日常１９ ロリコン強し。クラスに爆弾投下（教師が悪い）
瑞姫が割ととんでもないロリコンであると判明した。
時々その片鱗を覗かせてはいたが……まさか、ここまで酷いとは思わんかった。
自分の結婚した相手がとんでもない変態だったと知り、儂と美穂は驚愕。
むしろ、これで驚愕するな、という方が無理な相談じゃ。
マジか……儂の結婚相手……ロリコンなのか……。
……いや待て。とりあえず、確認せなばならんことができた。
「……おぬし、まさかとは思うが、儂だから惚れたんじゃなくて、儂が幼女だから惚れた、というわけじゃなかろうな？」
これじゃ。
さっきの口ぶりからすると、儂が幼女だから惚れた。つまり、外見だけを惚れたという可能性が出てきた。
もしそうなら、色々とよろしくないところではある。
さて、そこのところはどうなんじゃろうか……。
「いいえ！ わたしは、まひろちゃんだから、好きになったのです！」
「本当か？」
「本当です！ 噓偽りありません！ だってわたし、男性の時のまひろちゃんのことを好きになっていたのですから！ だって、わたしを助けてくれたわけですし、お父様が寛容になったきっかけの方でもありますから」
「そ、そうか」
「たしかに、わたしは小さな女の子が大好きです」
「言い切ったなー」
なんかこやつ、開き直ってないか？
そう言えば、性癖がバレると一周回って開き直る奴とかおるな……健吾もそうじゃし。
儂は性癖と言えるようなものがほぼないので、そう言う状況にはならんがな。
「好きな男性が、わたし好みの幼い女の子に変身すれば、さらに好きになるのは当然のこと！ そこに嘘はありません！」
「……そうか。すまんな、疑ってしまって」
「いえいえ！ そう思うのも無理はありません。わたしの気持ちを理解していただければそれでいいのです」
「そうか。……まあ、儂は別にロリコンであろうと気にはせんよ。もう結婚してしまっておるしな。今更捨てることもない。儂は、どんなアブノーマルな性癖があっても、受け入れるぞ。結局は、性格さえよければ、儂は特に気にしないしな」
むしろ、ちょっとそういうおかしなところがあるからと言って捨てるような奴は、儂は嫌いじゃな。
人間誰しも、他人に言えない秘密があるものじゃ。
儂は……む？ あったかの？
………………うむ。ないな！
「まひろちゃん……！」
儂の発言を聞いてか、瑞姫は感極まったような表情を浮かべる。
そして、口を開くなり、
「――では、今後好き放題してもいいということですか！？」
「いやそれは違くね？」
「だ、駄目なのですか！？」
「いや駄目って言うか……それで昨日、儂痛い目を見てるし……」
好き放題させたら何をするかわかったもんじゃない。
それがわかっておるから、今回ばかりは断らざるを得ない。
わかってくれ、瑞姫……。
そう思っておったら、美穂がにっこりとした笑みを浮かべながらスマホを操作すると、
『まぁ、儂は別に気にせんよ。好きな相手じゃからな。それに、結婚しておるわけじゃし、男でもない。とんでも事態には陥らんじゃろうからな。二人の好きにすればよい』
『……本当に？ 本当に何でもしていいの？』
『む？ まあ、構わんが……』
『で、では、色々としてもいいということですか？』
『そう言っておるつもりじゃぞ、儂。嫁の願いを聞き入れるのも、旦那の甲斐性と言うものじゃ』
そんな音声が流れて来た。
「……美穂、今のはまさか！」
「昨日の会話、録音してたのよ。言質取るために」
「ひ、卑怯じゃぞ！？」
「ナイスです！ 美穂さん！」
「ナイスじゃないわ！」
満面の笑みでサムズアップをするでない！
こやつ、いつの間にこんなことを……！
し、しかし、スマホを取って削除してしまえば……！
「先に言っておくけど、このデータ、すでに私のＰＣに送ってあるから消しても無駄よ」
「退路がないっ！」
な、なんという外道！
おのれ美穂め！ とんでもないことをしおって！
「まあいいじゃない。さすがにほいほいと昨日のようなことはしないから」
「……本当か？」
「ほんとほんと。ね、瑞姫？」
「はい！ たまにしかしません！」
「やる気ではないか！」
「大丈夫です。やると言っても、二週間に一回くらいですから！」
「それでも多くね！？」
