る。


 そうして、決勝戦の選手がそれぞれスタートラインに立った時だった。


「ましろーん! 頑張るのじゃぞー!」


 ふと、近くからまひろんの声が聞こえてきた。


 ちらりとそちらを見やれば、そこにはいつもより成長した姿で少しだけ眠たげな眼をしつつも、笑顔で私を応援するまひろんの姿が。


 ふむ……胸が大きいのはイラっとするけど、やっぱり見ているだけで癒しだし、愛しいし、今すぐ抱きしめてあの部屋に連れ込m……おっと、思考が逸れた。目の前に集中しないと。


 ぶんぶんっ、と頭を振って私の妄想と煩悩を追い出していると、ふとこんな声が聞こえてきた。


「え、マジで? それ言うの……? しかし、それでましろんがどうにかなるとは……あー、うー……まぁ、さっきの発言の手前、少々申し訳なく思っておったからのう……うむ。ではまぁ、言うとするか……」


 なんだろう? まひろんの謎の決意と戸惑いが感じられるけど……。


「あー……こほん。ま、ましろんや! 優勝したら……儂が手料理を振舞い、好きなだけ膝枕をしてやろう!」

「―――ッッッ!」


 その瞬間、私の中で炎がゴウッ! と燃え上がった。


 ふ、ふふ……ふふふふふふふふふ!


 思わず心の中で笑ってしまうくらいに、今の私は全能感に包まれていた。


 ちなみに、まひろんは(あっち以外で)声を出すのが得意ではないので、少しだけ声が小さかったけど……そもそも、私の聴力はかなり高く、周囲の人に紛れてしまっていそうなまひろんの声を聴き分けるくらい造作もないこと。


 故に! 今のまひろんのセリフは、まさに最&高!


 ともあれ、絶対に負けられない戦いになった。


「これまでの私の練習の成果、氷鷹さんに見せて差し上げますわ」

「……そう。でも残念。今の私はあなたの練習以上の力を宿している」

「へぇ~? 随分と言いますわね? ですが、昨年のマラソン大会では私と僅差ではありませんでしたこと? その間、あなたは何か特別なことでも?」

「……あった」

「あら。それでしたら……完膚なきまでに叩き潰さなければいけませんわねぇ」

「……それはない」


 雲切さんの挑発を私はその一言でぶった切って、目の前のことに集中した。


 それから間もなくして、スタートの合図が。


『位置について、よーい……』


 パンッ!


 スタータピストルが鳴り響き、私を含めて選手が一斉に走り出す。


「ふふふ、氷鷹さんには負けられな――って、なっ速い!?」


 私に何かを言おうとしていたのかもしれないけど、私はそれを耳にすることなく、自分史上最も速い速度で100メートルの道のりを疾駆していた。


 周囲から歓声や驚きの声が聞こえて来るけど、私はそれをまったく気にせず、自身の欲望に向かって真っすぐに駆け抜けた。


 その結果。


『ゴール! 100メートル走女子決勝を一位でゴールしたのは、我が校の生徒会長、氷鷹真白選手! スタートダッシュからとてつもない速さで駆け抜け、二位の雲切選手をぶっちぎる速さでした!』


 私は一位となった。



「はぁっ、はぁっ……な、なぜ、氷鷹さんは、あの速さをっ……!」


 ゴール後、ほどなくして雲切さんが私に話しかけてきた。


「……私を応援してくれる人がいたから?」

「た、たしかにあなたを応援する方は多くいましたが……しかしっ! 大勢の応援があったとしても、あの速度は信じられませんわ! 一体どんな魔法を!」

「……勘違いしてるみたいだけど、私があそこまで速く走れたのは、ある一人の生徒の応援が原因。決して、その他大勢の応援が私を速くしたわけじゃない」

「え……」

「……噂をすれば」


 私のセリフに呆然とする雲切さんだけど、私はこちらへ歩いてくる存在に気が付くと、顔を綻ばせた。


「お疲れじゃ、ましろんや」

「……ありがと、まひろん。どう? 私、カッコよかった?」

「それはもう。まぁ、おぬしは運動神経抜群じゃからのう。正直、あまり心配しとらんかったが……うむうむ。あのぶっちぎりで一位を取っていく様はとてもかっこよかったぞ!」


