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74体目 方針

 9月13日月曜日。

 ムギに勉強を教え始めて1週間が経過した。

 頭痛もなくなり、分身を使っての知識を詰め込む違和感にも慣れたようなので、今日から学校へ行かせている。

 俺は桜が作ってくれたコーヒーを飲んでいるが、そろそろ眠さに負けそうだ。


「眠い……」

「少し詰め込み過ぎなんじゃ……?」

「教えるのが楽しくて、あまり寝付けないんだよな」

「今はムリしなくても良いんじゃないかな。外も色々大変みたいだし」


 ここ最近は、分身で軽いレベル上げを続行しつつの勉強漬けだ。

 教える為には、俺がそれ以上に学ばねばならない。

 相手に理解させるにはどう言えばいいか考えるのは、記憶に定着させるのにうってつけで助かっている。

 ムギという教える相手がいてこそのモチベーションと効率の大幅アップだ。


 そして他にも、世界的に問題が起きている。

 マー坊も発見されていないのも合わせて、1003層の警備員も倍増したほどだ。



「それにしたって、≪影≫を処理し切れてない国が多いよな」

「ゲートから漏れ出す魔力だけで、天候にも酷い影響があるんだよね」


 ≪ポルコ≫での、家が埋まりそうな大雪も(しか)り。

 他の国でも嵐や大雨洪水、火山が噴火し地割れが起きて溶岩が溢れたという地域まであるから恐ろしい。


「本体が出てもいないのにこれだもんな。これじゃあ元凶には聖人でも勝てるのかどうか」

「世界中が協力すれば、きっとなんとかなるよ!」

「ならなかったら核とか打ち込みそうだな」

「そうならないといいね……」


 仮に塔内に本体が出たとして、果たして核は運び込めるのだろうか。

 どういう形だろうと、ゲートを出している元凶が出現すれば被害は甚大だ。

 現状ですら世界に500人前後居るとされる仙人級ですら、複数名の死者が出ているのだから……。



「さてと。修行やらレベル上げもノルマは突破したし、たまには昼寝するかな」

「塔也君は夜ご飯何がいい? 栄養満天なのがいいかな?」

「焼きそばがいいな」

「焼きそばなら……うん。分かった! お野菜多めにしておくね」


 最近は買い物すら行かず、材料を注文して宅配してもらうサービスを使っている。

 マー坊のことを警戒してのことだが、心配しているのは巻き込まれかねない一般市民のほうだ。

 以前とは状況も違うから、脱獄囚を探すのはプロに任せている。




 夕方になり分身からの合図で目を覚ますと、俺はリビングへ出た。

 なんでも、モモカが俺に用があるらしい。


「……相談があるんだって?」

「お休みのところすいません。実は魔法のことで少し相談が……」

「そういえば図書館に入り浸ってたな」


 塔内にある図書館で、魔法に関することを調べていたはずだ。

 そして塔外の日本にある図書館でも、常連客となっていてもはやエルフだからと物珍しく見る人も居ない。


「どういう方向に鍛えればいいか悩んでまして……。意見を訊いてもいいですか?」

「いいよ。まず、モモカはどうしたい?」

「被害は少なく、威力は高くが理想です! 場合によっては範囲も必要なので、その辺りもですね」

「範囲はまあ……戦争規模になれば必要か」


 以前のギルド前攻防戦のような戦いでは有利に働く。

 周りとの連携は必要になるが、悪い判断ではない。


「ただ被害を抑えつつ威力もとなると、なかなか難しくて……」

「洪水染みた攻撃は地形戦で使える場面もあれば、邪魔になることもあるからな」


 大き過ぎるレベル差や直撃さえしなければ、2次被害の津波で味方はダメージを受けない。

 しかし装備や地べたがずぶ濡れになるのは、時と場合によっては命取りともなろう。



「凍らせるのも考えたんですが、魔力を多く消費して逆に威力が下がりそうで……」

「風魔法の応用か氷魔法の冷気で固めるかってとこか。モモカは水に特化してるから、1.5倍は魔力を使うだろうな」

「ですよね。それにその水魔法も、単品だとそろそろ限界でして」


 火や氷魔法ならば熱量だから、限度はないようなものだ。

 しかし水では量を増やし圧縮するのも限界がくる。

 実際モモカも、少なからず風魔法を合わせて使い、落とす速さを上げて威力を増している。


「威力は他の属性魔法と合わせて使うしかないとして、被害をどうするかだな」

「何かいい方法はないでしょうか?」

「火を混ぜて衝撃と共に水蒸気爆発を起こすとか、命中後どこかに転移させるとか」

「命中したあとだと転移は難しいですね。それと属性は、できれば風か光がいいです……」


 風は得意分野だから分かるとして、光は影対策で覚えたいといったところか。

 水と光を合わせた魔法も複数種あるが、"メテオシャワー"を基点にするならそう多くは思いつかない。



「ぱっと思いつくのだと、風ならこれまでの方針を維持しつつ、命中後その場に留める。凍らせる。水に形を持たせるってとこか」

「形……。(やいば)(じょう)にするとかですか」

「他にも高速回転させるとか……。理想は乱回転。光だと……聖水っぽい効果を付加するとかかな」

「回転ですか! 確かに、水量を増やさず威力を底上げできそうです! 空気抵抗も減ってさらにスピードも……」


 お気に召す回答を得られたようだ。

 モモカは手の間に魔力を溜め、はっとしたように告げる。


「こ、ここじゃあ家を濡らしちゃいますね。外で練習してみます!」



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