日常74 京都旅行。羽衣梓家の謎がやや噴出
※ 大変遅くなり申し訳ありませんでしたっ!
「ん~~~っ! ようやく着いたか」
新幹線から降り、儂らは荷物を持って……いるなんてことはなく、財布ちスマホ、あとは各自小物類のみが入ったカバンを持ち、京都駅前に立っておった。
儂はその場で軽く伸びをしつつ、軽く息を吐く。
「まあ、ようやくというほどじゃないと思うけどね、まひろの場合。行きの半分以上は寝てたわけだし」
「それでも、寝ている間が長かったからこそ、ようやくと感じるのじゃよ」
いくら睡眠が大好きな儂と言えど、長く感じるときもあるというもの。
「それにしても……あれね。新幹線から降りるときはなんというか……恥ずかしかったわー……」
「あ、あははー。それはあたしもかなぁ」
「……羞恥」
「その辺りは慣れが必要ね~。でも、私もあのレベルはちょっと新鮮だったかな~」
「むしろ、あれで動じないのはそこにド変態くらいじゃ」
儂らが困惑しておる理由はと言えば……まあ、あれじゃ。新幹線じゃ。
どっかのド変態ロリコンな金持ちが、あろうことか、新幹線を丸々貸し切るなどという、あほなことをした。
その結果と言うべきか……まあ、やけに視線を受けることになってしまったわけじゃな。
何せ、儂らが新幹線から降りる際……無駄に多いSPも同時に降りておったからな。
なんじゃったら、儂らしか降りんもんじゃから、やけに視線を集めておった。
あれはさすがの儂でも恥ずかしいと思ったのう……。
それから、美穂たちへやたらと視線が行っておったのも腹が立つ。
どこの馬の骨とも知らぬ連中に、変な視線を送られるのを見るだけで、儂は嫉妬心を抑えるのに苦労するしの。
「して、まずはどうするのじゃ?」
「はい、それなんですけど、着替えなどの荷物は全て宿泊先の旅館に送りましたので、このまま観光ができます。ですので、このまま観光といきませんか?」
「ほほう! ならば賛成じゃな!」
「私も賛成」
「あたしも!」
「……同じく」
「わたしも賛成よ~」
「満場一致ですので、このまま観光といきましょう!」
「「「「「おー!」」」」」
というわけで、観光する運びとなった。
さてさて、京都へ来た儂ら一行。
まずは東寺の五重塔を見ることに。
朝早くからの出発(儂は寝ていたため知らぬ)だったため、観光時間はたっぷりあるとのこと。
ついでに言えば、仮に夕方を過ぎたとしても、羽衣梓家がこの地で雇っておる送迎専用の者がいるとかで、特に問題はないらしい。
金持ちとは恐ろしいのう……。
ちなみに、今回のこの旅行、かなり急なものだったため、一泊二日とのことらしい。
まあ、ゴールデンウイークに旦那たちと旅行できるだけで、儂は十分嬉しいがな。
そんなことを思いつつ、儂らは東寺へ。
「ほー、これまた見事じゃのう……」
「そうね。さすが、世界遺産に登録されるだけある、ってくらい立派よね」
五重塔がある東寺と言えば、やはり五重塔だけでなく、他の部分も素晴らしいと言えよう。
門からして、既に立派じゃからのう。
こういった和の建物というのは、いつ見ても見惚れてしまうな。
「そういえば、まひろ君って緑茶とか和菓子が好きだけど、こういう和風な建物も好きなの?」
「うむ。洋風なものよりも、和風を好むな、儂は。実際、儂の家には和室もあり、そこを気に入っておったからな」
ま、その和室は儂の爺ちゃんの部屋だったわけじゃが。
爺ちゃんの部屋に入り浸ることが多かった儂は、なし崩し的にそういったものが好きになった。
「そういえば、ひろ君はわたしの家に来る時、いつも嬉しそうだったわね~」
「結衣姉の家は、立派な屋敷じゃったからのう。あれほどのものが同じ街にあると知れば、行きたくなるというものじゃ。実際、あの畳は最高じゃったしな」
「うふふ、ありがとう~」
何より、畳の香りがよかった。
やはり、結衣姉の家であれば、高級な畳を使用してるんじゃろうなぁ。
……今度、瑞姫に頼んで、和室でも作ってもらうか?
