55体目 戦いの始まり
誤字報告ありがとうございます!
「し、失礼します! たった今ギルド付近にゲートが発生したとの情報が!」
「分かっている! すぐに冒険者を集め、ギルドと連携して対処せよ!」
「了解しました!」
もしかしたら転移門が現れたのも、こういった事態を想定していたのやも。
これなら世界中にすぐ移動ができ、多くの冒険者で事に当たることが可能となる。
日本に居る分身もギルドへ到着。
外は集会もできるように、学校の校庭ぐらいの広さはある。
その中心に直径10メートル以上の巨大なゲートが出現しており、大量の≪影≫が出現している。
「これはまたうじゃうじゃと……。多すぎるだろ」
「大きいのも混じってるね」
つい口に漏らしてしまうほど数が多い。
桜が見ている場所には、≪巨大な影≫が居た。
「地下入り冒険者は討伐を! それ以外の方々は一般市民の避難誘導をお願いします!」
ギルド職員は逃げるわけにもいかないのか、その場で叫び指示を飛ばしている。
俺は分身だからいいが、戦争染みた場では命も軽くなりがちだ。
低レベル冒険者や一般人の被害はどれほどになることか……。
「地下入りは討伐に参戦だとさ。最近入ったばかりだし、みんなは避難に回ったほうがよくないか」
「雑魚ぐらい問題ない。大きいのは高レベルにでもやらせればいい」
「あ、あたしは皆さんを障壁で守るので、あまり離れないでくださいね!」
「よし。じゃあ適当に数を減らす感じで、安全重視な。威力偵察もしとくか」
複数の分身を出し、大きな奴等に向けて突き進ませる。
こんなにも冒険者が多い場では初のお披露目だ。
だが混戦状態だから、大技を使わなければ目立つ事もあるまい。
「必殺、分身特攻! なお、死ぬのは分身である……」
「なに必殺技のくだり引きずってんだ! 真面目にやれ!」
影は広場から街全体にも広がり、今も出続けているが故に何千体いるかも分からない。
5メートル近い者もおり、雑魚とは違ってレベル50以上の強さはありそうに見える。
分身は≪ふくろ≫から柄を付け足すことで長くし、先端を槍に付け替えた鉄パイプを取り出した。
分離したり付け足せる仕様は、家具にもあるメタルラックの足と同じ仕様だ。
分解して小さく収納もできるから、持ち運びも楽だ。
さらには武器もとっかえひっかえでき、壊れても付け替えられる。
量産されている格安の人気商品だ。
そして分身は跳躍して5メートルの巨躯を飛び越え、通り過ぎ際に斬り裂いた。
「そこそこ質量あるな……。まあ、まだ自衛隊でも対処できる程度だな」
「じゃあ次はあの手っぽい奴だな」
「俺は足っぽい奴に行く!」
集団の中には同じぐらい巨大な、手や足だけの影も存在している。
それらは一見した限りだと、レベル70か80で対処できるかという強さか。
「なんだ思ったより平気だな。分身死ななかったか……」
「必殺じゃなくなったな」
「……モモカ、あの分身が居る辺りに魔法ぶち込んでいいぞ」
「ムリヤリ殺すなよ!?」
他の冒険者も居るからすぐさま魔法を落とすわけにもいかない。
だがゲートを放置するわけにもいかない。
「このままじゃ極大魔法は危険か……。とりあえず邪魔な冒険者を排除して1発撃ち込んだ後、桜を増やしてゲート破壊って感じで」
「うん。分かった!」
「被害を抑えられるよう準備しますので、合図をお願いします!」
「俺は近づいてくる影を減らす。ムギは2人を守ってくれ」
「錬斗が守備か。じゃあ俺が分身で邪魔そうな人を離れるよう誘導するか」
この距離から光魔法を打ち込んでもいいが、ゲートが大きいから万全な状態で破壊に挑みたい。
離れようとしない者は分身で強引に引きはがし、それでも訊かないやつには警告だけして引き下がる。
極大魔法を食らいたくはないだろうから大抵は逃げ、そうでない者は耐えれるよう警戒するだろう。
後は自己責任だ。
「よし、場所はあっち方向前方25メートル。いつでもいいぞ」
「では放ちます……! "メテオシャワー"!!」
瞬間、空中に魔法陣が現れ、巨大な水の塊が降りてきた。
「あれ……。でかくね……?」
破壊力を下げているようで、代わりに直径100メートル以上の水球になっている。
雑魚の影は水に飲み込まれ消え失せ、大型の使い魔も大ダメージか。
俺たちはムギが障壁を地面から生やし円形に囲むことで守ってくれたが、多くの冒険者は水に押し流される結果となった。
「周りの建物はほとんど壊れてないな……。制御が上手くなってるじゃないか」
「はい! 破壊力だけ追及するのはよくないと思い、制御をずっと練習してました!」
以前訓練場を壊したのを、まだ気にしていたようだ。
だがおかげで、想像以上に余裕ができた。
数を増やした桜の光の矢による攻撃で、容易にゲートは消えた。
街へ散った影の大部分は自衛隊が処理し、日本での事態は終結を迎える。
しかし他国ではまだ未解決のところも多く、消耗していない冒険者は応援へと向かうのであった。




