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57体目 深淵より出でし

 8月10日、火曜日。

 今後住むことになる1003階層にある自宅は、想像以上に早く建築された。


「これ、引っ越し祝いの蕎麦(そば)です。確か麺類がお好きでしたよね」

「おお、ありがとう」

「お昼ご飯は蕎麦で決定だね」

「錬斗は来てないんだな。折角誕生日プレゼントを用意したのに」

「カレンさんが祝いのパーティーを開いてくれるとかで、1日家を空けるそうです」


 本日は錬斗の誕生日だが、カレンに捕まったようだ。

 誕生日を教えたのが功を奏したか。

 桜はお土産を受け取り、昼食を作りに台所へ向かった。


「じゃあムギに渡しとくか」

「では、あたしから渡しときますね」

「……必ず渡してくれよな」

『ムギのレベルが271アップしました』

『レベルが12アップしました』

「え……?」


 ムギの頭に手を乗せ、大量に溜め込んだ経験値を渡した。

 計算が正しければムギのレベルは500を超えるはずだ。

 俺のレベルは552になった。


「こ、これじゃあ渡せませ――!」


 急激な成長を遂げたのにいきなり動くものだから、ムギはバランスを崩した。

 俺も還元された大量な情報により少し立ち眩みを起こし、支えるのに失敗して一緒に転ぶ。


「ご主人様大丈夫ですか?」

「久々に目眩(めまい)がした……」

「ムリないです。サプライズとはいえ長く分身を出してましたからね」

「溜め過ぎたか……」



 俺が下敷きになっているのだが、なかなか上から降りようとしてくれない。

 10秒以上もくっ付いたままで、仕方なくそのまま抱きかかえ立ち上がる。


「…………立てるか?」

「も、もう少しこのままで……」

「レベルが倍以上に増えるのは流石にきつかったか」

「……1分ぐらいしたら落ち着くと思うので」


 倍といっても能力値はそこまで異常な上がり方をしてないはず。

 しかし唐突だったから心が追い付かないのかもしれない。




 昼食後……。


「ご主人様! そろそろもう1回撃ち込んでもいいですか!」

「……やるか。今の内に魔物から魔力吸って回復準備しておくよ」

「何をやるんですか?」

「結界内から攻撃して魔物を倒すんだ。この層の魔物でも火属性なら倒せてな……。レベル差が凄まじいから経験値も大きいんだ」


 だが、ただでさえ1度の極大魔法で大量の魔力を消費する。

 連続でやり過ぎるとモモカの心身に負荷が掛かるから、1日に使う回数は制限を設けている。


「結界から出られなくても倒せるものなんですね」

「できる人は少ないだろうし、燃費を考えたら普通はやらないけどな」

「あたしも見に行ってもいいでしょうか!」

「それじゃあ洗い物が終わったらみんなで行こうよ!」


 桜の提案で、全員で行くことになった。

 この階層の推定レベルは2100以上。

 しかし火の生命体である≪インフェルノ≫ならば、弱点を突けて倒すことが可能だった。

 氷属性のほうが効果的だが、水でも十分効果がある。



 まずは魔物が集団を成している場を双眼鏡を使い探す。

 最初に見つけたのは桜だった。


「……見つけたよ!」

「そこか……。距離は1500……1530メートルってところか。3匹と蟹2匹。届くか?」

「2キロまでならいけます!」

「オーケー。角度はこの直線で、1530メートルな」

「……撃ちます! "メテオシャワー"!!」


 天空より飛来した流星は砂浜を貫き、激しい振動とともに水がはじけ飛ぶ。

 ≪(キャンサー)≫は高い硬度のため倒せないが、3メートルほどある人の形をした火の(かたまり)は、激しい水蒸気を上げて消滅した。


『桃華のレベルが7アップしました』

「これでモモカもレベル500突破か」

「503になりました!」


 できる人は早々居ないはずだが、結構ずるい方法だと思う。

 それでも効率は分身特攻が大分上だ。

 しかし魔力を異常消費しても俺が補充するから、レベル上げと魔法の練習を兼ねた一石二鳥である。

 だが、問題がひとつあった……。


『レベル差4倍以上及び1000以上の魔物100匹の討伐を確認しました。戦歴を確認します……」

「こ、これって……」


 今現在、緊急クエストが始まろうしているのだ。

 緊急クエストというのは、基本的には受注するか受けないかを選択できる……はずなのだ。

 稀に同意を取らないが、それでも逃亡は可能。

 しかし、今回は特殊すぎた。


「≪深淵(しんえん)より()でし絶望(ぜつぼう)≫を作成――エラーが発生しました……。挑戦権の未獲得を確認。獲得申請を開始……周囲に同階層の到達者を確認。転移を開始します』

「また同意なしかよ……」



 同意を得ないだけでもかなり稀なケースなのに、周りの人まで巻き込むという特殊っぷりだ。

 4人が転移された場所は、ボス部屋のような空間。

 即座に分身を4体出し1体ずつを前後の扉へ向かわせる。

 しかし逃がしてくれる気はないようで、開かなかった。


「ダメか……」

『4名の戦歴を確認……。特殊個体の≪イフリート≫を生成――≪深淵(しんえん)より()でし絶望(ぜつぼう)≫を開始します』


 炎の大精霊を代表する怪物の頭上に、レベルが表示された。

 その数値は、まさしく絶望そのものであった……。


「レベル4000……だと……」


 以前170差のあるレベル400と対峙したことはある。

 だが今回は、レベル差が3400以上だ……。


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― 新着の感想 ―
[一言] あんまり攻略してる描写がないのに急に1003階まで到達してたり、仙人だとか謎の称号?が出てきたり、話についていけなくなってきてます。 よくわからないから流し読みになってきて、余計に話がわから…
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