あの家にはなかったしな。
「……次、行く?」
「うむ、そうじゃな。さて、次はどこへ行くかの?」
「そうね……やっぱり、金閣寺とかかしら?」
「でも、遠くないかな?」
「そうね~。ここからだとちょっとかかりそうね~」
今日一日しか宿泊できないとなると、明日観光できる時間など限られておる。
であるならば、なるべく今日で有名どころは回りたいところじゃが……。
「それでしたら、うちの者に頼んで、送迎してもらいますか?」
「……そういえば先ほど、送迎専用の者がいると言っておったな……」
「はい。ですので、あまり距離を気にしなくても大丈夫かと」
「ふむ……そうじゃな。であるならば、道中の観光名所に寄りつつ、金閣寺に行くとするか」
そういうことになった。
というわけで車で移動し、金閣寺へ。
「おぉ、本当に金ぴかじゃ」
なんというか、びっくりするくらい金色じゃのう。
テレビやアニメなんかではよく見たが、実物は初めてじゃ。
ふむふむ……よくもまあ、ここまで金色な寺を作ったものじゃな、いやほんとに。
正式名称は鹿苑寺じゃが、まあ歴史家やらそっち方面が好きな者以外であれば、割とどうでもいい事柄な気がするが。
……いや、こんなことを言えば、軽く燃やされそうじゃな。
「それにしても……ゴールデンウイークなだけあって、観光客が多いわね」
「……京都は観光スポットが多い。外人も特に来る」
「そうだね! あたしもこういう場所は初めてだから楽しいな! 前の暮らしじゃ、国内とだったとしても、遠い場所への旅行なんてできなかったから。それこそ、隣県に行くことすら難しいくらいに!」
「……アリアよ、それはにっこにこ笑顔で言う事ではないと思うのじゃが……」
なんか、こっちの心に刺さるから普通にやめてほしい。
美穂たちの方も、微妙な表情を浮かべておるし。
本当、アリアに関しては、マジでシンデレラ状態じゃよなぁ……。
儂が『TSF症候群』を発症させ、多重婚の権利を得た後、大企業の令嬢と結婚し身内に。
その状態で、貧しかったアリアが儂と結婚することで、人並み以上の生活を得られた。
……ふむ。いや、マジで現代のシンデレラじゃな、アリア。
むしろ、今までが不運であったことと、人柄の良さ、そしてポジティブな性格が相まって、かなりの幸運が舞い込んだみたい状態じゃからのう。
いやはや、儂らの中で最も運がいい者は、アリアなのでは? と思ってしまうほどじゃな。
「あはは、ごめんね? でも、そんな暮らしがあったからこそ、こうしてまひろ君たちと一緒に、楽しい旅行ができてるんだもん。あたしからしたら、もう笑い話だよ!」
大輪の花のごとき笑顔を浮かべながら、そう告げるアリア。
……なんじゃろう、アリア、可愛すぎじゃね?
なんとまあ健気なことか。
あれじゃな。
アリアは儂の旦那たちの中で、一番の癒し枠じゃなぁ……。
ちなみに、美穂は親友(悪友)枠、瑞姫はド変態枠、ましろんは頼りになる姉枠、結衣姉は……母性が半端ないお姉さん枠じゃな。
「でしたら、記念写真でも撮りますか?」
「あ、いいね! 撮ろ撮ろ!」
「そうじゃな。せっかくの旅行じゃ。行く先々で写真でも撮るとしよう。……東寺でも撮っておくべきじゃったのぅ……」
「別にいいんじゃない? 今から撮り始めたって遅くないし」
「……写真がなくとも、記憶にあればいいと思う」
「うふふ、真白ちゃんいいこと言うわね~」
「そうじゃな。現物がなくとも、各々の記憶の中に大切なものはある、ということじゃな?」
「………そう言われると、少し恥ずかしい」
常に無表情なクール系合法ロリっ娘のましろんが、珍しく頬を染めて照れておるじゃと!?
滅多に見られない、レアな表情……記憶に焼き付けねば!
「……まひろん、今変なこと考えた?」
「い、いや? そんなことはないぞ?」
一応変なことではないが、ちと気恥しいんで、言わんでおこう。
言えば確実にニヤニヤされるのがオチじゃからな……。
「……そう。ならいい」
よし、なんとか誤魔化せたわい。
「では、早速撮るとするかの。して、どう撮るのじゃ? 全員映るようにするとなると、スタンドが必要な気がするんじゃが……」
「あ、その辺りはご心配なく」
そう言って、瑞姫が指を鳴らすと、
「お呼びでしょうか、瑞姫お嬢様」
どこからともなく黒服の男が現れた。
……は!?
「み、瑞姫、その男はなんじゃ!? 何もないところから現れんかったか!?」
「こちらの方ですか? この方は、今回の旅行における護衛兼雑用係の方です。どうしてもと志願したのでそのまま採用してみたところ、どうやら忍者の家系だったようでして……」
「「「「忍者!?」」」」
「あらあら~」
まさかの存在に、儂、美穂、アリア、ましろんは揃って驚愕し、結衣姉は目を見開いてあらあらしておった。
え、マジで!? 忍者おるの!? 今の世の中に!?
