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日常127 結婚式。まひろの決めたこと

 挨拶回りを終えたまひろたちは、そろそろ時間になると言うことで、各々が所定の位置で待機することになった。


 旦那である、美穂たちは新郎側であるため、一度まひろと別れる。


 別れたあと、まひろは父親である雅也と待機。


「……おいおい、まひろ。手が震えてるぞ?」

「し、仕方ないじゃろ……これでも、緊張しとるんじゃよ、儂……」


 式場の外にて、まひろは雅也と二人きりで待機していたが、その体は震えており、雅也はからかい交じりに指摘するが、まひろは顔を赤くしながらそっぽを向く。


「……まさか、お前が新婦としてこうして結婚式に出ることになるとはなぁ。父さん、予想してなかったぞ?」

「……儂もじゃよ。じゃが、こうして出てくれてありがとうな、父上よ」

「割と放置気味ではあったが、これでも父親だ! 娘の晴れ舞台に来ないもんかよ。……ってか、あれだな。娘になった息子と腕を組んで入場するとか、すんげぇ変な気分」

「儂もじゃ。この歳で、父親と腕を組んで歩くとか、恥ずかしいわい」


 などと軽口を叩きあい、二人は顔を見合わせるとぷっと吹き出す。


 さすがに大きな声で笑うことはできないが、くすくすと、静かに、けれど声を出していた場合、大笑いだったこと間違いなしなほどに笑う二人は、しばらく笑ってからふと笑うのをやめた。


 旦那たちが来たのである。


「まひろ、先に行ってるわよ」

「……うむ」


 旦那たちはまひろたちの前にやって来ると、美穂が代表するかのように言葉をかけ、まひろはどこか儚いような笑みを浮かべて頷いた。


 それを見た旦那たちは一瞬見惚れるも、すぐに気を取り直して、式場の中へとゆっくり入場していく。


(遂に始まったか……)


 本来ならば、感慨深くなるんじゃろうなぁ、と心の中で苦笑するまひろであったが、すぐに表情を引き締める。


「……で? 我が娘よ、緊張はほぐれたか?」

「んなわけあるかい……。しかし、失敗はしたくないのぅ。儂があやつらに申し訳が立たなくなってしまうわい」

「ははっ、お前はほんと、お義父さんみたいな人に育ったもんだ」

「……儂の人生の師匠、みたいなもんじゃからな、爺ちゃんは」


 本心としては、この場にいてほしかったが……さすがに、それは叶わない。


 なので、今日という日を目いっぱい楽しんで、写真や思い出を残して、お盆で再開する時に、見せて、聞かせたやりたい、とまひろは強く想う。


「ってか、俺たち入場の練習的なこととかしてないけど、大丈夫か? 一緒に歩ける?」

「安心せい。これでも、儂らは親子じゃぞ。一度も出かけたことがないなどはなく、小さい頃に一緒に二人三脚とかもしたじゃろう? 問題はない。それに、儂が合わせればいいんじゃよ、そう言う時は」

「そうか。……いやぁ、息子がお嫁に行くのかぁ……」

「なんか字面に悪意を感じるが……」

「間違いじゃないだろ?」

「いやまぁそうじゃけども」


 雅也の言葉に、まひろは何とも言えない表情を浮かべる。


 余談だが、この世界において、男性から女性へ変わった者たちが結婚する時、実は四割くらいはまひろのように、お嫁に行く側だったりする。


 なので、別段珍しいことではない……と、思われる。


「にしても、まさかお前があんな人前式をしようと言うとはなぁ……」

「……ま、儂なりのケジメじゃ。それに、儂はほとんどあやつらに気持ちを伝えてはおらんからな。入籍はしていても、まだ結婚していない、そんな気持ちがあったんじゃ。だから……ああすることにした」