儂、月に二回やられる計算じゃからな！？
死んじゃうぞ？ 儂死んじゃうぞ！？
「仕方ありません。では妥協して、三週間に一回、ということで」
「……どんだけじゃ、おぬし」
なんか儂、その内こやつら色に染められそうで怖いんじゃが……。
儂の人生、大丈夫か？
「……ちなみに、やるとはなんじゃ？」
「そうですね……着せ替えはしたいですね」
「あ、あれをか……」
「はい！ せっかく可愛らしいお姿なのですから、たくさん可愛いお洋服を着せたいのです！」
「あ、それ私もしたい。その内買いに行きましょ」
「いいですね！」
「……儂に拒否権は？」
「「ない（です）！」」
「そっすか……」
儂の立場とは一体……。
「……着せ替え以外には？」
「そうですね……やっぱり、添い寝とか？」
「まあ、寝るくらいなら毎日でもいいが……」
「あ、本当ですか？ 実は、抱きしめながら寝てみたかったのですよ」
「それ、夏場暑いような気がするぞ」
「可愛らしい女の子を抱きしめて寝れるのなら、暑さなんてまったく問題ありません！ むしろ、それで熱中症になったのなら、それはそれで本望です！」
こやつ、ガチすぎないか？
いくらロリコンと言えども、さすがに夏場でもしないと思うんじゃが。
マジで、どうなっておるんじゃろうな。こやつの思考は。
「しかし、儂は嫌じゃよ？ 暑いの嫌じゃし。冬場だったら全然問題ないんじゃが」
「そ、そんな……！ な、夏場は抱きしめてはいけないのですか！？」
「そりゃあ、暑いし。というか、儂熱中症になるぞ？」
「そ、それでは、だ、抱っこも……」
「抱っこか……抱っこは……」
どうなんじゃろうか。
たしか、夏場のコンクリートの地面は熱を放出していて、小さな子供は熱中症になりやすいらしい。
今の儂の身長から察するに、そうなってもおかしくはない。
となると……
「まあ……お姫様抱っこなら？」
「それはそれでおかしくないかしら？」
「いや、これでも密着する面積が少ない方法を選んだんじゃよ？ さすがにきっついじゃろ、それは」
「……でも、瑞姫の胸、これよ？ こんな胸でお姫様抱っこされたら暑そうだけど」
「……たしかに」
「そ、そうですか？ たしかにＦはありますけど……。あ、それではこう言うのはどうでしょう。わたしの胸の上に乗るのです」
「いやそれ無理があるじゃろ！？ そのレベルだと、儂赤子じゃから！」
少なくとも、今の身長でそれができるわけがない！
絶対落ちるから！
「でも、世間ではタピオカチャレンジなるものもありましたし……。それなら、幼女チャレンジなるものがあってもいいかなと」
「そんなもんないわ！」
なんじゃ、幼女チャレンジって！
パワーワードすぎるじゃろ！
「ねぇ、話をぶった切るようで悪いんだけど、一ついいかしら」
ここで、美穂が話に入ってきた。
「なんじゃ」
「学園、行かなくていいの？」
「「……あ」」
ただいまの時刻――午前八時二十分！
朝のＨＲの開始時刻――午前八時三十五分！
儂の家から学園まで徒歩でかかる時間――二十分！
「い、急いで準備じゃ！ 遅刻してしまうぞ！」
「わ、わかった！」
「はい！」
しまった！ 普通に話しすぎた！
無欠席はともかく、無遅刻なのが儂の美点なんじゃ。急がねば！
慌てて準備をして家を出た儂ら。
幸いにも、授業に使う教科書類なんかは、儂の家に置いてあったのでセーフじゃった。
しかし、儂が小さいことが問題じゃった。
元々の儂の身体能力は、平均よりも少し下。
よって、小さくなった儂のこの姿も平均よりも少ししたということになる。
つまり……走るのが遅い、ということじゃ。
あと、体が小さいということは、当然歩幅も小さくなり、いつもよりも多くは知らなければならなくなるわけじゃ。
そうなってくると、儂は確実に遅刻コースまっしぐら。
このままでは……と思った時、
「まひろは私が抱えていくわ！」
美穂が儂を抱えて走ると言い出した。
「よ、よいのか？」
「当たり前よ！ 可愛い幼妻を置いていくわけにはいかないわ！」
「では頼む！」
「ＯＫ！」
美穂はすぐさま儂をお姫様抱っこで抱えた。
「ずるいですが、わたしよりも美穂さんの方が僅かに早いですし、美穂さんお願いします！」
「任せて！ じゃあ、行くわよ！」
「はい！」
「う、うむ！」
