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64体目 巨人

「凄い霧ですね。96階層より視界が悪いです」

「行ったことあるんだ?」

「大分前ですけど、霧が覆ってる階層っていうのが気になって」


 視界が(ひら)けていない場での戦闘など自殺行為だ。

 俺も行ったことは複数回あるが、戦闘が困難でジメジメもしているから敬遠していた。


「これじゃあギルドに避難するのも怖いな。冒険者も多いだろうし解決を待ったほうがいいか」

「戦わないんですか?」

「塔の外、しかも外国で武器を振り回すなんて大問題になる。必要に迫られない限りはダメだな」


 日本でも外での抜刀は法律的にも厳禁だ。

 それこそゲートが出てしまうような緊急事態でもなければ、罰金や懲役が課せられる。


「そういうものですか……。あれ? なんか揺れてませんか?」

「地響きか……?」


 何度か地響きが続き、窓に巨大な人型の影が映り込む。

 そして建物の端から壁を粉砕しながら何かが迫ってきた。


「でかい……!? くっ――!」


 後方への回避は人込みと建築構造から不可能と判断。

 俺はガラスを突き破り斜め上へと突っ込む選択を取る。

 ムギを抱えて跳ぶと、窓に接触する手前で障壁が現れ俺たちを守ってくれた。


 一般人を含めた冒険者らしき服装の者も、少なくとも100名以上が吹き飛ばされている。

 悲痛な叫び声を上げてる者も多く、巨大な腕になぎ払われたことが分かった。

 攻撃を回避した俺は、巨大な何かを蹴り飛ばしデパートの上へと着地した。

 近づくことで見えたのは――単眼の巨人……。


「デパートよりは小さいけど、20メートル近くあるか?」

「そんな……。人があんなに!」

「……身の安全優先だ! 他にもくるぞ!」

「きゃあっ!」


 空を飛び衝突してきたのは、巨大な蜂のような生物。

 その昆虫型モンスターは重い音と共に障壁に張り付いた。

 障壁は透明度が高いから、昆虫特有の少々グロテスクな部位がよく見える。

 ガリガリと尻尾の針を突き立てているが、障壁を破壊する威力はないようだ。


「魔物なのか……?」

「こ、こんな種類見たことありません……。地下に出るモンスターでしょうか」

「蜂は結構居るけど区別つかないな。巨人は地下400階より先に確認されてるらしいけど」

「レベル900以上ってことですか……」

「同じ種類ならな」


 ムギはがっしりと俺に抱きつき怯えてているが、思考は正常にできている。

 非常事態時における対応の訓練が生きている証拠か。

 普段は魔物と呼んでいるのがモンスターになっているのは、敵の見た目のせいか。

 俺も見た目次第でモンスターと呼ぶこともあり、意味も似たようなものだから適当だ。



「飛行生物が多いっぽいな……。攻撃するタイミングで障壁を解除してくれ」

「……はい!」


 周りに聞こえる悲鳴や羽音から判断し、範囲攻撃を仕掛けることにした。

 鉄パイプを≪ふくろ≫から取り出し激しく回転させる。

 大量の魔力を纏い、風属性に質を変化させ薙ぎ払う。


「"旋風(せんぷう)(そう)()(ざん)"!」


 放った際の風圧のみで付近の敵を吹き飛ばす。

 そして巨人目掛けて放った"風刃(ふうじん)"の波は上下左右に120度の角度まで広がり、数多くの敵を切り刻む。

 技名を叫んだのは、気分の高揚によって若干威力が上がるからだ。

 人によっては威力が下がる人もいるらしいが、俺はここぞという時は口に出す派だ。


「手応えからして100匹そこそこ……。巨人はやっぱタフだけど、標的は変えれたかな」

「中々やるね。巨人はボクが相手をするよ」

「えっと。あなたは?」


 突如横から声がして少しビックリした。

 ムギは思いのほか冷静で、その薔薇色のロングヘアーである女性に何者なのかを問う。

 しかし答えはなく、凛々しい(オーラ)を放つその人は抜剣(ばっけん)すると、巨人目掛け飛び降りた。


 霧でよく見えないが、抜いた細い剣を振り下ろす仕草が見えた。

 そして爆風と共に(そら)の空気が降りてくる。

 空気は霧を数百メートル押し退け、台風の目に居るように視界が(ひら)けた。


 単眼の巨人は縦に真っ二つにされたようで、普段見る魔素よりも濃い煙を噴出し消滅。

 羽虫のように群がっていた飛行する魔物も、風圧で遥か遠くに押し流されている。


「す……凄いですね」

「凄いなんてレベルじゃない。この威力を溜めもせず、しかも建物とか人に被害を出さないとか……」


 最低でも仙人以上。

 もしかしたら、世界に9人しか確認されていない聖人級に匹敵するかもしれない。


『大きいのは倒して視界も晴らしたから、ボクは次の場所に行くから後は任せるよ』


 魔力を乗せ、声が20メートル以上離れているこちらまで届くようにしている。

 そして名も知らぬ女性は、一瞬でその場から消えた。


「居なくなっちゃいました……」

「霧が入ってこないよう軽い結界っぽくなってるな……。しゃーない。目立たないように雑魚を排除するか」


 俺だとバレないよう、追加で出す分身は顔や髪を少し変えた。

 しばらく戦ってみて分かったが、雑魚でも想定200近いレベルはありそうだ。

 これでは地下入りしていない冒険者ではまず戦力外。

 俺たちは半日後に寄越された救援が到着次第、ギルドへ帰還し帰国した。



第四章完!


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