表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/108

88体目 片鱗

「リッカが居るんだろ。でも大分消耗してるんじゃないか?」


 聖人を長時間相手にしてエネルギーを消費しているはず。

 俺が魔物を残滅して減らしている最中も、魔物を取り込むなどで回復している気配もなかった。

 おそらくアルトゥースさんを操るのに時間を使っていたからだ。


「消耗してるのは確かだ。けど元々膨大な生命力だから影響はないな。それに、相手はリッカだけじゃないぜ?」


 近場に膨大なエネルギーを感じ、俺はその場から離れる。

 すると、頭を切り離した死体が動き出し繋がった。

 先程までのような驚異的エネルギー量は感じない。

 しかし、問題はそれだけではなかった。



「"死体遊戯"。この能力のことは警察から聞いてるだろ? そしてこうだ……。リッカ! チカラを寄越せ!」


 確かに警察から聞いている。

 "死体遊戯"は奴隷たちを操っていた能力だ。


 上空からマー坊に黒い煙が押し寄せ、俺は空気を読まずに≪対冒険者用手榴弾≫のピンを外し投げ込んだ。


「……ちょっと遅かったか」

「いいところで邪魔すんじゃねえよ!」

「殺し合いで敵のパワーアップを待つバカが居るか」

「お前はそういう奴だったな……。だがこうなった以上、流石のお前も手の打ちようがないだろうぜ」


 マー坊の気が不気味なものになると、先ほどまで戦っていたアルトゥースさん以上のエネルギー量になった。

 どうしたものかと考えていると、マー坊の姿をしている影が現れた。

 しかも数え切れぬほど居て、それぞれが仙人級のエネルギー量を持っていそうだ。


――――――?

「ああうん……。こりゃあ勝てないな」

「いいや。お前はまだ勝ち筋を残してるな?」

「――っ!?」


 物理的衝撃だけでなく、精神をも激しく揺さぶってくるような攻撃をされた。

 何が起きたのか分からないが、今は魔塔の内部に残っている分身の維持に全力で集中する。



 そして俺は1分近くタコ殴りにされるが、そのあいだ耐え続け敵を観察する。

 数こそ多いが、同時に動かせるのは3体……。

 雑な操作でも4体が限度のようだ。

 包囲網は俺を逃さないためのものか。


「…………なんか言ったらどうだ?」

――――――

「そうですね……。助けに来ますよ。生き残れる実力もないくせに……」

「なに意味の分かんないこと言ってんだ!」


 腹部を蹴られるが、冗談抜きで痛い。

 痛覚をできるだけ遮断しても、マー坊は精神にも影響する攻撃をしてくる。

 相当消耗させられ、体力も精神もそろそろ限界が近い。


――――――?

「仲間……ですよ。まあ、到着には時間が掛かるでしょうけど」

――――――?

「まさか……。でも、だからこそ、そんなバカを危険な目に遭わせたくない……。死なせたくないから――絶対に負けられない……!」

「さっきから誰と話してんだお前?」


 これ以上は本体の身が持ちそうにない。

 そうなれば最後、奴隷紋を刻印しようとするはず。


 俺は分身に吸収させていたエネルギーを回収。

 全快の3割近くまでは戻っただろうか。

 続けて≪ふくろ≫から冒険者カードを取り出し、操作をおこなう。


「――っち! させねえぞ!」


 だがマー坊も好き勝手はさせてくれず、振り払われ冒険者カードは地面に落ち転がった。

 自分が邪魔をされたら怒るのに、相手のパワーアップは許せないらしい。



「……まあいいか。誰と話してるかだったな。分身ともだけど、あとはアルトゥースさんだよ」

「……あの聖人だと? あいつなら魂まで完全に殺しきったぞ」

「さあな……。ただの気のせいかもしれない。俺が作った(・・・)だけの幻聴かもしれないな」


 経験値の量こそ思ったより少なかった。

 しかしアルトゥースさんの魂には、他の者にはない性質があったようだ。

 偶々俺の能力の性質に合致し、声が聞こえてきたのだと思う。

 それを切っ掛けに、強化に必要なSPが990になっていた。


「だったらなんだ。どんな能力に目覚めたか知らねえが、あんな一瞬じゃあSPは振れてねえだろ」

「いいや。冒険者カードを壊せなかったお前の負けだ」


 俺は5メートル横の地面を指差した。

 そこには生体具現を強化する画面の、≪はい≫を押す具現化された手があった……。


 直後に手は蹴り飛ばされたが、俺の肉体を青白い光が包み、長い月日の修行を一瞬で済ませた感覚が巡った……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!

執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