そんなわけで、新学期二日目から、儂らは走って登校する羽目になった。
その道中、
「はぁっ……はぁっ……つ、疲れて、きちゃいましたっ……！」
「しっかりして、瑞姫っ。わ、私も疲れてる、のよ！」
「で、ですが……わたし、もう……駄目……かもしれ、ませんっ……！」
「それでは遅刻になってしまうぞ！」
抱えられている状態で儂が言うとか、明らかに煽りのようなものじゃが、この際仕方ない。
一応『成長退行』と『獣化』を使えば走れないこともない。
それどころか、余裕で間に合うまである。
しかし、それだと儂はすぐにガス欠になるじゃろう。
何せ、『成長退行』は維持するだけで腹が空く。そんな状態で、本気で走ろうものなら、儂は途中で力尽きてしまいそうじゃからな。
まあ、それなら『獣化』を使えばいい、となるのじゃが……あれは色々と問題がある。
まず、目立つ。それから、尻尾が生える関係上、パンツがずり落ちる。下手したら尻が見えるな。健吾や優弥に口を酸っぱくして言われておる故、尻丸出しの状態で走るわけにはいかん。あと、露出癖はないからな、儂には。
今度、尻尾穴を空けるか。
「で、でも、わたし……わたしぃ～……！」
こ、こうなったら……！
「で、では、学園についたら一つだけ言うことを訊いてやるから、がんば――」
「ほんとですか！？ なら頑張ります！ 行きますよ！ 美穂さん！ わーい！」
「あ、瑞姫！ ……って、速っ！」
バビュンッ！ という効果音が見えそうなほどの速度で、瑞姫は走り去っていった。
「……あやつ、欲望に忠実じゃな」
その様子を見て、儂はぽつりと呟いた。
「「セーフ！」」
何とか無事に到着。
結構な速度で走ったからか、幸いにも五分前に到着した。
『お、来た来た』
『桜花の奴、音田さんにお姫様抱っこされてるんだけど！』
『何あれ可愛い』
『ちっちゃい桜花君って可愛いよね、なんか』
教室に入ると、そんな声が聞こえてきた。
やはり、儂は目立つのか。
「おっす、三人とも。遅かったな」
「おはようございます。いつもは割と早めに来るまひろさんにしては遅かったですね」
「いや、つい話し過ぎてしまっての。……と言うか健吾よ、おぬし、連絡くらいしてもよいと思うんじゃが？」
「いや、なんかお前ら昨日早退したみたいだしよ、それになんか色々やったらしいじゃん？ 仲も深まったみたいだし？ それを邪魔するのは無粋ってもんだろー」
「……おぬし、まさか知っておるのか？」
「と言っても、知っているのは僕と健吾さんだけですよ。あと知っているのは、先生方でしょう」
「……なぜ、知っておる」
「あぁ、お前のかーちゃんから連絡があった」
は、母上かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！
なんで健吾にも話しておるのじゃ！
……いや待て、そう言えば優弥も知ってると言っておったな。
ということは……優弥にも言ったな！？
くそぅ、やってくれおって！
「おーし、お前ら席つけー。大事な話があるからなー」
儂が内心、父上と母上に対し怒っていると、四方木教諭が入ってきた。
大事な話……まさかとは思うんじゃが、こやつ、言わないよな？ 絶対言わないよな？
「えー、まあお前らも薄々勘付いているかもしれないが……桜花、音田、羽衣梓の三人が結婚したんで、お前ら絶対に手を出すなよ。慰謝料請求されっからなー」
爆弾投下。
そして、
『『『な、何ィィィィィィィィィィィィィィィィッッッ！？』』』
『『『きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ！』』』
クラスは、男子による絶叫（？）と女子による黄色い悲鳴によって、騒々しくなった。
やろぉ、やってくれおった！
どうも、九十九一です。
二作品同時に投稿すると言う馬鹿なことをしている私ですが、思ったよりも慣れました。意外とできるもんですね。ですが、割と支障が出るかもしれないと考えたんで、もしかすると、それぞれの投稿時間をずらすことになるかなと。向こうが１０時。こっちは１５時。みたいな。そんな感じにするかもしれません。まあ、まだ不明です。決まったら、活動報告の方で伝えますんで。
明日も１０時だと思いますので、よろしくお願いします。
では。
