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81体目 帰還

第六章:支配する者

開始です!

 撤退の道中、広範囲に地形変動が起きた。

 ゲート付近からは見たこともない植物が芽吹き、勢いよく砂地を浸食してゆく。


「魔物があんなに……」

「不味いな。一般人に大量の被害が出るぞ」


 セレナさんを理沙に渡していると、巻き込まれ兄妹の声が聞こえゲートを見やる。

 ダイダラボッチは戦闘により手足やその身を大きく削られるが、即座に修復している。


 再生力が高く、周りの生物を液体状の何かで飲み込むことで回復しているようだ。

 おそらくこの地の魔素も吸収している。



「とんでもない数出てるな……。ぱっと見平均してレベル300前後か?」

「街に溢れたら大変なことになるわ。すぐに結界を張らないと!」

「……あの聖人さんが張ってくれるみたいだな。名前なんだっけ」

「≪アルトゥース≫さんね。現代の英雄だとか勇者ってことで、アーサーだとかアルスとも呼ばれてるわよ」

「詳しいな」

「記者の娘は伊達(だて)じゃないわよ?」


 時間稼ぎをお願いしているが、戦闘中に結界を張るぐらいだから余裕はあるはず。

 流石は9聖人の内、人族である2人の片割れといったところか。



「結界は直径5キロぐらいか……。流れからして、壊されそうな場所は放棄して修復する、長時間持たせるタイプ。耐久と持続時間は申し分ないけど、内部の浄化はしない感じだな」

「ずいぶん勉強したわね。まるで結界(けっかい)術士(じゅつし)だわ」

「調べたさ。これからの戦いに備えてな」


 ダイダラボッチも結界は許せないようで、頭の触角からレーザーを放ち壊しに掛かる。

 俺の予想通り穴は開いても結界自体は壊されず、運よく魔物も漏れ出すことなく修復された。

 幸い単純に殴るだけでは壊せず、拳による攻撃は結界にはじかれた。

 閉じ込めるだけなら時間を稼げそうだ。


「……なんとか平気そうね。結界が大きいから街が少し飲み込まれてるけど、そこは諦めて避難してもらうしかないわね」

「そうだな……」

「ワープポイントに入りますぞ! 魔物が居る地帯でしょうからお気をつけて!」

「魔物が……? あれ?」


 おかしい。

 俺たちは最短距離で迷宮を抜けようとしている。

 なのに、それより早く魔物がその地点に到達するのは変だ。

 ダイダラボッチの影響か、はたまた結界の影響か。

 両方影響してそうだが、ワープを利用して結界の外に出られたら意味がないから後者だろう。



「どうしたの?」

「不味い! 結界から出れないよう捻じれが変わってるかも! 避けて!」

「ぬうっ……!」


 ヴァイス師匠の操縦で、ギリギリで回避できた。

 俺は"モバイルトウヤ"を上空に投げ、周囲の歪み具合を確認する。


「やっぱ変わってる……。結界外とのルートが途切れて道が幾つかできてるかな……? 案内するので操縦は任せます」

「頼みますぞ!」


 途中で飛行系の魔物と少し接敵したが、充分対応可能で事なきを得た。

 そのまま結界の外まで出て、連絡を入れたギルドへと急行する。 




 帰還すると、待っていた兵に連れられてセレナさんは帰国。

 事態もこれまでとは規模が段違いのため、外国からの救援で来た聖人1人に任せるわけにもいかない。

 世界的な会議をおこない行動に移すらしいが、まずは先遣隊(せんけんたい)が送り込まれる。


 桜を含め数名が先遣隊に立候補したが、そんな危険な場にお嬢様や重要人物の関係者を送り込めるはずもない。

 指示が出るまでは大人しく自宅待機だ。

 だがしかし、俺は先遣隊の別動隊として単独行動させてもらう。


 偵察こそ分身の真骨頂。

 一応ホウレンソウはしたが、国もここで動かさないのは悪手だと思ったらしい。

 許可が下りずとも行くつもりだったが、分身のみの潜入であれば許可は下りた。



 避難中に見えていたダイダラボッチは、濃い霧のせいか見えなくなっていた。

 結界に突入すると、活動に問題ない程度には瘴気がある。

 太陽の光は届かず、地面が所々赤く光っている。

 他にも不気味な植物群が青白く発光していて、ここが魔界だと言われても信じられそうな不気味な雰囲気が漂う。


「ん~……。心なしか空間が広がってる気がするな」


 周りを確認していると、上空から飛来してくる気配に気付く。

 大きめに避け地面に落ちたそれを確認してみると、グロテスクなドクロのような顔をした蜘蛛であった。


「魔物か? それともただの生物?」

「魔力が多いだけの生物にも見えるよな……。体液浴びたくないから任せた」

「言い出しっぺが倒せよ」

「じゃあ蜘蛛が向かってきた人が対応するってことで」


 合計3人いる分身で話し合って散開すると、蜘蛛は右に居た分身に襲い掛かった。

 やはり斬るのは嫌で、鉄パイプを取り出し殴り払う。

 地面を1回バウンドして持ち直した蜘蛛からは体液が出ている。

 魔塔内部では極稀にしか居ない、生物としての器官を持っているタイプの魔物だ。


「やっぱそういうタイプか……。嫌になるなもう」


 即座に風魔法を飛ばし、斬り裂いて倒す。

 しかし、物や生物の一部を基に生まれる魔物と違い、魔力が強いだけの生物なので消えることはない。

 解体すれば素材は多く手に入るが、今は偵察がメインだ。

 気持ち悪くもあるのでスルーさせてもらう。



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