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爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常  作者: 九十九一


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日常48 新居。事前情報だけですでに不安

「あー……うむ。返却は来週の火曜日までじゃ。返し忘れるでないぞ」

『うっす!』

「ほれー、次の奴―、はよ来んか―」


 二日後の放課後。

 儂は図書室でせっせと働いておった。


 なぜかじゃと? そんなもん、儂が図書委員だからに決まっておる。

 あと、儂の当番が今週と言うのもあるな。


 図書委員の仕事は至ってシンプル。

 貸し出しと返却の受付を行うことと、返却された本を並べることの二つのみ。

 まあ、月一で新規入荷した本などの開封やらなんやらはあるがな。


 それ以外の仕事は特になく、強いて言えばたまーに買い出しとかがあるらしい。買い出しと言っても、備品と言うわけではなく、勉強部屋に常備するための菓子類のことじゃ。


 その辺のルールとかは正直面倒なので、あまり覚えてはおらんがな。


 それにしても……


「くっ、なんじゃ、このめんどくささは! てか、何故儂の前に行列ができておるのじゃ!?」


 儂の目の前にはずらーっと貸し出しの受付待ちの者たちが今か今かと並んでおった。


 昨日はここまで人は多くなかったんじゃが!?


「ここまで一度に貸し出しを待つ人は今までいなかったのですが……なるほど。まひろちゃんパワーと言ったところでしょうか。さすが、ロリコンが多い国」

「おぬし、真面目顔で何を言っておるのじゃ!? というか、見てないで手伝って欲しいのじゃが!」

「それは無理です」

「何故!?」

「僕が受付をすれば暴動が起きかねませんからね」

「それはないじゃろ」

「いえ、見てくださいよ、目の前の生徒さんたちを」

「……なるほど、理解した」


 目の前の者たちの様子を伺うと、『絶対図書委員長以外は認めん』みたいな言葉が乗っていそうな殺気が屋本司書に向かって放たれていた。


 たしかにこれでは、屋本司書が殺されかねないな。


「というわけですので、頑張ってくださいね、まひろちゃん」

「……なんじゃろうか。おぬしにまひろちゃんと言われるのがむず痒くて仕方ないんじゃが」

「ハハハ。お気になさらず。外見ロリの人をさん付けで呼ぶのは違和感でしてね」

「そうか。……しかしこれ、人が減らないのじゃが。貸し出しを許可しても許可しても、ひたっすら並んでおるせいで、地獄のようなんじゃが」

「その割には、的確に手が動いているではないですか。すごいですね。初めて間もないと言うのに、もうすでにノールックで出来るとは」

「……そりゃ、100人もやっておればこうなるわい!」


 実際、かれこれ一時間近くはこの有様なんじゃが!?

 何をどうしたらこうなるのじゃ!


「ははは! ですね!」


 くそぅ、他人事と思って楽しみおって……!


『次、お願いしまーす』

「だー! 終わらん! 終わらんぞ―――!」


 図書委員、マジ激務!



