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89体目 集いし英雄たち

「くそっ! 覚えられちまったか……! "霊体具現"……必要SP100……。また進化しやがったのか」


 マー坊は悪態をつきつつも影に冒険者カードを投げさせ内容を確認した。

 そして握り潰された……。

 あそこまで壊されてしまったら、買い直すしかあるまい。


「目指してるのと全然違う方向に成長したな……。でもこれなら……!?」


 一歩踏み出そうとしたら、激しい痛みと大きく変わった感覚が影響して転んでしまう。

 膝にチカラが入らず、意識も付いて行かないようだ。



「くっ……!」

「ハハッ……。強い能力を得てもそれを扱えるだけの体力が残ってなきゃ意味ないぜ……。動けなくしろ!」


 起き上がろうとするも、左足に焼けるような痛みが走った。

 操り人形となったアルトゥースさんがレイピアを抜き取って、俺の太ももを貫き背中を踏みつけたようだ。



――塔也君! 近づかれたのは(むし)ろ好都合だ。私を解放してくれ!

「……っ!」


 (わず)かに残った魂が、俺に対して語り掛けてくるのがはっきり分かる。

 俺は背中に乗っている足に集中し、そこから作り出した魂を流し込む。

 すると背後に居る人物が光に覆われ、制御権を取り戻すことに成功したようだ。 


「制御が奪われた……!? そこまでのチカラは残ってないはずだ!」

「確かに現状の塔也君には厳しいものがあるだろう……。しかし私のカラダだ。精神が万全な状態で奪われる道理はないな」

「ありえねぇ……。自身か親密な相手ならまだ解る。だが他人であるあんたの魂をどうやったら具現化できるっつうんだ!?」


 マー坊の言うように、他人の魂までは具現化できないと思う。

 今回の場合、あちらから積極的に歩み寄ってくれたからだ。



「なに……。私は切っ掛けを与えたに過ぎん。彼の中には元々強大なチカラがあって、それを開花させる手伝いをしただけだとも」


 SPがピッタリになるレベルに上がったと思ったら、自身の魂を消費して俺のレベルを調整したのか。

 そのような芸当ができるとは、やはり聖人は格が違う。


「だ、だとしてもだ……。一度俺たちに負けたあんたが蘇ったところで、ここから逆転できるかな?」

「状況は把握しているとも。だからこそ勝てると断言しよう……」


 レイピアを抜き取った現代の勇者は、気力が尋常ではない量まで跳ね上がった。


(つど)万夫(ばんぷ)不当(ふとう)の英雄たちよ! (われ)らが討つべき者はここに居る!』


 魔力が強く込められた掛け声と共にレイピアを振り上げ、放たれた太い光線が結界を貫く。

 光は何本にも枝分かれし、1本が俺に目掛けて落ちてきた。


 命中すると同時に全身から生命力が溢れてくる。

 どうやら自身の命を費やし、結界に迫る味方に居場所を教えつつ強化を施したようだ。



「結界にでかい穴が……!」

「大丈夫だ。彼が……日本が誇る英雄がもう来ている!」

「まったく……。魔物が居るのに無茶しますね」

「君なら一掃できるだろう?」


 相手が米粒ぐらいにしか見えないぐらい遠いのに、よく普通に会話ができるものだ。


「仕方がありませんね。地形変化はやむなしです! "オウル・プラネット"!」


 空を飛ぶフクロウの亜人が激しく回転すると、天高く青い灯火のような光が現れた。

 渦を巻きながら大きく広がるそれは、軽く見積もっても数万もの数となる。

 そして豪雨のように地表に降り注ぎ、穴が開いた結界を粉々に砕きながら地面にも大きいヒビを入れた。


「ちっ! なんて規模だ!」


 マー坊はおそらく分裂体だが、守りを固め耐えている。


 目算でレベル300相当の魔物でも即死。

 影も勢いよく数を減らし消えてゆく。

 複数発命中すれば、500近くでも耐えることはできないと思う。


「こんな威力をあの数……。気力が持たないのでは……」

「ええ。貰った分以上に使いましたから、後1回か2回使えばオーラも枯渇するでしょうね」


 疑問に思い口に出したところ、いつの間にか隣に降りていた。

 

「アルス君。キミともあろう者がそのザマですか」

「面目ありません……」

「ただの怪我ではありませんね……。どうやら本来のあなたは(すで)に……」

「まさか貴方(あなた)がくるとは……。どういう風の吹き回しですか?」


 気配もなく1人増えた……。

 今度は見覚えが一切ない、白髪(はくはつ)を長く伸ばした男性エルフ。

 フクロウの聖人≪ミョゾティス≫との会話を聞く限り、噂に聞くエルフの聖人だろうか……。



一目(ひとめ)見たい人が居ただけですよ」


 そう言って俺を一瞥した。

 ≪ティファナの森≫のエルフから何かを聞き及んだのかもしれない。


「それよりアルトゥースさん。残念ですが本人の魂ではありませんね。あなたはもう助からないでしょう……」

「分かってます。だからこそ残る全生命力を注ぎました」


 会話している最中も油断せず、本を持ったエルフさんが手を振る。

 すると光の刃がマー坊目掛けて飛び、回避こそされたが背後にあったゲートが粉砕された。

 おそらく撤退しようと企んでいたのだろう。


 そしてまたもや誰か来たようで、遠くから大きな音が響き煙が上がる。

 数十回あちこちで煙が上がると、この場に上空より飛来した。


「ちょっと削りすぎよミョゾティス! 手応えがある奴が全然残ってないじゃない!」

「打ち漏らすよりは良いでしょう?」

「言い訳禁止! あとはわたしが倒すから!」


 日本が誇る2人の聖人のもう1人、ウサギの亜人の≪キャロ=カートン≫さんだ……。

 普段はウェーブの掛かった茶髪のロングヘアーなのに、戦闘時にはボブカットになるのが特徴。

 Sッ気が強く武器は巨大な斧を使い、(ののし)られたい女性ランキングで上位に食い込むと聞いたことがある。


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