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51体目 ティファナの森

 立憲君主制(りっけんくんしゅせい)国家≪ポルコ≫へ来て3日目。

 時差があり、日本では7月24日の土曜日か。


『ジョンタロウのレベルが13アップしました』

「最後のゲート消滅確認。やっと終わったー!」

「ゲートが出たのって、今日だけで3回目でしたよね?」

「何かが起きそうで怖いね……」


 ギルドでの昼食中、影の使い魔が現れたと報告が入り、予想通り依頼は俺に回された。

 1人でも平気だと判断し、両隣で話してくる桜とモモカは置いて行った。

 途中で操られたらしき人物も1人出たが、結界外だったため被害は軽微。


 前回の騒動から光魔法を桜に教えてもらい、練習して俺も覚えた。

 普通なら基礎だけで何ヵ月か掛かるが、分身を何十体か使うと習得速度が段違いだ。

 修行し始めて短い期間だが、初歩の攻撃技は修得できた。

 後は単独でも、持ち前の魔力によるごり押しでゲートを壊して回れた。



「ネットのニュースでは「魔王再来か!?」なんて言われてるな」

「その時は錬斗に倒してもらうか……。いや、モモカのほうが適任か」

「……ああ、模写体に突っ込ませるって意味か」

「強い攻撃技がないからな。俺もそろそろ必殺技がほしいな」


 魔力と気力という違いこそあれど、斬撃を飛ばすだけでは錬斗とだだ被りだ。


「でも塔也さんの場合、分身が必殺技みたいなものですよね」

「必ず殺される技だな」

「ぶふっ!」

「……セーフ」


 加速する世界の発動が遅ければ、錬斗の毒霧を顔面で受け止めるところだった。

 俺は≪ふくろ≫を空中に出し、壁にすることで濡れずに済んだ。


「わ、悪い。この前のを戦いを思い出したらツボに入った……」

「ふふっ。塔也君ったらまた冗談ばっか言って」


 実際分身は殺されまくっているので、あながち間違いでもないのだ。

 そしてオヤジギャグですら笑う桜のような人物が何年も傍に居れば、冗談ばかり言うようにもなろう……。



『冒険者名トウヤ様。至急3番ゲートへお越しください――繰り返します……』

「なんだ?」

「3番ならすぐそこじゃないか」


 目を向けると、確かに3番ゲートがすぐそこにある。

 その場には1人だけ偉そうな装備を付け、他多数は同一の鎧を着けている集団が居た。

 この国の兵士だろうか。

 こちらの声が届いていたようで、ゆっくりと寄ってきた。


「トウヤ殿でお間違いないですかな?」

「会えなかったことにして帰ってくれると嬉しいんですけど」


 敵意はなく俺に殿を付ける。

 そしてここは今現在も俺と奴隷で取引をしている国……。

 どう考えてもこの国に滞在しているのを聞きつけ、何かしらの招待をしに来たとしか思えない。


「休暇中失礼とは存じております。ですが国王も、トウヤ殿に是非一度お会いしたいと申されていまして」


 よりによって国王(みずか)らとは。

 立憲君主制だから国王とて横暴なことはできないはず。

 しかし失礼があっては不味いのは違いない。


「申し訳ない。俺はもう勝手に他国の偉い人に会える立場じゃないので、日本政府を通して正式にアポイントを取ってください」


 必殺――後ろ盾を全面に出す!

 これなら失礼でもなく、早々文句も言えまい。

 実のところ、俺が取るべき対応としてもこれが正しいはずだ。


「なるほど。ちなみに、ご滞在のご予定日数はどれほどでしょう?」

「残り3泊4日ですね。明日と明後日は≪ティファナの森≫に行く予定です」

「承知しました。では取り急ぎ予定を立てます! 行くぞ!」

「「「っは!」」」


 今日ほど日本政府がもたついてほしいと思ったのは初めてだ。

 なぜ俺が外交まがいのことをせねばならないのだ。

 ただ奴隷を買い、裏取引を継続しているだけだというのに……。




 観光4日目は一通り観光を終えたから、モモカの出身地だという≪ティファナの森≫へと(おもむ)いた。


「魔塔の外にもこんな広い迷いの森があるなんてなぁ……」

「日本なら砂漠だな」

「はぐれないよう気を付けてくださいね。広いので遭難したら大変ですよ」


 錬斗のいう砂漠は、より正確には砂丘だ。

 "迷いの"と呼ばれる場所は、魔塔の外周と同じような原理になっている。

 森の中や砂漠など景色が変わらぬ場だと、あらぬ場所に出ても気付けず彷徨(さまよ)うと聞く。


 モモカは道順を覚えているらしい。

 広大な樹海だが、それなりの実力があれば納得である。

 俺も最近になって分かったことだが、空間が(ひず)んでいる場所には魔力を感じることができる。


 エルフはその(ゆが)みを敏感に感じ取れるらしく、それを目印にして覚えれば迷わず進めるのだとか。

 そして高いステータスであってすら歩いて8時間も掛かり、歪みを利用してショートカットまでしてようやくエルフの里へと到着した。

 モモカが大雑把な覚え方をしていて若干迷ったのは誤差だろう。



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