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23体目 購入

「じゃあ言いにくいかもしれないけど、最後の質問……。どうして掴まったんだ?」

「そ、それはその……えっと…………」

「待って。呪いは起動しなくていいです」

「承知しました」


 モモカが言葉に詰まっていると、奴隷商が動き出そうとした。

 何をするのか解かったから制止させる。


「え、えっと! お家に入ったら大勢に追い掛けられて、それでなんとか侵入罪っていうので……」

「不法侵入? 大勢にってことは何か重要な場所に入ったのか」

「その通りでございます。罪状は重要建築物侵入罪です」


 それは普通に死刑ものの罪だろう。

 不法侵入程度なら日本ならもう少し甘い。

 しかし1人が殺害されると大きく傾くような国家なら、どこの国でも死刑になって当然の罪だと思う。

 事前に調べた分には、立憲君主制(りっけんくんしゅせい)の国家だから厳しい処置と言える。


「でも先に奪ったのは……! いいえ。なんでもないです……」

「奪い返しに侵入したのか……。ってことは取り返せる(たぐい)の物ってことか?」

「資料によりますと、母から貰った精霊石のペンダントを取り返そうとしたのだとか」


 モモカは泣きそうになりながら我慢している。

 国の方が悪い気しかしない。

 しかし事情があったのかもしれないから、訊いてみる。


「国が奪った理由は?」

「個人情報も含まれますので詳しくは言えませんが、両親が別の罪で捕まりその際に回収されたとだけ」

「その両親は?」

「すでに売れていますな。申し訳ありませんが、これ以上は言えません」


 売った相手は明かせないと。

 そこに関しては俺もありがたい。



 あと気になることがあるとしたら、今日買いに来たもう1人の動向だ。

 まさかありえないとは思うが、俺をハメようとしているのではと考えてしまう。


「ふむ……。そういえば、一緒に来た奴はもう奴隷を買ったんですか?」

「少々お待ちを……」


 奴隷商は扉を開けて、外に居る誰かと話す。

 それはものの十数秒で終わり、再び部屋に戻った。


「ええはい。すでに支払済みの2名とは別に、3名を購入して帰ったそうです」

「多いな……。けどそれなら平気かな。じゃあこっちも、モモカを貰い受けるってことで」

「ありがとうございます。それでは奴隷紋(どれいもん)の更新と会計の準備をしますので、しばらくお待ちください」





「あ、あの。ご購入ありがとうございます……!」


 部屋には俺とモモカが残された。

 少しだけ沈黙が続いて話しを振ろうかと思ったら、モモカが立ち上がり告げてきた。


「お礼を言われると複雑な気分だけどな……。まあ他の人に買われるより、この人に買ってもらって よかったって思ってもらえるよう頑張るよ」

「わたしのほうこそ、お役に立てるよう尽くさせていたたきっ……いらだき……うゅぅ……。頑張ります!」


 思いっきり噛んで、最後には諦めた。

 すぐに緊張をほぐすのは難しい。

 こればかりは時間を掛けるしかないだろう。



「ではこちらに体液を。オススメは血でございます。魔力を扱えるなら込めていただければ、より一層繋がりが強くなりまする」

「じゃあ血液で。量は5グラムぐらいでいいんでしたよね」

「はい。ではこちらを」

「いいや。必要ないです」


 血を出すためのナイフを渡そうとしてくる。

 しかし断って、指を(うつわ)に突き出した。


 魔力で血液を包み込み浸透させ、そのまま押し出す形で指先から(したた)らせる。

 斬るよりは痛いが、魔力はかなり入っているはずだ。

 なんとなくだが、湯気ではない白い蒸気が上がっているようにも見える。


「お見事……!」

「ちなみに、別料金とかにはならないですよね」

「ふむ。では先にお会計を済ませましょうぞ。先に頂いた100万を除き、日本エンにて460万エンとなります」

「計算したより100万も多いんですが?」


 モモカが300万で、税金が20%で60万のはずだ。

 やはり、どこかでぼったくる気なのだろうか。


「いえいえ。300万に奴隷税20%が含まれ360万。お召し物が税込みで100万となっています。奴隷紋はそのサービスとなっております」

「100万の服って……。確かに高品質で魔力を結構上げる効果が付与されてるっぽいですけど」


 素材から見て20万か30万か……。

 加工が加われば100万にはなりそうだ。

 外国ゆえの値段差もあるのだろうが、妥当な値段と言えるだろう。


「これでも市場より安くなっております。奴隷紋のみですと通常で10万のところを無料。目に見えぬようにする高級紋で追加で70万となりますが、いかがなさいましょう?」

「服とセット、高級紋で……530万ですか。予算500万しかないので30万負けてください。さっき暴力を振るわれた分を内密にするって意味も込めて」



 値引きとしては、大したこのない金額だ。

 通常、奴隷は国の所有物扱いで値引きはできないらしい。

 だが一方的に金額を提示されるだけではないと意思表示しないと、カモられそうだ。

 なので事前に調べまくって確実に値引きできる範囲を告げた。


「奴隷分を値引きすることはできませんが、失礼をしたのも確かですな。では他の部分から割り引いて500万でと言いたいところですが、敬意を持って480万とさせていただきましょうぞ」


 何に対しての敬意だろう。

 高級紋を使うことに対してか、事前調査をしてることに対してか。


「冒険者カードからの入金で大丈夫なんですよね」

「はい。ではこちらの口座に入金をお願い致ししまする」



 こうして俺は、生涯奴隷の購入が完了した……。


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