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69体目 恩赦

投稿開始25日目にしてついにブックマーク1000件突破しました!

この小説を読み続けてくれている方々へ圧倒的感謝を……!

 戦闘と言っていいか微妙だが、吸収と浄化、発散を繰り返し5時間が経過した……。

 日本では夜中の1時を過ぎ、こちらでは午後17時過ぎといったところか。


 非戦闘員も離れた位置にキャンプを建て、ここまでは順調。

 しかし持続的に不快感を味わっているのが原因で、俺は非常に苛立っていた。

 吸収して溜まった魔力は幾度となく怒りにまかせ爆発させているから、山の一角も崩壊している。


「くそっ……。そろそろ破壊できるか……?」

「私はいつでもいけるよ!」

「少しなら私も光系統の攻撃をできるわよ」

「じゃあ分身消して始めるか」


 交代で付き添ってもらっているが、今現在傍にいるのは桜と理沙。

 ゲートはまだ大きいが、模写体も合わせた桜の全力でなら壊せそうだ。

 だが敵も考えなしに魔力を流し続けていたわけではなかった。


「やっぱここでくるよな……!」



 疲労した俺を操ろうとでも思ったのか、一気に魔力を送り込んできた。

 分身は突然強くなった精神汚染に耐えれずに消えてゆく。

 本体にも魔力を流され、誰であろうと生かしておけないという意志がひしひしと伝わってくる。


――許すな……。憎め……壊せ……!

「きゃあ!」


 俺の全身を包むように黒い魔力が溢れ、周囲に暴風が吹き荒れる。

 その突風で傍にいた2人は10メートル近く飛ばされた。

 声は膨大な魔力に乗って魂に直接訴え掛けてくるようだ。

 そして感情を塗り潰そうとしてきて――俺が全魔力を支配した。


「この程度の悪感情で支配できると思ってたなら残念だったな。人間の悪意はこんなに浅くない」


 これまで感じたことのない万能性を思わせるエネルギー量だ。

 しかし、攻撃面では制御できそうにない。


「まさか操ろうとしてるの……!?」

「そんな……。塔也君!」


 魔力が暴走気味だからか、近場にいる2人にも声は届かなかったようだ。

 こんな黒い気配を出していたら不安に思って当然か。



――なぜ……だ! それほどのアク……アリ……ながら……なぜ!?


 場合によっては全人類を敵に回すぐらいの悪意もあれば、気概もあるのは確かだ。

 しかし進んでやりたいわけではないし、したくない理由だってある。


――殺せ……! ツブせ……! 全てのモノに悪意をぶつけろ!

「うっさいな……」


 脳内に直接語り掛けてくるのが非常に鬱陶(うっとう)しい。

 ゲートを壊して解消しようと思い、手を向けエネルギーを溜めたところで桜が抱き着いてきた。



「ダメだよ塔也君……。タダでさえ精神が疲れてるのに、これ以上そんなチカラ使っちゃ……」


 確かにこのままゲートに悪意に満ちたエネルギーを当てれば、不味い事態になる可能性もゼロではない。

 俺は魔力を飛散させ、生命力は引っ込める。

 そして桜を強めに振り払った。


「痛っ……」

「誰のせいだと思ってんだよ……」


 人間に対し底なしの悪意を持つようになった切っ掛けを作った人物に言われたくない。

 それに、その悪意に助けられたこともあれば、他人を助けたこともある。

 頼り切るのはよくないとは思うが、俺にとってはなくなったら困る精神性だ。


「…………それでも、私は――」


 これ以上話せばまた心が揺さぶられて悪意が湧きそうだ。

 終わった後の会話をするのも嫌な俺は、残す全気力集め槍状にした光の(オーラ)を投擲。

 ゲート内でエネルギーを解放して打ち砕こうとする。


「足りないか……!」

「塔也君。まだだよ!」


 すぐさま意識を切り替えた桜が、俺に追随するように光の矢を放つ。

 その威力は修行中の威力を遥かに凌ぎ、ゲートを壊して有り余る勢いで雲の中へ消えた。


 空から日光も指し込んできたから、後は周りの人物が勝手にやってくれるはずだ。

 体力も魔力も使い切った俺は、(みずか)らの意思で眠るように気絶する。

 倒れる瞬間桜に抱き止められたが、もうじき意識もなくなるから許容範囲としよう。


「よかった……。塔也君は悪い心に負けたりしないよね……」

「お疲れ様。とりあえずテントまで運びましょうか」




 次に目を覚ました際は、桜も同じ毛布に包まり寝ていた。

 帰還していないのは積もった雪が原因だろう。

 日が昇れば救援もくるはず。

 俺は今一度眠ることにした。


 迎えにきたのは軍隊が使うような数十名が乗れる大型ヘリコプター3機。

 俺たちは近しいメンバー9人で1機を使わせてもらい、残りの人が2機に乗り込んだ。


 しかし楽しい空の旅とはいかず、時差やら長時間の戦闘やらで頭が痛い。

 そもそも俺は乗り物に弱いほうで、揺れが少なくとも体調不良が原因で酔ってしまった。


 そして雪を取っ払ってある王宮に降り立つと、多くの兵と王が居た。


「軽く酔ってキモチワルイんで帰国していいですか」

「そういうことなら泊まってゆくといい。疲れていると連絡を貰っているから準備もしてある。報酬の件もあることだしな」


 貰う報酬はもう決めてある。

 国を救った一員ともなれば、断ることもできないはずだ。


「報酬なら決めてます」

「……言ってみ(たま)え」

「モモカと桜に恩赦(おんしゃ)を。奴隷からの解放をお願いします」



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