「や、やっといなくなった……し、しんど……」

「お疲れ様です、まひろちゃん」

「くそぅ……とんでもない疲労感が……」


 珍しく本気を出して貸し出し待ちの者たちを捌き、それを三十分ほど続けてようやく解放された儂は、カウンターに上半身を投げ出して、ぐでーっと突っ伏した。


 だらけることに心血を注ぐ儂が、なぜこのようなことをせねばならんのじゃ……。


「はい、ココアだよー」

「なぬっ、ココアじゃと! ……って、アリア?」

「どーも、まひろ君。ココア、いる?」


 唐突に話しかけられたと思ったら、そこには笑顔を浮かべたアリアがおった。

 見ればその手にはココアが入ったマグカップがあり、それを差し出してきた。


「当然貰おう」


 ココアは好きじゃ。


「うんうん、疲れた時は甘い物だよね!」

「うむ。ではありがたく。こく、こく……ぷはぁ。うむ、疲れた体にこの甘みが染みわたるわい……」

「どうどう? 旦那さんっぽいでしょ?」

「いや、この場合嫁ではないか? ……もっとも、すでにその関係であるからして、どちらでもよいのじゃがな」

「それもそうだね!」


 なんじゃろうか。

 この、アリアの天真爛漫なテンションは、見ていて癒されるのう……。

 儂の旦那たちの中で、唯一まともかもしれぬからな。

 ……まあ、その天真爛漫なあれこれは、ベッドの上だと……悪い意味で発揮されて、儂が地獄を見るわけじゃが。


「それで、おぬしは何しに来たのじゃ? たしか、引っ越しの準備を進めているのではなかったのか?」

「ほら、あたしってこの学園に通い始めて日も浅いし、図書室って行ったことなかったなーって思って。それで遊びに来たの」

「なるほど。しかし、なぜココアを?」

「ついさっき、まひろ君がせっせと働いている時に疲れてそうだなーって思って、司書さんに事情を話して、奥を使わせてもらったの」

「気づかんかった……」

「それだけ、集中してたってことだよ」


 それもそうか。

 しかし、疲れているということを見越してココアを作ってくれるとは……なんてできた旦那じゃ。

 他の三人も見習ってほしいところじゃな。


 …………特に、瑞姫など、儂が疲れていると思った場合、


『まひろちゃんお疲れですね!? では、わたしのお膝で睡眠どうぞ! むしろプリーズ! まひろちゃんの可愛らしい頭部を乗せてください! その間、わたしは大量に写真を撮っていますので!』


 とか何とか言いながら、膝枕してきそうじゃからな。


 美穂は……どうなんじゃろうか? 意外と思い浮かばんと言うか、何と言うか……。

 じゃが、ましろんはあれじゃな。多分、ちょっかいだしてきそう、儂に。


 例えば……


「……隙あり!」

「んむっ」


 そうそう、こんな風に神出鬼没に出現しては、儂の唇を奪う……って!


「ぷはっ、唐突になんじゃ!?」

「……やほ。遊びに来た」

「遊びに来た、ではないわ! 何唐突にキスしとんのじゃ、おぬしはぁ!」

「……ココア味だった」


 ぺろりと舌なめずりする姿がなんか……エロい。

 こやつ、ギャップが半端ないんじゃよなぁ、外見と中身の。


「そりゃ、ココアを飲んだからな! って、違う! おぬし、何を図書室でキスかましてんのじゃ! 紛いなりにも生徒会長じゃろ、おぬし!」

「……まひろん。図書室では静かに」


 口元に人差し指を当てながら、なんか注意してきおった。


「おぬしが言う!?」

「……私、うるさくしてない」

「元凶おぬしじゃからな!?」

「あの、まひろ君。図書室では静かにしないと……」

「その通りですよ、まひろちゃん。ここは図書室です。司書としても注意しなければいけませんし、何よりも図書委員長が大声で騒ぐのはちょっと……」

「え、なに? 儂? 儂が悪いの? というかおぬしら、何をニヤニヤとしておるのじゃ! 特に、屋本司書! おぬし、この状況を楽しんでおるじゃろ!」

「ハハハ。んやー、おっしゃらないで。僕はこのあらー、な光景を見て楽しんでいるだけです。それ以上でもそれ以下でもないです」

「くっ、殴りたい……! 殴りたいこの笑顔!」


 ニマニマとしたこの腹の立つ笑みを浮かべる屋本司書を殴りたい!

 殴りたいという衝動が、体の中で爆発する!

 じゃが……じゃが! ここで殴れば、なんかこう……負けな気がする!


「……はぁっ。もういい。ともかく、ましろんよ。おぬしは何用なんじゃ?」

「おー、上手く抑えましたね、衝動。お見事!」

「やかましい!」


 こんな腹の立つ男と一年間仕事しなければならないと思うと、憂鬱な気分になるぞ、儂は……。儂、ストレスで禿げたりせんよな?


「……して。理由はどうなんじゃ?」

「……今日の生徒会の仕事が終わった」

「ふむ、それで?」

「……引っ越しの準備もすでに完了している」

「ふむふむ。で?」

「……暇だからまひろんの所に遊びに来た。でも、仕事してた」

「まあ、図書委員じゃからな」

「……普通に現れては面白くないから、不意打ちキッスで驚かそうと思った」

「阿保かおぬし!?」


 何をどう考えたら、不意打ちでキスしようなどと思うのじゃろうか?

 儂には到底浮かばない考えじゃな。


「……キスは好き。特に、まひろんとのキスはもっと好き」

「最近思うようになったのじゃが……おぬし、絶対キス魔じゃろ」

「……キス、気持ちいい」

「否定はせんが……まさか、おぬしがここまで肉食系女子じゃったとは……」

「……まひろんは、草食系女子」

「むしろ、獲物系女子、じゃないかな?」

「……おぬしら、儂のことを獲物と思っておったのか?」

「「当然」」


 ……当然、なのか。


 それにしても儂、旦那共の尻に敷かれておるのじゃろうか?

 儂の自由が悉くこやつらに奪われておるような気がしてならぬ。

 一人だけでも大変と訊くのに、四人じゃからのう……。


「ところでまひろちゃん。引っ越し、とはどういうことでしょうか? それから、こちらの二人との関係とか……」

「あー、そう言えばおぬしには話しておらんかったな。まあ、この二人は旦那じゃ。儂の」

「……あぁ、増やしたんですね」

「そう言うことじゃ」

「なるほどなるほど。……となると、まひろちゃんがフラグを建てて回収した、と言うところでしょうかね」

「……おぬし、その光景を見ておったのか?」

「いえ、まひろちゃんならこうかな、と予想したまでです」


 もしかして儂、その辺りのことを予想しやすかったり?

