表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/108

63体目 霧の中のデパート

「この盾とかどうだ?」

「うーん。少し重い気がします。それに持った感じに違和感が……」


 壊してしまったムギの盾の代わりを物色中。

 多少の違和感ならメンテついでに調整できるが、中々お気に召すものがないようだ。


「高いだけに悩むよな……。少し高いけど高レベルの人は大体オーダーメイドだし、どうする?」

「なら、本店に行ってみたいです!」

「また外国か……。でも命を守るもんだし、ベストを尽くすべきだな」

「ですね!」




 後日、2人のみでの小旅行となった。

 奴隷は連れてゆけず、錬斗は早く追いつけるよう修行中だ。


 時間があるから、俺はムギと一緒に観光を満喫中。

 転移門が現れたからか、ギルド付近に一般の観光客も多い。


「塔也さん塔也さん! アレ食べませんか!」

「ん? ああいいよ」

「ほら! 早く早く!」


 ムギが指差す場には、出店のソフトクリーム屋があった。

 待ちきれないのか、俺の背中を押して()かしてくる。


「それにしても、移動式の出店が多いですね」

「前までは観光地じゃなかったしな……」


 元々は冒険者たち御用達(ごようたし)の武具店などが並んでいたのが、少々不細工な商店街になってしまっている。

 俺たちからすれば、遊びつつも目的の店も近いから大助かりだ。


「塔也さん! 次はここに行きましょう!」

「冒険者向けのデパートか……」

「早く行きましょう! 時間がもったいないですよ!」

「人に当たったら危ないから気を付けろよ」


 冗談抜きで、本気の体当たりでもしたら一般人はミンチになる。

 日常生活では制御できても、制御を大きく乱す事態が起こらないとも限らない。


 あちこち動き回る子だから、危なっかしくて見ていられない。

 道中手を取られたのを機にそのまま離さず、うろちょろできないようにする。

 これでは園児を見守る保育士だ。

 錬斗の気持ちが少しだけ分かった気がした。




「日本では売ってない物も結構ありますね」

「大抵は持ち帰れないけどな。塔内で買ってそのまま使う分には問題ないけど、アイテムボックス系に隠してもギルド出入口で見破られるし」

「あれってどういう仕組みなんですかね?」

「冒険者カードの記録を読み取ってるらしいな。それだけじゃないっぽいけど」

「へぇ~。初めて知りました」


 ムギは地下2000階に到達しているというのに、全然物を知らない。

 冒険者になって4ヵ月そこそこでは仕方ないのだが、普通の人が聞いたら仰天するに違いない。


「世界的に有名な場所なだけあって、どれもこれも高いな」

「転移門が出る以前から、飛行機に乗ってくる人も居たんですよね? 今なら買えますけど、高くて目が回りそうです」


 数ヶ月から数年で壊れる可能性が高いと思うと、高すぎて手を出したくない気分になる。


「消耗品だと思って買わないと、後で痛い目を見るぞ? まあ、命掛けだからケチるのもよくないけど」

「量産品なら替えは利きますけど、オーダーメイドだと難しいですよね……」

「手持ちと維持費、今後の収入の見立て辺りと要相談だ」


 しばらく物色していると、大騒ぎしながら大勢の人がデパートに流れ込んできた。

 何事かと思い気配を探ってみる。


「……なんか慌ただしいですね」

「なんだろ……。うわっ……。外の気配がやばいことになってる」


 緊急要請は入っていない。

 しかし外には、全国的にゲートが発生した時以上の気配を感じる。


 遠目に窓を見ると、深い霧に包まれ何も見えなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!

執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