93体目 魔王
10月11日の月曜日。
事件が終結してから、1週間が経過。
世間的にも身内的にも色々あった。
入院生活も2日で自主退院し、葬儀に参加したり、新しく得た能力を少しだけ試したり。
記憶のことは、今のところ誰にも話していない。
俺自身理解しきれていないから、教えたところで意味がないからだ。
リードさんも1度お見舞いに来てくれたが、質問を投げてもほぼ答えが返ってくることはなかった。
精々がティファナ様なる天使の外見やら、エルフの歴史のことを知れたぐらいだ。
そしてついに、条件を達成して仙人級の認定を貰った。
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トウヤ 19歳 男 レベル:1640 仙人級
S P:0
体 力:3660(+200)
魔 力:5280(+200)
筋 力:1680(+200)
敏 捷:2080(+200)
知 力:180
器用さ:535
能力
:霊体具現:レベル1【増加必要SP100】
:加速する世界:レベル26【増加必要SP10】
:変質吸収:レベル9【増加必要SP80】
:気力操作:レベル30【増加必要SP5】
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魔力が異常に伸びているのは、記憶を取り戻したのが影響している。
現在も増大し続けているが、肉体が精神に追いついていない。
魔力炉は見えいないだけで存在する臓器だから、進化しきるまで時間が掛かるのだろう。
そして"霊体具現"……。
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能力
:霊体具現レベル1【増加必要SP100】
虚像、実体、生体、霊体の分身を作り出せる。
他者を模倣することも可能。
限界霊体模写体数:1
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分身の数に限界がなくなった。
生命力と精神力が続く限り、無制限に生み出すことが可能だ。
とはいえ吸い取れる魔物の数に限界があるから、限度はどこかにあるだろう。
そして限界霊体模写数とやらは、1番最初にアルトゥースさん相手に使ったものた。
たとえ身近に居る者でも、相当に気心がしれていないと使用不能。
その正しい使い方もなんとなく解かる。
「ご主人様。そろそろ夕飯の時間ですよ」
「もうそんな時間か……」
「今日も調べ物ですか?」
「まだゆっくりしたいからな。腕も普通に動くようになったし、明日には行動も始めるよ」
今は精神をすり減らすことを嫌い、分身も使わずパソコンに向き合い続けていた。
ネットサーフィンをしたり動画を見たり……。
心が不安定になっている内に行動を起こせば、きっと俺は精神が壊れるまで自分を苛め続けていただろう。
それを桜が望むはずはないから、冷静を保てるように時間を置いた。
「もう……大丈夫なんですか?」
「大丈夫ではないだろうな。空っぽにしてないと心が落ち着かない」
「それじゃあ、もう少し時間を置いたほうがいいんじゃ……」
「これ以上休んでたら腕が鈍る。最初は軽く流すよ」
そんな会話をしていたら、家のチャイムが鳴った。
ムギは今も自室で勉強中だから、別の誰かだろう。
「ようトウヤ! 元気にしているか!」
「えーと……リナだっけ」
「うむ! 今回はちゃんと玄関から来てやったぞ!」
「その割には、警備の人が倒れてるように見えるんだけど?」
これなら以前のように家の中に出られたほうがマシだ。
警備は大きな怪我もしていないようだが、気絶している人もいれば地面でうめき声を上げている人もいる。
「知り合いだと言うのに、さっさと通さないほうが悪いのだ!」
「とりあえず襲撃と勘違いされたら困るから……襲撃しに来たんじゃないよな?」
「魔界での用事も終わったからな! 遊びに来たのだ!」
「じゃあ警備の人に説明しておかないとな……」
リビングに案内して、詳しく訊ねてみる。
目の前で食事を摂る御仁は、どうやら1人で来たようだ。
常に一緒かと思っていたハルトが見当たらない。
「で? 遊びに来たって言うけど、何か話しでもあるのか」
「いいや? だがしいて言うなら、トウヤは私とどこかで会ったことがないか? どうも初めて会った気がしないのだが」
「ん~…………。会った覚えはないな」
普通に覚えもなければ、地球がゲームと融合する以前の記憶にもない。
「そうか! なら気のせいだな!」
「軽いな……」
「それはそうと、リナさんは人族と変わらないように見えますけど、どういった種族なんですか?」
「あっ、それはあたしも気になります!」
ムギは手を上げてまで知りたいというアピールをする。
せめてフォークぐらいは手放すべきではなかろうか。
「私か? 私は鬼人族と人族が4分の1で竜人族が半分の血筋だな。≪竜魔人≫と呼ばれているぞ。祖父と母からは人族の血が濃く出ていると言われているがな!」
「そういえばハルトが王子だっけ。じゃあリナは王女か?」
兄妹にしては外見が似ていないが、性格は似ている気がする。
「いとこ……? ハルトは祖父の兄の子ぞ!」
「いとこ違いか。ってことは一応王族関係なのか」
「というより、私が現魔王なのだ!」




