34体目 パシリ
「塔也さん! 今日は折り入ってお願いがあるんです!」
「固定パーティーのことじゃないよな」
「組めるなら組みたいですが……。今日はそれとは別です」
「俺は止めたんだけどな」
パーティーに加入したいというお願い以外だと、思い当たるのはいくつかある。
錬斗が止めに入るような内容なのは確かだ。
「厚かましいお願いなんですが、あたしと、できればお兄ちゃんのレベルも上げるのを手伝って欲しいんです」
「……見返りは?」
「あたしにできる範囲ならなんでも!」
なんでもという言葉を使ってしまうとは……。
錬斗が仲裁し何か言いそうな発言だ。
しかし一通りやり取りを済ませてから訪ねてきたようで、特に突っ掛かってはこない。
「そこまでしてレベルを上げたい理由でもあるのか?」
「あたしには塔也さんやお兄ちゃんみたいな特別な能力もありません。SPも基本的な強化にしか使ってないんです……。だから、せめてレベルだけでもって」
「技術や精神が伴ってないのに、レベルだけあっても意味ないぞ。天の試しで躓いて痛い目に遭うだけだ」
冒険者になったばかりなのに、50階層付近に居るだけでも凄いことだ。
しかし能力もないのにこれ以上進もうとすれば、最悪死にかねない。
「そう言わずやってくれないか。危険なことは俺がやらせないから」
「そこまで言うならいいけど。見返りはそうだな……」
色々と残酷な見返りは思いついたが、非常に面倒くさい結果になりそうだ。
これだから損得が関わる事柄は嫌いだ。
ほとんど知らなかったりどうでもいい他人ならまだしも、ある程度の仲だと関係を壊すことになりかねない。
「……よし。じゃあ練斗が3日間パシリってことで」
「それは安すぎるんじゃないか」
「俺にとっちゃレベル上げは1日も掛からんことだし妥当だろ」
言い終えると、練斗の頭に手を置いた。
そして練習中の模写体具現と同じような方法で精神を少し引っ張り出す。
「おまっ――」
『練斗のレベルが42アップしました』
「溜め込んでただけあって一気に上がったな」
「42……だと……」
流石にあれだけ奴隷たちに渡し続ければ、コツを掴めた。
今なら奴隷のように繋げずとも、多大な集中力を使えばなんとかできる。
しかし既存能力の複合応用だからなのか、相変わらず冒険者カードに表記は出ない。
「じゃあ次はムギな。足りるか……?」
「はい!」
『ムギのレベルが41アップしました』
『レベルが1アップしました』
「……ラスト1体」
『ムギのレベルが21アップしました』
「どうだ?」
もう分身に経験値は残っていない。
だが、2人とも間違いなく100は超えたはずだ。
「俺は132。90階層も突破できそうだ。天の試しはレベルは関係ないし、実質地下入り可能だな」
「あたしもレベル125になりました!」
「しかし不思議な感じだな。自分のカラダじゃないみたいだ」
「10分もすれば慣れるよ」
「そうなんですね」
そして俺は錬斗に学校を休ませ、ムダにコンビニと練習場を行き来させ続けた。
途中で飽きたら、腕立て腹筋スクワットを1万回ずつさせたりで遊んだ。
模写体を具現化して、色々と実験にも付き合わせた。
最終的には2人のレベルは150にして、50階層から90階層のボスは可哀想な目に遭うことになった。
変な緊急クエストが発生しなかったのは幸運と思っていいだろう。
あんな窮地は早々あっていいものではない。
「90階層もこれで終了っと。そういや2人は、地下入りする気はあるのか?」
「俺は強くなりたいからな。行くさ」
「あたしも、塔也さんに追いつけるようになりたいです!」
危険性がこれまでの比ではない天の試しは、挑まず留まる選択をする人も少なくない。
しかし2人は先を目指すようだ。
モモカに関しては、最初から地下入りを目標にしていたから聞くまでもない。
「じゃあ100階に備えてる最中に、俺は地下攻略を進めておくか」
「160階まで行けるんでしたよね。敵のレベルが420って聞きますけど、危なくないですか?」
「360じゃな……。10階から順番に桜と攻略するよ。」
別に自分のレベルを上げようとしていたわけでもない。
しかし半分は自分に入るから、他人を上げている内に360まで上がってしまった。
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トウヤ 19歳 男 レベル:360
S P:29
体 力:581(+100)
魔 力:744(+100)
筋 力:390(+100)
敏 捷:475(+100)
知 力:165
器用さ:440
能力
:生体具現:レベル3【増加必要SP40】
:加速する世界:レベル15【増加必要SP5】
:ふくろ:レベル6【必要SP5】
:変質吸収:レベル5【増加必要SP10】
:気力操作:レベル8【増加必要SP5】
強化
:生命力強化:‐‐【増加必要SP10】
:精神力強化:‐‐【増加必要SP10】
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魔法を鍛えていたからか、筋力と敏捷が全然増えていない。
体力は毎日大量に使っては回復を繰り返しているから、上昇値が大きい。
強化はその内するつもりなので表示に入れているが、SP10はやはり大きい。
今は生体具現を5まで上げようかと考えている最中だ。
そして俺はこれより、奴隷と言う名の仲間と共に地下へと進む……。
第二章:奴隷と言う名の仲間 完!
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