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日常113 登校。色々な武勇伝とか

「え、侵入者ってまひろのお婆ちゃんなの!?」


 あの後、手早く朝食を済ませ、儂らは学園へ登校する。


 その間に、先ほどの顛末を四名に告げた。


 ちなみに、祥子姉は婆ちゃんに挨拶した後、そのまま一緒に桜花家に行くことになった。


 話し相手且つ、今後は家族になるからその挨拶だそうじゃ。


 変なところで真面目。


 そうして、先ほどの人物の正体が儂の婆ちゃんであると知るや否や、五名はそれはもう驚愕する。


「先ほど、お婆様であるとはお聞きしましたが、本当に……?」

「本当じゃよ。いやー、婆ちゃんむかしっから強くてのう。我が家で最強の存在じゃった」

「……具体的にどれくらい強い?」

「ん? そうじゃな……格闘技の世界大会に出れば、間違いなく優勝するくらいかの? しかも、ハンデ有りで」

「まひろ君、まひろ君のお婆ちゃんって、えと……バトルマンガの世界の人?」

「いやぁ、儂も良く知らんのじゃけど、昔から旅に出ておったなぁ。最近は紛争地帯へ赴き、たった一人で戦場に突っ込み、両軍を殺生無しで壊滅させたとか言っておったな」

「「「「「「マジで!?」」」」」

「うむ、マジ。ほれ、これが写真」


 驚く五人に、儂は婆ちゃんに渡された写真を見せる。


 そこには、もう戦争はしません……という文字が書かれたボードを首にかけ、地面に正座させられておる二人の主導者の肩を掴んで満面の笑みを浮かべる婆ちゃんの姿が。


 あと、よく見ると周囲には様々な銃火器が落ちており、しかも、その裏には山積みになった兵士たちの姿があった。


「えっ、ちょっ、これって最近ニュースになってなかった!?」

「そうね~。たしか、とある国の紛争地帯における戦争が終結したとか~?」

「ま、まひろちゃんのお婆様は何者なのですか……?」

「……控えめに言っても、化け物」

「すごいね、まひろ君のお婆ちゃん……」


 などなど、この写真の出来事についての話とか、あとは婆ちゃんに対する感想などが五人の口から零れる。


 ほう、婆ちゃんがしたことがニュースになっておったとは……。


「ねぇ、まひろ。あんたのお婆ちゃんって、発症者ってわけじゃないのよね?」

「違うが? というか、婆ちゃんが旅に出たのは、あれじゃぞ? 儂らが生まれる前」

「じゃあ、純粋な人間……? え、人間って言っていいの? それ」

「さぁのう。じゃが、儂の婆ちゃんは最高にカッコいいぞ! 昔から、優しくもあったからのう。しばらくは日本におるとか言っておったのでば、嬉しい限りじゃわい」


 まさか、婆ちゃんが帰って来るとは思わんかったからな。


 いやはや、滅多に会えない家族と会えると言うのは、嬉しいものじゃな。


「そ、そうなのね……」

「ちなみに、健吾は面識があるぞ?」

「そうなんだ?」

「うむ。あやつの家は儂の家の隣じゃったからのう。昔からよく遊んでおった故、健吾も知っておる」


 健吾に帰ってきたことを告げたら、どんな反応をするやら。


 後で、教えるとしよう。


「へぇ~、あいつがねぇ……」

「それにしても、ひろ君お婆ちゃんがいたのね~。私、知らなかったわ~」

「まぁ、そうじゃなぁ……実際、婆ちゃんが家にいることは滅多になかったからのう。儂が生まれてから小学生に上がるまでの間と、爺ちゃんが死んでからの一ヶ月間くらいか? いたの。じゃから、知らなくても当然じゃな」

「なるほどね~」


 ま、婆ちゃんは凄まじい人物じゃからな、うむ。


「……桜花家がおかしいのか、まひろんのお婆ちゃんがおかしいのか、わからない」

「それはそう、ですね。わたしも予想外過ぎました……」

「……正直、婆ちゃんが迷惑をかけたようで、申し訳ないと思っておる」

「あ、いえいえ、お気になさらず。むしろ、メイドさんたちからは『是非、戦闘のご指導を!』と頼み込んでおりましたし」


 気にしないで、と瑞姫が言った直後に放たれたセリフに、儂は頬を引き攣らせた。


「……え、あ、あの者たち、それを言ってしまったのか……?」


 どこか震える声で瑞姫にそう訊き返す儂。


 反対に、儂の質問を受けた瑞姫や他の旦那たちもこてんと首を傾げた。


「まひろ君、何か問題があるの?」

「……特にないと思う」

「……まぁ、何も知らぬおぬしらからすればなぁ……。よいか? 儂は爺ちゃんと並ぶくらいに婆ちゃんが好きじゃ。婆ちゃんは我が家において、武力も財力も、権力すらもずば抜けており、言ってしまえば、桜花家の本家と分家において、最も権力があると言っても過言ではない」