「はい、忍者です。あ、自己紹介をどうぞ」
「初めまして、お嬢様がた。せっし――ごほん。私は、風魔小太郎と申します。以後、お見知り置きを」
濃い! ものっそい濃いのが出てきおったんじゃが!
しかも、まさかの風魔て!
とんでもないところの家系の者が、とんでもない企業の方に務めておったんじゃが!
まさかとは思うが、実は昔から何らかのかかわりがあって、それが現代でも続いてる、みたい状況ではあるまいな。
あと今、拙者って言いかけた気がするんじゃが……。
「あのあの、もしかして分身とかできるんですか!?」
驚愕から一転、アリアがきらっきらした顔で、風魔殿に外国人が真っ先に訊きそうなことを言っておった。
いやさすがにそれは……。
……いやまて。そもそも、『TSF症候群』などという、頭のおかしい病気がある以上、そういった者がいても不思議ではないのではなかろうか。
なんてな。
さすがにそれはない――
「可能です」
できるんかいっ!
「ほんとですか!? も、もしよければ、見せてくださいっ!」
「えぇ、アリスティア様の希望でしたら構いませんよ」
「やた!」
「……いやいや、さすがにない、わよね?」
「……非科学的」
「でも、ひろ君みたいな人もいるし~」
たしかに儂、非科学的存在じゃけども。
じゃ、じゃが、さすがに分身は……。
などと、自分に言い聞かせるように、何度も何度も心の中で呟いておると……
「では……分身!」
ぼんっ! と音と煙を発生させたと思ったら、そこにもう一人の風魔殿が出現した。
……って!
「ま、マジで分身しおった!?」
「な、ないわー……」
「……驚愕」
「あらあら~」
「わぁ! すごいすごい! 本当に分身の術だ!」
「「恐縮です」」
声もシンクロすんのかい。
いやなんといかもう……何でもありじゃね?
「あ、あの、つかぬ事をお聞きしますが……」
「はい、なんでしょうか、美穂様」
「……あなたって、その、発症者、なんですか? 分身できるし……」
おぉ! よく言ったぞ、美穂!
同様の疑問を持っておったのか、さっきまで目を爛々と輝かせていたアリアや、結衣姉ですら風魔殿を凝視した。
儂の予想では、さすがに発症だと思う――
「いえ、拙者――もとい、私は発症者ではありません」
違った!
マジもんじゃった!
というか、もう拙者ってハッキリ言ったのに、何故言い直した!?
「私のこの忍術は、我が風魔家に代々伝わる門外不出の技術です」
「か、カッコいい!」
うわ、アリアの目がさらに輝きだしたぞ!?
くっ、なんじゃろう、自分の大事な旦那をいきなり現れた男に奪われた気分に……。
って、いかんいかん!
それではまるで、嫉妬深い女ではないか!
……体は女じゃけども!
「……瑞姫の家って、謎すぎない?」
頭が痛そうに、眉間をぐりぐりする美穂。
……うむ。
「美穂よ、儂も同じ気持ちじゃ」
今までですら、かなりぶっ飛んだことが多かったというのに、何故護衛に忍者がおるのか。
なんというか……うむ、まあ、あれじゃな。
「……儂、瑞姫の家に、実は陰陽師とかエクソシスト、魔法使い、超能力者がおっても、もう驚かんかもしれん……」
遠い目をした儂のその呟きに、瑞姫とアリアを除いた旦那たちは、揃ってうんうんと頷いた。
その後、ちょっとした忍者ショーのようなものとなってしまい、大勢の注目を集めたものの、羽衣梓家の謎の権力により、なんとか場を収めることに成功。
そのまま、記念撮影をするのじゃった。
お久しぶりの方はお久しぶり、別の作品を読んでいる方はどうも、九十九一です。
前回の投稿から、五ヶ月近く経過して、ようやく新しい話が投稿できました。
いやほんと、お待たせして申し訳ありません。理由は、活動報告を見ている方は知っているかと思いますが……単純に、京都旅行の話が全然思い浮かばなかったからです。なんだったら、この部分を乗り越えれば、一ヶ月以上更新が空く、なんてことがなくなるくらい、思い浮かばなかったんです。マジですまねぇ……。
つい先日、試しに書いたら思いのほか調子が良くて、すぐに書き上げることができました。
この調子なら、十月上旬には絶対に終わる! と言えるくらいでしょう。
ついでに言えば、18禁版の方も、近々書き始めますんで、そっちは年内にはなるかなー、と思います。多分きっとおそらく。
と、そんなわけで、少しずつ、こちらは再開していけたらなと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします
次の投稿は……なるべく早めに出すつもりですが、あまり期待しないでいただければ幸いです。
では。