 そう語るまひろの表情は真剣なものであり、同時に覚悟を決めた、そんな表情であった。


 それを見て、雅也はそうか、とふっと笑みを浮かべる。


 元が男同士、というのもあって、なんだかんだ仲はいいのである。


 どんなに家に帰ってくる頻度が低かろうが、それでも、親は親。


 どのような人物であろうと、まひろはしっかり両親を愛していた。


 雅也とは、何気にゲームなどの好みも非常に似ており、実は家にいる時はよく一緒に遊んでいたのである。


 もちろん、ゲームだけでなく、家族水入らずで外へ遊びに出かけることもあった。


 割とめんどくさがりなまひろとはいえ、子供時代はそれなりに遊ぶ子供でもあったので、そう言う時は全力で遊んだものである。


 一緒にいる時間が少ないからこそ、いる時は全力で子供を構う、そんな両親だった。


 だからまひろには反抗期はやって来ず、二人に呆れることはあっても嫌いになることなどないのだ。


 そんな子供が、気が付けば大きくなったと知り、内心で喜びつつも、少しだけ寂しさを覚える。


「まひろお嬢様にお父様。お時間です」

「うむ。よし、行くぞ、父上よ」

「おう。一世一代のエスコートは任せろ!」

「ははっ、なんじゃそれは」


 雅也のセリフに、まひろはくすりと笑ってツッコミを入れ、二人は式場へと足を踏み入れる。


 式場へ足へ踏み入れると、そこには休日であるにもかかわらず、お祝いに来てくれた友人らやバイト先の同僚たち、他にも学園の教師に、よく見れば小学校と中学校の友人や教師などもいて、内心で思わずびっくりするまひろ。


 どうやら、高校の友人ら以外は、まひろを驚かせる的な意味合いで座っていた。


 というか、人が多過ぎである。


 わざわざこんなに来てくれるとは思ってなかったまひろは、嬉しくなると同時に、少し引いた。


 しかし、嬉しさの方が強く、まひろの胸が熱くなる。


 そして、視線を前に移せば、その先にはタキシード姿の旦那たちが、こちらを見ていた。


 思わず、前に急いで向かいそうになるが、これが式であることをすぐに思い出し、思いとどまる。


 そして、ゆっくりと、真っ直ぐ前を見つめて、雅也と腕を組んで、ブーケを両手に持ちながら、赤い絨毯の上を――バージンロードを歩んでいく。


 途中、バージンロードを歩む、あまりにも綺麗な姿のまひろに、参加者たちは思わず見惚れてしまうほど、その美しい姿に圧倒される。


 それを知ってか知らずか、まひろはただただ、前へ、前へ、とバージンロード旦那たちが待つ場所へと到着。


 そこで、雅也と別れ、まひろは前へと進んだ。


 ……さて、結婚式は西洋風で行うのであれば、進行の仕方には二パターン存在する。


 それは、教会式と呼ばれる物と、人前式と呼ばれるものの二つである。


 神父や牧師がメインとなる、まあよく知られている『病める時も~』というあれが教会式であり、家族や友人の代表者、上司などと言った人物が、神父や牧師のような立ち位置となり、問いかけを行うもの。


 さらに言えば、人前式の誓いの言葉にも割とパターンが存在し、その一つに新郎新婦の新郎側がプロポーズする、というものが存在する。


「それでは、新郎新婦が揃いましたので、これより人前式を始めさせていただきます」


 今回の結婚式における司会進行は、桜花邸の超人メイド、柊である。


 しっかり遂行してくれそう、という理由で推薦されており、柊はそれを受け、こうして司会をしている。

「まずは、新郎新婦の誓いの言葉でございます」


 柊が手短に進行させる。


 ちなみにであるが、まひろたちの結婚式は色々と例外に例外が重なった、ある種奇跡のような状況である。


 本来ならば、まとめていっぺんに、ということはなく、大抵は一人結婚式を挙げ、更に増えればまた一緒に、という場合が多い。


 しかし、まひろたちの場合は、予め設定していた時期の間に増えたために、こうして一人の新婦に対して、六人の新郎、という形になっている。


 そして、例外に例外があるのならば、もういっそ、ここの部分は儂ららしく、自由にすればいいと、まひろは結婚式の日程を告げられた後に話した。


 それを了承した旦那たちも合意の上だ。


 そして、まひろが選んだ人前式における大きな選択は――。


「本日は、私たちの結婚式にお越しいただきありがとうございます。これから、人前式となるのですが……あぁ、やっぱダメじゃ。堅苦しいことが、儂は苦手でな。じゃからな、素手行かせてもう。じゃから儂は今ここで、皆様の前で、儂の生涯の夫となる六名に、改めて気持ちを伝え、告白をし、最後にプロポーズをしようと思う」


 そう、まひろが選んだことは、改めて自分から告白をするというものだった。


 元々、まひろは男性である。


 最近は、自身の体に精神が引っ張られたり、旦那たちの嫁扱いや、あれこれによって乙女化してきていたりするが、それでも男として、プロポーズをした方がいいと言う気持ちがあり、こうして人前式にてプロポーズをすることにしたのである。


