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20体目 セールス

 質問は(とどこお)りなく終わった。

 冒険者になった理由など、よくある質問だ。

 俺の場合、強くなりたい、安定した収入が欲しい、助けられる人が居るなら助けたいなどと登録時に言ってある。


 最後の部分がややネガティブになっているが、その行動事態を変えるつもりはない。

 手の届く範囲で死にそうな人がいれば、助けはする。

 しかし多くの人は目の前でもなければ、見ず知らずの人が死んでも なんとも思わないだろう。

 俺も思わない。


 刑事が帰った後は自室で分身を出し、今後の方針を相談し始めた。


「転移門で世界中が移動可能になったか……」

「旅行が楽になるけど、検問とか規制が厳しくなりそうだな。その前に素材売っとけば?」


 旅客機などは大ダメージ間違いなしだ。

 その仕事をなくしそうな人員を転移門の管理運用員に使おうと議論されているらしい。


「もう結構な人数が分身を知り始めてるし、全部売っちゃっていいんじゃね」

「そうだな。もうそこらの人に気付かれたところで大丈夫だろうし」





 天の試しで手に入れた分も含めると、相当な数になる。

 しかしタイミングが悪く、ただでさえ忙しい職員に負担を掛けてしまった。

 反省しなくては。

 したところで数が増えていくのは、歯止めの利かないことだが。


「お待たせしました……。こちらが明細となります。ご確認ください」

「えーと……237万と3200エン。なんか多くないですか」

「地下の素材は高品質で数が減り、高く引き取っていますので」


 素材は武具や、他にも需要はある。

 しかし俺のように大量に売る人もいるはずで、値崩れしないのか。

 物流のことはよく知らないが、何かしら調整がされているのだろう。


「それにしても、増えるとは(おっしゃ)ってましたけど、ここまでとは……」

「まあ、しばらくは落ち着くと思いますよ」


 レベルだけ上がっても、知識や技術、精神が伴わねば痛い目に()いかねない。

 なのでこれからは、本格的に魔法を覚えたりを始めようと思っている。




 明細を貰い帰宅中……。

 尾行されているのに気付いたので、(みずか)ら路地へと入る。

 大金を得たからまさかとは思い警戒していたが、典型的過ぎて話にならない。


「おいおい、こんな場所に入るなんて好都合だな」

「なんか用?」


 3人……逆からも来て合計10人。

 連絡を入れて仲間を集めたようだ。


「いやぁ、俺たち金に困っててさ。貸してくんねえかなぁってな」

「あんたら正気か? そんなことしてると警察に捕まるぞ」


 そして俺は冒険者カードを取り出し――弓で打ち抜かれた。

 ピンポイントでカードだけを命中させるとは中々の腕だが、計画通り。

 スマホはハリボテなので問題無し。


「取り合えず器物破損は確定。これで気兼ねなくできるよ。犯罪者さん」

「あ? 最近稼いでるからって調子に乗ってるんじゃねぇぞ!」


 1人が短剣を持って襲い掛かってくるが、非常にスローだ。

 そして刃物は腹部に突き刺さり、生体(・・)分身から鮮血が(ほとばし)る。


 潜ませていた分身により、全員の顔と行為を撮影完了。

 あとは警察に提出して、やや離れた位置の屋根に居る本体は自宅へと帰る。


 十数分後分身はズタボロになり大量の血を流し路地で倒れているところを、(うち)へ来た刑事2人に発見された。


 チンピラはサイレンの音が聞こえた時点で逃げ出した。

 刑事さんには証拠はあるが、その場で傷を修復して大丈夫だと告げる。

 事情を知っているこの2名なら、あとは言わなくても分かってくれた。



 そして分身がほぼ無抵抗でリンチに遭っている最中。

 本体の帰宅中、またもや絡まれていた。



「いやはや彼等は可哀想に。関わった相手が相手なだけに、大怪我をしなかったのはむしろ幸運だったとも言えますかな?」

「今日は客が多いなぁ……。どこの誰で、なんの用ですか」


 気配を感じ取れなかった気味の悪さはあるが、敵意めいたものはなさそうだ。

 一応敬語は使ったが、警戒は(おこた)らない。


「そう警戒なさらず。私どもはいわばセールス。貴方(あなた)様のお役に立てると思い来た次第でございまする」


 お金を稼げるようになると、こうも早く売り込みがくるものなのか。

 しかしお金の使い道もあまり思いつかないので、聞くだけ聞いてみる。

 要らないものなら断るだけだ。


「……売り物は?」

「トウヤ様はお仲間が欲しいと思ったことはありませんか?」

「ありません」


 あえて同じ言葉を使い即答した。

 しかしこの程度で諦めるセールスはいない。


「まあそう焦らず。確かに裏切りや人付き合いが面倒だと言う方は一定数います。しかし人手は多いことに越したことはない。そのような人のために我々はいるのでございまする」

「人材の斡旋(あっせん)なら遠慮します」

「まさか! そのような適当な連中をお客様に提供は致しませぬ」

「じゃあなんですか。まさか魔物とか言いませんよね。せわとか申請が面倒だから嫌ですよ」


 戦力になっても、その文手間の掛かる魔物の仲間などお断りだ。

 ムギは興味を持っていたが、俺はしたくない。


「魔物ですか。確かに近い物はあるかもしれません。かの時代には魔物や魔族に近い存在と言われてた者もおります(ゆえ)


 魔族とは、人類の敵をしていた亜人種族の総称だったか。

 (むかし)はその関係で、亜人は(みな)奴隷という国すらあったと聞く。


「まさか奴隷? 日本じゃ法律違反ですよ」

「御名答! しかし法律の心配はございません。売りまするは我々の国の者です。魔塔内部や我が国では、違法とはなりませぬ」




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