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爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常  作者: 九十九一


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日常75 昼食。真白のファインプレー(店的に)

※ 自分でも何を書いたかわからぬぅ!

 金閣寺での撮影を終えた儂らは、そのまま観光スポットを巡った。


 その道中に関して言うことは……実は特にない。


 何せ、観光名所に行き、軽い雑談をして、撮影をするだけじゃからな。


 で、しばし観光をしておったら、いつの間にやら昼時になり、儂らは昼食を摂ることにした。


「さて、そろそろ飯にするか」

「……ご飯っ!」

「おおぅ、ましろんが活気づいた」


 儂が飯にするかと発言した途端、ましろんの目が一気に輝いた。


 さすが食いしん坊キャラ。


「では、真白さんに決めてもらうというのはどうでしょう? わたしたちの中で、最も食に詳しいですし、十中八九京都の名物料理も調べていそうですから」

「……もち。ご飯の下調べは全力。抜かりなし」

「おぬしの食に対する執念は半端じゃないからのう……」


 何せ、引っ越してからというもの、僅か数日で喫茶室の菓子が焼失したからのう……。


 それはもちろん、ましろんの胃袋にじゃがな。


 その上、朝昼晩、全ての食事で必ず米を十回はお代わりするし、おかずに関しても一人で宴会用の大皿数枚分を平気で食べる。


 その光景はまさに……圧巻。


 さすがにこればかりは、給仕の者たちも大変なのでは? と思ったんじゃが、瑞姫曰く、『むしろ、やりがいがある! と言っていました。どころか、『大食いのロリっ娘こそ至高!』とのことです』らしい。


 ……やはり、羽衣梓グループに入社するための条件の一つに、『ロリコンであること』があるような気がしてならぬ。


 トップがあれである以上、ほぼ間違いないような気がするが。


「……食事。それは全ての生き物に共通する娯楽であり、正常な欲求」

「まあ、少なくとも食いすぎで肥満になる者が増えるくらいには、娯楽であり欲求じゃな」

「じゃあ、真白さんはどんなのが食べたいの?」

「……京都と言えば、湯豆腐」

「「「「「あぁ」」」」」


 ましろんが口にした料理は、湯豆腐。


 たしかに納得じゃな。


「では、湯豆腐にしましょうか」

「……異論無し」

「ましろんは美味い物であれば、大抵拒否しなさそうじゃがな」

「……否定しない」


 無表情で、淡々とした様子なましろんじゃが、どこかうきうきしているように見えた。


 うむうむ。


 ましろんと言えば、食い物じゃな。



 そんなこんなで、儂らは店を探すことに。


 さすが京都と言うべきか、周囲には美味そうな店が多く、目移りしてしまうほど。


 食べ歩きという手段もとれるし、店に入って食すという手段も取れる以上、優柔不断でない者でも、優柔不断になってしまうくらいじゃな。


 儂は……そもそも、和食好きじゃし、茶が飲めれば割とどこでもよかったりする。


 あぁ、あれじゃ。ぜんざいとかあんみつとかあるとよいなぁ。


「ん~、ねえ、あそこのお店はどう?」

「でもあそこ、結構並んでるよ?」


 儂らが店を探して京都の街を練り歩いておると、美穂が一つの店を指さした。


 しかし、アリアが言うように、その店にはかなりの人数が並んでおった。


「うむぅ、並ぶのは儂は嫌じゃのう……めんどいし……」

「ひろ君、せっかくの旅行なのだから、多少面倒くさくても並ぶのもありだと思うのだけれど~」

「そうは言うがな、結衣姉。儂、この体になってからというもの、体力が下がっておるのじゃぞ? あと、歩き回るとマジで足が痛くなるし……」


 この小さな体で、京都内を歩き回るの、地味に苦行なんじゃが。


「そう言うなら、成長すればいいじゃない」


 酷くごもっともな提案を美穂がしたら、


「それは駄目です!」


 瑞姫がいきなりでかい声を出した。


「うおっ、びっくりした……。い、いきなり大声を出すでない、瑞姫」

「そ、それは失礼しました……。で、ですが、美穂さん!」

「は、はい?」

「まひろちゃんは、子供の姿だからこそ可愛いのです! たしかに、成長時のまひろちゃんは可愛いです……ですが! それはどちらかと言えば邪道!」

「人の成長を邪道というのはどうかと思うんじゃが」


 ってか、あれこそが自然じゃろ。


 まるで、こっちが真の姿、みたいに言いおって……。


 いやまあ、あながち間違いとも言えぬが。


「そもそも、まひろちゃんの根源的な可愛さとは、あの外見に似合わない精神と話し方が、今のあの可憐すぎるお姿とのギャップによって生み出されているのです! 成長してしまえば、そのギャップは薄れ、ただの美少女になってしまうではないですか!」

