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91体目 交わる世界

「…………致し方ありませんね。強引にこじ開けるよりはマシでしょう。ゲートが出現した場所も予定と違いますし、これも彼女が望む変化なのでしょう」

「もったいぶらずにさっさと言わんか!」

「そうだぞ! 私も気になるぞ!」


 そういえば魔塔からの声が、『出す場所だってティファナ――』だと言ってた。

 その関係者が俺に何かしらの処置をしたのだろうか。

 俺が考えていると、リードさんは袖に手を差し込み、中から鍵のようなものを取り出した。


「私も軽く聞いただけですが、百聞は一見にしかずです。塔也さん。真実を知ればショックを受けるかもしれません。覚悟はいいですか?」

「……できてます。どんな辛い過去があっても向き合わなきゃいけないって……。ショックなことでも、忘れたままでいたくない」

「では……」


 手放された鍵は、淡く光って宙に浮く。

 ゆっくりと俺の頭へ向かってきて、消えるように吸い込まれた。



________________



 思い出した……。

 実際は時間にして一瞬だろう。

 しかし俺にとっては長く、重要な部分は今まさに体験したような感覚が襲ってくる。


「はじめまして。僕は和樹(かずき)。キミの名を聞いてもいいかい?」

「えーと……。俺はトウヤ」


 世界最大のVRMMO――≪天地の魔塔Ⅲ≫

 それはゲームクリアを果たした最初のプレイヤーの願いを叶えるというゲームだった。

 最初は信じなかったプレイヤーも、1作目、2作目をクリアした者が願いを叶えたことで、ゲームクリアを目指すものが爆発的に増加した。


 俺もその1人であり、目の前に居る亜麻色の髪で碧眼の青年は、相棒だった者だ。

 やや幼い顔立ちをしている彼は……最後に裏切った。



「ここが100階層の最上フロアか……。扉は……あそこ1つだな」

「塔也……ごめん」



 和樹は毒ナイフで俺の背中を刺そうとして、もう1人の仲間に"障壁(・・)"で防がれた。

 防いだのは極振りをしている盾役――≪西寺(にしでら) 怜奈(レイナ)≫。

 こげ茶色の短い髪で、後ろ髪の一部分だけを非常に小さいツインテールにしている子だ。


「っ……。やっぱりイレギュラーは放置しとくんじゃなかったか!」

「塔也さんの願いを邪魔なんてさせません!」

「これまでの様子からしてレイナも知ってる(・・・・)んだろ? 塔也のことを想うなら、こうするべきなんだ……!」

「だからって諦めて繰り返すのは、絶対に塔也さんの望むことじゃありません! 塔也さんなら、何があったって諦めたりなんてしません」

「ちょ……。何して……2人とも何言ってんだよ」

「そうですよ! やっとここまで着いたのに争うなんて!」


 その場には、ゲーム内の特性で猫耳を生やしているムギも居た。

 錬斗とも知り合いではあったが、この時点でゲームから退場させられいる。



 そして戦いが始まり、和樹に対して3対1でも苦戦。

 苦節(くせつ)あって、俺の機転によりレイナがゴールである扉に走った。

 その後を和樹が追いかけ、世界は光に包まれた……。


________________


 俺の最後の記憶はそこまでだ。

 願いは桜に会い、残酷な運命から救う為にアニメの世界へ行くこと。

 異世界旅行は前例もあったから、可能なはずだった。


 だが結果は、元々住んでいた世界に、≪天地の魔塔Ⅲ≫を合併させたような世界だ。

 塔の階層は地上100階までだったのが、パワーアップして地下もできていてるが……。



 一体どのような願いをしたのかは知らないが、現在はレイナと和樹が魔塔の支配者なのだろう。

 そして桜が居るはずのない世界だというのに、なぜか居る。


 俺の願いは救うことであり、一緒に暮らすことではない。

 暮らしたくはあったが、このような状況になっている理由を問いただす為に、1度2人に会う必要がある。



「……リードさんはレイナや和樹とは知り合いなんですか?」

「いいえ。私が知っているのは、両名が(つか)える天使の≪ティファナ≫様だけですよ」

「天使だと!? おいトウヤ! 貴様何を知った!」

「忘れてた仲間の記憶だよ」

「ほう。仲間とは?」


 実はゲームの世界が地球に侵食しているなどと、説明するだけ面倒だ。

 塔から響いていたレイナの声が"申請"と言っていたことを思えば、その天使とやらが元々の運営者だったのか、今現在の上司なのか。


「何よそれ。私も会話に混ぜなさいよ!」


 リナだけでなくキャロさんまでが興味を持ってしまった。

 近づいてきて、巨大なオノは手に届く距離に突き刺した。


「いやあの……。俺自身把握しきれてないです……」

「隠してんじゃないわよ! 話せぇ~!」

「ちょっと絞まってる! 本当にしま"っでる゛」


 ヘッドロックが掛けられ、弱っている俺ではスキンシップを通り越してかなりきつかった。

 数秒すると離してくれて、ハルトが再び問い掛けてくる。



「それで、思い出した中に何か面白い話はないのか?」

「……魔塔の最上階に、そのティファナ様って人が居るかもって程度だな」

「何を分かりきったことを……。つまらん! 帰るぞリナ!」


 願いを叶えられるかもしれないのは伏せて、興味を持ちそうなことを話した。

 しかし予想外にも、天使が居て当然だとでも言いたい態度である。

 つまり本当に、最上階に居ると言うことか……。

 そしてハルト帰る宣言をすると時を同じくして、1003層に居たメンバーが視界に入った。



というわけで、(魔塔を)支配する者が明かされました!


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