 尚、旦那たちは人前式にやりたいことがあると言われただけで、プロポーズをするとは一言も聞いていなかったので、これには思わずびっくり顔である。


 そして、まひろの突然すぎる発言に、参列者たちも笑うか驚くかの二択だったりする。


 さっきまでまともな口調だったじゃん、みたいな。


 しかし、これがまひろである、とよく知る者たちはらしいなぁ、と笑みを零した。


 そんなまひろは、まずはと美穂の前へ移動し、改めて美穂の前に立つ。


「美穂よ。おぬしとは、最初はあんまり仲良くはなかったな。しかし、儂はおぬしがとても心優しい女性であると知っておった。たった一人で、友人の仕事を肩代わりしていた姿は、今でも目に焼き付いておる。……正直、いきなりプロポーズされた時は、マジで!? と思ったものじゃが……今ではあれでよかったと、強く想っておる。価値観も近く、おぬしと話す時は気安くて、安心感を覚える所が好きじゃ。儂と一緒になってツッコミを入れることや、時にはふざけることも、とても楽しい。そして何よりも、おぬしの優しさや行動は、何よりも面白い。この先、何があっても、儂と一緒にいてほしい」

「――私もよ、まひろ。こちらこそ、一緒にいてほしい」

「……うむ」


 まひろの告白に、美穂は一瞬言葉を詰まらせるが、すぐに柔らかな笑み浮かべて、同じ気持ちであるとまひろに答え、まひろも嬉しそうに頷く。


 そして次に、まひろは瑞姫の前へ立つ。


「瑞姫よ。おぬしとは、出会い方が割と雑だったなぁ、と今でも思う。そして、着せ替え人形のようにされたことも、よく覚えておる。……いきなりプロポーズしてきたことも。半ば勢いでおぬしのプロポーズを了承してしまった儂じゃが、一緒にいるうちに、おぬしの優しさやら人を見る目、他にも周りを楽しませる、そんな姿に、儂は惚れた。いつもは、困った行動や言動を取るが、それでも真面目なところは真面目に、誰かのために潤滑油の存在になれるおぬしは、本当にすごいと思うし、尊敬もしておる。おぬしがいなければ、こうして儂は六名と結婚し、仲良く暮らすなどできなかったじゃろう。本当に、感謝しておる。じゃから、これからこの先も、一緒にバカをやってほしい」

「――もちろんです。わたしは、一途ですから」

「……うむ」


 最初の方のセリフに、瑞姫は内心うっ、と思いつつも、次第に自身の好きな部分をストレートに言われ、最後には一緒にバカをやってほしいという言葉に、瑞姫はふんわりとした笑顔で答え、まひろも頷き、アリスティアの前に立った。


「アリアよ。おぬしとは、去年からの付き合いであったな。初めて会った時は、日本語に不自由で、儂は内心『こんな爺口調な儂が教育係で大丈夫か?』と不安であった。しかし、おぬしの一生懸命に頑張る姿は儂だけでなく、周囲に元気を与えた。おぬしの天真爛漫な所は、おぬしの一番の長所であり、大切な所であると思っておる。じゃが、儂は本当に鈍感で、まったく気づかんかったが……おぬしから貰ったプレゼントは大事に取っておいてあるし、バレンタインに貰ったチョコレートも大事に食べた。どれもこれも嬉しかった。儂はな、おぬしのどんなことにも前向きに、天真爛漫に楽しめるおぬしをとても尊敬しておる。これから先も、その暖かさを儂らに振りまき、一緒に楽しく暮らしてほしい」

「――うん! もちろんだよ! 楽しく暮らそうね!」

「……うむ」


 最初は少し気恥ずかしそうにしているアリスティアであったが、まひろの最後の言葉を受けて、いつものような天真爛漫な笑顔と共に答え、まひろも頷き、真白の前に立つ。


「ましろんよ。おぬしとは、なかなかに衝撃的な出会い方であったな。廊下で行き倒れるおぬしの姿を見た時、もしや儂、事案になりかねない? と内心戦々恐々であったわい。しかし、いざ話してみると、かなり面白い人物とわかって、儂はかなり気に入った。しかし、おぬしはおぬしでかなり辛い思いをしてきたとも聞いた。それでも、周囲を見返してやろうと努力してきたおぬしの生き様はとてもカッコいいと思えた。それに、おぬしは普段から冷静で、物事を深く考えておるところもカッコいい。じゃが、その反面、食べ物や食べることが大好きなところは、可愛いと思っておるよ。儂の料理を美味しそうに食べる姿は、何よりも嬉しいし、また作りたいと思っておる。これから先も、儂の料理をたくさん美味しそうに食べてほしい」

