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22体目 エルフ

 73階層のとあるホテル郡が立ち並ぶ地帯。

 俺は、したくもない待ち合わせ場所に到着した。


「この階層にこんな場所があったんだ」

「外国の所有地だし知らないのもムリないな」


 階層の所有権は、初の階層突破者の国籍次第で決まる。

 複数の場合は分けたり条約を結んだり……。

 今は地下まで解放され、一般人も転移可能になり混乱の極みらしい。


 行動できる範囲は結界で広げられるが、1階層が直径10キロ前後の円形。

 その狭くも良質な資源やらを入手できる土地の権利を巡って、各国が口論している。


「他の2人ってのが居ないけど、来てないのか」

「こういう場所には来たくないんだと。リスト見ただけで決めて、契約書も代理で持ってきてるぜ。規約書も郵送で送ってもらうとさ」


 そんなことで大丈夫だろうか。

 一度ハマると泥沼から抜け出せなくなりそうだ。

 まあ俺には関係ないことか。




 一際大きく立派な建物の前には、セールスに来た中年と他数名の職員が居て俺たちを出迎えた。


「ユウ様、トウヤ様お待ちしておりました。申し訳ありませんが当館の決まりですので、お持ちの武器はお預かりさせて頂きます」


 軽いボディチェックもされ、俺たちは別々の個室へ案内される。

 まず、事前に3名ほど購入を検討している者をリストから選ぶ。

 そして実際に会ってどうするか決めるという流れだ。



 俺が選んだのは全員、亜人の中でも数が少ないというエルフだ。

 理由は、魔法を覚えたいからというのが強い。


 予算内で買える、戦える人材はレベル80の成人男性1名だけ。

 残す2名は原石。

 見た目が年齢より幼く見える、11歳の女の子と男の子だ。

 出身国では10歳から冒険者になれるらしい。

 

 そして男性のほうから面接したのだが、印象が最悪だった。

 成人男性なので言動こそ従順だ。

 しかし目つきや声から棘を感じて、一緒に行動するのはストレスが溜まりそうだから遠慮しようと思う。


 男の子に(いた)っては、仲良くしようとしたのに蹴りを入れられた。

 そして暴れるので黒服の職員に連れて行かれる始末。


「申し訳ありませぬ。教育が足りなかったようで……。攻撃はできないはずですが、あとで呪いを強めておきまする」

「いやまあ小さい子のしたことですし、痛くなかったので……。人族(ひとぞく)が嫌いなんですかね」


 暴れた際に「お前ら人族のせいで!」などと叫んでいたから、間違いないと思う。


「でしょうな。50年ほど前に法律に逆らう集団の事件がありました(ゆえ)、親がその関係かと……」


 エルフは基本的には森でスローライフを送るとされる種族だ。

 縛りの強いこの国の法律は反感を買ったはず。

 100年以上前に結ばれた友好関係だが、種族によって考え方は違う。

 多かれ少なかれぶつかり合う事もあるのだろう。


「では少々早いですが、最後の1人を呼びましょうぞ」



 最後の子は、ややピンクに近い薄紫色のロングヘアー。

 奴隷商にとってはこの子が本命のようだ。

 ややウェーブが掛かった長い髪をツインテールに束ね、水色のリボンで結んでいる。

 服装は一見和服にも見えそうなドレス? に、(たけ)が膝に届いていないスカートだ。

 

 名前は≪モモカ≫と言うらしい。

 もし漢字を当てるなら≪桃華≫といったところか。

 セールスは部屋にこそ居るが、(すみ)で待機している。


「よ、よろしくお願いします……」

「ああ。よろしくな。とりあえず座っていいよ」


 言わねば座る権利すらもらえないので、手で座る場所を示し勧めるしかない。

 仮に座ってと言うだけだと、その場の地面に座りかねない。


 表情はやや暗く、不安や緊張、それに気恥ずかしさが混じっていそうなのは着飾っているからか。


「俺はトウヤ。まずは名前を教えてくれないか?」

「……モモカって言います」

「そうか、良い名前だな。これからいくつか質問するけど、嫌なら答えなくていいからな」


 購入するにしても、いくつか聞いておかねば予定が立たない。

 プロフィールは貰ってある程度は知っているが、直接聞きたいから一応訊ねておく。


「まず、冒険者になるのは抵抗あるか? これは、無くても構わないけど」

「あの……。冒険者について詳しくないので分からないです。すいません」

「戦闘行為は……聞くまでもないな。まあ、芽がないわけじゃないと。魔法は使えるか?」

「簡単な風や水魔法でしたら……」


 戦った事の無い者に戦えるか聞くのは野暮だろう。

 大体の人は最初はまともに戦えないものだ。

 しかし冒険者登録をしていないにも関わらず魔法が使えるとは……。

 やはりエルフの魔力は段違いなのだろう。


「ちょっと触れて魔力を確かめていいか?」

「は、はい……」



 心臓付近が一番確かめ易いが、それをするのは不味かろう。

 頭に手を置いて、ドレインの応用でどれぐらいの強さか確認する。


「んっ……!」

「ああ悪い。くすぐったいか?」

「い、いいえ大丈夫です!」


 恥ずかしさが(まさ)ったのか、初めて大きな声を出した。

 魔力の強さは、年齢やレベル1であることを考慮してもかなり強い。

 数値にしたら100は間違いなく超えるはずだ。

 女性のほうが魔力は強い傾向があるが、成人男性の10倍以上。

 仮に戦闘に出さなくても、魔法を覚えさせるだけでも十分使い道はありそうだ。



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