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83/108

78体目 分裂体

 マー坊は風穴が開いているのに、黒く染まって内部は見えず一切の出血がない。

 痛みすら感じていない様子からして、人形の(たぐい)だろうか。


「少しは話す気になったか?」

「……大人しく刑務所に居ればいいのに、なんだって出てきたんだ」


 結界も再び張られているようなので、作戦変更。

 何度も突破しつつ攻撃を与えても、ムダな消耗になりかねない。

 それに連絡は入れてあるから、仙人級以上の増援がくるはず。


「あんな薄暗い場所で一生を過ごせるわけがないだろ」

「だとしても、どうやって出てきた」

「分かってるくせに聞いてくるんだな。時間稼ぎか?」

「それはお互い様だろ。低レベルな分身を使って何を企んでる」

「少し違うな。死霊魔術……まあこの辺りはいいか。要は魔界の分裂魔法だ」

「分裂?」


 色々気になるが、共犯者が≪影≫の親玉なら魔界へ行っていてもおかしくはない。

 獄内に接触できたのは不思議ではあるが、逮捕以前からマークしていたなら不可能でもないか。


「ああ。それと、何を企んでるかだったな。とりあえずはこうだ」

「足元注意!」



 警戒していたから、砂の中を何かが進んでいるのは気付いていた。

 飛び出てきたのは、マー坊の形をした影。

 狙いは桜のようだが、ムギが障壁で(さえぎ)る。

 そして理沙が斬り、影は消滅した。


「残念でしたわね! それぐらい気付けない私たちではありませんわ!」

「いいや。本命はこっちだ」

「きゃっ!」


 現在の配置は安全を考慮し、後衛にカレンとセレナさんが居る。

 しかし2人の足元付近から、気配が非常に薄い黒い触手が飛び出て絡みついた。


「動けば殺すぜ?」


 助けに動こうとしたが、殺す発言で一瞬迷ってしまった。

 その隙に触手が、ゲートへ向けてセレナさんを投擲。

 助けに出ようとした俺や錬斗、カレンの前にも触手が現れ救出を妨害する。

 出てきた触手への対応はできるが、セレナさんはゲートを通過した。


「囮だったか……!」

「助けたかったら塔也と桜の2人だけで通ってこい。別に殺しやしないぜ。昔の仲間水入らずで話そうってだけだ」


 言い終えた優はゲートの中へと姿を消した。

 ≪影≫を生み出さないゲートは、これまでとは明らかに違う。

 嘘ではなさそうだが、どうしたものか。



「すいません。わたくしが守れていたら……」

「あれは仕方ない」

「それよりも、早くセレナさんを助けに行かなきゃ!」


 すかさず錬斗がカレンをフォロー。

 桜が話し掛けてきた。


「でも、きっと罠ですわよ」

「……カレンの言うことはもっともだけど、行くしかないな」


 向こうがどうなってるか分からない以上、対策は難しい。

 だが、他国の王女を見捨てたら大問題になってしまう。

 人質は誰でもよかったのだろうが、最悪の人が選ばれたものだ。


「俺たちはどうする? ≪影≫は出てこないけど、他にも居るんだろ」

「……レーダーは渡すからそっちは錬斗たちに任せる。ここのゲートは残しててほしいけど、最悪の場合は自力で戻る。危険なら遠慮せず壊してくれ」

「分かった」


 桜へ向き軽く頷くと、2人で歩き出す。

 しかし、モモカが俺の前方まで走ってきた。


「モモカ……」

「ご主人様! 必ず……必ず2人で戻ってきてくださいね……」

「ああ忘れてた。分身渡しておくから、そっちは頼むな」

「……はい」


 死亡フラグを建てられた気がしたから、あえて雰囲気をぶち壊した。

 頭を撫でるついでに、"モバイルトウヤ"を頭上に置く。

 それを両手で握ったモモカは、隣へ来たムギと共に俺たちを見送った。



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