「――……ん。当然。まひろんの料理は飽きる気がしない。だから、いっぱい作って」

「……うむ」


 いつもと変わらずの様子に見える真白だが、よく見ると頬や耳は紅潮していた辺り、割と恥ずかしいのだろう。しかし、まひろの言葉には強く反応し、まひろは少しだけ苦笑しながらも頷いた。


 次に、結衣の前に立つ。


「結衣姉よ。おぬしとは、儂が小学生の頃の出会いであったな。当時は、傘を差さずにベンチに座るおぬしの姿が、当時の儂は不思議でしょうがなかった。しかし、おぬしの悩みを聞き、それが解決すると、儂らは本当の姉弟のように仲良くなったのう。当時は姉のようなおぬしを慕い、一緒に遊び、勉強を教えてもらった。そんな毎日が楽しくて、儂はそれがずっと続くものと思っておった。しかし、おぬしは海外へ行ってしまった。じゃが、結婚の約束もした。そして今、こうして儂と結婚してくれておる。本当に嬉しい。おぬしはとても優しく、一緒にいるととても安心する。どんなことがあっても、柔らかな笑みで受け流す姿も、これが大人の女性か、と思ったものじゃ。儂からすれば、おぬしは姉のような存在であり、純粋に甘えられる存在じゃ。これから先も、その暖かな優しさを儂らに与えてほしい」

「――そのつもりよ~。ひろ君は、大事なお嫁さんだから~」

「……うむ」


 その瞳に、どこか母性的な狂気が見え隠れしたが、まひろは苦笑するだけで頷いた。


 そして最後に、祥子。


「祥子姉よ。正直、儂らの中で一番関係が浅いのはおぬしじゃろう。初めて会った時は、TSF症候群の研究所であったな。最初は、マッドサイエンティストすぎんじゃろ……と、少し怖く思ったが、話してみると気さくで、なんだかんだ儂ら発症者たちのことを気遣ってくれているとわかった。もちろん、頭おかしいな、と思うことはある。じゃが、おぬしのおかげで儂らが助かっておるのも事実じゃ。それに……実はおぬしが、一度好きになった者に対しては、割とべったりであることも知った。普段とのギャップが凄まじく、ついつい面白くなってしまうが、おぬしは平然としておったのう。とはいえ、それが本来必要なことであったんじゃろうな、おぬしには。そして、おぬしの知識量はすさまじく、それに儂は助けられてきた。悩みがあった時も電話で相談にも乗ってくれた。なんだかんだで優しい所や、常に冷静なおぬしが、儂は好きじゃ。これからも、その知識量や冷静さで、儂らを助けてほしい」

「――あぁ、もちろんだとも。君という面白い人を逃す気はないからね」

「……うむ」


 いつものマッドサイエンティスト的な笑みは鳴りを潜め、祥子は自然な笑顔でそう答え、まひろも頷いた。


 全員への告白が済むと、まひろは改めて中心へ移動し、もじもじとどこか恥ずかしそうになる。


 口を開けては、閉じて俯いて、そんなことを繰り返すこと数回ほど、ようやく決心がついたまひろは、ぎゅっと目を瞑ってから、真っ直ぐに六人を見て口を開いた。


「――おぬしらは一癖も二癖もあるような、そんな奴らじゃ。しかし、一人一人が儂を想ってくれておることはよく理解しておる。……今までは儂からではなく、おぬしらからばかり言わせてしまっておったな。じゃから、今日という日だけは……いや、今日からは、儂も積極的になろう」


 一度ここで言葉を中断させ、まひろは深呼吸をしはじめる。


 そして、今までに見せて来た笑みとは一線を画すほどの、綺麗で、見る者全てを魅了し、見惚れさせる、幸せそうな笑みを浮かべ、


「――儂は、いや……私は、あなたたちのことを心の底から愛しています。だから、これからもずっと、ずっと……一緒にいてください」


 まひろなりのプロポーズをした。


 しかも、普段の爺口調ではなく、それこそ少女のような口調で、柔らかく、それでいて旦那たちの心に深く、深く突き刺さるようなセリフであったために、六人は一瞬呆気にとられるが、すぐに笑みを浮かべて、


