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65体目 大雪

 夏休みだからか、ムギは毎日(おとず)れてくる。

 モモカと遊んでくれたり修行を手伝ってくれたりと助かりはする。

 しかし孤児院は仕送りだけして、週に1回しか戻らないのはいかがなものか。


『ああああのレベルが28アップしました』

「今日のノルマしゅ~りょ~!」

「お疲れ様です! 修行も休憩にしませんか?」

「そうするか……」


 重力室の設備も1003層に移し終え、本体はそこで修行している。

 多少危険だからと、使う時は必ず誰かの監視下でするよう言われた。

 カレンの執事であるヴァイスさんからの教えは一通り終わり、今は錬斗に教えている最中らしい。


 重力室から扉と窓1枚で隔てられているムギ側の制御室に移動すると、椅子に座ってテレビを見る。


『今月18日頃に発生した事故ですが、2日経った現在で死者と行方不明者を合わせ2万人を超えるそうです。現れた魔物の多くは討伐されていますが、未だに残す魔物を探し出す作業が続行されています』


 一昨日(おととい)はかなりの広範囲を霧が包んでいたらしい。

 下手をすれば国の機能を失いかねない事故だ。

 あの規模で2万人の犠牲なら、よくはないがまだ軽症だと思うべきか。


「こんなに被害が出ちゃうと、他の国も解決に動き辛くなりそうですね」

「解決は他国に任せて守りを固めろって、世論が政治に訴え掛けそうだな。武具の需要も増えてるらしいし」

「忙しいのに注文しちゃって、なんだか悪い気がします……」


 結局盾の購入はできず、カレンに頼んで直接職人に見てもらうことになった。

 良い機会なので俺の武具も、高価な素材を使おうと思い特注した。


 分身で増やす場合、攻防力(こうぼうりょく)が自身の実力依存のハリボテだ。

 実物に触れてればイメージが簡単にな、り作りやすくはなる。

 しかし現物同様の性能を持たせようと思うと、≪実体分身≫や≪ふくろ≫を覚える時並みに厳しい修行が必要となるだろう。


 ひとつひとつの武具にそのような労力は裂けない。

 構造が複雑なほど修行に掛かる時間は膨大にもなる。

 武具の具現化の為に何年も使うぐらいなら、分身の数だけ購入したほうがマシだと思う。


「一般人も冒険者登録するって事例も増えてるらしいしな。そりゃあ忙しくもなるよ」

「武器の所持が認められるようにですかね?」

「多分な。休憩が終わったら次は技の練習するか。ムギは障壁を遠隔で出して、耐久度強化訓練ってことでいいか?」

「はい。まだ勝手に出ますが、制御にも大分慣れてきました!」


 障壁は、まるで能力が意思でも持っているかのように勝手に発動する。

 意思のある能力は時々聞くし、俺の分身も意思もあれば喋りもするから気にするほどでもないか。





 最近は修行なども安定して日常の一部となりつつある。

 そして、そんな昼下がりのコーヒーブレイクとなんら変わらない夜の20時頃。

 緊急のアラーム――ではなく、知り合いからのメッセージ音が鳴る。


「塔也君携帯鳴ってるよ~」

「ああうん……。リサからだな……。『 t 』……?」


 自室で鳴っているのに気付いた桜が教えてきた。

 取りに行って見てみると、メッセージには『 t 』とだけ書かれていた。


ティー()ですか?」

「ミスじゃない緊急メッセージなら、≪助けて≫か≪大変≫ってところか? 電話は繋がらないな」

「何かあったんでしょうか」

「……カレンとも繋がらない」


 チーズケーキを無言で食していたムギが、冒険者カードを取り出した。

 錬斗に掛けてみるつもりだろうか。


「そういえばお兄ちゃんから、カレンさんと≪ポルコ≫に出掛けるってメッセージが入ってました。こっちも繋がりませんね」

「ポルコか……。≪ポルコ≫。≪速報≫……。異常な大雪が発生してるんだとさ」


 音声認識で検索すると、ポルコでの大雪速報が出てきた。

 天候が原因で電波が悪くなっているのかもしれない。


「よし、行ってみるか」

「なら、あたしも行きます!」

「わたしもいいでしょうか?」

「それじゃあ、みんなで行こ!」


 外国へ行くのもタダではないのだが……。

 緊急だからということで、あとで日本かポルコに請求するとしよう。



 国境を超えるのはスムーズに進んだ。

 ポルコ側も救援依頼こそ出していないが、助っ人は助かるといった具合なようだ。

 そして到着すると、暖房設備が動いているのに寒かった。


「寒っ!?」

「なんでこんなに……」

「ぎ、ギルドの中なのに寒いです……」

「塔也さん暖めてください……!」


 ムギが抱きついて暖を取ってくるので、火の魔法を宙に出し微風で周囲へと熱を送る。

 今となっては同時魔法程度は造作もないことだ。

 ちなみに2つ以上同時に魔法を使える人は、地下入り冒険者ならそこそこ多く居るといった程度だ。



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