「いや、それで別によくね?」


 儂、いいと思うぞ? 爺口調なJKとか。


 可愛いじゃろ。


「なので、まひろちゃんはわたしが抱っこします!」

「意味がわからん」


 なぜそうなるというのか。


 マジでド変態の思考は読めん……。


 ……しかしまあ、足が疲れたことは事実であるからして……。


「まあよい。瑞姫、頼めるかの?」

「はいっ! 全力で抱っこしますね!」

「いや、そこは全力でなくともよい」


 めんどくさいし。


 そんなわけで、瑞姫に抱っこされる儂。


 そう言えば、いくら儂が子供の状態とはいえ、女子高生がずっと抱っこするのはきつくなかろうか?


 儂、重くないかの……?


 ……って、儂は何を年頃の女みたいなことを……。


 うむぅ、ましろんの言う通り、ちと精神も悪化しておるな……。


「それで、どうするの? あの店にするの?」

「……あの店はダメ」


 美穂の問いかけに対し、ましろんが否定をもって答えた。


「ふむ。なぜじゃ?」

「……あの店、多分美味しくない。不味くもないとは思うけど、美味しいとも言い難いと思う」

「でも、行列ができてるよ?」

「……心理的なこと。美味しくない店だって、行列ができていたら案外人は並ぶ。そこが美味しいかも、と思うから。浅草にも似たような店があった」

「なるほどのう……。しかし、なぜ味がよくないとわかるのじゃ?」

「……匂いが美味しそうじゃない」

「に、匂いと来たかぁ~……」


 なんかもう、犬じゃろ、ましろん。


 少し怖いのじゃが。


「と、とりあえず、お店を探しましょう。もしかすると、どこかにいいお店が――」


 瑞姫がそう言いかけた時、


「……! こっち!」


 ハッとなったましろんが、唐突に走り出した。


「ましろん!?」

「お、追うわよ!」


 いきなり走り出したましろんを追いかける。


 しかし、相手は見た目ロリっ娘とはいえ、文武両道な生徒会長。


 足がすんごい速い。


 儂らはなんとか見失わないように追いかけると、ある場所でましろんが立ち止まった。


「ましろん、どうかしたのか?」

「……ここ。ここにしよう」


 これっぽっちも疲れた様子を見せないましろんは、目の前の建物を指さしながら、そう提案する。


「はぁ、はぁ……こ、ここ……?」


 その建物を見て、美穂が少しだけ驚いたような表情を浮かべた。


「……ん。ここ」

「おー、なんというか……趣のあるお店だね!」


 まあ、アリアが何を言いたいかはわかる。


 儂らの目の前に現れたのは、なんとも古めかしい建物じゃった。


 他の建物は、それなりに整備されたり、改装をしたりしたためか、綺麗な外観なのじゃが、ましろんが選んだ店は、そういった様子があまり見られない。


 それに、店の中から気配を感じぬ。


 いや、決して0というわけではない。


 これは、客がいないような感じ、かの?


「真白ちゃん、ここでいいのかしら~?」

「……そう。ここ。多分、この辺りで一番美味しいお店」

「なぜ、そう思うのじゃ?」

「……ここの店、すごくいい匂いがする」

「儂、わからんのじゃけど」

「私もわからないわ」

「同じくです」

「あたしも」

「私も~」


 ましろん以外、全員わからんかった。


 当然と言えば当然だと思うのじゃが……。


 いや、決して匂いがない、というわけではなく、何かの匂いはする。


 料理っぽい感じじゃが……。


 ふむ。


「ましろん。本当に、ここは美味いと断定できるのじゃな?」

「……もち。私の美食センサーを舐めないで」

「おぬし、実は発症者だったりせんか?」

「……違う」


 儂の質問に、きっぱりと否定するましろん。


 ま、まあ、この世界に忍者もおるくらいじゃし……うむ。そうなんじゃろ。


「……とりあえず、お腹空いた。早く入る」

「……ま、食いしん坊なましろんが言うんじゃ。きっと大丈夫じゃろ」

「そうね。私もお腹空いたし、こういうのも旅行の醍醐味よね」


 というわけで、店に入ることになった。



 ガラガラ、と音を立てる扉と暖簾を潜って、儂らは店の中へ。


 店の中は確かに少し古めかしくはあったものの、それはそれで趣があり、なんとも居心地がよさそうな場所であった。


 外観はちとあれじゃったが、内装に関しては、意外にも綺麗な状態であったのも、ポイントが高い。


 なかなか良いではないか。


 儂、こういう古い感じの店は好きじゃな。


「あ! いらっしゃいませっ! もしかして、お客様ですか!?」


 と、儂らが入って少しした頃に二十代前半くらいの女性がそのようなことを言ってきた。


 む? もしかして、とはどういうことじゃろうか?


