68体目 余裕
複数の誤字脱字報告感謝です!
目が覚めるまで結果は分からないが、生命活動が停止していた3名の蘇生が完了した。
「これで全員だよな」
学生時代に医学も含め人体について多く勉強していた甲斐があった。
最近になって生体具現をより高みへ昇華する為、勉強を積み重ねているのも多少効果があるだろう。
しかし脳に対しては、今の能力レベルでどれだけの蘇生力が期待できるか……。
余力を残しつつ出せる分身の数は、魔塔にも1体待機させているから3体分。
合計10体分ぐらいまでなら、補助に回すことで出すほど余力は増える。
20体を重症者の治療に集中させ、10体を戦闘に集中させるのがベストだろうか。
「分身の数はこんなもんでいいか」
「10……20……実体のある分身が30人も……」
セレナさんが驚いているが、こういった反応をされるのも何度目だろうか。
余力はたっぷり残しているが、一応忠告はしておく。
「治療に合わせて具現化を解くのは結構難しいから、1人ずつ治してくれよ?」
「ご主人様! そろそろ限界です!」
「ああうん」
やはり水と氷では相性が悪いようで、むしろゴーレムを作るための氷塊が増えてしまっている。
分身に意識のない者を運ばせ、ムギが防ぎやすいよう全員を一塊にさせた。
「……ゲートはでかすぎて壊すのは厳しそうだな。この前の残党が隠れてエネルギーを溜めてたか。だらしないな」
「申し訳ございません……」
「責めている場合ではありませんわ! どうしますの!?」
カレンは責める性格ではないだろう。
だが、残党狩りに失敗するのは世界の安全にも関わる問題だ。
しかし解決方法を考えねばならないのも事実。
ゲートが白いせいで遠目からは分かり辛かったが、直径100メートル近い。
ただの傀儡を相手にし続けてもこちらが消耗するだけか……。
「ゲートの前に居る黒いのは倒しても無意味?」
「ゴーレムと同じですぐ復活するわ。ゲートは持久戦をしようにも逆に大きくなってる気がするわね」
「流石クラス委員。良い情報をくれるな」
「何か方法があるのですか?」
持久戦がダメとなると、強大な光系統の攻撃でゲートを壊すしかない。
通常ならそう考えるだろう……。
「持久戦で削り倒す」
「ちょっと! 人の話し聞いてた!?」
「現状ゲートを壊せる威力が出せないんだから、こうするしかないじゃん」
「ご、ご主人様! もう!?」
「じゃあ3風7火で」
「「「「じゃあ俺は風魔法やるから」」」」
「……やっぱ火にするわ」
戦闘部隊の左から4番目までが風魔法に参加しようとしたが、4番目は火に変更した。
人数を見間違えたのだろう。
練習量が少ないから火はやや苦手だが、7人も居れば充分。
同一人物だから魔力が不和を起こすこともない。
発生した大規模の炎の渦がゴーレムを包み、復活を遅らせるために蒸発させる。
そして水分量が多いせいか、結構な量の水蒸気が襲ってくる。
……戦闘部隊10体は巻き込まれて消滅した。
「おおう……。ムギが居なかったら微妙に危なかったな今の」
「被害を考えて使いなさいよ!?」
「……名付けるなら"爆熱火炎斬"がいいと思うんだけど、どうかな? あっ。斬要素ないか……」
「人の話を聞きなさい!」
「ぐはああぁぁ――――っ!!」
「そんな強く殴ってないわよ!?」
自称幼馴染に軽めに顔を殴られた。
そしてわざと盛大に地面を転がる。
最後は煙を出す演出と共に分身を消しフィニッシュだ。
「甘いな。それは分身だ……!」
「あーもう! 苛つく!」
「よ、余裕がありますわね……」
「まあ余裕だからな」
カレンに答えつつ再び分身を10体出し、ゴーレムが生成されつつある場へ急行させる。
配置に着くと、供給されている魔力を根こそぎ奪った。
「……ゴーレムが出てこない?」
「ちょっと体力きついから貸して」
「っ! 心の準備ぐらいさせなさいよ……」
体力が有り余ってそうな理沙の首を掴み、生命力を貸してもらった。
勿論返すことは永遠にない。
「供給されている魔力を吸っているようですが、大丈夫なのですか」
よく見るとボロボロなカレンが、俺の心配をしてくる。
錬斗の心配だけをしていればいいものを……。
「弱いけど光系統の魔法も使えるから、吸収しつつ浄化してる。精神力を使うから早く治療を済ませてほしいな……」
「まさか全部吸うつもりなの……? そんなの塔也君の精神が持たないわ!」
「分身経由だし、破壊できるようになるまでの吸収ならなんとかなるだろ……。5時間……余裕持って8時間ってところか」
長丁場になりそうだ。
相手が動きを変える可能性もあるから、その辺りも対策を立てておこう。
「塔也さん。まだ警戒しておくべきでしょうか」
「そうだな……。ムギはまだ5分ぐらい警戒しといてくれ。モモカは休んでいいよ」
「「了解しました」」
「無茶なことじゃないのよね……?」
「今のところは不快感はあるけど全然平気」




