6体目 窃盗丸
深手を負ったポニーテールサムライは刀を手放し、地面に膝を着く。
そして紫の霧をと共に、刀を残して消え去った。
「ふあぁ――! 疲れた!」
俺は仰向けに倒れ天井を見る。
傷こそ負っていないが、精神的にも体力的にも限界近い。
戦いが終わったから外から開くようになり、衛兵さんが中を覗きに来たのが音で分かった。
倒れていたら誤解させそうだから、片手を上げて生きていることを示す。
「無事倒せたようだけど、大丈夫かい」
「めっちゃ疲れました……。 怪我はしてないです」
「無傷とは……。ああそうか。分身に任せれば傷は負わないということだね。流石は伝説に載るような能力だ。覚えるのも大変だったろう」
「目立ちたくないので広めないでくださいよ?」
遅かれ早かれだろうが、一応釘は刺しておく。
「勿論個人情報は漏らさんとも。首にはなりたくないからね。立てるかい?」
「大丈夫です」
俺は手放した武具を回収し、ドロップした刀を拾い上げる。
すると刀は手に吸い付き、エネルギーを吸い取り勝手に動こうとした。
「妖刀!? っ……! させ、るかっ!」
ドレイン系能力を得ていてよかった。
吸収に吸収で対抗し肉体が侵食されるのを防いだ。
この能力ががなければ死ぬまで俺の生命力を奪って衛兵さんに攻撃をしていたと思う。
「ドロップ品かい? しかしこの階層ボスは……。いや聞かないでおこう。無事でなによりだ」
どうやら察してくれたようだ。
近い内に刀に合う鞘を作って貰わねばならないだろう。
名前は……生命力を盗もうとするから≪窃盗丸≫とでも呼ぶことにする。
________________________
能力:
加速する世界:レベル1【増加必要SP:1】
窮地に陥った際に、タキサイキア現象を発生。
________________________
「なんつう微妙な能力だよ……」
そもそも説明があやふやだし、自分で意識して発動もさせられない。
レベルを上げて任意で発動できるようになれば役立ちそうではあるが、1のままではあってないようなものだ。
しかも分身に任せれば窮地など未来永劫訪れない……はずだ。
俺は翌日、50階層のボスを倒した。
一度倒した特殊個体より弱いボスなど、敵ではなかった。
そして気付いた。
圧倒的にスピードが足らないと。
そしてさらに翌日、60階層ボスに分身だけ入らせて貰う。
結果――ボス戦は開始しなかった。
折角なので倒した。
戦闘中一度分身を消されたのを考えると、70階層に挑む前にもっとレベルを上げる必要がありそうだ。
『レベルが1アップしました』
『レベルが1アップしました』
『レベルが2アップしました』
「お、初2アップでけた」
分身を消した際得る経験にもかなり慣れたから、分身1体は消さずに溜め続けた。
そしてもうすぐレベルが上がるところで狩りを切り上げ解除。
すると1レベルちょっと分の経験値を入手し、レベルを2も上げてくれた。
ちょっとした遊び心である。
________________________
トウヤ 19歳 男 レベル:93
S P:2
体 力:265(+50)
魔 力:473(+50)
筋 力:196(+50)
敏 捷:288(+70)
知 力:160
器用さ:370
能力
実体具現:レベル15【増加必要SP5】
加速する世界:レベル2【増加必要SP1】
強化:
敏捷強化:レベル7【増加必要SP2】
________________________
冒険者カードの機能を使い少し整理した。
普段見たり、これから上げようと思っているステータス意外を排除し、メイン画面も多少はスッキリしてくれた。
他にもお気に入りセットを作れたから、整理して探し易くもしてある。
加速する世界は、音ゲーを超スピードで集中してやっていたらゆっくりに見え、それで練習してたらレベルが上がった。