39体目 魔界
ゲートの処理を後から来た部隊に引き継ぎ、ホテルへ帰宅した夜。
あの不気味な魔物のことをモモカに訊いてみた。
「口しかない紫色のお化けですか……」
「ああ。エルフには何か伝わってないかなって」
「そうですね……。聞いた分には、使い魔に似ている気がしますね」
「使い魔? それって式神みたいなものだよね」
桜が言う式神は日本バージョンの使い魔のようなものだが、厳密には違う。
そもそも使い魔や式神を使う上でも、大雑把に2種類の方法が存在する。
自分のエネルギーを源にするか、実在する者を使役するかだ。
「役割は大体同じですね。単純に弱いだけかもしれませんが、貰える経験値が少ないなら、生み出された使い魔の可能性が高いです」
「もしかして、魔王みたいなのが居るってこと……?」
「どうでしょう。魔界の魔素が漏れ出した影響で、影のようなものが現れるとも聞きますから……」
「魔界って、おとぎ話に出てくる?」
自分以外に2人居ると、俺が喋らずとも話しが勝手に進んでくれて助かる。
脱線することもあるが、訊ねる手間が省けた。
「わたしもパパから聞いたことがあるだけですが……。ゲートとは元々神や悪魔が使っていたもので、えーと……主に魔界が、地上や天界へと繋げていたとか」
「本当にそうなら怖いね……。悪魔なんて昔のお話でしか聞いたことがないから……」
もし実際に魔界があるなら行ってみたい。
とある有名な冒険者の書籍に『真の冒険者なら、危険な未開の地にこそ惹かれるものがある!』と書かれている。
俺はその危険に惹かれる冒険者の1人だ。
「ギルドとか国も調査するし、もし魔界が関わってても早めに情報は来るんじゃないか? 今のところ使い魔らしき奴も弱いし平気だろ」
「そうだよね。もしもの時に動けるよう、私も強くならなくちゃ」
「……ああ」
そして俺と桜は地下攻略……。
他3名は天の試しに備え、1週間の時が流れた。
『レベルが――』
≪藤嶺 こむぎ≫こと、≪ムギ≫――レベル200。
≪天谷 錬斗≫――レベル250。
≪桃華≫――レベル230。
上記3名はレベルを上げつつも、分相応だと思うレベル差に調整した。
桜は狙われる可能性も考慮し、数日頑張って400まで上げた。
そして俺は……。
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トウヤ 19歳 男 レベル:500
S P:29
体 力:800(+100)
魔 力:836(+100)
筋 力:444(+100)
敏 捷:673(+100)
知 力:170
器用さ:500
能力
:生体具現:レベル6【増加必要SP50】
:加速する世界:レベル15【増加必要SP5】
:変質吸収:レベル6【増加必要SP10】
:気力操作:レベル12【増加必要SP5】
強化
:生命力強化:‐‐【増加必要SP10】
:精神力強化:‐‐【増加必要SP10】
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能力
:生体具現レベル6【増加必要SP50】
限界実体数:325体(5+20+60+120+120)
限界模写体数:5体
限界生体数:8体
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俺は――速さを極めた。
気力操作で足にエネルギーを集中したり、風魔法で加速したり。
生体具現をレベル6にしてからは、処理に余裕ができて魔法を使っても余る集中力を発揮できた。
一見限界数こそ変わらないが、ついに"モバイルトウヤ"が実戦でも使えるぐらいの精度となったのも大きい。
小型分身は魔力の吸収要員に当てることで消耗を抑え、多くの分身を使いながら魔法の使用が可能となったわけだ。
逆に15メートル級の巨人を生み出すことも可能だ。
エネルギーを大量に使用して、大きい故に使い勝手も非常に悪いが……。
「40階層も突破っと……」
「このボスならモモカちゃんたちでも楽に倒せそうだね」
「獅子の形をしてるだけで、火そのものだもんな……」
モモカの水魔法で楽に勝てるだろう。
そしてそのモモカだが、あの天から落ちてくる魔法をボス部屋でどう使うのか訊いた。
すると、考えてませんでしたと言われた。
≪メテオシャワー≫は発動までに時間が掛かる代わりに、上空で何倍もの威力にする技らしい。
やはり頭が良いといっても、11歳だったようだ。
どうしても粗は出てしまう。