「……お客。六人だけど、大丈夫?」

「はいっ! それでは、あちらのお座敷にどうぞ!」


 女性はやたら嬉しそうな反応で、席に案内してくれた。


 ようやく座れる、そう思いつつ座布団に座る。


「こちら、お品書きです。お決まりになりましたらお声がけください!」


 嬉しそうな女性は、そう言って厨房の方に引っ込んだ。


 ふむ……。


「のう、今の給仕。何か変ではなかったか?」

「そうね……なんというか、お客さんが入ったことにやけに喜んでいたというか……」

「そもそも、わたしたち以外にお客さんが見当たりませんね。お昼時ですのに」

「立地が悪い……わけじゃない、よね?」

「……違うと思う。他の店には、人が入っているのに、ここだけ入っていないのは変。しっかり、食事処とわかるようになっているのに」

「ん~、何かあるのかしら~?」


 話してみるものの、答えは出そうにない。


 うむ……。


「とりあえず、何か注文しよう。ましろんのセンサーが果たしてしっかり機能しているかどうかも、確認できるからの」

「……心配しなくていい。この店は、きっといい店」


 ま、ましろんが言うのなら、本当にそうなんじゃろ。


 試してみよう、そんな気持ちで儂らは目的の料理を注文し、そして、


「「「「「「お、美味しいっ……!」」」」」」


 揃って驚愕することとなった。


「え、なにこれ、すごく美味しいんだけど!」

「本当ですね……わたしの家でも、ここまで美味しい湯豆腐は出たことがないですよ」

「他の料理もいいね! あたし、この天ぷら好きだなぁ」

「うふふ、本当に当たりだったわ~」

「たしかに、美味いのう……。特に、このタレが美味い」


 運ばれてきた料理に、儂らは舌鼓を打った。


 儂らが頼んだのは、湯豆腐御膳。


 メインは湯豆腐じゃが、他にも天ぷらや冷奴、京野菜の漬物が付いておった。


 どの料理もかなり美味い。


 なんじゃったら、今儂らが住む屋敷で雇っておる料理人たちの者よりも美味いくらいじゃ。


 中でも、湯豆腐を食べるのに浸けるタレが美味い。


 湯豆腐のじんわりとした甘さを引き立てるように、酸味とほんの僅かな辛みがあり、さらに少しとろみがある。


 これがいい感じに豆腐に絡んでおる。


 このタレ、一体どうすればこうなるのじゃ……?


