7体目 加速するレベルアップ
俺は風になっていた。
正確には分身が、だが……。
70階層までの挑戦権を手に入れてからは、加速的なレベルアップを果している。
モンスターとのレベル差が解消されたのは当然として、理由は他にふたつ。
ひとつは、固まって行動させていた分身を別行動にさせた。
そしてもうひとつは、分身との感覚を共有できるようになったからだ。
前々から情報共有するのにいちいち分身を消さねばならないのが嫌で、練習した甲斐があった。
「おえっ!? ヘルプ!」
「俺が直す」
「りょーかい」
このように遠くに居ても、視覚をテレビのワイプのように視界の端に写して状況を把握できる。
会話もでき、痛覚を本体も共有すれば性能をそこそこあげることも可能だ。
痛覚共有などしたくはないが。
分身を作成する集中力も共有することで、全員がだらけでもしなければ維持も楽になった。
だが限界値が変わるわけではないから、数は増やせない。
精神力はまだ分からなくはないが、不足している生命力をどうやって共有しているかは謎だ。
どのような手段で生命力を離れた位置に居る分身と行き来させているのだろう。
ムリヤリ理由を付けるなら、確かな認識はできずとも、魂の繋がりがあるからか。
これだけ別行動しつつ高速で移動していれば消耗が激しい。
なので本体は、硬い、タフ、経験値低いという不人気モンスターに会っている。
≪ドンガメ≫と呼ばれている巨大な亀は戦闘力がないから、遠慮なく生命力をチューチュー吸わせてもらっている。
魔力補給まですると暴れるから、そこは別の分身にやらせている。
そして窃盗丸だが、俺の実力が足らないからかハリボテすら具現化できなかった。
攻撃力の高い武器だから分身の原型にするだけでも多少よくなるかと思いきや、意志のある武器だからか邪魔をしてくる。
現在は本体が持つ護身用としてしか使えず、半分お蔵入り状態だ。
「ちょっと荷物増えたから一度戻る」
「俺も」
「やっぱアイテムボックス系能力は欲しいな」
「一時期袋に収納するタイプ覚えようとしてたよな。5人ならすぐ覚えられるんじゃね?」
「いや。レベルが上がらなくなってきたから、いっそ実体具現にSPを突っ込んで20にしようと思ってる。そのあとでいいだろ」
一度集合してドロップを回収すると、分身を解除。
『レベルが3アップしました』
『レベルが3アップしました』
『レベルが2アップしました』
経験値も共有しようと思えばできるが、この一気に上がる感覚が病みつきになる。
1日目は8レベルアップと好調。
『レベルが2アップしました』
『レベルが2アップしました』
『レベルが1アップしました』
2日目はやや上がりが悪くなり5アップ。
「同時解除ぉ!」
『レベルが4アップしました』
3日間で17も上がった。
この3年間がバカらしく思える成長速度だ。
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トウヤ 19歳 男 レベル:110
S P:19
体 力:303(+50)
魔 力:514(+50)
筋 力:206(+50)
敏 捷:318(+70)
知 力:160
器用さ:375
能力:実体具現 レベル16【増加必要SP5】
:加速する世界 レベル3【増加必要SP1】
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実体具現をレベル20にするのにSPが1足りない……。
先生……SPがあと1欲しいです――!