「「「「「「当然!」」」」」」


 と、返すのだった。


 なんとも甘々な光景に、参列者たちはにっこりである。


「……よし! プロポーズはしたな! じゃあ、ほれ! 柊さん、進行頼む!」


 そして、顔を真っ赤にしたまひろが、いつものような調子でそんなことを言って、参列者たちはズコー! とした。


 先ほどまでの綺麗すぎるプロポーズのセリフはなんだったんだ、とツッコミを入れそうになるが、それを堪えた参列者たちを褒めてほしい。


「かしこまりました。それでは、指輪の交換へ移ります。まひろ様、準備はよろしいでしょうか?」

「うむ。……本来ならば、新婦ではなく新郎側がするんじゃろうが……まあ、こればかりはな」


 さすがに、まひろが六つも指輪を受け取るわけにはいかないため、この指輪はまひろがそれぞれに嵌めることになっており、まひろ自身に対しては旦那たちを代表して瑞姫がすることになった。


 尚、決め方はじゃんけんである。


 瑞姫が一人勝ちした。


 まひろは、柊から差し出されたトレーから、各々のイメージに合わせて作成された指輪を一人一人の左手の薬指に嵌めていく。


 そして最後に、六名の指輪のデザインを一部ずつ反映させた指輪を瑞姫がまひろの左手の薬指に嵌めた。


「それでは次に、誓いのキスへ移ります」


 そして、ある意味参列者たち的には、一番の目玉かも知れない誓いのキスへ。


 こちらの順番は、まひろと結婚した順番である。


 つまり、美穂→瑞姫→アリスティア→真白→結衣→祥子、の順番となる。


 なんか、一列にまひろの前に並ぶ旦那たちがシュールである。


 しかし、当人たちは至って真面目であり、それぞれがキスを済ませていく。


 美穂は、ありふれたものでありつつ幸せそうなキスを。


 瑞姫は、一瞬のはずなのにやたら濃く感じるようなキスを。


 アリアは、元気なアリアらしい清々しいようなキスを。


 真白は、キス魔である彼女らしい愛が深そうなキスを。


 結衣は、優しさにあふれた様な甘いキスを。


 祥子は、冷静でありつつもどこか嬉しさを隠せないようなキスを。


 それら全てを受けたまひろは、と言えば、


「――――(かぁ~~~っ!)」


 それはもう顔が真っ赤である。


 元が色白なだけに、その赤さがよくわかり、恥じらう姿がとても可愛らしいものとなっていた。


 ちなみに、まひろが今回の結婚式において、一番恥ずかしいと思っていることは、この誓いのキスだったりする。


 その後も、結婚証明書にサインしたり、結婚成立の宣言と承諾が行われ、本来ならばここで代表者挨拶となるのだが……まあ、この辺りは盛り込まれていない。


 理由はと言えば……そもそもの話、こんな複数同時の結婚という状況で、一体誰がやればいいんだ状態であるためだ。


 それに、まひろたち自身もそこまで堅苦しいことはしたくないと言うタイプであったため、それはもう自由になっていた。


 この辺りは、結婚式の話が出た後、繁春が本人たちの性格をリサーチしたものであるため、よく見ていると言えよう。


 尚、情報源はメイドたちである。


 そうして、閉会挨拶へ。


「それでは、ただいまを持ちまして、人前式のすべてのプログラムを終えましたので、人前式を閉式させていただきます。そのまま、新郎新婦が退場いたしますので、皆様、温かな拍手をお願い致します」


 柊がそう言えば、まひろたちは仲良く歩きながら、祭壇から式場への出入口まで続くバージンロードを温かな拍手と、いつの間に用意したん? と思うほどの花びらやらライスシャワーが降り注ぎ、様々な祝福を受けながらの退場となった。


「――それでは、参列者の皆様方。この後早速パーティーとなりますので、当ホテル自慢の庭園への移動をお願い致します」


 まひろたちが退場してしばらくした後の式場内では、柊のその言葉により、参列者たちが移動を始めていた。


 この後始まるのは、なんてことないありふれたパーティーである。


 ……多分。

 どうも、九十九一です。

 なんだろうこの、最終回感。誓いの言葉の下りとか、終わるんか? これ、みたいな錯覚に陥りましたが、前も言ったように全然続くので。まだまだ終わらないし。TSF症候群の謎とかも解明されてないし。終わるとしたら、もっと先だろうなぁ、これ。

 次回も以下略です。

 では。

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