25体目 ロマン砲
『桃華のレベルが23アップしました』
『レベルが2アップしました』
『桃華のレベルが12アップしました』
『レベルが1アップしました』
『桃華のレベルが15アップしました』
モモカは何もしていないのに、レベル65にアップした。
軽い狩りでこれなら、代理レベル上げをすれば大金が稼げそうだ。
だがこれ以上ないと言えるぐらい悪目立ちをするから、少なくとも今はやらない。
「1日適当にやって65とか、このレベリング楽しいな」
「なんだか、とんでもないものを味わった気がします……」
レベルを上げて分かったことだが、モモカは魔力、知力、器用さが高い。
魔力の上がり幅だけで言えば俺以上だ。
しかし鍛えていない影響もあり、他のステータスは非常に低い。
SPは必要最低限の20ポイントだけ使い、他は残す。
予定を立てるため、俺は指を1本ずつ立てながら訪ねる。
「モモカ。明日はどうする? 1、階層攻略。 2、1が不安なら狩りに挑戦して慣らす。 3、魔法の訓練。どれがいい?」
「選んでもいいんですか……?」
「ああ。本人の意思で「これがいい!」って思えたほうが、覚えも早いからな。他に案があれば言ってもいいぞ」
楽しいと思えるものは成長スピードが違う。
嫌だと思うことをやらせるより、自分で選ばせるのが効率的だろう。
「でしたら……狩りに挑戦してみたいです」
「よし。じゃあ明日の昼からな。緊張でよく眠れないだろうから、朝はゆっくりしていいぞ」
「分かりました。お気遣いありがとうございます」
夜は分身を置いて本体は自宅へ帰ろうしていた。
しかし、逆に分身を家に帰し、本体が残ることにする。
寝てるあいだも維持する練習をしているが、もし分身が消えたら戻ってくるのが面倒だからだ。
モモカはやはり寝付けないようで、こちらの様子をちょくちょく伺ってくるのが分かる。
おそらく、死ぬよりマシだと思い残酷な未来に覚悟を決めていた。
なのに肩透かしを受けたことで、困惑しているのだろう。
しかし強引に行為に及ぶなど、俺の趣味ではない。
そもそも余程屈折でもしなければ、恋愛対象外でもある。
これから長い時間を掛けて、俺の性癖が歪まないことを祈るばかりだ。
「やあっ!」
翌日の昼頃……。
買い与えた杖から放たれた水の大砲は、風魔法により勢いを増し≪クレイジー・ボア≫へと命中。
イノシシは紫の霧となって消滅した。
「流石は不法侵入するだけはあるな。度胸が違う」
「い、言わないでください! 凄く後悔してるんですから!」
「でも俺的にはそのお陰でモモカに会えたんだから、感謝しないとな」
「っ! もう知りません……!」
まだ1日だが、モモカも大分慣れ、緊張も和らいだようだ。
冒険者カードの名前は、知らない人ともパーティを組み易いよう匿名を使える。
俺がトウヤにしているのと同じように、モモカも漢字を当てさせてもらった。
だがカードを詳しく調べれば本名は分かるから、身分を偽ることは不可能だ。
「全然平気そうだし、10と20階層のボスは今日突破しちゃうか? できそう?」
「はい……。少し怖いですけど、大丈夫です」
「よし。疲れない程度に走るぞ」
「はい!」
10階層に転移して、ボス部屋前まで走った。
少し体力が心配だったが、レベルが上がっているから平気そうだ。
「はぁ、はぁ……」
「思ったより大分持つな……。体重が軽いから燃費がいいのか?」
「自分でもビックリです……。こんなに走れるなんて」
「ん? 君は先月も来てたね。そっちは新人冒険者かな……?」
衛兵に覚えられていた……。
一度突破したボスにまた挑んだ者だから、印象に残っていたのやも。
「ええまあ。自分の奴隷です。挑戦させるのでカードの確認お願いします」
「そ、そうか……。このレベルで未到達……? いやすまない。大丈夫だとは思うが、危険だと思ったらすぐに出てきなさい」
「相変わらずの定義文ですね」
「決まりだからな」
100階層は1人専用で、達成者は入場できない――だった。
俺が挑戦している最中に、突破済みでなければ通常のボス同様4名までは一緒に挑戦することが可能になったらしい。
ちなみに天の試しはボス戦と違い、転移で別の場に移されるから待ち時間はほとんどないそうだ。
何度も挑戦しているからお分かりだろうが、階層のボスは何度でも挑戦できる。
勿論手伝うことも可能だが、過剰な手伝いの場合魔塔のシステムが突破を認めない。
「じゃあ防御面は全部やるから、隙を見てうまく攻撃してくれ」
「分かりました!」
魔法職が守られるのは当然だから、この程度の手伝いは問題ない。
そしてレベル差が凄まじいため、数発打ち込むだけでケリが付いた。
「他のモンスターと大差ないんですね」
「そりゃあレベル差がな……。しかし魔法撃つたびに床がビショビショだな。大砲じゃなくて、もっと鉄砲みたいなのも欲しいな……。たしか中級魔法だっけ?」
「そうですね。でもわたしは、もっとこう……」
口を閉ざしてしまった。
奴隷なのに意見してもいいのかと、そう考えているのだろう。
「否定的意見でも言ってくれていいよ。まあ、一言断ってから言ってほしいけどな。直球で否定されたら普通に傷つく」
「は、はい! では失礼して、わたし自身はですけど、1回の攻撃に持ちうる魔力の全部を、「ドッカーン!」って感じで使うのが理想かなって……」
いわゆる、ロマン砲。
使いどころは限られるし、味方も巻き込みかねない技である。
非常に危険で、人気もないポジションだ。
皆様のお陰で週間ランキングも50位付近まで来ることができました!
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