「っと、ましろんよ、そっちはどう――ぬお!?」


 味はどうかとましろんに訊こうとそちらを向くと、


「むぐむぐむぐむぐ……! んっ。おかわり!」


 ものすごい勢いで湯豆腐を食べるましろんがおった。


 ……あ、これは嫌な予感。



 そして、儂の嫌な予感は的中。


「……けぷ。美味しかった。満足」


 ましろんが自身の腹を撫でつつ満足そうに息を吐く。


 まあ……なんじゃ。


 ましろんの奴、この店の食材、全部食ってしまった。


「すごくデジャヴ」

「アリア。デジャヴというか、これ、昨日見たじゃろ」

「あはは……そうだね……」


 儂とアリアの二人は、昨日の出来事を思い出しながら、目の前の光景に苦笑いした。


 いやまあ……うむ。


 二日連続でやらかすとは思わんじゃろ。


 ってか、マジでこやつの胃袋はどうなっとんのじゃ。


「……しかし、あれじゃな。なんとも不可思議じゃのう、この店は」

「たしかにそうね。こんなに美味しいのに、どうしてお客さんが少ないのかしら? それに、やけに食材が少ないようにも思えるし……」


 そう。


 今しがた美穂が言ったように、妙にこの店の食材量が少ないように思えた。


 たしかに、ましろんの食べるペースはやたら早い。


 しかし、二時間程度で全ての食材を潰せるほどかと言えば……まあ、無理じゃろ。調理的に。


 それに、客が入っておらんのも気になるが……。


「僕どもの料理はいかがでしたか?」


 と、不意に声をかけられた。


 声のした方を向けば、そこには優しそうな、それでいて職人気質っぽい五十代後半くらいの男性と、四十代後半くらいの女性、それから先ほどの給仕の女性がおった。


 ふむ、見た感じ家族のようじゃが……。


「はい、とても美味しかったです」

「それはよかった。特に、そちらのお嬢さんはかなり食べてくれたみたいで……本当に、嬉しい限りです」

「……美味しかったです。文句なしに」

「ははは。そう言われて悪い気はしないですね」


 そう言いながら笑う男性。


 しかし、その表情にはどこか悲哀が混じっているように見えた。


「……最後のお客が、こんなに綺麗なお嬢さんたちでよかった」


 唐突に、男性が悲しげにそう告げた。


 最後?


「のう、それはどういうことじゃ……?」

「あぁ、すみません。大した話じゃないんですよ。正直、もう店を畳もうかと思ってましてね」

「どうしてですか? こんなに美味しいのに……」


 儂ら全員が思ったことを、アリアが訊いてくれた。


 この店の料理は美味かった。


 しかし、なぜ店を畳むのか……。


「…………もしかして、妨害されてる?」


 そんなアリアの疑問に答えたのは、何やらスマホ画面を見ておったましろんじゃった。


「真白ちゃん、それはどういう~……」

「そちらのお嬢さんの言う通りです。……少し、ありましてね」

「あの、一体何があったのですか? もしよろしければ、お話していただけないでしょうか?」

「いやいや、お客さんに言う話じゃないよ」


 と、給仕ではない方の女性が苦笑い混じりに言う。


 この反応、なんだか気になるのう……。


「………………なるほど。理解した」

「ましろん?」

「……今、軽く調べられる範囲で調べた。どうやらこの店は、さっきの行列ができていた店にこの店は妨害を受けてるみたい。主な妨害行為は、ネット上で悪評を広めること、材料の仕入れをやりにくくすることの二つ」

「普通に犯罪ではないか」

「はい……。ですが、我々にはそれをどうにかする方法がなく……」

「私も、諦めなければ何とかなる! って言ってたんですけど、どうにもならなくて……。それどころか、うちみたいになるのが怖くて、黙認しちゃってるお店もある始末で……」


 肩を落としながら、給仕の女性がそう告げる。


 なるほどのう……。


 まったく、飲食店を経営するのであれば、味で勝負せんか味で!


 うちの店だって、最終的には店長の料理や飲み物が美味くて入ったようなもんじゃと言うのに……。


「……みーちゃん。どうにかならない?」


 よほど味が気に入ったのじゃろう、無表情なましろんがやや懇願するような表情を浮かべながら、瑞姫にそう言っておった。


「そうですね…………えーっと、店主さんは」

「僕だが……」

「一つ、提案があるのですが」

「提案、ですか? 一体どんな……」

「もし、もしよろしければ、わたしの家から出資させてもらえませんか?」

「「「……はい!?」」」


 おー、瑞姫が動いた。


 こやつ、以前ちらっと聞いたんじゃが、どうやら会社の仕事を少し手伝っているらしいからのう……。


 それに、こういった件は、あの父親から任されているみたいじゃからな。


「い、いや、出資って……い、一体どういう……」

「実はわたしの家は、羽衣梓グループというグループ企業をやっておりまして」

「う、羽衣梓グループ!? そ、それって、あのテレビでも見かける……?」

「はい。そのグループです。そして、その社長の娘がわたし、というわけです」

「な、なんでそんなにすごい人がこんな店に……?」

「今日明日の一泊二日の京都旅行をしていまして、そちらの真白さんがこのお店がいいと言ったのでこちらに来たのです。そして、料理を食べてみれば、とても美味しく、これであれば必ず利益を得られると思いましたので」

