49体目 終結
第三章終結です
地下10階層のボス部屋。
俺と桜は一時的に外で待ち、残す3人と分身で討伐した。
「10階じゃ相手にならないな」
「まだまだ余裕がありそうだな」
やはり錬斗が相手でも、10階のボスでは相手になれなかった。
俺の予想では、60階層までは余裕だ。
「でも、油断大敵ですよね!」
「進み続けるだけじゃなくて、実戦経験も必要だな。特にムギは違和感もあるんだろ?」
この兄妹とは固定パーティーを組んでるわけではないが、ボス戦を共にするせいかずっと一緒に行動している気がする。
ここは1度、雑魚相手にも戦わせ戦闘経験を積ませたほうがいいだろう。
「なんていうか……障壁が勝手に出てくるんですよね。自動防御はないんですが……」
「制御できないといざという時困るな。模写体も使って練習するか?」
「いいんですか?」
「盾役は今後のボス戦でも大事になる。俺だって利用する立場だし遠慮はしなくていいよ」
「それじゃあ、是非お願いします!」
そしてそれは、ボス戦で多少なりとも消耗している帰宅時に来た。
11階層に昇ると、そこは森の中。
結界もなくその襲撃しやすい土地ならば、くる可能性は高いと予測していた。
背後から迫る矢をギリギリ回避し、俺は頬に傷を負うだけで済んだ。
毒を仕込んでいるのを考慮して、短剣で傷ごと少し抉り取り具現で修復する。
「と、塔也さん!?」
「敵襲か!?」
「やっぱ来たか! 出てこいよマー坊!」
「気づいてやがったか……。だが残念。本命は弓矢じゃねえ。あと、マー坊って呼ぶんじゃねえ!」
毒は毒でも、奇襲は毒ガスによるものだった。
モモカと桜には事前に伝えてあるから冷静だ。
しかし錬斗とムギは慌てている。
良い演出になるので好都合だ。
現状、鈍い感覚では単純な攻撃すらも避けられない。
俺は強く蹴られ背後の木へ激突。
他の仲間も、全員毒ガスによって痺れて倒れた。
「お前、自分が何をしてるのか解かってんのか?」
「やばいことだってのは重々承知してる。けどな、死体も出なければ行方不明にもならなければ、なんとかなる」
「どういうことだ……」
「実のところな、俺は本気で実体分身に期待してたんだぜ? なのにあんなに待たされて結果も出ない。挙句の果てには桜まで取りやがって……」
訊ねてみると、勝利を確信しているのか易々と喋ってくれる。
そして続きを言い出す前に、森の中より奴隷として買われたと思わしき3名が出てきた。
しかし生命力は感じても、そこには感情が――魂が宿っていないのは調査済みだ。
「どうやって能力を得たかは知らねえけど、ある程度の強さはあんだろ? だからこいつ等みたいに、俺が全部貰ってやることにしたんだ」
「他人を操ろうなんて、お前の考えそうなことだな。奴隷は魂を砕いてるみたいだし」
「相変わらず理解が早いこった。お前等も俺の奴隷にしてやるよ」
言い終えたマー坊は、奴隷紋を刻印するための道具を取り出した。
それを確認した俺は、普通に立ち上がる。
「まあそんなところだよな。録音もしたからあとは捕まえるだけだ」
「は? お前……なんで……」
「分身に毒が効くわけないだろ」
「くそっ! 本体じゃなかったのか!」
敵は全員が即座に爪を装備し、臨戦態勢へと入った。
奴隷も全員爪とはまた極端な武装だが、精密に操れるだけの技量を持ち合わせていないのだろう。
「4対1だ。分身を使うお前が卑怯なんて言わないよな?」
「言うわけないだろう。ただし、1対4だ」
俺は16体になるように分身を出した。
もっと出せはするが、言葉の上げ足を取るならこの人数がいい。
「な……。一瞬しか出せないんじゃ……。レベルが上がってもこんな……」
「俺はお前に一瞬しか出せないなんて言ってないぞ? それにSP50ってのも、≪実体具現≫じゃなくて、それが進化した≪生体具現≫だ」
「生体……。嘘だっ! そんなの嘘に決まって――!」
一応の余力を残して、100体近くを具現化した。
ダメ押しに虚像の分身も出す。
9割が虚像であるが、相手には実体が1000体を超えているように見えるだろう。
「あ……? え……?」
「ああそうだ。他の仲間も模写体でな、ここには居ないから人質とかのワンチャンもないぞ」
「模写……? 他人の分身までなんて、お前どこまで……」
模写体は100体を出した時点で解除した。
他の仲間にもここまでの状況は伝わったが、この先は伝わることもなかろう。
「さあ、奴隷と言っても3名の殺人。そして俺たちの殺人未遂だ。覚悟はいいか? できてなくてもボコボコにするけどな」
「や、やめ……。俺たち友だ――」
余計な事を言う前に、顔面を1発だけ全力で殴る。
優は気絶して、奴隷共々倒れた。
「バカだな……。友達って言うなら、俺が人をなぶる性格じゃないって分かってるだろうに」
一応奴隷も拘束し、分身を解除する。
そして警察へと引き渡し、事は終結を迎えた……。
第三章:不吉な影 完!
本作を読んで少しでも続きが読みたい、応援したいと思っていただき
まだの方がいらっしゃれば、三章も終わったこの話しを機会に、
・ブックマークへの追加
・画面下の「☆☆☆☆☆」から評価をして応援していただけると
とても励みになります!
何卒よろしくお願いいたします!