 やっぱり、大好きな人から褒められるのが一番嬉しい。


「……そう。あ、約束は守ってね?」

「わかっておる。おぬしがしてほしいタイミングになったら言えば叶えよう。……あー、ただ、あれじゃぞ? 手料理に関してはあまり難しい注文は……」

「……大丈夫。難しいのは注文しないから」

「そ、そうか、ならばいいのじゃ。……っと、そうじゃった」


 まひろんは一瞬何かを思い出したかのように動くと、雲切さんに近づき、


「雲切先輩、じゃな?」

「あ、え、えぇ。あなたは……?」

「儂か? 儂は……んー、まぁ……なんじゃ。ましろんの大事な人、と言ったところかの……?」

「……はい!?」

「とりあえず、あれじゃ。ナイスファイト、と言おうと思っての。先輩の走りもかっこよかったぞ」

「え、あ、ありがとう、ですわ……?」

「ではな。あ、ましろん、儂らはあっちの方で適当に集まっておるから、おぬしも水分補給したら来るようになー」

「……ん、了解」


 最後にそう軽く交わして、まひろんと別れた。


 変なところでまひろんは優しいと言うか……まさか、二位の生徒相手にも褒めに来るとは。


「あ、あの、氷鷹さん?」


 今のやり取りを見たからか、雲切さんは恐る恐るといった様子で話しかけてくる。


「……ん、何?」

「今の方、あなたの大事な人、と言っていましたけれど……一体、どのようなご関係で?」

「……言葉通りだけど?」

「え、まさか……こ、恋人?」

「……恋人じゃない」

「あ、そ、そうですの……では、どのような……?」

「……お嫁さん」

「へぇ~、お嫁さん…………え、お嫁さん!?」

「……何か変?」

「普通におかしくないですこと!?」

「……そう?」


 声を荒げる雲切さんの姿がなんだか珍しい。


 基本的に、優雅であることを自身のポリシーにしているから。


「今の方、女性でしたわよね!?」

「……まぁ、一応」

「どこからどう見ても女性の方ですのに、一応とは……」


 ……あ、そっか。


 なぜ雲切さんが困惑しているのかと思ったら、まひろんがあの姿だからか。


 ふむ……。


「……今の人、『TSF症候群』の発症者」

「あら、そうでしたの?」

「……ん、縁あって結婚したの」

「あ、あらあら……それは何と言いますか……おめでとうございます」

「……」

「な、なんですの? そんな、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」

「……普通に祝福されるとは思わなかったから」

「何を言いますの。相手がどんな方であれ、氷鷹さんが嬉しそうに笑うのであれば、祝福くらいしますわ。何せ私は、ライバルですもの!」


 片手を胸に当て、自身で満ちた笑みを浮かべながら、そう口にする雲切さん。


 ……なるほど。今のセリフで今までなぜ私に絡んできたかがわかった。


「……雲切さん、最初の頃から私を心配してた?」


 だからつい、普段のウザ絡みの仕返しと言わんばかりに、核心を突く質問をしてみた。


 すると、雲切さんはあわあわとしはじめた。


「な、なななっ、何をおっしゃいますの!? こ、この私が、そのような心配などするはずなどありませんわっ!」


 どうやら、図星だったみたい。


 一応、私を散々煽るような言葉を投げかけて来ていたのは、間違いなくライバルだと思っていたからなわけだけど……この様子だと、本当の意味は友達的な意味だったのだろう。


 でも……なるほど。


 少なくとも、まひろんと友達になるまで、友達はいないなんて思っていたけど……どうやら、それは間違っていたみたい。


 それなら……。


「……ありがとう」

「えっ」

「……あなたはいい人。だから、もしも何か困ったことがあれば頼るといい。私は生徒会長だし、何より……あなたのライバルで友人だから」

「……ふ、ふんっ! 友人という部分は余計ですが……ま、まぁ? どうしてもと言うのでしたら、困ったら頼ってあげてもよろしくてよ……?」


 ……なぜこう、雲切さんは絶妙にツンデレが混じるのか。


 ただ、それがある意味で雲切さんの校内での人気にも繋がるわけだけど。


「……ん、そうなったら待ってる」

「え、えぇ。……それでは、私はこの辺りで。次の種目の準備がありますので」

「……わかった。頑張って」

「そちらこそ」


 お互いに応援しあって私たちは別れた。


 ……なるほど、まさか私にも友人がいたとは。


 気付かなかっただけというのが恥ずかしいけど……。


 ただ、この気付きはとても嬉しいことだし、よしとしよう。


 ありがとう……気付かせてくれたまひろん! あとついでに、雲切さん!

 どうも、お久しぶりの方はお久しぶり、九十九一です。

 遅れたことに関してですね。いや、うん。まぁ……マジですみませんでした。実は、今回の冒頭部分だけは前回との部分と一緒にかけてはいたのですが、そこから先がまったく思い浮かばず、またしても三ヶ月以上遅れるという状況になりました。マジで申し訳ねぇ……。

 ただ、なんか最近、妙に小説を書くと言うモチベーションが高く、調子もいいので、少なくとも次の投稿まで三ヶ月空くなんてことはないと思うので、ご安心を。

 次の投稿は……まぁ、できたら今月中。遅くとも来月の中旬くらいには出したいかなと思いますので、よろしくお願いします。

 では。

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― 新着の感想 ―
[良い点] それはそれとして、最初から素直に応援するようにしtu・・・教育はされそう
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