３体目 レベルアップ
「ただま～。今月分置いとくよ」
「ありがとう。いつもより多くない？」
「最近上の層に昇れてるから。安全はちゃんと取ってる」
「ならいいけど、気をつけてよね。じゃあ４万は貯金しておくから」
「うん」
いつも通り月の終わりに、貯金と自宅と自分に１/３ずつ分け母親に渡す。
周りの人は偉いと言うが、家事をまかせっきりなのだから当然だと思う。
そして冒険者が入る保険に大分持っていかれているが、増えてなお手取りが１２万だから悲しくなる。
自室に戻ると、もはやルーティーンとなっているパソコンのモニターを点けるところから始める。
兄姉は家を出ているから、俺はようやく手に入れた自室を最近になって満喫できている。
「加速的に強くなるのはいいけど、金が貯まっても使い道がない……」
金があるに越したことはない。
しかし俺は金のためではなく、誰よりも強くなりたいからレベルを上げているのだ。
やるからには頂点を目指す心構えだ。
「武具はあんま意味ないし維持費がな……」
分身に防具は必要がない……というより、解除する度に回収するのが面倒だ。
それに、分身で増えた人数分用意するのも億劫になる。
買ったとしても量産されている安くてそれなりに強い武器で十分だ。
「家でも買うか……？」
具現化できる分身数が増えれば夢ではないはず。
今でも腕を増やしてアシュラごっこをしたりと、余裕もできてきた。
現在実体具現はレベル９で、あと少しでもう１体具増やせそうな感覚があるのだ。
近日中に区切りであるレベル１０にできそうだから、楽しみで眠れなくなりそうだ。
そして数日後……。
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能力
：分身：レベル６６【増加必要ＳＰ１】
：実体具現：レベル１０【増加必要ＳＰ５】
限界分身数：７体
限界実体数：４体
限界同時操作数：４体
限界オート操作数：４体
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「４体…………？ ２体しか出せなさそうなのに、なんでだ？ 何気に限界距離がなくなってるし」
最近距離も伸びてきたなぁ、とは思っていた。
しかし撤廃されたのには流石に驚いた。
検証する為に、試しに具現化してみる。
「やっぱ２体が限界だ……。これ以上は集中力が足りない」
「そうか？ 俺は１体出せそうだけど」
「俺も。ほれ」
なるほど。
分身が分身を出せるようになったらしい。
性能が下がる分数も減るが、乗算的に数を増やしていけるわけだ。
恐ろしいことが判明した。
俺は休暇を取っていて、自宅でネットサーフィンをしている。
しかし分身たちは塔を昇り、モンスターを継続的に倒している。
『レベルが１アップしました』
「また上がった……階層昇り過ぎだろ……。」
今日だけでもう３回も聞いた魂からの声。
本体が安全な場所にいるからか、分身たちはお構いなしに上へ進んでゆく。
そして部位欠損をしても吸収してお互いに具現させたりと、ゾンビのように蘇る。
最初こそ集中せねばならなかった分身の維持も、レベルが上がりＳＰを使って実体具現を上げた。
すると、ネットを見る余裕もできた。
分身が分身出せるお陰で出し入れも可能だ。
大量の記憶が送り込まれることでの脳への負担も考えているようで、一定時間毎に経験を本体に還元してくる。
痛みは消せるが、ゼロにすると性能が著しく下がる。
しかし効率を上げ技術面での経験を積むため、緊張感を持てる程度には五感を残しているようだ。
攻撃を受けるのは嫌でも、痛くて堪らないというほどではない。
還元する痛みも過去の記憶だから大したことはない。
「……合計４万３２００エンとなります」
「どうも」
「一体どうしたんですか……！ 数日でここまで増えるなんて……」
４人パーティーが１日で稼げる平均的な金額近いからか、いつもの受付の人も困惑している。
４万そこそこと言われたが明細だけを受け取り、月末に保険など差し引いた分が振り込まれる方式を取っている。
このほうが、貯金などに均等に分けるのが楽だからだ。
「いやまあ……。これからまだ増えると思うのでよろしくお願いします」
「は、はあ……」
そして１体だけにした最後の分身が帰宅。
明細を受け取ってから分身を解除する。
『レベルが１アップしました』
「あ、こいつ溜め込んでやがったな」
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トウヤ １９歳 男 レベル：６５
Ｓ Ｐ：１
体 力：２０１（＋５０）
魔 力：３７１（＋１０）
筋 力：１３５（＋２０）
敏 捷：１８９
知 力：１６０
器用さ：３７０
能力
：分身：レベル６９【増加必要ＳＰ１】
：実体具現：レベル１３【増加必要ＳＰ５】
：マジックドレイン：レベル１２【増加必要ＳＰ３】
：ライフドレイン：レベル１８【増加必要ＳＰ５】
強化
：魔力強化：レベル１【増加必要ＳＰ１】
：体力強化：レベル５【増加必要ＳＰ２】
：筋力強化：レベル２【増加必要ＳＰ１】
・......... ↕スライド
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ドレインが驚くほど上がってる……。
魔物を４人で締め上げチューチュードレインしたのは流石にやり過ぎたか。