「あんたの家ってやっぱおかしくない?」

「それは思う」


 元々、本家と分家がわかると言うのも不思議なもんな上に、なぜかうちの家系は変な物が多い。一芸特化、とも言えるかもしれんが……儂は特にないと思うが。


「しかしな? 婆ちゃんは何と言うか……まぁ、超人なわけじゃな。マジもんの。絶対生まれてくる世界間違えたじゃろ? とか思うほどに」

「「「「「それはわかる(わかります)」」」」」


 異口同音である。


「そんな婆ちゃんは、拳一つあれば生きていけるとか本気で言っておる人物でな。まぁ、そんなところもカッコよくて大好きなんじゃが……まあ、それはよい。そんな婆ちゃんはな、見込み有りと判断すると、それはもう地獄のような修業を課すのじゃ」

「……えっ、も、もしかしてあの屋敷のメイドたちって……」


 儂が何を言いたいのか勘付いた美穂が、頬をぴくぴくと引きつらせる。


 儂は、うむ、と頷いて答える。


「……間違いなく、婆ちゃんは嬉々として鍛えることじゃろう。とはいえ、今日はさすがにないと思うが……。それに、元々婆ちゃんは鍛えたいと願い出て来る者は拒まないのじゃ。特に、柊さんに目を付けていそうじゃな。儂の部屋に入ってきた際、婆ちゃん、どう見ても柊さんを気に入った様子じゃったからのう……」


 多分、弟子にしようとするんじゃなかろうか。


 婆ちゃんはなぁ、強すぎるからのう……。


 あの人、普通にコンクリートの壁ぶち抜けるし、鉄筋はへし折るし、他にも高所から落ちても死なないし……いやもう、ほんと化物過ぎてカッコよくてな……。


「……そう言えば、柊さん、すごく興奮してた」

「む、そうなのか? ましろんよ」

「……ん。あの方に指導していただければ、私はもっと強くなり、お嬢様方をお守りできます! って言ってた」

「マジかー……いやでも、案外婆ちゃんとの相性は良さそうじゃが……」


 婆ちゃんは基本、自身の指導を真面目に受ける者を大層好む。


 おそらく、柊さんだけでなく、うちのメイドさんたちは婆ちゃんが死ぬほど鍛えるんじゃろうなぁ。


「ま、死んでも人間の蘇生をやるような人じゃ。問題なかろう」

「待って!? あんたのお婆ちゃん、蘇生とかできるの!?」

「できるぞ? たしか、寸勁じゃったかな? あれの応用で、止まった心臓を動かすとかなんとか……。まあ、かなり限定的な状況らしいがな。脳にダメージがあったら無理らしいぞ。とはいえ、失血死であれば、死亡直後にすぐ輸血することができれば、蘇生できるらしいが」

「「「「「本当に人なのそれ!?」」」」」

「人じゃぞ? ……多分」


 いやまぁ、儂としても婆ちゃんは超人過ぎるからのう……とはいえ、やはりカッコいい人であることに変わりはなく、同時に昔から大層可愛がられておったからのう。


 まあ、蘇生とは言っても、限定的な状況でしかできないらしいがな。


 万能というわけではない。


「というか、TSF症候群などというファンタジーな病がある以上、今更ファンタジーな婆ちゃんがいてもおかしくないじゃろ?」

「いやそれはおかしい」

「そうか?」

「発症者の方であれば、能力ですから、で済ませられますけど……」

「発症者じゃない人がファンタジーだと、その……」

「……ファンタジーだから、で片付けられない」

「私もちょっとあれかな~……」

「……まあ、うむ。わからんでもないが……慣れてくれ。今後は、おぬしらの義理の祖母にもなるわけじゃから……」


 とはいえ、婆ちゃんは別に傍若無人な人と言うわけではないからな。


 今回のように、自身の身内に危険が及べば、間違いなく文字通り飛んできそうじゃからな……ま、カッコいいからいいんじゃけどな!



 儂の婆ちゃんの話(主に武勇伝的な)で盛り上がりつつ、学園に到着。


 途中でましろんと結衣姉と別れ、儂、美穂、瑞姫、アリアの四人は教室へ。


「おはようじゃ」

「おはよー」

「おはようございます」

「おはよー!」


 挨拶をしながら入り、クラスメートたちからも挨拶を返されつつ、各々の席へ。


「おっす、まひろ」

「おはようございます、まひろさん」

「うむ! おはようじゃ!」


 席に着くなり、健吾と優弥の二人が儂の席へやって来た。


「おや? 随分と嬉しそうですね?」

「だな。何かいいことでもあったのか?」


 おっと、どうやら嬉しさが儂の表情に現れておったらしい。


 どれ、健吾に言うとするか!