「そ、そんなことが、現実にあるなんて……」


 三人は突然明かされた瑞姫の素性に、酷く驚いておった。


 まあ、偶然入ってきた客の内一人が、とんでもないグループ企業の社長令嬢であれば、驚くわな。


 儂だって、驚いたやもしれぬ。


「それで、どうしますか?」

「いや、申し出はありがたいけど……。うちには、あの店が……」

「それなら問題ありません。こちらで徹底的に対抗しますので」


 うっわー、なんか怖い笑みを浮かべておるのう、瑞姫の奴……。


 理由はわからんでもないが。


「し、しかしだね……」

「もう、お父さん! うじうじしないでよ! せっかくお店を続けられるチャンスが来たんだよ!? お父さんはお店がなくなってもいいの!?」


 うぉう、給仕の女性が店主を怒り出したぞ。


 さすが若いもんじゃ。


 大人よりも、熱量があるのう。


「そ、それは……」

「そうやって口ごもるなら、続けたいってことでしょ! あの、羽衣梓さん、出資の件なんですけど」

「はい、必ずするとお約束しますよ。そもそも、これだけの味です。まず繁盛しない方がおかしいですから」

「ありがとうございます。……ほら、お父さん、こう言ってくれてるんだし、どうせならもう一度頑張ってみようよ!」

「…………そうだな。せっかく、うちの店の味を買ってくれてるんだ。やるべき、だよな」

「……ふふ、娘の方が熱意があったみたいね、あなた」

「だな。……羽衣梓さん、その話、是非お願いしたい」

「ありがとうございます。では早速、父に連絡しますので、少々お待ちください」


 そう言うと、瑞姫はカバンからスマホを取り出し、連絡を始めた。


「もしもし、お父様ですか? はい。いえ、問題でなく、一つお願いしたいことが……実は――」


 時間にして、数分ほどで電話は終了。


 電話を切った瑞姫の顔は、満面の笑みであった。


「OKが取れました」

「ほんとですか?」

「はい。明日からすぐにサポートをしてくれるとのことです」

「あ、明日から……そんなに早く対応してくれるなんて……それに、サポート?」

「簡単に言ってしまえば、このお店の改装や宣伝なんかをします。と言っても、店主さん方が望まない方法ですることはありませんので、ご安心ください」

「そこまでしてもらえるとは……本当に、なんとお礼を言えばいいやら……」

「いえ、お気になさらず。……さて、そろそろわたしたちはお暇します。あ、まひろちゃんたちは大丈夫ですか?」

「うむ。問題ないぞ。全員、すぐに行ける状態じゃ」


 まあ、話の内容的に、瑞姫が関わりだした時点で安心じゃからな。


 よって、瑞姫が電話している間に、儂らはすぐに出発できるよう支度を済ませていたわけじゃ。


「では、お会計をお願いします」

「あぁ、はいはい」


 ここの……というより、今回のこの旅行中の金払いは瑞姫がすることになっておる。


 この旅行自体、瑞姫が敢行したようなもんじゃからな。


 ちなみに、金額は……儂が恐怖を覚える金額だった、とだけ言っておこう。


「本当に、ありがとうございました!」

「「ありがとうございました!」」

「いえいえ、今後とも頑張ってくださいね、応援してます!」

「それはもう、全力で頑張ります。ですので、もしまた京都にいらした際はうちに来てくださいね。おもてなしさせていただきますので」

「その時は、よろしくお願いします」

「……とても、美味しかったです」

「それはよかった」

「……次は、もっとメニューが増えてたらもっと嬉しいです」

「もちろんだとも。次に来る時までには、今の倍くらいのメニューを追加しておこう!」

「……期待してます」


 そんなやり取りのあと、儂らは店を出た。


 店の三人はその後も儂らに頭を下げ続けておった。


 なんというか……瑞姫がいるだけで、いろんなことが解決するような気がしてならん、マジで。


 しかしまあ、今回はましろんがあそこにしようと言ったおかげで、あの店は救われたわけじゃな。


 我が旦那ながら、おかしな運をしておるのう……。



 その後、あの店は羽衣梓グループのサポートにより京都で一番の湯豆腐が食べられる店となったそうじゃ。


 連日予約がひっきりなしに来るそうで、かなり忙しい日々を送っておるとのこと。


 尚、妨害していた店は、面白いことに、羽衣梓グループのライバル企業関連の店だったようで、この件と以前のアリアの父上が務めておった会社の事件も相まって、ますます勢いが落ちたらしい。


 まあ、自業自得じゃな。

 どうも、九十九一です。

 本当に間を置かずに投稿できました。というか、すんごい調子がいい。どうした、私。

 TS娘の非日常なんて、今ちょっと調子悪いのに……。

 えー、もしかすると、こちらの作品、以前の毎日、とまでは行きませんが、割と短いスパンで投稿できるかもしれません。やったね! ちょっとは期待していいです!

 さて、今回の話ですが……なんだろう、このご都合展開すぎる話は。自分でも、なんでこうなったかわかりません。なんなんだろうね。

 次の投稿は……多分一週間以内には出せるかなーと思いますので、よろしくお願いします。

 では。

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