 ……するのかもなぁ。


「それで、引っ越しの方は?」

「そっちは単純にあれじゃ。結婚したから、新居を、と瑞姫の父親が言い出してな……。正直、どうなるかわからないもんで、かなり怖い」


 あの父親のことだ。

 何かしらとんでもない家を用意することだろう。

 下手したら、核爆弾でも耐えられるようなシェルターなんかを用意していそうじゃからな。マジで。


「羽衣梓グループの会長が用意するとなると、相当すごい物件が建ちそうですね」

「うむ……。この件は瑞姫の口から説明されたのじゃが、それと同時に『建つのに一週間かかる』といわれてのう。で、とっくにその一週間は過ぎておってな。それでもまだ完成していないとなると……」

「広くなってそうですね」

「うむぅ……」


 結果として三週間近く経過している今でも、まだ完成していないと言うのじゃから、どんな物が建つのかこれっぽっちも予測できない。


 金持ちの考えることはわからんからな。


 ちなみに、先ほど儂とアリア、ましろんが話しておった、引っ越しの準備と言うのもこれだったりする。


 なんでも、近々完成するとのことで、瑞姫が引っ越しの準備を進めるよう言ってきたのじゃ。

 そのため、美穂、瑞姫、アリア、ましろんの四人は昨日から家に帰り、引っ越しの準備を進めておる。


 完成予定はなんと明日。

 日曜日の夜にそのことを告げられ、儂を含めた瑞姫以外の四人はそれはもう驚いた。

 何せ、自分たちの新居がもうすぐできるわけじゃからな。


 どんな家ができるのか期待で胸を膨らませるわけじゃが……儂だけは、ちと浮かない顔をしておったがな。


 先ほども言ったが、今回の家を建築するにあたり、それを主導したのは紛れもない、ロリコンの父親。そして、その者もロリコン。


 しかも、今の儂ら一家には儂だけでなく、ましろんというロリ生徒会長が加わったことにより、更に暴走しそうじゃからのう……。


 儂の予想ではあるのじゃが、一週間で建つ、と言うのは儂と美穂、瑞姫の三人で想定されていたからこその期間で、そこからさらに二人増えた結果、向こうが少し改良を施そうとしたため、こうしてさらに時間が経ったのではないか、と。


 しかも、その三人目と四人目の両方とも美少女な上に、四人目に至ってはロリじゃし。

 ならば、あの変態が本気を出さないわけがないわけで。


 はてさて、どうするつもりなのじゃろうなぁ。


「新しいお家かぁ。楽しみだよね、まひろ君、真白さん」

「楽しみよりも、怖いが先に来るが……それなりに、じゃな」

「……私は楽しみ」


 まあ、ましろんは表情に出ないだけで、楽しいことは大好きじゃからのう。


「あ、そう言えばまひろ君が交流会に行ってる時に瑞姫ちゃんが言ってたことがあるよ」

「なんじゃ?」

「えーっとね『室内プールは当然として……あのお部屋はいるのでしょうか……』って」

「…………え、なに? 室内プールとかできるの? 新居」

「そうなんじゃないかな? もしそうなら、わざわざプールとか行かなくてもよくなりそうだね!」


 …………どこのセレブハウスじゃ。

 日本にそういう家があるのはあまり聞かんぞ。


「まあよい。明日になればわかる事じゃ」

「それもそうだね!」

「……うん」


 室内プールがあることがほぼ確定したが、まあ、それ以上の物はまずないじゃろう。うむ。ないはず!


 よーし、残った仕事を頑張るとするかのう!


 ……なんて、この時に儂がフラグを建築したなどとは、この時の儂はこれっぽっちも思っておらんかった。

 どうも、九十九一です。

 活動報告にてお知らせしたのですが、投稿時間がずれることになりました。と言っても、朝10時から、17時、もしくは19時にずらしただけなんですけどね。今後は、このどちらかの時間帯に投稿する予定です。ある程度安定してきたら、どちらかに固定しようと思います。

 明日も上記のどちらかでの投稿だと思いますので、よろしくお願いします。

 では。

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― 新着の感想 ―
[一言] 温水プール……なるほどそうゆうことに使われるのですかね あの部屋……気になるなぁ
[一言] 5時か7時把握! まぁあの人のことだしすごい機能つけてそう笑 不審者対策とかメイドさんもいそう 執事なんかもいそう それにしても今後の展開楽しみやなぁ〜
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