47体目 会食
「それにしても、あなたが奴隷を買うなんて意外ね。買う人に襲い掛かりそうな人なのに」
「好き勝手するのは最低だとは思うよ。でも裏切れないってところは気に入ってる」
「昔からそういうところがあったわね……。仲のいい子とでも喧嘩して。不正だとか裏切りが大嫌いだったわよね。そのくせして自分もグレーの範囲なら遠慮なしだもの」
「そうだっけ。全然覚えてない……」
10歳ぐらいまでは時々喧嘩してたのを覚えてるが、原因は思い出せない。
子どもの頃だから、きっとくだらない内容だろう。
ただ単純に誰とでも仲良くもすれば、嫌な思いをすれば衝突もしただけである。
「でもひとつ思い出した。外国でレベルを上げたゴリラに、何度痛い目に遭わされたことか」
「くだらないことで大騒ぎするからでしょうが」
「俺は悪い事をした覚えはないな」
「過剰防衛って言葉を知ってるかしら?」
「ゴリラに殴られたあれは過剰だったと思う」
「あら、言ってくれるじゃない」
腹の中身をぶちまけそうになった腹パンを思い出した。
危うく病院送りになりそうだった覚えもある。
「ネットの記事で見たけど、カレンと組んでるんだよな」
「ええそうよ。でもなんで、私までゴリラ呼ばわりされるのかしら」
先に呼ばれていたのは、間違いなく目の前の金髪ウェーブっ子だろう。
しかし追及すると、面倒なことになりそうだから切り上げる。
「寧ろ元凶……。まあいいや。あと1人はセレナさんだっけ。今日は来てないのか」
「奴隷とか許せない~って性質だからね。塔也君とは相性いいと思うけど、あの子の場合親も過保護だから」
3人目の親は確か、海に関係する商売人だったはず。
他にもリゾート地のホテル経営もしていという噂。
あくまで噂なところから察するに、親の過保護で偽証している可能性もある。
それなりのお嬢様なのは間違いあるまい。
「親といえば、綾野さんの親は何の仕事してるんだっけ」
「理沙でいいわよ。お母さんはデザイナーで、お父さんは魔塔関係の記者ね」
「記者か……。仲良くしといたほうがいいな」
「賢明ね。塔也君は記事に載るような時がくるだろうし、味方の記者は作っといたほうがいいわ」
メディア関係からは全力で逃げ出したい。
しかしいつまでも出ずに居られるような立場ではないのも理解している。
ならば気心がある程度知れている相手のほうがまだマシだろう。
「塔也君はまだ地下入りしたばかりよね。進化については知ってる?」
「本体が別の場所で、現在進行形でしごかれてるよ。執事さんに」
「ああ、カレンの執事さんね。なら、近い内に超人ぐらいまでは成れるかしら?」
「精神力がとてつもないから、肉体さえ仕上げれば心技体が揃って、仙人級にもなれるって言われたよ」
「仙人なんて凄いじゃない。レベル1000を超える人が成るような階級よ」
超人は目の前の御仁を含め、レベル300を超える人は大体成っているらしい。
俺は500を超えてるのに達人級だから、かなり弱い部類だ。
確かに肉体的強さで言えば、カレンや理沙より劣っている。
下手をすれば、錬斗にすら負けそうだと最近思ったばかりだ。
進化について詳しく聞いて、ひとつの謎が解けたことがある。
先日、気力操作などの技術力で速さが上がったのに、表示されている敏捷が異常に増えていた。
気付かぬ内に、足の細胞が超人並みに進化しつつあったのだ。
「目指すのはその先の先だけどな」
「9人しかいない聖人より先ねぇ……。魔王とか?」
「実際奴隷使ってるから、魔王って呼ばれかねないな……。ってことは自衛隊は魔王軍?」
「世界から総攻撃されそうね……」
実際に魔王になったら、総攻撃をされる前に核を打ち込まれそうだ。
「冗談はこの辺にして、仲間でも紹介しておこうか」
「そうね。お願いするわ」