「わかるか? 実はじゃな……儂の婆ちゃんが帰って来たんじゃよ!」

「げっ!? さ、小夜子さんが!?」

「お婆さん、ですか?」


 両者それぞれの反応で何より。


 優弥は一度も会ったことがなく、話でしか聞いてはおらんかったからいいとして……健吾、おぬしはあれじゃな。顔が引き攣っとるぞ。


「うむ! 爺ちゃんに並ぶくらい大好きな儂の婆ちゃんじゃな!」

「そう言えば、昔旅をしているお婆さんがいるとか言っていましたね……その方が帰って来たと?」

「そうじゃそうじゃ! いやぁ、今日は一緒に飯を食うことになっておってな! 楽しみじゃわい!」

 久々に会う婆ちゃんとの夕飯……想像するだけで嬉しくなるのう!

「……お、おい、まひろ。ま、マジで言ってんの……?」


 儂がテンションMAXになっておると、声を震わせながら恐る恐ると言った様子で健吾が本当かどうか尋ねてきた。


「マジじゃが? というかおぬし、未だに苦手意識があるのか?」

「あったりまえだろ!? 俺、マジで死にかけてんだからな!? 一時、『可愛い孫を護るために、アンタを鍛える』とか言われて、なんか扱かれたからな俺!?」

「あぁ、そういやおぬし、無駄に身体能力が高いからのう……あれか、婆ちゃんの指導の賜物か」

「ほんとにね! つーか、マジか……いつまでいんの? あの人」

「んー、しばらくは日本にいると言っておったな……」

「……て、てことは、あの人の拠点って……」

「まあ、我が家じゃな」

「終わったッ……! 俺の平穏な日々が、終わったッ……!」


 四つん這いになって打ちひしがれるほどか?


 あと、すんごい悲嘆の籠った声じゃな。


「とはいえ、安心せい。婆ちゃんの今の楽しみは、うちのメイドさんたちの特訓じゃろうからな」

「マジ!? やったぜ!」

「その変わり身の早さよ」


 どんだけ婆ちゃんに苦手意識を持っとんのじゃ。


「しかし、おぬしは婆ちゃんと会わんかったんか? 婆ちゃんが言うには、今日の朝一度うちに寄ったと言っておったが?」

「会ってないが……あの人のことだ。概ね、音もなく家に入り込み、お前がいないと知るや否や、即座に出てったんだろ。あの人、音と気配を消して動くとガチでわかんねーし」

「じゃな」

「あぁ、あと。あの人ってたしかさ、平気で屋根の上を跳んで走んじゃん? あれって変わらずなん?」

「んー、今日はうちの屋敷のセキュリティーシステムを真正面から叩き潰しておったのう。ガトリングガンも訊かず、うちの百人のメイドさんたちのうち半数が倒され、メイド長の柊さんもかなりボロボロじゃったなぁ……」

「お前ん家のメイドって、クッソ強かったよな? マジかー、百人でも止められないのかー」

「じゃな! さすが儂の婆ちゃん!」

「「アッハッハッハ!」」

「あの、まひろさんのお婆さんって何者なんですか……?」


 二人揃って過去と今の話に笑い合っておると、なんとも言えぬ表情を浮かべた優弥が口を開くなり、婆ちゃんのことをについて尋ねた。


 儂らはお互いに顔を見合わせ、


「超人かのう?」

「人の皮を被った鬼神」


 と言った。


 実際、マジでこれしか言えぬ。


 あの人をどう形容すればいいのかわからんからな。


「OK、今ので大体わかりました」

「お、そうか? 他にも、上空一万メートルからパラシュート無しで紐なしバンジーをして無傷だった話とか、素手でグリズリーに勝った話とか、テロ組織を一人で壊滅した時の話なんかもあるんじゃが」

「なんかおかしくないですかそれ!?」

「いやまぁ、婆ちゃんじゃからなぁ……」


 正直、婆ちゃんがやることなすこと破天荒過ぎて、儂自身もたまに『えぇぇ』となる時はある。


 じゃが、相手は儂の大好きな婆ちゃん。


 結局、やっぱ婆ちゃんカッコいい! で完結してしまうため、特に何も思わなくなった。


 というか、幼少の頃から婆ちゃんと爺ちゃんの武勇伝をしょっちゅう聞かされておったからのう、むしろ祖父母と言うのはそれが普通なのでは? と一時期思ってしまったくらいじゃ。


 やはり、我が家の爺ちゃんと婆ちゃんは最強、ということじゃな。


「おーし、お前ら席に着けー。HRすんぞー……っと、お、今日は桜花たち来てるな。よしよし、んじゃま。始めるぞ――」


 四方木教諭が入ってきたところで、話は中断。


 そして、今日と言う一日が始まる。

 どうも、九十九一です。

 婆ちゃんがバケモンですが、気にしないでください。私の代表作を読んでいる方はご存じですが、世界の構造はあの作品の世界と同じです。つまり、二対で一つってわけです。だから、こんなバケモンみてぇな婆ちゃんがいてもおかしくはないんですね。まあ、作中でそれに触れるかは不明ですが……。無関係ではないけど、メインは日常だからね。

 次回は以下略です。

 では。

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