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62体目 霧

 8月15日となって、やっとレベル上げの優先順位が決まった。

 奴隷紋と同じ仕組みの接続は俺の知らぬ場でおこなわれるから、相手は不明だ。

 俺は2000階層まで挑戦できるわけだが、魔物が強すぎて効率が悪くなる。

 なので分身4体で犠牲を出しつつ、1003層の魔物を倒す。


『レンコンチップスのレベルが28アップしました』

「3匹倒せばレベル124になるのはいいけど、倒すのかもかなり苦労するな。それと、揚げレンコン食いたくなってきた」

「レンコン? じゃあお買い物にも行かなくちゃ。モモカちゃんも一緒に行こうね」


 必然的に俺も一緒に買い物に行くことになる。

 レベル上げの対象は当然匿名を使ってきた。

 食べ物の名前は時々出てくるのだが、食いたくなるから控えてほしい。


「……モモカ。大丈夫か」

「……あ。はい! 買い物ですよね! 行きます!」


 解放された280階層の権利は、日本に9割ある。

 モモカは俺の奴隷であるが、居なければ勝てなかったということで残す1割を≪ポルコ≫に譲渡した。

 28階層分の権利のみでも、≪ポルコ≫は所持階層ランキング最下位付近で団子になっている国々から脱却し大きく順位を上げた。


 代わりといっては安いが、俺はモモカの両親のことを訊ねた。

 だが残念なことに、購入した人物がよくなかった。

 買った人物は、奴隷を盾に使い上の階まで上がっていた冒険者。

 両親は魔法職だというのに前衛をさせられ、その命は長くは持たなかったらしい。

 実のところ、俺がモモカを購入した時には亡くなっていたそうだ。


「両親のことは残念だったな……。我慢はするなよ」

「……はい」


 真実を知った時、モモカは我慢をしていた。

 しかし夜1人になると耐えれなかったようで、目を()らした状態で俺の部屋に訪れた。

 今週一杯はお盆に合わせ長期休暇にしているから、心に整理を付けるのにも丁度良いだろう。




 世間(せけん)では≪影≫の進行は今のところないと報道されている。

 しかし実際のところは地上階層と地下の浅い部分ではあちこちに潜んでいた。

 だがギルド協会も甘くはなく、ローラー作戦で潜む者を探し出す。


 精度に不安は残るものの、レーダーを使うことで効率も上がっている。

 今現在、俺の分身も錬斗と共に≪影≫の処理を手伝っている最中だ。


「レーダだとこの階層は終わりだな」

「さっさと階層を昇らないといけないのに、なんで俺まで……」

「祝日なのにな……」

「誕生日に捕まらなければ俺だって……。ムギに置き去りにされるなんて我慢ならん!」


 ちなみに本体は自宅で休んでいる。

 レベル上げも手を抜き、モモカを巻き込み日光浴中である。


「ムギには怪我をさせちゃったから、何かお詫びしないとなぁ……」

「傷も残ってないしムギは喜んでるから気にするな」


 錬斗はてっきり激怒するかと思ったが、意外にも怒らなかった。

 危険度がそれなりにあるボス戦を2000階までスキップできたから、収支でプラスと判断したか。


「取り合えず盾が壊れたから、階層解放での報奨金で良いやつ買ってあげることにしたんだ。んで、今度買い物デートするって約束してある」

「そうか。悪いな」

「誰だお前」

「なんだ急に」


 いつもの、「お前にムギを~」的な返答が返ってこない。

 まさか偽物なのでは……。



「ムギとデートだぞ? なんとも思わんのか」

「そのやり口にはもう慣れた。だが、少しでも手を出したら責任は取らせるからな」

「そういえば、錬斗こそカレンをどう思うよ」

「あれは強いな……。レベルは下でも実力はあいつが上だ」


 今のところ脈はないようだ。

 雑談しながら次の層へ転移しようと移動していると、レーダーに反応があった。

 雑な精度だからなのか、影は気配を消せるからなのかは分からない。


「あっ、またレーダーに反応出た」

「面倒だな……。もっと精度は上げれないのか?」

「魔石と持続時間との相談だな。まあ、この作業の優先度は低いんじゃないか」

「どこかの国だかが攻めに出るんだったな……」


 もちろん塔内の≪影≫を放置するのはよくないだろう。

 しかし重要なのは根本的解決。

 外国ではゲートを開いて攻勢に出るようなことをニュースでやっていたから、あと数日の我慢だ。




 そして後日――巨大な都市が深い霧に包まれる。

 魔界の魔物らしき生物が大量に発生し、大勢の犠牲者も出た。

 報道では、実験に失敗して異なる世界への扉を開いてしまったとされている。


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